この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 未来と希望 】

浮遊城vs浮遊城 前編

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「こうも暗いと、俺の目には見えないな。相手は今どのくらいの位置にいるんだ?」

「7.3キロかな。魔王から見て右に動いているよ」

「やはり足を止めてのノーガードって線はないか。ルリア、プログワードにはそのまま継続するように伝えてくれ」

「かしこまりました、魔王様」

 何日も前にもこもこと地下を掘り進んでもらっていたが、やっぱり甘かった。よほど運が良くない限り、地中からの奇襲は無理だろう。

「ここから撃って当たるかな?」

「外すことは逆に難しいでーすね。それは互いに言えると思いますーよ」

「じゃあ、先ずはあいさつ代わりだ。ヘジャムとアゼパーネンスと……あと右にいたのは誰だったか」

「考えてもらえればエヴィアが指示するよ」

「了解した。では、発射」

 暗闇を裂いて、4本の光が浮遊城ジャルプ・ケラッツァを襲う。
 眩い光に照射された部分は赤くなり、白い煙がもうもうと沸き起こる。




「冷却! 冷却!」
「急げ! 金属が燃えたら終わるぞ!」

 城の内部はすぐさま蜂の巣をつついたような大騒ぎとなるが、城主のリッツェルネールは落ち着いたものだ。

「回転行動に移れ」

「回頭開始。回せー」

 冷静な指示と同時に、浮遊城の動きに右回転が加わる。
 距離があるとはいえ鈍足の巨体同士。当たる事は前提だ。そしてまた、浄化の光レイの撃ち合いへの対応も既に確立している。
 城全体を回転させ、照射のポイントを絞らせないのがその方法だった。

「先に撃ってきましたね。どうします?」

「3番用意。攻撃圏に入ると同時に6秒照射。続けて7、8を4秒」

浄化の光レイ攻撃用意! ピンポイントで狙い打て!」

 コマのように回転しながら背面を見せると同時に、後部に設置された60メートル級1門、40メートル級から輝きが発せられる。
 それは光の筋となり、魔王の乗る浮遊城を襲う。




 視界が真っ白く照らされ、一瞬昼になったかのようだ。

「エンブスは大丈夫なのか?」

「一番暑さに強い魔人を選んだから大丈夫だよ」

 そう、こちらの浮遊城は魔人だ。魔人エンブス。正月に世界各地から魔人が集まった時から、この時の為に成長してもらった姿であった。
 最高の舞台を演出するために試行錯誤した結果、辿り着いたのがこれだ。
 見た目だけでも十分なインパクトがあるが、今は浄化の光レイを撃てる魔人も乗り込んでいる。
 もうこれ以上ないほど、人類に衝撃を与えたに違いない。

「確かにすごいね。これで世界を滅ぼすのかい?」

 天井から聞こえてくる聞き覚えのある声。姿は見えないが、逆にそれ故に分かる。

「アンドルスフか。違うってことくらい、言わなくてもわかるだろ。それよりも、マリッカの所にいなくてもいいのか?」

「浮遊城は警備セキュリティがきついんだよー。でも大丈夫だよ、マリッカは強いからね」

 幾ら強かろうが人は人だ。死ぬ時は死ぬ。こいつはちゃんと理解しているのだろうか?
 まあ、今はあまり与太話をしている暇はない。

「エヴィア、エンブスはどの位持つ?」

「この距離なら幾ら撃たれても平気かな。気にしなくてもいいよ」

 魔人エンブスは対火の皮の下に泡状の空間構造を持つ。多少の熱なら放出されるので問題無いらしい。
 だがそれも、近づくほどに厳しくなるだろう。

「なら暫くはこのままで問題なしか……それでアンドルスフは何しに来たんだ?」

 天井に意識を向けるが、そこにはもうアンドルスフはいなかった。
 何か話があって来たというより、俺の真意を直接会って確認しに来たってところか。
 さて、お気に召したのなら良いのだが……。

「魔王よ、浮遊城から飛甲騎兵が出撃しているようでーす」

「意外だな……浄化の光レイ相手に飛行戦力は役に立たないと思っていたが……まあ、実際に見てみない事には分からないか」




「飛甲騎兵隊、出撃開始しました」

 上から見たら四角形をしている浮遊城の四辺には、それぞれ飛甲騎兵の発着場が設けられている。
 回転して浄化の光レイを撃ち合いながら、死角になった面から飛甲騎兵を発進させていたのである。

「前には出さないように。いつ浄化の光レイが飛んで来るのか分からないからね。それよりも、8番はダメそうかな?」

「元々壊れていましたからね。まあ2斉射できただけでも良しとしましょう」

「4番は?」

「使えますが、それより5番が怪しいですね」

「それは困ったものだ……」

 およそ300メートル四辺のジャルプ・ケラッツァには、60メートル級4基、40メートル級4基、合計8基の大型浄化の光レイが搭載されている。
 これは現存する浮遊城の中でも最大級の戦力だ。
 他には10~20メートル級もあるが、これは対空防衛用となる。

 60メートル級は、城を中心に正面に1番。以後、右回りに2番、3番、4番と呼称される。
 40メートル級は四辺の角に設置され、右手前が5番、そこから右回りに6番、7番、8番だ。5番と8番が使用出来なくなると、正面に攻撃できる浄化の光レイは1番だけとなってしまう。
 回転して攻撃している限り死角はさほど気にしなくても良いが、知られたら付け入るスキを与える事になるだろう。
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