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【 滅び 】
浮遊城再始動
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そして再び中央飛甲騎兵発着場。
そこに、赤い塗装に金で縁取りされた黒の十字を入れた大型の飛甲騎兵が着陸する。
飛甲騎兵とはいえ、12人乗り。形状は飛行船に近い。飛甲母艦よりはずっと小さいが、それでもティランド連合王国としては最大の航空輸送力である。
「陛下、到着いたしました」
身長は177センチ。肩まで伸ばした赤いクセ毛に吊り上がった紺色の瞳。男女変わらぬ軍服や乳の無い体格のせいで、一見すると端正な顔立ちの男性のようにも見える女性が報告する。
参謀長であるミューゼ・ハイン・ノヴェルド・ティランドは、ムーオス自由帝国が襲撃された時からずっとカルタ―の補佐として中央に来ていた。
今回の件でも、既に作戦立案から準備まで完了済みだ。後はカルタ―が到着すれば作戦は開始される。
「よし、行くとするか」
歩き出したカルタ―の後ろを、ミューゼ参謀長と6人の護衛武官が続く。
「エンバリー! お前も来るんだ!」
「は、はいぃ……」
一人手を振っていたエンバリーであったが、慌てて飛甲騎兵に乗り込んだ。
カルタ―は怒っていた。しかし誰に? 何に? といわれると漠然としない。
だが何か、自分の知らない所で世界が動いている様な……そんな違和感を覚えていたのだった。
◇ ◇ ◇
「それで、貴様はどちらを本命と見ているのだ?」
浮遊城ジャルプ・ケラッツァの玉座には、リッツェルネールの他にケインブラ・フォースノーとミックマインセ・マインハーゼンの両名が控えていた。
ケインブラは情報全般、ミックマインセは浮遊城内戦力の統括。それぞれ普段は別な場所で作業する事も多いが、特定の場合は全員ここに集まっている。
その状況とは臨戦態勢。つまり、今すぐに戦端が開かれてもかしくはない状態である。
いた。
だが場所はアイオネアの門から僅か40キロメートル。ここに直接魔族が来ることは想定されていない。
「さて、どうだろうね……」
ケインブラの質問は、あまりにも漠然としている。いや、言いたい事は分かるが、その答えを持っていないというべきか。
魔王は動き始めたムーオス自由帝国にトドメを刺しに動くのか。
それとも、人類軍最大戦力のティランド連合王国の南下に呼応し魔族領を取り返しに来るのか。
或いは第三、第四の可能性。何もしない、もしくはここから更に状況の変わる一手を放ってくるかだ。
「どちらにせよ、今の僕らに選択権は無い。こちらから攻める手段を持たないのだからね。まあ、魔王の位置さえ分かれば或いはだが……」
マリッカはここを出立して以来、一度も戻ってこない。
彼女らしき人間が中央入りしたとは聞いていたが、それも何処まで真実かは不明だ。案外、もう魔族領で死んでいるかもしれない。
しかしまあ、いたとしても魔王はここですとは言うまい。それどころか、直接的に「魔王に会った」とすら言わないだろう。
「それでは城主殿、我等はここで待機ですかね」
そうミックマインセに言われ、少し考える。
この世の全ては分からない。故に、どんな決断にも博打の要素は残る。
大切なのは、失敗した時にリカバリーできる距離感だ。そこさえ間違えなければ、どれほど失敗したとしても恐れる事は無い。
しかし一歩間違えたら、その一回で身の破滅だ……。
「浮遊城はマースノーの草原まで移動する。各員に指示を」
「了解いたしました、城主殿」
ミックマインセが応え、ケインブラは無言で通信士らの席に向かう。
二人とも、そこへ動かした意味は分からないが聞きはしない。
こうして、浮遊城は静かに動き出した。
そこに、赤い塗装に金で縁取りされた黒の十字を入れた大型の飛甲騎兵が着陸する。
飛甲騎兵とはいえ、12人乗り。形状は飛行船に近い。飛甲母艦よりはずっと小さいが、それでもティランド連合王国としては最大の航空輸送力である。
「陛下、到着いたしました」
身長は177センチ。肩まで伸ばした赤いクセ毛に吊り上がった紺色の瞳。男女変わらぬ軍服や乳の無い体格のせいで、一見すると端正な顔立ちの男性のようにも見える女性が報告する。
参謀長であるミューゼ・ハイン・ノヴェルド・ティランドは、ムーオス自由帝国が襲撃された時からずっとカルタ―の補佐として中央に来ていた。
今回の件でも、既に作戦立案から準備まで完了済みだ。後はカルタ―が到着すれば作戦は開始される。
「よし、行くとするか」
歩き出したカルタ―の後ろを、ミューゼ参謀長と6人の護衛武官が続く。
「エンバリー! お前も来るんだ!」
「は、はいぃ……」
一人手を振っていたエンバリーであったが、慌てて飛甲騎兵に乗り込んだ。
カルタ―は怒っていた。しかし誰に? 何に? といわれると漠然としない。
だが何か、自分の知らない所で世界が動いている様な……そんな違和感を覚えていたのだった。
◇ ◇ ◇
「それで、貴様はどちらを本命と見ているのだ?」
浮遊城ジャルプ・ケラッツァの玉座には、リッツェルネールの他にケインブラ・フォースノーとミックマインセ・マインハーゼンの両名が控えていた。
ケインブラは情報全般、ミックマインセは浮遊城内戦力の統括。それぞれ普段は別な場所で作業する事も多いが、特定の場合は全員ここに集まっている。
その状況とは臨戦態勢。つまり、今すぐに戦端が開かれてもかしくはない状態である。
いた。
だが場所はアイオネアの門から僅か40キロメートル。ここに直接魔族が来ることは想定されていない。
「さて、どうだろうね……」
ケインブラの質問は、あまりにも漠然としている。いや、言いたい事は分かるが、その答えを持っていないというべきか。
魔王は動き始めたムーオス自由帝国にトドメを刺しに動くのか。
それとも、人類軍最大戦力のティランド連合王国の南下に呼応し魔族領を取り返しに来るのか。
或いは第三、第四の可能性。何もしない、もしくはここから更に状況の変わる一手を放ってくるかだ。
「どちらにせよ、今の僕らに選択権は無い。こちらから攻める手段を持たないのだからね。まあ、魔王の位置さえ分かれば或いはだが……」
マリッカはここを出立して以来、一度も戻ってこない。
彼女らしき人間が中央入りしたとは聞いていたが、それも何処まで真実かは不明だ。案外、もう魔族領で死んでいるかもしれない。
しかしまあ、いたとしても魔王はここですとは言うまい。それどころか、直接的に「魔王に会った」とすら言わないだろう。
「それでは城主殿、我等はここで待機ですかね」
そうミックマインセに言われ、少し考える。
この世の全ては分からない。故に、どんな決断にも博打の要素は残る。
大切なのは、失敗した時にリカバリーできる距離感だ。そこさえ間違えなければ、どれほど失敗したとしても恐れる事は無い。
しかし一歩間違えたら、その一回で身の破滅だ……。
「浮遊城はマースノーの草原まで移動する。各員に指示を」
「了解いたしました、城主殿」
ミックマインセが応え、ケインブラは無言で通信士らの席に向かう。
二人とも、そこへ動かした意味は分からないが聞きはしない。
こうして、浮遊城は静かに動き出した。
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