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10-005 11回目の春
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ゾンビ事変発生から11回目の春。
生存者たちは、狂乱の出来事から丸10年生き延びた。
集落では、年明けから波乱含み。電力事情は日々悪化している。燃料確保も最悪。
ガソリンや軽油は、放置車から得るような状況。物資の獲得方法も知らず、不用意な行動から犠牲者も出ている。
3月上旬、集落の残留者たちは、ようやく気付き始めていた。何を憎んでいて、誰を追い出してしまったのかを。
御手洗隆祥は旧指導層の不正をいまでも口にするが、具体的な不正内容には触れない。不正はあったはずだが、どんな不正だったのか皆目わからない。
宗岡千里はどう判断すべきか、わからなかった。
「2月の犠牲者は4人。
凍死が2人、死人に噛まれて2人」
隣の家の住人からそう教えられ、戸惑った。
電気がなければ電子機器は使えない。使えない電子機器には、修理やメンテナンスは不要。千里の存在価値は、ほぼなくなった。
そうなると、物資を浪費する存在と見られ、必然的に風当たりが強くなる。
同じ頃、重大なことがわかる。
田植えのために苗を育てなければならないが、その方法を誰も知らない。
同じ頃、サルの群が現れる。
集落の住民は、強敵の襲来にも関わらず、一切の関心を示さなかった。
千里は旧指導層が犯した不正を暴く必要を感じている。それができれば、去って行った人たちが戻ってきてくれるはずだと信じた。
御手洗隆祥は、旧指導層は若年者を手先として、探し出した物資を隠匿し、密かに消費していたと説明したことがある。
街グループと対立していた男性にどのような不正があったのか聞いてみた。
「あいつらは、汚い。
とにかく、汚い。
平気でただ飯を食って、礼も言わない。物資は何も持っていないのに、生意気な態度だった」
だが、具体的な不正については何も知らなかった。
意外なこともわかった。
水田が開かれるまで、街グループはかなりの量の玄米を持っていた。ニジマスの養殖池を運営し、一定の漁獲に成功していた。
街グループのものだったとされるタンクローリーが残っているし、彼らが使っていた倉庫には寝具や衣類などの未使用物資が大量に残っていた。
その倉庫は現在、公的管理下にある。
ある女性は「あの倉庫が物資隠匿の証拠よ」と言った。
ある男性は「街から来たガキどもは、何も持っていなかったんだ。原付でやって来て、横暴だった。俺たちの食い物を奪った」と言った。
千里は暴走族のような若者たちだったのだと理解する。
善良な高原のヒトたちは、さぞや怖かっただろうと。
千里は集落の前身である高原の成り立ちをまったく知らない。そして、誰も説明してくれない。
だが、ある男性が彼女に説明した。
「私は、空港に避難したんだ。妻と。当時は新婚だった。
妻は御手洗さんの支持者でね。それがなければ、私はスカイパークに行ったよ」
「え!
どうして?」
「当然だろ。
彼らがいなければ、高原は存続できなかったんだから」
「集落は、公正を望むみなさんの力で運営してきたのでしょ」
「まぁ、そうではあるけど。
そもそも、不正なんてない」
「え!
みなさん、旧指導層の不正を糾弾していますよ」
「まぁ、ここに残ったのは恵まれない立場のヒトたちばかりだから」
「どういうこと?」
「4号に死人が集まり始め、4号から死人が漏れ出すと、空港や合流点は危機的状況に陥ったんだ。
街にいた子たちもね。当時はかわいらしい少年少女ばかりだった。
逃げ場がなくて、高原に来たんだ。高原が受け入れてくれなかったら、どうなっていたか」
「高原には誰が?」
「桂木くんたちだよ。
きみたちが追い出した。
絵に描いたように恩を仇で返した」
「彼らは街のヒトたちの仲間なんじゃ?」
「いや、彼らが高原にたどり着いた最初のヒトだよ。彼らが生き残る道を最初に開いたんだ」
「あの、不正なんですけど」
「不正?
御手洗氏の言う不正?
生き抜こうと努力を重ねてきたヒトたちが、主導権を握った。
それがおもしろくないってことだね」
「不正はない?」
「あるかもしれない。
偶然見つけた桃缶を食べちゃうとか。
チョコレートを隠しているとか。
でも、その程度だ」
4月になっても状況は改善しない。停電は常態化し、3台あるディーゼル発電機のうち1台が壊れる。
燃料は枯渇。
クルマどころか、農機や建機も動かせない。つまり、機械による田植えができない。
40歳代の男性が1人、御手洗隆祥を批判した罪で追放になる。
御手洗シンパの妻は残り、夫だけが追放になった。
追放になる男性は終始にこやかだった。晴れ晴れとした表情。
彼は、枯れ枝を拾うとそれを肩に担ぎ、軽やかな足取りで去って行く。
桂木良平と真崎健太は、その追放劇を遠望していて、いままでとは違う何かを感じた。
そして、追放が再開したことから、集落内部での異常を察知する。
「新座さん、でしたよね」
健太が背後から声をかける。
男性は湖面を眺めていた。春だが、かなり寒い。
驚いて、男性が振り向く。
「真崎さん?
まさか?」
「集落内の情報をもらえませんか?」
「どうしてここに?」
「まぁ、いろいろと」
「なるほど、見張っていたんですね」
「そんなところです」
「何を知りたいんです?」
「集落内の状況です」
「電気なし。
燃料なし。
野菜なし。
魚なし。
肉なし。
あるのは、コメ、ジャガイモ、タマネギ、ダイコンの漬け物くらいですよ」
「新座さん、奥様は?
確か……」
「御手洗がいいみたいですね。
政治信条なのか、恋愛感情なのか。
わけがわかりません。
彼女については、もうどうでもいいんです」
「そんな。
力を合わせて、生き残ってきたんじゃないですか」
「そう思っていたのは、私だけだったみたいです」
「これからどうするんです?」
「どうしようかなって?」
「俺たちの拠点に来ますか?」
「そうさせていただければ嬉しいですけど。
裏切った感があるんですよ、みなさんに対して……」
「裏切ったとか、裏切らないとか、そんなことじゃないでしょう。
ただ、一時の選択をしただけですよ」
拠点にしている常夏川河口のキャンプ場に向かう。大型観光バスが、監視の拠点になっている。キャンプ場は、水の補給が簡単であるなど、継続的な任務の拠点に向いている。
新座によれば……。
「残っている90人のうち、単純に食糧目当てが50人、何らかの目的があって残っているヒトが10人、御手洗さんを信奉するヒトが30人くらいでしょう」
この分析は、健太の所感と一致する。
新座が続ける。
「ヒトは元来保守的で、新しい環境よりも、現在の状態を選ぶものなんです。
集落で食糧生産がうまく行っていた理由は、住民個々が知恵を出し合っていたから。御手洗さんは、その流れを断ち切ったんです。
で、食べ物がない集落には、価値はないわけで……。
そうなると、御手洗さんは口減らしを始めるでしょうね。
私がその第1号かな」
宗岡千里は、第1回の物資調達チームに選抜されて戸惑っていた。10人が選抜されたが、父親と20歳の父娘もいる。母親は選抜されなかった。
男性5人、女性5人で、クルマもなく、物資を探しに行く指示を受けていた。男性は40歳代と50歳代、女性は1人を除いて30歳代だった。
鬼丸莉子が10人を追跡すると、彼らは湖に近い開けた路上で談義を始める。
男性が「俺はこのまま娘と逃げる。妻にこだわっていたら、娘を殺しかねない」と言い切った。
若い女性が「ダメだよ。ママを見捨てるなんてできない」と反論するが、男性が「集落に残ってもママは助けられない。ママを助けたいなら、助ける準備をしないと。そのためには、外に出るしかないんだ」と説得する。
莉子の存在は気付かれていない。
生きているヒトが近くにいるとは、考えていないのだろう。
他の男性4人も「戻ろうとは思わない。このまま消えるつもりだ」などと賛意を示す。
女性4人は顔を見合わす。
1人が「でもどこに行くの」と問い、1人が「集落に戻っても、飢えるだけよ」と正しい判断をする。
1人が「物資調達の名目だから、少しは道具がある。ナイフも。追放よりはマシ。逃げるならいまね」と。
1人は沈黙。
行き場を心配している女性が「私1人で帰ったら?」と言うと、沈黙していた女性が「物資を持って帰らないんだから、何らかの懲罰があるでしょうね」と。
談義は3分とかからなかった。衆議は決し、逃げることに決まる。戻っても、いいことはない。悪いことはあるだろう。
莉子は迷ったが姿を現した。
10人が驚き、身構える。慌ててナイフを抜く女性も。
「高原の鬼丸です」
男性が「確かに鬼丸さんだ、物資を持ち逃げしたって聞いていたけど……」と笑う。
「まぁ、衣類に寝具、当面の食糧は持って出たけど……」
別の男性が「物資を隠匿し、盗んだわけですね」と小首をかしげながら言う。
「近くに私たちの拠点があります。
来ますか?」
娘の父親が即答する。
「行くあてがないし、食べ物もありません。迷惑でしょうが、一緒に行動させてください」
物資調達に10人を送り出し、10人全員が戻らないとわかると、御手洗隆祥は次の隊を編制する。
だが、選抜された10人が拒否する。
理由は明確。
外防壁上から目撃された巨大なクマだ。この周辺には、在来のツキノワグマ、北海道から南下してきたらしいヒグマがいる。北海道に棲息する野生のヒグマは、大きくても体重200キロ程度。ツキノワグマは、大きい個体で120キロほど。
だが、目撃されたクマは、エゾヒグマの数倍の大きさがあった。
「羽月さんが目撃したクマだけど、よくわからない。ヒグマではないし、ツキノワグマでもない。
たぶん、ハイイログマとホッキョクグマのハイブリッド。
一緒に映っている2トントラックと比較しての推測だけど、体重600キロから800キロだね。
現生最大最強の陸生捕食動物で間違いないと思う」
これが大室安寿の見立てだ。
同種のクマは、ケープ周辺でも目撃例がある。広範囲に棲息し、日本列島で繁殖している可能性が高い。
「あんな怪物がウロついているのに、壁の外には出られない。
銃も持たずに物資調達なんて、自殺行為だ。そもそも、あの怪物は銃で倒せるのか?
御手洗さん、あんただって知らないだろ」
御手洗は、人間社会の森羅万象を知っている。少なくとも、彼はそう信じている。人間社会には2種類のヒトしかいない。
利益を得るヒトと、いつも何かを失うヒト。
この考え方の正誤はともかく、現在は通用しない。なぜなら、ヒトは食物連鎖の頂点にいないからだ。
この男性の物言いが代表たる彼に不敬だとして、追放となった。
男性が追放された2日後、再度10人の物資調達チームが編制される。
だが、今回は5人の志願者があり、彼らが優先されて、メンバーの入れ替えがあった。
5人の志願者は、集落から出たら戻る意思はなかった。
桂木良平たち4人は、厳冬期における2カ月もの観察後、ごく短期間に22人の集落住民と接触した。
追放者が2人、物資調達が20人。物資調達2チームのうち、2番目のチームは3人が集落に戻ると頑強に主張する。
理由は2人が「家族がいる」、1人は「御手洗さんを信じている。御手洗さんなら、現在の危機を乗り越えられる」と。
濃淡はあるが、3人は御手洗隆祥を信頼している。それは、言質からわかる。一方、スカイパークや旧指導層には、強固な疑心しかない。
仮に3人が集落から離れることがあったとしても、スカイパークのメンバーとは関わらない。
それは、明確だった。
3人が集落に戻る以上、これ以上の集落に対する観察は続けられない。
良平は、撤退しか選択肢はないと決断する。これで、集落との関わりは終わる。
全長90メートルの元巡視船タイガーシャークは、2基のエンジンでも航行できた。
それと、故障している1基は燃料噴射ポンプの調整で対処できる。もう1基は燃料噴射ポンプの分解をして部品交換が必要。その部品は、入手の目処がない。
存在するのかもわかっていない。
ケープには、できることもあるし、できないこともあり、できるかできないかわからないことも多い。
できることの1つが医療。ゾンビ事変以前とはかけ離れたレベルだが、それでも医師、看護師、助産師、薬剤師、創薬研究者、ウイルス学者、臨床検査技師がいる。そして、彼らの経験と知識は、継承されている。
病院の屋上に放置されていたドクターヘリは、国分兼広が指揮して回収に成功していた。
病院は死人の巣窟で、院外に出さないよう閉じ込めることに苦労したが、回収自体はそれほど難しくはなかった。
今回は、10トン4軸トラックと4輪のラフテレーンクレーンを使った。海上輸送は、多用途作業船マンタと小型フェリーのオルカで行った。
松島湾に5角形の人工島がある。この人工島には数十人の生存者がいて、ドクターヘリの回収を目撃された。
この島には、平屋の細長い建物が2棟あり、工事現場の事務所やプレハブハウスもある。
陸とは道幅の狭い橋1本だけでつながっており、ここを封鎖すれば死人は渡ってこられない。
実際、土嚢を多重に積んだ堅牢なバリケードで封鎖している。陸との往来は、漁船を使っているらしい。陸側にも拠点があるのだろう。
数十人規模なら十分に住める。
互いが存在に気付いているが、接触はなかった。
桂木良平たち4人は、高原にいたときと同様に電力関係の仕事に就いていた。風力発電から、太陽光発電に変わったが、それ以外は大差ない日常に戻った。
彼ら以外の集落出身者も何かしら仕事を見つけて、ケープの力になっていく。
200人を超えたので、できることも増えた。大仏早苗が始めた立ち食いそば屋は、朝7時から夜21時までの営業になっていた。
もちろん、彼女1人ではなく、1日3交代12人で運営されている。
当初はそばだけだったが、うどんも始める。トッピングは日替わりだが、メニューは増えた。ミニ天丼セットが人気。食券は週5枚の制限に緩和された。
不正も発覚。
氏家義彦がポルシェ・ボクスター、風間幹夫がフェラーリ・599GTBを自家用車として使っている。
どうやって入手したのか追及されたが、2人は口を割らなかった。出所は安西琢磨であることはほぼ確か。
ただし、引き渡された条件が何かは不明。
陸側、海側とも、監視カメラと肉眼で常時見張りをしているが、4月末の早朝、白旗を掲げた漁船が近付いてくるのを発見する。
監視カメラでは船の接近しかわからなかったが、監視棟の見張り員は船首に白旗を掲げている意味が理解できなかった。
[船首で白旗を振っている。
なぜなんだ?]
無線を聴いた真藤瑛太が通信傍受室を飛び出す。
瑛太の前を神無玄吾が走っている。
「神無さん!
夜勤?」
「あぁ、毎日夜勤だぁ。
真藤さんは?」
「俺も帰れなくて」
「まったく、たいへんだよな」
「毎日、その日が早くて」
「あぁ、俺も同じだよ」
漁港には30人ほどが集まっていて、域内警備員の4人が銃を持っている。
漁船の乗組員1人が舳先で必死に白旗を振る。
瑛太が「降伏?」と首をかしげ、玄吾が
「いや、危害を加えるつもりがないっていう意思表示だろうな」と推測する。
その場にいた最年長が玄吾だったので、彼が代表して誰何する。漁船は接舷していない。
「きみたちは何者だ!」
「俺たちは、磯島公園に住んでいる。
仲間の具合がよくない。
見てくれないか?」
警備員が[患者は若い女性。すぐに救急車を]と無線で警備室に伝える。
救急車は、空自の基地にあった1トン半トラックベースの空自の救急車しかなかった。これを使わず、商用バンであるプロボックスの後部座席を倒して乗せた。
彼女を運んできた4人のうち、男性2人が病院から閉め出される。
南川響子が「どうしたの?」と尋ねると、1人の女性が「アフターピル、飲んだの。そうしたら倒れた……」と告げ、パッケージを見せる。
「これ、アフターピルじゃない。
経口中絶薬……」
瑛太が、病院から閉め出された男性2人を連れて、代表部の会議室に向かって歩いていると、1人が足を止める。
「どうした?」
瑛太が問うと、彼が「立ち食いそば。昔、父さんと郡山駅のホームで食べた……」と遠い表情をする。
「飯、食うか?」
そう問うと2人が頷く。
店は開店前だったが、見慣れない2人から状況を察し、揚げたてのかき揚げをトッピングしてくれた。
「美味いよ」
「美味い、本当に美味い」
2人が味わいながら食べる。
「普段は何を食ってるんだ?」
「魚とか、山菜とか。
5年くらい前から、食糧の確保が難しくなっていたんだ。
だから、何回も遠征した。農村には、コメが残っていたし」
「でかいクマのこと知っている?」
「あれ、海を渡るんだ。
泳ぎが上手でね。
島に渡ってきたよ。そのときは、全員がパニックになった。
怖かったよ。
最初は、あんたたちも怖かった。何をされるのか、女の子を掠うんじゃないか、って」
「そういうことがあったの?
過去に」
「あったよ。
あんたたちは、ほっといてくれた。俺たちに何も要求しなかった」
早い時間に男性2人は船で戻った。女性2人は、看病の名目で残った。
午後、女性2人が小さな漁船でやって来た。
大量のタケノコを持って。
「今朝掘ったんだよ」
10歳代と思える女性が微笑む。
仲間を治療している礼の意味があるらしい。
タケノコを置いて、病人を見舞って帰った。
翌日はタラの芽。
その翌日はシャコ。
その翌日はコシアブラの新芽。
榊原杏奈が真藤瑛太を代表部に呼び出し、指示する。
「磯島のヒトたちと、話し合いましょう。
食料事情が心配。
真藤さんが手配して」
瑛太は磯島のメンバーにそばを馳走した以外、特別な接触はない。名前さえ知らない。
短い接触しかないが、不快な感じはしなかった。役に立てることがあるなら、協力したいと感じている。
世代が近いという気安さもある。
磯島グループについては、安西琢磨や向田未来が積極関与派。ゾンビ事変発生時、彼らも大人がいなかった。難しい判断を、子供たちだけでしなければならなかった。
星の村から合流したメンバーも、磯島のヒトたちに同情的。
静観派はいるが、無関心ではない。誰もが困難な時期を子供だけで乗り切ったことに感心している。
対外的な接触になれていない様子があり、純朴なのだが、同時に相当に怖い思いもしているようで、過度な用心深さもある。
真藤瑛太は、彼らに同情的すぎる安西琢磨、向田未来、椋木陽人などは交渉役から除いた。
今後の接触については、国分兼広と行うことにする。
瑛太と兼広が磯島に向かったのは、4月の終わりだった。ゾンビ事変から丸10年を経て、11年目に入っっていた。
事変勃発時に8歳だった子が、成人になる。
窓ガラスは割れていないが、かなり汚れている。カーテンはない。殺伐とした部屋だ。
そんな部屋に6人がいる。瑛太と兼広を船で送ってきた浅谷陸翔は「外にいる」と会議への出席を拒んだ。
折りたたみ長テーブルの向かいには、漆原章一、竹林瑞希、菊地正哉、柚木蘭子が座る。4人とも20歳前後だ。
部屋が殺伐としているからか、瑛太には4人の雰囲気が厳しいものに感じた。
それでも、突然の来訪に対して追い返しはしなかった。
「突然の訪問をお詫びします」
瑛太がそう切り出すと、章一が答える。
「いや、仲間を治療してくれて感謝しています。
代金をどう支払えばいいのか?」
「その必要はありません。
漆原さん、タケノコなど十分すぎるほどの食べ物をいただいています」
「そう言っていただけるのはありがたいけど、借りは作りたくないんで……」
瑛太はこの話題を続けたくなかった。
「俺たちは、福島の山の中にいました。
冬は雪に閉ざされるんですが、その間は死人に脅かされることはないんですよ」
「シニビト?」
「ゾンビのことを、死人と呼んでいます」
「なるほど。
確かに死人ですね」
「我々にできることがあれば、協力したいのです。医療以外にもできることがあれば……」
「いまのところは、思いつかないですね」
「そうですか。
我々は現在、農地を開いています。水田を復活させ、野菜を育てます。大豆を栽培し、味噌、醤油、豆腐を作ります。
よければ、供給します」
「ありがたいお申し出ですが、こちらには対価となるようなものがありません。
残念ですが……」
のれんに腕押し、糠に釘。のらりくらりとかわされる。
明らかに警戒されているし、それを解く術がない。瑛太は饒舌ではない。詐欺師まがいの売り口上は兼広が上手いのだが、彼の話は語り出しからウソっぽい。
窓の外がうるさい。ちょっとした騒ぎが起きている。
兼広がニッと笑う。
章一が蘭子に目配せして、見に行かせる。
兼広が笑顔で話し出す。
「心配しないでください。
うかがうにあたって手土産なしでは、何とも足が重くなりますから。
そこで、天丼弁当20食を持参したんです。それをみなさんに食べてもらえたら嬉しいなって」
瑛太が慌てる。
「こちらには、70人近いヒトがいらっしゃるんだぞ。それなのに20食って……」
「いやいや、とりあえずの20食で。
こちらは、食券です。
60枚用意させていただいております。
天ぷらそば、天丼、天ぷら定食、かけそばとミニ天丼セット、肉まんから選べます。
お出向きいただいて、ぜひ召し上がってください」
瑛太が驚く。
「肉まん?」
兼広はまったく動じない。
「肉まんは美味いですよ。
超ジャンボ肉まんです。
肉汁がギュッと詰まっていて」
瑛太が瞬間呆然とするが、すぐに我に返る。
「あっ、肉まんは1日10個限定なので……」
正哉が思わず呟く。
「肉まんかぁ。
コンビニの肉まんの味、覚えているな」
正哉の食いつきに兼広が追う。
「東京の神楽坂に五十番という店がありましてね。そこの肉まんがデカくて美味いんですよ。
ですが、うちの肉まんも捨てがたいですよ。ジビエ料理の鉄人が仕留めたイノブタ肉を使っていて、シイタケやタケノコも入っています」
正哉の顔色が悪い。食欲を刺激されすぎて、胃が痙攣を起こしそうになっている。
兼広は最後の追い打ちをかける。
「あっ、タケノコとシイタケはみなさんからいただいたものです。
いやぁ~、すでに共同作業をしていましたねぇ」
瑞希が兼広をにらみつける。
「そんなこと、私たちに伝えておもしろい?
私たち、食べられないんだよ」
「そんなことはありません。
これからでも来ていただければ、おもてなしいたします。
今日に限らず、いつでもお出向きください。
食券は1カ月有効ですので」
章一が瑛太を見る。
「真藤さん、あなたは誠実そうだ。
見かけだけかもしれないけど……。
だけど、食券をもらった連中を止めることはできないでしょう。
止めるつもりもない。
私は、みなさんのトップの方とお話がしたい……。私だけでうかがいます。
近所付き合いの挨拶として……」
榊原杏奈と漆原章一との会談は、10分ほどで終わる。杏奈は面倒な説明を避け、ケープの現状を見てもらう。
ビレッジ1から9までの居住区域の整備状況。
再生中の水田。
野菜を栽培する予定の畑。
いちご狩りができるビニールハウス。
自動車工場。
空自の基地を転用した航空機の各設備。
章一は、海上からこの一帯を偵察したことがある。死人はいないが、食糧があるようには見えない。食糧がなければ、価値はない。
過去10年間、興味本位で空自の基地に侵入したメンバーが何人かいた。
死人を発見して、逃げ帰っている。
「大きな飛行機ですね」
「アメリカ海軍の輸送機だったの。
飛べるようにするための整備をしている」
「そんなこと、できるんですか?」
「技術を持っているメンバーがいるし、そういった技術は伝承できるように努力しているの」
「大砲が付いている船も持っているんですね。
漁港の外に繋留されていたのを見ました」
「30ミリ機関砲ね。
海上保安庁の巡視船だったの。東京湾で手に入れて、曳航してきたの」
「そんなこともできるんですね」
「できないことは多いけど、できることもあるかな」
飲食スペースは、大型倉庫を利用したフードコート風に変化していた。
「だれもが、朝から晩まで働いているから、なかなか自宅で料理ができないの。
だから、朝昼晩、ここで食べることになっちゃう」
「いつでも食べられるんですか?」
「朝7時から夜21時までの営業」
「代表、どうして、部外者の俺に全部見せたんですか?
いや、全部ではないのかもしれないけど」
「ほぼ全部かな。
別に隠すことじゃないでしょ」
「見せてくれなかったものは?」
「武器・弾薬の製造工場」
「銃を造っている?」
「造っていますよ」
「なぜ?」
「房総沖と銚子沖で、海賊に襲われていますからね。
それに、過去何度も襲撃されているから。
物資調達とかで……。
死人とも戦うし、生人とも戦わなくちゃならないから……」
「イキビト?」
「悪意ある生存者のこと」
「シニビトにイキビトですか?」
「私たちは、そう呼んでいる……。
漆原さんたちの犠牲者は?」
漁港に近付き、漆原を乗せてきた70フィート級漁船が見えてくる。
「ゾンビの犠牲者は最近はいません。
ですけど、何度か大人に攻められました。
俺の前任、2代目のリーダーは大人に掠われたんです」
「気の毒に」
「助ける方法がなくて……。
見捨てるしかなかった……」
「最初のリーダーさんは?」
「事故で死んだんですが、自殺だったかも。
よくわからないんです。
発見したときは、港に浮いていたんです。
最年長は14歳、最年少は6歳。
子供の集まりを導く責任は重すぎますから……。約束を守らない子もいるし……。
成長すると、誰でも少しは分別が出てくるもので……。
俺も含めて……」
「悪い大人は、どこにいたの?」
「いまもいますよ。
拠点は、松島湾内のどこか。島が多いから特定できないんです。
でも、野々島じゃないかと思います。
リーダーは、何かの会社の社長だったとか。水産会社か、建設会社か、船の販売会社の社長だったらしいです。
まぁ、確かじゃないです」
「最近も襲われた?」
「いえ、8年前に弓矢、アーチェリーですけど何人かに命中させたんです。
大人だし、銃を持っていて怖かったけど、俺たちのほうが人数が多いし、少しは武器になりそうなものを揃えたんで……。
俺たちも、矢は作っています。槍も。
ですから、みなさんが銃を造ることは理解できます」
棚田彩葉は、磯島のメンバーからケープと磯島間の安全な航路を教えてもらった。
「北上運河から鳴瀬川河口に出て、少し上流に向かってから東名運河に入るルートが安全だよ。
海賊に出くわすことが少ないから」
彼らは外洋に出ることはほとんどなく、主に全長10メートルほどのキャビンのない船外機付きの漁船を使っている。
活動範囲は、松島湾沿岸と高城川流域で岸から5キロ以内の地域。
松島湾の出入口は海賊が抑えているという。
磯島グループが伝えた海賊とは、まだ接触していない。そして、磯島グループとは、良好な関係を築けそうだ。
ゾンビ事変から10年、死人は敏捷さを失っている。医療グループの調査によれば、長期間屋外にいる死人の筋繊維が固まっていて、動きが悪いのだという。
用心すれば、死人を避けることはできるようになった。
だが、その代償として、悪意ある生存者の行動が活発化している。
限られた物資しかないこの世界で、生存を続けることは難しい。
ケープの誰もが、それを実感している。
次の10年、何があるのか誰にもわからない。
※ここで、連載をいったん終わります。読んでいただいて感謝します。
生存者たちは、狂乱の出来事から丸10年生き延びた。
集落では、年明けから波乱含み。電力事情は日々悪化している。燃料確保も最悪。
ガソリンや軽油は、放置車から得るような状況。物資の獲得方法も知らず、不用意な行動から犠牲者も出ている。
3月上旬、集落の残留者たちは、ようやく気付き始めていた。何を憎んでいて、誰を追い出してしまったのかを。
御手洗隆祥は旧指導層の不正をいまでも口にするが、具体的な不正内容には触れない。不正はあったはずだが、どんな不正だったのか皆目わからない。
宗岡千里はどう判断すべきか、わからなかった。
「2月の犠牲者は4人。
凍死が2人、死人に噛まれて2人」
隣の家の住人からそう教えられ、戸惑った。
電気がなければ電子機器は使えない。使えない電子機器には、修理やメンテナンスは不要。千里の存在価値は、ほぼなくなった。
そうなると、物資を浪費する存在と見られ、必然的に風当たりが強くなる。
同じ頃、重大なことがわかる。
田植えのために苗を育てなければならないが、その方法を誰も知らない。
同じ頃、サルの群が現れる。
集落の住民は、強敵の襲来にも関わらず、一切の関心を示さなかった。
千里は旧指導層が犯した不正を暴く必要を感じている。それができれば、去って行った人たちが戻ってきてくれるはずだと信じた。
御手洗隆祥は、旧指導層は若年者を手先として、探し出した物資を隠匿し、密かに消費していたと説明したことがある。
街グループと対立していた男性にどのような不正があったのか聞いてみた。
「あいつらは、汚い。
とにかく、汚い。
平気でただ飯を食って、礼も言わない。物資は何も持っていないのに、生意気な態度だった」
だが、具体的な不正については何も知らなかった。
意外なこともわかった。
水田が開かれるまで、街グループはかなりの量の玄米を持っていた。ニジマスの養殖池を運営し、一定の漁獲に成功していた。
街グループのものだったとされるタンクローリーが残っているし、彼らが使っていた倉庫には寝具や衣類などの未使用物資が大量に残っていた。
その倉庫は現在、公的管理下にある。
ある女性は「あの倉庫が物資隠匿の証拠よ」と言った。
ある男性は「街から来たガキどもは、何も持っていなかったんだ。原付でやって来て、横暴だった。俺たちの食い物を奪った」と言った。
千里は暴走族のような若者たちだったのだと理解する。
善良な高原のヒトたちは、さぞや怖かっただろうと。
千里は集落の前身である高原の成り立ちをまったく知らない。そして、誰も説明してくれない。
だが、ある男性が彼女に説明した。
「私は、空港に避難したんだ。妻と。当時は新婚だった。
妻は御手洗さんの支持者でね。それがなければ、私はスカイパークに行ったよ」
「え!
どうして?」
「当然だろ。
彼らがいなければ、高原は存続できなかったんだから」
「集落は、公正を望むみなさんの力で運営してきたのでしょ」
「まぁ、そうではあるけど。
そもそも、不正なんてない」
「え!
みなさん、旧指導層の不正を糾弾していますよ」
「まぁ、ここに残ったのは恵まれない立場のヒトたちばかりだから」
「どういうこと?」
「4号に死人が集まり始め、4号から死人が漏れ出すと、空港や合流点は危機的状況に陥ったんだ。
街にいた子たちもね。当時はかわいらしい少年少女ばかりだった。
逃げ場がなくて、高原に来たんだ。高原が受け入れてくれなかったら、どうなっていたか」
「高原には誰が?」
「桂木くんたちだよ。
きみたちが追い出した。
絵に描いたように恩を仇で返した」
「彼らは街のヒトたちの仲間なんじゃ?」
「いや、彼らが高原にたどり着いた最初のヒトだよ。彼らが生き残る道を最初に開いたんだ」
「あの、不正なんですけど」
「不正?
御手洗氏の言う不正?
生き抜こうと努力を重ねてきたヒトたちが、主導権を握った。
それがおもしろくないってことだね」
「不正はない?」
「あるかもしれない。
偶然見つけた桃缶を食べちゃうとか。
チョコレートを隠しているとか。
でも、その程度だ」
4月になっても状況は改善しない。停電は常態化し、3台あるディーゼル発電機のうち1台が壊れる。
燃料は枯渇。
クルマどころか、農機や建機も動かせない。つまり、機械による田植えができない。
40歳代の男性が1人、御手洗隆祥を批判した罪で追放になる。
御手洗シンパの妻は残り、夫だけが追放になった。
追放になる男性は終始にこやかだった。晴れ晴れとした表情。
彼は、枯れ枝を拾うとそれを肩に担ぎ、軽やかな足取りで去って行く。
桂木良平と真崎健太は、その追放劇を遠望していて、いままでとは違う何かを感じた。
そして、追放が再開したことから、集落内部での異常を察知する。
「新座さん、でしたよね」
健太が背後から声をかける。
男性は湖面を眺めていた。春だが、かなり寒い。
驚いて、男性が振り向く。
「真崎さん?
まさか?」
「集落内の情報をもらえませんか?」
「どうしてここに?」
「まぁ、いろいろと」
「なるほど、見張っていたんですね」
「そんなところです」
「何を知りたいんです?」
「集落内の状況です」
「電気なし。
燃料なし。
野菜なし。
魚なし。
肉なし。
あるのは、コメ、ジャガイモ、タマネギ、ダイコンの漬け物くらいですよ」
「新座さん、奥様は?
確か……」
「御手洗がいいみたいですね。
政治信条なのか、恋愛感情なのか。
わけがわかりません。
彼女については、もうどうでもいいんです」
「そんな。
力を合わせて、生き残ってきたんじゃないですか」
「そう思っていたのは、私だけだったみたいです」
「これからどうするんです?」
「どうしようかなって?」
「俺たちの拠点に来ますか?」
「そうさせていただければ嬉しいですけど。
裏切った感があるんですよ、みなさんに対して……」
「裏切ったとか、裏切らないとか、そんなことじゃないでしょう。
ただ、一時の選択をしただけですよ」
拠点にしている常夏川河口のキャンプ場に向かう。大型観光バスが、監視の拠点になっている。キャンプ場は、水の補給が簡単であるなど、継続的な任務の拠点に向いている。
新座によれば……。
「残っている90人のうち、単純に食糧目当てが50人、何らかの目的があって残っているヒトが10人、御手洗さんを信奉するヒトが30人くらいでしょう」
この分析は、健太の所感と一致する。
新座が続ける。
「ヒトは元来保守的で、新しい環境よりも、現在の状態を選ぶものなんです。
集落で食糧生産がうまく行っていた理由は、住民個々が知恵を出し合っていたから。御手洗さんは、その流れを断ち切ったんです。
で、食べ物がない集落には、価値はないわけで……。
そうなると、御手洗さんは口減らしを始めるでしょうね。
私がその第1号かな」
宗岡千里は、第1回の物資調達チームに選抜されて戸惑っていた。10人が選抜されたが、父親と20歳の父娘もいる。母親は選抜されなかった。
男性5人、女性5人で、クルマもなく、物資を探しに行く指示を受けていた。男性は40歳代と50歳代、女性は1人を除いて30歳代だった。
鬼丸莉子が10人を追跡すると、彼らは湖に近い開けた路上で談義を始める。
男性が「俺はこのまま娘と逃げる。妻にこだわっていたら、娘を殺しかねない」と言い切った。
若い女性が「ダメだよ。ママを見捨てるなんてできない」と反論するが、男性が「集落に残ってもママは助けられない。ママを助けたいなら、助ける準備をしないと。そのためには、外に出るしかないんだ」と説得する。
莉子の存在は気付かれていない。
生きているヒトが近くにいるとは、考えていないのだろう。
他の男性4人も「戻ろうとは思わない。このまま消えるつもりだ」などと賛意を示す。
女性4人は顔を見合わす。
1人が「でもどこに行くの」と問い、1人が「集落に戻っても、飢えるだけよ」と正しい判断をする。
1人が「物資調達の名目だから、少しは道具がある。ナイフも。追放よりはマシ。逃げるならいまね」と。
1人は沈黙。
行き場を心配している女性が「私1人で帰ったら?」と言うと、沈黙していた女性が「物資を持って帰らないんだから、何らかの懲罰があるでしょうね」と。
談義は3分とかからなかった。衆議は決し、逃げることに決まる。戻っても、いいことはない。悪いことはあるだろう。
莉子は迷ったが姿を現した。
10人が驚き、身構える。慌ててナイフを抜く女性も。
「高原の鬼丸です」
男性が「確かに鬼丸さんだ、物資を持ち逃げしたって聞いていたけど……」と笑う。
「まぁ、衣類に寝具、当面の食糧は持って出たけど……」
別の男性が「物資を隠匿し、盗んだわけですね」と小首をかしげながら言う。
「近くに私たちの拠点があります。
来ますか?」
娘の父親が即答する。
「行くあてがないし、食べ物もありません。迷惑でしょうが、一緒に行動させてください」
物資調達に10人を送り出し、10人全員が戻らないとわかると、御手洗隆祥は次の隊を編制する。
だが、選抜された10人が拒否する。
理由は明確。
外防壁上から目撃された巨大なクマだ。この周辺には、在来のツキノワグマ、北海道から南下してきたらしいヒグマがいる。北海道に棲息する野生のヒグマは、大きくても体重200キロ程度。ツキノワグマは、大きい個体で120キロほど。
だが、目撃されたクマは、エゾヒグマの数倍の大きさがあった。
「羽月さんが目撃したクマだけど、よくわからない。ヒグマではないし、ツキノワグマでもない。
たぶん、ハイイログマとホッキョクグマのハイブリッド。
一緒に映っている2トントラックと比較しての推測だけど、体重600キロから800キロだね。
現生最大最強の陸生捕食動物で間違いないと思う」
これが大室安寿の見立てだ。
同種のクマは、ケープ周辺でも目撃例がある。広範囲に棲息し、日本列島で繁殖している可能性が高い。
「あんな怪物がウロついているのに、壁の外には出られない。
銃も持たずに物資調達なんて、自殺行為だ。そもそも、あの怪物は銃で倒せるのか?
御手洗さん、あんただって知らないだろ」
御手洗は、人間社会の森羅万象を知っている。少なくとも、彼はそう信じている。人間社会には2種類のヒトしかいない。
利益を得るヒトと、いつも何かを失うヒト。
この考え方の正誤はともかく、現在は通用しない。なぜなら、ヒトは食物連鎖の頂点にいないからだ。
この男性の物言いが代表たる彼に不敬だとして、追放となった。
男性が追放された2日後、再度10人の物資調達チームが編制される。
だが、今回は5人の志願者があり、彼らが優先されて、メンバーの入れ替えがあった。
5人の志願者は、集落から出たら戻る意思はなかった。
桂木良平たち4人は、厳冬期における2カ月もの観察後、ごく短期間に22人の集落住民と接触した。
追放者が2人、物資調達が20人。物資調達2チームのうち、2番目のチームは3人が集落に戻ると頑強に主張する。
理由は2人が「家族がいる」、1人は「御手洗さんを信じている。御手洗さんなら、現在の危機を乗り越えられる」と。
濃淡はあるが、3人は御手洗隆祥を信頼している。それは、言質からわかる。一方、スカイパークや旧指導層には、強固な疑心しかない。
仮に3人が集落から離れることがあったとしても、スカイパークのメンバーとは関わらない。
それは、明確だった。
3人が集落に戻る以上、これ以上の集落に対する観察は続けられない。
良平は、撤退しか選択肢はないと決断する。これで、集落との関わりは終わる。
全長90メートルの元巡視船タイガーシャークは、2基のエンジンでも航行できた。
それと、故障している1基は燃料噴射ポンプの調整で対処できる。もう1基は燃料噴射ポンプの分解をして部品交換が必要。その部品は、入手の目処がない。
存在するのかもわかっていない。
ケープには、できることもあるし、できないこともあり、できるかできないかわからないことも多い。
できることの1つが医療。ゾンビ事変以前とはかけ離れたレベルだが、それでも医師、看護師、助産師、薬剤師、創薬研究者、ウイルス学者、臨床検査技師がいる。そして、彼らの経験と知識は、継承されている。
病院の屋上に放置されていたドクターヘリは、国分兼広が指揮して回収に成功していた。
病院は死人の巣窟で、院外に出さないよう閉じ込めることに苦労したが、回収自体はそれほど難しくはなかった。
今回は、10トン4軸トラックと4輪のラフテレーンクレーンを使った。海上輸送は、多用途作業船マンタと小型フェリーのオルカで行った。
松島湾に5角形の人工島がある。この人工島には数十人の生存者がいて、ドクターヘリの回収を目撃された。
この島には、平屋の細長い建物が2棟あり、工事現場の事務所やプレハブハウスもある。
陸とは道幅の狭い橋1本だけでつながっており、ここを封鎖すれば死人は渡ってこられない。
実際、土嚢を多重に積んだ堅牢なバリケードで封鎖している。陸との往来は、漁船を使っているらしい。陸側にも拠点があるのだろう。
数十人規模なら十分に住める。
互いが存在に気付いているが、接触はなかった。
桂木良平たち4人は、高原にいたときと同様に電力関係の仕事に就いていた。風力発電から、太陽光発電に変わったが、それ以外は大差ない日常に戻った。
彼ら以外の集落出身者も何かしら仕事を見つけて、ケープの力になっていく。
200人を超えたので、できることも増えた。大仏早苗が始めた立ち食いそば屋は、朝7時から夜21時までの営業になっていた。
もちろん、彼女1人ではなく、1日3交代12人で運営されている。
当初はそばだけだったが、うどんも始める。トッピングは日替わりだが、メニューは増えた。ミニ天丼セットが人気。食券は週5枚の制限に緩和された。
不正も発覚。
氏家義彦がポルシェ・ボクスター、風間幹夫がフェラーリ・599GTBを自家用車として使っている。
どうやって入手したのか追及されたが、2人は口を割らなかった。出所は安西琢磨であることはほぼ確か。
ただし、引き渡された条件が何かは不明。
陸側、海側とも、監視カメラと肉眼で常時見張りをしているが、4月末の早朝、白旗を掲げた漁船が近付いてくるのを発見する。
監視カメラでは船の接近しかわからなかったが、監視棟の見張り員は船首に白旗を掲げている意味が理解できなかった。
[船首で白旗を振っている。
なぜなんだ?]
