13 / 38
第1章 東京脱出
01-013 幸運
しおりを挟む「ハウウェルぜんばいっ、あいたかったでず~~~~っ!?」
アルトの声が響いて、ドン! と脇腹になにかがぶつかって来た。
「ぐっ、がっ!?」
長時間の乗馬の疲れからか、踏ん張ることができず、べしゃっと地面に倒れ込む。頭突きの入った脇腹と、ぶつけた背中が痛い。そして、上に乗っている奴が重い。
「人にっ、いきなりタックルすんなって何度も言ってんだろうがっ、このボケがっ!?」
イラッとして怒鳴り、わたしにしがみ付いている奴を蹴飛ばして退かす。
「がはっ!?」
息の詰まる音が聞こえたけど、気にしない。痛む背中を擦りつつ、身を起こす。
「は、ハウウェルが襲って来た奴怒鳴って蹴っ飛ばしたっ!? つか、それなに?」
「?」
それ、と言われて蹴飛ばした奴の方を見ると、ストールで顔をぐるぐる巻きにした男子(多分)が地面に倒れていた。イラッとして思わず蹴飛ばしたけど、なんだかすっごく怪しい奴だ。
「えっと、ネイサン様の名前を呼んでいましたが、お知り合いでしょうか?」
「名前、呼ばれてました? 脇腹に頭突きされて、背中もぶつけて痛かったのでちょっと……」
あと、なんて怒鳴ったっけ?
「ふむ・・・もしかして、フィールズだろうか?」
「ふぇ? その声は、レザン先輩ですかっ!?」
と、ストールで顔をぐるぐる巻きにした奴がパッと立ち上がる。
「そうですっ、僕です! エリオット・フィールズです! エルです! 会いたかったですっ!! ハウウェル先輩っ、レザン先輩っ!!」
「……もしかしなくても、騎士学校時代の後輩か?」
「はいっ!! ハウウェル先輩の弟子ですっ!!」
「え? 弟子?」
「や、違うから」
「そんなっ、ヒドいですよハウウェル先輩! って、なんでそんなところに座っているんですか? 服が汚れますよ? あ、もしかして怪我でもしたんですか? 大丈夫ですか? 立てます?」
と、わたしにいきなりタックルをかましたアホが手を差し出す。
「ははっ、つい今し方、どこぞのアホにタックルかまされて転ばされたんだけどな?」
「ハウウェル先輩にそんなことをする奴がっ!? 一体誰ですかっ!?」
と、辺りを見回すストールぐるぐる巻きの頭。その状態で見えるのか? というか、なぜにそんな格好しているんだか?
「や、今ハウウェル押し倒したのお前じゃん」
「え? ええっ!? 僕ですかっ!? ごめんなさいハウウェル先輩っ!!」
がばっと頭を下げるエリオット。
「な、な、ハウウェル。もしかしてアホの子?」
「まぁ、見ての通りだね。ありがと」
声を潜めて聞くテッドの手を取って立ち上がる。ああ、背中と脇腹が痛い。
「その、背中と脇腹が痛いとのことですが……大丈夫でしょうか? ネイサン様。そちらの方も、どこか痛いところはありませんか?」
「っ!! お、女の子がいる~~~っ!?」
ケイトさんが言った途端、ビクッ! として、レザンの背中に隠れるエリオット。ケイトさんはさっきからいたんですけどね?
「ハウウェル先輩、レザン先輩っ、ここ、このがっこう、女の子がいっぱいいるんですっ!? 助けてくださいっ!?」
「は? ここ共学だぞ? 女の子いて当然だろ、なに言ってんのコイツ?」
「……まあ、ちょっと気持ちはわかるが……」
エリオットの言葉に、アホを見る視線になるテッド。わかると呟いたリールは……まぁ、女の子が苦手だったな。
でも、エリオットはリールよりも深刻のようだ。
「女の子こわい、女の子こわい……」
1
お気に入りに追加
122
あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。


プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる