トゥートゥーツーツー

覇道たすく

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トゥートゥーツーツー!8、ちょ待てよ。

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 「ちょ待てよ!」
 まっ白なモノの中に声が響いた。

 私の声だ。まっ先に私が、白く形を失っていた世界から存在を取り戻す。
 いやいやいやいや。私は死んでただろう。じゃないとしゃべる菩薩とかセミとかタマゴとかが存在していたこのあの世のことを私はどう受け止めればいいのだ。あの世という別世界だと思っていたから許容できていたのだ。私は死んではいない?ならばしゃべる菩薩とかセミとかタマゴとかは現実だと?あの世と言ってくれないと許容できない。
 そうかならば夢か。夢オチだ。古(いにしえ)の名著、不思議の国のなんちゃらの結末よろしくな展開がこの先に待っているのだろう。
 ・・・問い詰めてやる。
 今私はノウネムの元へ向かっているはずだ。このあの世が現実なのだとしたら、一つ一つの異質な者たちの事を聞きまくってやる。

 ・・・いや待て。まだ死んでいないだけで死につつある夢の可能性はまだあるか。そうすると、話は通るか。思えばまだここがあの世であるか現実であるかは明言されていない。私が死んでいないというサプライズな情報に対して、私は冷静さを失っているようだ。落ち着かなければ。なにせこれからノウネムに会うのだ。そこではまた新たな真実を明らかにできる可能性が高い。そんなやり取りを前に混乱などしていたら真実や答えを取りこぼす。
 ・・・しかし、私が考えていたノウネムへのふいな問へ対しての返答としては、してやられたと言わざるを得ない。ここでその情報を言ってくるか。・・・やられた。
まだノウネムに会った時にかける言葉がまとまっていない。こういった私の状態への誘導を計算しているのだとしたら、ノウネムはなかなかな策略家だ。下手な質問は全てかわされてしまうだろう。
 冷静に。冷静に言葉を考えなければ。
 ノウネムの存在とは何か?この私の旅の意味は?おおまかにこの2つの疑問の解消が目的だ。どちらかの疑問の答えが明らかになれば、もう片方の疑問も同時に明らかになりそうではある。
 とりあえず、会おう。ノウネム。
 あなたにはずいぶんお世話になっている気がする。・・・まだ私にはこの旅がどういう事なのか、わかってはいないのだけれど。

 私は自分の形をはっきりと取り戻し、世界を見回した。

 落ちてる途中の人がいる。

 いや、本当に何を言っているのかわからないだろうけど、色々な変わった状況を経験してきた私もこの状況を受け入れるのに必死で、混乱している。一生懸命、一つ一つ世界を認識していこう。

 まず、落ちてる途中の人がいる。

 私は窓の外を見ていた。落ちてる途中の人はその窓の外。まさに逆さまに落下中。しかし私と目が合う位置でピタッとその身体は宙に静止していた。若い女の子だ。学生服を着ている。
 私のいるフロアを見渡すと机が並んでいる。ここは学校。学校の上の階から、この女の子は落下しているのか。自殺?事故?それはわからないが窓の向こうの風景を見るに、このままこの若い女の子が落ちて行けばただではすまない高さである。

 しかし、この若い女の子がどうこうなることはない。彼女は宙に静止しており、落ちはしないが落ちていないわけではない。
 ここは地獄か?不気味すぎる。
 ・・・いや、ちょ待てよ。私は私の意志を思い出し、若い女の子に声をかけていた。
 「・・・ノウネム?」
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