無線を聴いた真藤瑛太が通信傍受室を飛び出す。
瑛太の前を神無玄吾が走っている。
「神無さん!
夜勤?」
「あぁ、毎日夜勤だぁ。
真藤さんは?」
「俺も帰れなくて」
「まったく、たいへんだよな」
「毎日、その日が早くて」
「あぁ、俺も同じだよ」
漁港には30人ほどが集まっていて、域内警備員の4人が銃を持っている。
漁船の乗組員1人が舳先で必死に白旗を振る。
瑛太が「降伏?」と首をかしげ、玄吾が
「いや、危害を加えるつもりがないっていう意思表示だろうな」と推測する。
その場にいた最年長が玄吾だったので、彼が代表して誰何する。漁船は接舷していない。
「きみたちは何者だ!」
「俺たちは、磯島公園に住んでいる。
仲間の具合がよくない。
見てくれないか?」
警備員が[患者は若い女性。すぐに救急車を]と無線で警備室に伝える。
救急車は、空自の基地にあった1トン半トラックベースの空自の救急車しかなかった。これを使わず、商用バンであるプロボックスの後部座席を倒して乗せた。
彼女を運んできた4人のうち、男性2人が病院から閉め出される。
南川響子が「どうしたの?」と尋ねると、1人の女性が「アフターピル、飲んだの。そうしたら倒れた……」と告げ、パッケージを見せる。
「これ、アフターピルじゃない。
経口中絶薬……」
瑛太が、病院から閉め出された男性2人を連れて、代表部の会議室に向かって歩いていると、1人が足を止める。
「どうした?」
瑛太が問うと、彼が「立ち食いそば。昔、父さんと郡山駅のホームで食べた……」と遠い表情をする。
「飯、食うか?」
そう問うと2人が頷く。
店は開店前だったが、見慣れない2人から状況を察し、揚げたてのかき揚げをトッピングしてくれた。
「美味いよ」
「美味い、本当に美味い」
2人が味わいながら食べる。
「普段は何を食ってるんだ?」
「魚とか、山菜とか。
5年くらい前から、食糧の確保が難しくなっていたんだ。
だから、何回も遠征した。農村には、コメが残っていたし」
「でかいクマのこと知っている?」
「あれ、海を渡るんだ。
泳ぎが上手でね。
島に渡ってきたよ。そのときは、全員がパニックになった。
怖かったよ。
最初は、あんたたちも怖かった。何をされるのか、女の子を掠うんじゃないか、って」
「そういうことがあったの?
過去に」
「あったよ。
あんたたちは、ほっといてくれた。俺たちに何も要求しなかった」
早い時間に男性2人は船で戻った。女性2人は、看病の名目で残った。
午後、女性2人が小さな漁船でやって来た。
大量のタケノコを持って。
「今朝掘ったんだよ」
10歳代と思える女性が微笑む。
仲間を治療している礼の意味があるらしい。
タケノコを置いて、病人を見舞って帰った。
翌日はタラの芽。
その翌日はシャコ。
その翌日はコシアブラの新芽。
榊原杏奈が真藤瑛太を代表部に呼び出し、指示する。
「磯島のヒトたちと、話し合いましょう。
食料事情が心配。
真藤さんが手配して」
瑛太は磯島のメンバーにそばを馳走した以外、特別な接触はない。名前さえ知らない。
短い接触しかないが、不快な感じはしなかった。役に立てることがあるなら、協力したいと感じている。
世代が近いという気安さもある。
磯島グループについては、安西琢磨や向田未来が積極関与派。ゾンビ事変発生時、彼らも大人がいなかった。難しい判断を、子供たちだけでしなければならなかった。
星の村から合流したメンバーも、磯島のヒトたちに同情的。
静観派はいるが、無関心ではない。誰もが困難な時期を子供だけで乗り切ったことに感心している。
対外的な接触になれていない様子があり、純朴なのだが、同時に相当に怖い思いもしているようで、過度な用心深さもある。
真藤瑛太は、彼らに同情的すぎる安西琢磨、向田未来、椋木陽人などは交渉役から除いた。
今後の接触については、国分兼広と行うことにする。
瑛太と兼広が磯島に向かったのは、4月の終わりだった。ゾンビ事変から丸10年を経て、11年目に入っっていた。
事変勃発時に8歳だった子が、成人になる。
窓ガラスは割れていないが、かなり汚れている。カーテンはない。殺伐とした部屋だ。
そんな部屋に6人がいる。瑛太と兼広を船で送ってきた浅谷陸翔は「外にいる」と会議への出席を拒んだ。
折りたたみ長テーブルの向かいには、漆原章一、竹林瑞希、菊地正哉、柚木蘭子が座る。4人とも20歳前後だ。
部屋が殺伐としているからか、瑛太には4人の雰囲気が厳しいものに感じた。
それでも、突然の来訪に対して追い返しはしなかった。
「突然の訪問をお詫びします」
瑛太がそう切り出すと、章一が答える。
「いや、仲間を治療してくれて感謝しています。
代金をどう支払えばいいのか?」
「その必要はありません。
漆原さん、タケノコなど十分すぎるほどの食べ物をいただいています」
「そう言っていただけるのはありがたいけど、借りは作りたくないんで……」
瑛太はこの話題を続けたくなかった。
「俺たちは、福島の山の中にいました。
冬は雪に閉ざされるんですが、その間は死人に脅かされることはないんですよ」
「シニビト?」
「ゾンビのことを、死人と呼んでいます」
「なるほど。
確かに死人ですね」
「我々にできることがあれば、協力したいのです。医療以外にもできることがあれば……」
「いまのところは、思いつかないですね」
「そうですか。
我々は現在、農地を開いています。水田を復活させ、野菜を育てます。大豆を栽培し、味噌、醤油、豆腐を作ります。
よければ、供給します」
「ありがたいお申し出ですが、こちらには対価となるようなものがありません。
残念ですが……」
のれんに腕押し、糠に釘。のらりくらりとかわされる。
明らかに警戒されているし、それを解く術がない。瑛太は饒舌ではない。詐欺師まがいの売り口上は兼広が上手いのだが、彼の話は語り出しからウソっぽい。
窓の外がうるさい。ちょっとした騒ぎが起きている。
兼広がニッと笑う。
章一が蘭子に目配せして、見に行かせる。
兼広が笑顔で話し出す。
「心配しないでください。
うかがうにあたって手土産なしでは、何とも足が重くなりますから。
そこで、天丼弁当20食を持参したんです。それをみなさんに食べてもらえたら嬉しいなって」
瑛太が慌てる。
「こちらには、70人近いヒトがいらっしゃるんだぞ。それなのに20食って……」
「いやいや、とりあえずの20食で。
こちらは、食券です。
60枚用意させていただいております。
天ぷらそば、天丼、天ぷら定食、かけそばとミニ天丼セット、肉まんから選べます。
お出向きいただいて、ぜひ召し上がってください」
瑛太が驚く。
「肉まん?」
兼広はまったく動じない。
「肉まんは美味いですよ。
超ジャンボ肉まんです。
肉汁がギュッと詰まっていて」
瑛太が瞬間呆然とするが、すぐに我に返る。
「あっ、肉まんは1日10個限定なので……」
正哉が思わず呟く。
「肉まんかぁ。
コンビニの肉まんの味、覚えているな」
正哉の食いつきに兼広が追う。
「東京の神楽坂に五十番という店がありましてね。そこの肉まんがデカくて美味いんですよ。
ですが、うちの肉まんも捨てがたいですよ。ジビエ料理の鉄人が仕留めたイノブタ肉を使っていて、シイタケやタケノコも入っています」
正哉の顔色が悪い。食欲を刺激されすぎて、胃が痙攣を起こしそうになっている。
兼広は最後の追い打ちをかける。
「あっ、タケノコとシイタケはみなさんからいただいたものです。
いやぁ~、すでに共同作業をしていましたねぇ」
瑞希が兼広をにらみつける。
「そんなこと、私たちに伝えておもしろい?
