401 / 425
【 未来と希望 】
浮遊城vs浮遊城 前編
しおりを挟む
「こうも暗いと、俺の目には見えないな。相手は今どのくらいの位置にいるんだ?」
「7.3キロかな。魔王から見て右に動いているよ」
「やはり足を止めてのノーガードって線はないか。ルリア、プログワードにはそのまま継続するように伝えてくれ」
「かしこまりました、魔王様」
何日も前にもこもこと地下を掘り進んでもらっていたが、やっぱり甘かった。よほど運が良くない限り、地中からの奇襲は無理だろう。
「ここから撃って当たるかな?」
「外すことは逆に難しいでーすね。それは互いに言えると思いますーよ」
「じゃあ、先ずはあいさつ代わりだ。ヘジャムとアゼパーネンスと……あと右にいたのは誰だったか」
「考えてもらえればエヴィアが指示するよ」
「了解した。では、発射」
暗闇を裂いて、4本の光が浮遊城ジャルプ・ケラッツァを襲う。
眩い光に照射された部分は赤くなり、白い煙がもうもうと沸き起こる。
「冷却! 冷却!」
「急げ! 金属が燃えたら終わるぞ!」
城の内部はすぐさま蜂の巣をつついたような大騒ぎとなるが、城主のリッツェルネールは落ち着いたものだ。
「回転行動に移れ」
「回頭開始。回せー」
冷静な指示と同時に、浮遊城の動きに右回転が加わる。
距離があるとはいえ鈍足の巨体同士。当たる事は前提だ。そしてまた、浄化の光の撃ち合いへの対応も既に確立している。
城全体を回転させ、照射のポイントを絞らせないのがその方法だった。
「先に撃ってきましたね。どうします?」
「3番用意。攻撃圏に入ると同時に6秒照射。続けて7、8を4秒」
「浄化の光攻撃用意! ピンポイントで狙い打て!」
コマのように回転しながら背面を見せると同時に、後部に設置された60メートル級1門、40メートル級から輝きが発せられる。
それは光の筋となり、魔王の乗る浮遊城を襲う。
視界が真っ白く照らされ、一瞬昼になったかのようだ。
「エンブスは大丈夫なのか?」
「一番暑さに強い魔人を選んだから大丈夫だよ」
そう、こちらの浮遊城は魔人だ。魔人エンブス。正月に世界各地から魔人が集まった時から、この時の為に成長してもらった姿であった。
最高の舞台を演出するために試行錯誤した結果、辿り着いたのがこれだ。
見た目だけでも十分なインパクトがあるが、今は浄化の光を撃てる魔人も乗り込んでいる。
もうこれ以上ないほど、人類に衝撃を与えたに違いない。
「確かにすごいね。これで世界を滅ぼすのかい?」
天井から聞こえてくる聞き覚えのある声。姿は見えないが、逆にそれ故に分かる。
「アンドルスフか。違うってことくらい、言わなくてもわかるだろ。それよりも、マリッカの所にいなくてもいいのか?」
「浮遊城は警備がきついんだよー。でも大丈夫だよ、マリッカは強いからね」
幾ら強かろうが人は人だ。死ぬ時は死ぬ。こいつはちゃんと理解しているのだろうか?
まあ、今はあまり与太話をしている暇はない。
「エヴィア、エンブスはどの位持つ?」
「この距離なら幾ら撃たれても平気かな。気にしなくてもいいよ」
魔人エンブスは対火の皮の下に泡状の空間構造を持つ。多少の熱なら放出されるので問題無いらしい。
だがそれも、近づくほどに厳しくなるだろう。
「なら暫くはこのままで問題なしか……それでアンドルスフは何しに来たんだ?」
天井に意識を向けるが、そこにはもうアンドルスフはいなかった。
何か話があって来たというより、俺の真意を直接会って確認しに来たってところか。
さて、お気に召したのなら良いのだが……。
「魔王よ、浮遊城から飛甲騎兵が出撃しているようでーす」
「意外だな……浄化の光相手に飛行戦力は役に立たないと思っていたが……まあ、実際に見てみない事には分からないか」
「飛甲騎兵隊、出撃開始しました」
上から見たら四角形をしている浮遊城の四辺には、それぞれ飛甲騎兵の発着場が設けられている。
回転して浄化の光を撃ち合いながら、死角になった面から飛甲騎兵を発進させていたのである。
「前には出さないように。いつ浄化の光が飛んで来るのか分からないからね。それよりも、8番はダメそうかな?」
「元々壊れていましたからね。まあ2斉射できただけでも良しとしましょう」
「4番は?」
「使えますが、それより5番が怪しいですね」
「それは困ったものだ……」
およそ300メートル四辺のジャルプ・ケラッツァには、60メートル級4基、40メートル級4基、合計8基の大型浄化の光が搭載されている。
これは現存する浮遊城の中でも最大級の戦力だ。
他には10~20メートル級もあるが、これは対空防衛用となる。
60メートル級は、城を中心に正面に1番。以後、右回りに2番、3番、4番と呼称される。
40メートル級は四辺の角に設置され、右手前が5番、そこから右回りに6番、7番、8番だ。5番と8番が使用出来なくなると、正面に攻撃できる浄化の光は1番だけとなってしまう。
回転して攻撃している限り死角はさほど気にしなくても良いが、知られたら付け入るスキを与える事になるだろう。
「7.3キロかな。魔王から見て右に動いているよ」
「やはり足を止めてのノーガードって線はないか。ルリア、プログワードにはそのまま継続するように伝えてくれ」
「かしこまりました、魔王様」
何日も前にもこもこと地下を掘り進んでもらっていたが、やっぱり甘かった。よほど運が良くない限り、地中からの奇襲は無理だろう。
「ここから撃って当たるかな?」
「外すことは逆に難しいでーすね。それは互いに言えると思いますーよ」
「じゃあ、先ずはあいさつ代わりだ。ヘジャムとアゼパーネンスと……あと右にいたのは誰だったか」
「考えてもらえればエヴィアが指示するよ」
「了解した。では、発射」
暗闇を裂いて、4本の光が浮遊城ジャルプ・ケラッツァを襲う。
眩い光に照射された部分は赤くなり、白い煙がもうもうと沸き起こる。
「冷却! 冷却!」
「急げ! 金属が燃えたら終わるぞ!」
城の内部はすぐさま蜂の巣をつついたような大騒ぎとなるが、城主のリッツェルネールは落ち着いたものだ。
「回転行動に移れ」
「回頭開始。回せー」
冷静な指示と同時に、浮遊城の動きに右回転が加わる。
距離があるとはいえ鈍足の巨体同士。当たる事は前提だ。そしてまた、浄化の光の撃ち合いへの対応も既に確立している。
城全体を回転させ、照射のポイントを絞らせないのがその方法だった。
「先に撃ってきましたね。どうします?」
「3番用意。攻撃圏に入ると同時に6秒照射。続けて7、8を4秒」
「浄化の光攻撃用意! ピンポイントで狙い打て!」
コマのように回転しながら背面を見せると同時に、後部に設置された60メートル級1門、40メートル級から輝きが発せられる。
それは光の筋となり、魔王の乗る浮遊城を襲う。
視界が真っ白く照らされ、一瞬昼になったかのようだ。
「エンブスは大丈夫なのか?」
「一番暑さに強い魔人を選んだから大丈夫だよ」
そう、こちらの浮遊城は魔人だ。魔人エンブス。正月に世界各地から魔人が集まった時から、この時の為に成長してもらった姿であった。
最高の舞台を演出するために試行錯誤した結果、辿り着いたのがこれだ。
見た目だけでも十分なインパクトがあるが、今は浄化の光を撃てる魔人も乗り込んでいる。
もうこれ以上ないほど、人類に衝撃を与えたに違いない。
「確かにすごいね。これで世界を滅ぼすのかい?」
天井から聞こえてくる聞き覚えのある声。姿は見えないが、逆にそれ故に分かる。
「アンドルスフか。違うってことくらい、言わなくてもわかるだろ。それよりも、マリッカの所にいなくてもいいのか?」
「浮遊城は警備がきついんだよー。でも大丈夫だよ、マリッカは強いからね」
幾ら強かろうが人は人だ。死ぬ時は死ぬ。こいつはちゃんと理解しているのだろうか?
まあ、今はあまり与太話をしている暇はない。
「エヴィア、エンブスはどの位持つ?」
「この距離なら幾ら撃たれても平気かな。気にしなくてもいいよ」
魔人エンブスは対火の皮の下に泡状の空間構造を持つ。多少の熱なら放出されるので問題無いらしい。
だがそれも、近づくほどに厳しくなるだろう。
「なら暫くはこのままで問題なしか……それでアンドルスフは何しに来たんだ?」
天井に意識を向けるが、そこにはもうアンドルスフはいなかった。
何か話があって来たというより、俺の真意を直接会って確認しに来たってところか。
さて、お気に召したのなら良いのだが……。
「魔王よ、浮遊城から飛甲騎兵が出撃しているようでーす」
「意外だな……浄化の光相手に飛行戦力は役に立たないと思っていたが……まあ、実際に見てみない事には分からないか」
「飛甲騎兵隊、出撃開始しました」
上から見たら四角形をしている浮遊城の四辺には、それぞれ飛甲騎兵の発着場が設けられている。
回転して浄化の光を撃ち合いながら、死角になった面から飛甲騎兵を発進させていたのである。
「前には出さないように。いつ浄化の光が飛んで来るのか分からないからね。それよりも、8番はダメそうかな?」
「元々壊れていましたからね。まあ2斉射できただけでも良しとしましょう」
「4番は?」
「使えますが、それより5番が怪しいですね」
「それは困ったものだ……」
およそ300メートル四辺のジャルプ・ケラッツァには、60メートル級4基、40メートル級4基、合計8基の大型浄化の光が搭載されている。
これは現存する浮遊城の中でも最大級の戦力だ。
他には10~20メートル級もあるが、これは対空防衛用となる。
60メートル級は、城を中心に正面に1番。以後、右回りに2番、3番、4番と呼称される。
40メートル級は四辺の角に設置され、右手前が5番、そこから右回りに6番、7番、8番だ。5番と8番が使用出来なくなると、正面に攻撃できる浄化の光は1番だけとなってしまう。
回転して攻撃している限り死角はさほど気にしなくても良いが、知られたら付け入るスキを与える事になるだろう。
0
お気に入りに追加
71
あなたにおすすめの小説
神々の間では異世界転移がブームらしいです。
はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》
楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。
理由は『最近流行ってるから』
数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。
優しくて単純な少女の異世界冒険譚。
第2部 《精霊の紋章》
ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。
それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。
第3部 《交錯する戦場》
各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。
人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。
第4部 《新たなる神話》
戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。
連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。
それは、この世界で最も新しい神話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる