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トゥートゥーツーツー!6、コンタクト。
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形を失っていた私が世界を取り戻していくのを感じる。
また。
あのお婆さんとはもっと話してみたかった。あのお婆さんは私よりも長くこのあの世を巡っていたに違いない。私よりも多くのものを見たあのお婆さんは、きっと何かの答えにたどり着いたんだ。それは、私も知るべき答えなのだろう。ぼんやりとした思考の中で、そう思った。
せっかくだ。この目覚めるまでの時間に思考を整理しよう。こういった夢と覚醒の間の時間の概念は、いくらでも曲げられる。1分が数日にもなり得るものだ。
ノウネム。突然私の頭からきこえてきた声の主。ノウネムの声がきこえるのは私だけではない。そしてノウネムは複数人いる可能性がある。存在としては水先案内人のようなものか。よくあの世へ死者を連れて行く案内人としては死神なんかが物語では有名だ。ノウネムは死神?それとも逆に天使?目的はなんだ?
そうだ目的!そこが問題ではないだろうか。
初めて声がきこえた時、ノウネムは私の自殺は止めないと言っていた。命を救う存在ではない。その後の、いくかいかないかの問いかけ・・・。ノウネムは私のいくという答えを喜んでいるように思えた。ノウネムは私をこのあの世へ巡らせたかった?
・・・そうなのかもしれない。こんど聞いてみよう。それが一番早い。答えはかえってこなくとも、何かしらの反応はありそうだ。
お婆さん。あのお婆さんは「もういい」とお婆さんのノウネムに伝えた事でこのあの世を巡るのをやめられたように思う。そうであれば、私ももう巡らなくていいと私のノウネムに伝えれば、成仏のような次の段階に今の私は行けるのだろう。次に行くか行かないかは私にCHOICEの権限があるのだという事だ。これは明らかになったルールでは大きなものだ。
私はまだこのあの世を巡る・・・?
ノウネムに聞きたいことができた事だし、私はあのお婆さんのたどり着いた答えを知りたい。この異世界を巡る旅は何を意味しているのか。それを感じたい。
私の目的ははっきりとした。
そして私は自分の形もはっきりと取り戻し、世界を見回した。
生まれそうだ。
何を急に言い出したのかわからないだろうけど、私もこの状況を言い表すのにはこの一言につきると思って発言をしている。また一つ一つ、世界を認識していこう。
とりあえず、生まれそうだ。
私の身長ぐらいの大きさのタマゴがひび割れ始めており、ゴトゴトと左右に揺れていた。そのタマゴが鎮座しているのは無数の木の枝を集めた鳥(?)の巣だ。巣は地面に相撲の土俵ほどの大きさに拡がっている。タマゴの親の姿は見えない。その事に心からホッとしている。乾いた土の大地の中で、その巨大で白いタマゴはより大きく見えているようだった。その存在感はとてつもない。
(そこに誰かいるの?)
あたりに声が響いた。私は周囲を見回したが誰もおらず、無機質な広い大地がひろがっているだけだった。
(ボクだよ。目の前にいる。)
・・・。この場で何かいるとしたら、タマゴの他はいない。このタマゴは生まれる前に私にコンタクトをとってきているのか。このあの世の世界で。死後の世界で生まれようとしている矛盾のかたまりの存在。そのタマゴが・・・。
(ねぇ。聞こえてる?)
「・・・ええ。聞こえてるわ。あなたは何なの?」
私はまだ生まれていない最も年下の存在の問いに対して答え、問い返した。
(わからない。ボクはまだ生まれていないから。自分が何だか自分でもわかっていないんだ。ねえ、教えてくれる?ボクがこれから生まれていく世界は良いところかな?)
困った。赤ん坊ですらない、生まれる前の命に対して私はその問いの答えである知識を持ち合わせてはいない。このあの世の世界の事は、私も知らぬことばかりだ。しかし・・・。
「その問いの答えはあなたの中にある。あなたが良いところだと思うのならばそうだし、そうでないと思うのならば良くないのかもね。」
私は、最近納得したこのあの世の文言をそのまま流用させてもらった。
「この(あの)世は、きもちわるくはないんじゃないかな。私はそう思っているよ。」
とりあえず今、私の思っている事を答えに付け加えた。
(そう・・・。ならば・・・。)
このタマゴは生(い)くか生(い)かないかのCHOICEをしているのか。・・・きっと、このタマゴは生(い)くのだろう。すでに逝ってしまった私の言葉に後押しされて・・・。
『ザザッ!・・・トゥートゥーツーツー!トゥートゥーツーツー!るり子さーん!トゥートゥーツーツー・・・!』
ノウネム・・・!待っていた。さて、聞いていこうか。
「あら、ノウネム。ちょっと聞きたいことがあるのだけれど、よくって?」
『トゥートゥーツーツー!わたっしに聞きたいこと?なんでしょなんでしょ。どういったこと?トゥートゥートゥー!』
先ほどから頭のほんの片隅で、私の聞きたいことをまとめるとどう言えばよいのかをずっと考えていた。その質問は、決めてあった。
「ノウネム、あなたは私をどうしたいの?」
『ザザザッ!・・・。』
また。
あのお婆さんとはもっと話してみたかった。あのお婆さんは私よりも長くこのあの世を巡っていたに違いない。私よりも多くのものを見たあのお婆さんは、きっと何かの答えにたどり着いたんだ。それは、私も知るべき答えなのだろう。ぼんやりとした思考の中で、そう思った。
せっかくだ。この目覚めるまでの時間に思考を整理しよう。こういった夢と覚醒の間の時間の概念は、いくらでも曲げられる。1分が数日にもなり得るものだ。
ノウネム。突然私の頭からきこえてきた声の主。ノウネムの声がきこえるのは私だけではない。そしてノウネムは複数人いる可能性がある。存在としては水先案内人のようなものか。よくあの世へ死者を連れて行く案内人としては死神なんかが物語では有名だ。ノウネムは死神?それとも逆に天使?目的はなんだ?
そうだ目的!そこが問題ではないだろうか。
初めて声がきこえた時、ノウネムは私の自殺は止めないと言っていた。命を救う存在ではない。その後の、いくかいかないかの問いかけ・・・。ノウネムは私のいくという答えを喜んでいるように思えた。ノウネムは私をこのあの世へ巡らせたかった?
・・・そうなのかもしれない。こんど聞いてみよう。それが一番早い。答えはかえってこなくとも、何かしらの反応はありそうだ。
お婆さん。あのお婆さんは「もういい」とお婆さんのノウネムに伝えた事でこのあの世を巡るのをやめられたように思う。そうであれば、私ももう巡らなくていいと私のノウネムに伝えれば、成仏のような次の段階に今の私は行けるのだろう。次に行くか行かないかは私にCHOICEの権限があるのだという事だ。これは明らかになったルールでは大きなものだ。
私はまだこのあの世を巡る・・・?
ノウネムに聞きたいことができた事だし、私はあのお婆さんのたどり着いた答えを知りたい。この異世界を巡る旅は何を意味しているのか。それを感じたい。
私の目的ははっきりとした。
そして私は自分の形もはっきりと取り戻し、世界を見回した。
生まれそうだ。
何を急に言い出したのかわからないだろうけど、私もこの状況を言い表すのにはこの一言につきると思って発言をしている。また一つ一つ、世界を認識していこう。
とりあえず、生まれそうだ。
私の身長ぐらいの大きさのタマゴがひび割れ始めており、ゴトゴトと左右に揺れていた。そのタマゴが鎮座しているのは無数の木の枝を集めた鳥(?)の巣だ。巣は地面に相撲の土俵ほどの大きさに拡がっている。タマゴの親の姿は見えない。その事に心からホッとしている。乾いた土の大地の中で、その巨大で白いタマゴはより大きく見えているようだった。その存在感はとてつもない。
(そこに誰かいるの?)
あたりに声が響いた。私は周囲を見回したが誰もおらず、無機質な広い大地がひろがっているだけだった。
(ボクだよ。目の前にいる。)
・・・。この場で何かいるとしたら、タマゴの他はいない。このタマゴは生まれる前に私にコンタクトをとってきているのか。このあの世の世界で。死後の世界で生まれようとしている矛盾のかたまりの存在。そのタマゴが・・・。
(ねぇ。聞こえてる?)
「・・・ええ。聞こえてるわ。あなたは何なの?」
私はまだ生まれていない最も年下の存在の問いに対して答え、問い返した。
(わからない。ボクはまだ生まれていないから。自分が何だか自分でもわかっていないんだ。ねえ、教えてくれる?ボクがこれから生まれていく世界は良いところかな?)
困った。赤ん坊ですらない、生まれる前の命に対して私はその問いの答えである知識を持ち合わせてはいない。このあの世の世界の事は、私も知らぬことばかりだ。しかし・・・。
「その問いの答えはあなたの中にある。あなたが良いところだと思うのならばそうだし、そうでないと思うのならば良くないのかもね。」
私は、最近納得したこのあの世の文言をそのまま流用させてもらった。
「この(あの)世は、きもちわるくはないんじゃないかな。私はそう思っているよ。」
とりあえず今、私の思っている事を答えに付け加えた。
(そう・・・。ならば・・・。)
このタマゴは生(い)くか生(い)かないかのCHOICEをしているのか。・・・きっと、このタマゴは生(い)くのだろう。すでに逝ってしまった私の言葉に後押しされて・・・。
『ザザッ!・・・トゥートゥーツーツー!トゥートゥーツーツー!るり子さーん!トゥートゥーツーツー・・・!』
ノウネム・・・!待っていた。さて、聞いていこうか。
「あら、ノウネム。ちょっと聞きたいことがあるのだけれど、よくって?」
『トゥートゥーツーツー!わたっしに聞きたいこと?なんでしょなんでしょ。どういったこと?トゥートゥートゥー!』
先ほどから頭のほんの片隅で、私の聞きたいことをまとめるとどう言えばよいのかをずっと考えていた。その質問は、決めてあった。
「ノウネム、あなたは私をどうしたいの?」
『ザザザッ!・・・。』
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