私たち、食べられないんだよ」
「そんなことはありません。
これからでも来ていただければ、おもてなしいたします。
今日に限らず、いつでもお出向きください。
食券は1カ月有効ですので」
章一が瑛太を見る。
「真藤さん、あなたは誠実そうだ。
見かけだけかもしれないけど……。
だけど、食券をもらった連中を止めることはできないでしょう。
止めるつもりもない。
私は、みなさんのトップの方とお話がしたい……。私だけでうかがいます。
近所付き合いの挨拶として……」
榊原杏奈と漆原章一との会談は、10分ほどで終わる。杏奈は面倒な説明を避け、ケープの現状を見てもらう。
ビレッジ1から9までの居住区域の整備状況。
再生中の水田。
野菜を栽培する予定の畑。
いちご狩りができるビニールハウス。
自動車工場。
空自の基地を転用した航空機の各設備。
章一は、海上からこの一帯を偵察したことがある。死人はいないが、食糧があるようには見えない。食糧がなければ、価値はない。
過去10年間、興味本位で空自の基地に侵入したメンバーが何人かいた。
死人を発見して、逃げ帰っている。
「大きな飛行機ですね」
「アメリカ海軍の輸送機だったの。
飛べるようにするための整備をしている」
「そんなこと、できるんですか?」
「技術を持っているメンバーがいるし、そういった技術は伝承できるように努力しているの」
「大砲が付いている船も持っているんですね。
漁港の外に繋留されていたのを見ました」
「30ミリ機関砲ね。
海上保安庁の巡視船だったの。東京湾で手に入れて、曳航してきたの」
「そんなこともできるんですね」
「できないことは多いけど、できることもあるかな」
飲食スペースは、大型倉庫を利用したフードコート風に変化していた。
「だれもが、朝から晩まで働いているから、なかなか自宅で料理ができないの。
だから、朝昼晩、ここで食べることになっちゃう」
「いつでも食べられるんですか?」
「朝7時から夜21時までの営業」
「代表、どうして、部外者の俺に全部見せたんですか?
いや、全部ではないのかもしれないけど」
「ほぼ全部かな。
別に隠すことじゃないでしょ」
「見せてくれなかったものは?」
「武器・弾薬の製造工場」
「銃を造っている?」
「造っていますよ」
「なぜ?」
「房総沖と銚子沖で、海賊に襲われていますからね。
それに、過去何度も襲撃されているから。
物資調達とかで……。
死人とも戦うし、生人とも戦わなくちゃならないから……」
「イキビト?」
「悪意ある生存者のこと」
「シニビトにイキビトですか?」
「私たちは、そう呼んでいる……。
漆原さんたちの犠牲者は?」
漁港に近付き、漆原を乗せてきた70フィート級漁船が見えてくる。
「ゾンビの犠牲者は最近はいません。
ですけど、何度か大人に攻められました。
俺の前任、2代目のリーダーは大人に掠われたんです」
「気の毒に」
「助ける方法がなくて……。
見捨てるしかなかった……」
「最初のリーダーさんは?」
「事故で死んだんですが、自殺だったかも。
よくわからないんです。
発見したときは、港に浮いていたんです。
最年長は14歳、最年少は6歳。
子供の集まりを導く責任は重すぎますから……。約束を守らない子もいるし……。
成長すると、誰でも少しは分別が出てくるもので……。
俺も含めて……」
「悪い大人は、どこにいたの?」
「いまもいますよ。
拠点は、松島湾内のどこか。島が多いから特定できないんです。
でも、野々島じゃないかと思います。
リーダーは、何かの会社の社長だったとか。水産会社か、建設会社か、船の販売会社の社長だったらしいです。
まぁ、確かじゃないです」
「最近も襲われた?」
「いえ、8年前に弓矢、アーチェリーですけど何人かに命中させたんです。
大人だし、銃を持っていて怖かったけど、俺たちのほうが人数が多いし、少しは武器になりそうなものを揃えたんで……。
俺たちも、矢は作っています。槍も。
ですから、みなさんが銃を造ることは理解できます」
棚田彩葉は、磯島のメンバーからケープと磯島間の安全な航路を教えてもらった。
「北上運河から鳴瀬川河口に出て、少し上流に向かってから東名運河に入るルートが安全だよ。
海賊に出くわすことが少ないから」
彼らは外洋に出ることはほとんどなく、主に全長10メートルほどのキャビンのない船外機付きの漁船を使っている。
活動範囲は、松島湾沿岸と高城川流域で岸から5キロ以内の地域。
松島湾の出入口は海賊が抑えているという。
磯島グループが伝えた海賊とは、まだ接触していない。そして、磯島グループとは、良好な関係を築けそうだ。
ゾンビ事変から10年、死人は敏捷さを失っている。医療グループの調査によれば、長期間屋外にいる死人の筋繊維が固まっていて、動きが悪いのだという。
用心すれば、死人を避けることはできるようになった。
だが、その代償として、悪意ある生存者の行動が活発化している。
限られた物資しかないこの世界で、生存を続けることは難しい。
ケープの誰もが、それを実感している。
次の10年、何があるのか誰にもわからない。
※ここで、連載をいったん終わります。読んでいただいて感謝します。
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