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【 滅び 】
エスチネルの戦い その4
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「魔王よ、今から戻っても良いのデースよー。この城は、私達で墜としておくのデース」
ふと、横からテラーネがそんな事を言ってきた。
魔人スースィリアと魔人ゲルニッヒが一つの魔人となり、その後にプログワードとテラーネに分裂した。改めてこうしてみると、感慨深い。
背はマリッカと同じくらい。大体160センチそこそこだろう。
肩甲骨辺りまで伸ばした黒い艶やかな髪は、今はポニーテイルにしている。少し童顔だが和風美人少女という感じで、弓とかが似合いそうな感じだ。
服装がビキニに軍用ベルトというマニアックな衣装じゃなければだが。
いや、奇妙なイントネーションの言葉遣いや、良く言えば自信に満ちた、悪く言えば凶悪な笑顔もちょっと引っかかる。
俺の異性に対する好みを集めた形らしいが……絶対何処かで勘違いしたな。
まあそれはともかく……。
「いや、テラーネとエヴィアだけじゃ無理だな」
テラーネは浮遊城に関して知識は無いようだ。ちらりとエヴィアの方を見ると、こちらは分かっていると言いそうな目を向けてくる。
まあ、これは実際にやってみた方が早いだろう。
奥まで行くと、そこには大きな金属製のドア。ドアというより、隔壁と行った方が良いだろう。開閉するための大きな丸いハンドルが付いている。
当然ながら、それはロックされていてピクリとも動かない。
「さてと……」
テルティルトは、既にチェーンソーの形になっていた。刀ではなく、本当にそのままの形である。話が早い。
それを扉のロック部分に当てると、そのまま火花を散らしながら鍵を切断する。
「なるほどデスネー。そういう事ですかー」
「そういう事。こういった部分が沢山あるからな。俺が行かないとダメなんだよ」
浮遊城は、さすがは人類の技術の結晶と言って良いだろう。
その一つが、この気密性だ。エヴィアの目に見えない程に細い触手も、テラーネの毒も隔壁ごとに分断され届かない。
当然、進むには何らかの対策が必要になるわけだ。
ロックを切り離して扉を開けると、同時に数本の矢が飛んでくる。まあ、当然だろう。
更に後ろからは巨大な斧を持って兵士が迫り来る。
しかし、俺が武器を構えるまでもない。矢は軽々と切断され木の葉のように落ち、兵士はテラーネに右腕を握り潰されると同時に、耳をつんざくような悲鳴と共に絶命した。
転がった兵士の口からは赤黒い霧が漏れ、更に後ろにいた兵士もバタバタと倒れていく。
一瞬で撒き散らされた、テラーネの毒の効果だ。
「なあ、これって俺は大丈夫なのか?」
「テルティルトが止めていーますネー。ダイジョーブですよー」
「なら問題は無いか。それじゃ、俺達は目的地に急ごう」
◇ ◇ ◇
物資搬入口では、プログワードが存分に暴れまわっていた。
というより、ここから先へなかなか進めなかったからだというべきか。
開閉口はぺらぺらだったが、中はこの巨大な城を支える基幹部分だ。壁は厚く、またその分通路は狭い。
にっちもさっちもいかないため、手当たり次第に壁を裂き、扉を破壊し、どこかに進める道はないかと思案していた。
そんなプログワードの頭上、天井部分が開く。
「突入!」
「行け、行け、行け! 確実に仕留めよ!」
そこから次々と現れたのは、ムーオス自由帝国の重甲鎧。
城の警護を担当する精鋭部隊だ。それが降って来たのだった。
グレーを基調に円を書く様な白いライン。
北方では高級品だが、5メートルを超す半浮遊型の大型だ。
手足は根元が太く先端に行くほど細くなる特殊な形状をしている。これは、殆どが2メートルを超すムーオス人の為に開発された専用機ならではの形状だった。
降下したのは全部で30人。形状は全て同じで、武器も全員同じハンドアックスを両手に装備。
規格統一がなされているのも、重工業が発展したこの国ならではだろう。
それが一斉に、目の前の巨大魔族に襲い掛かった――が、
鎌の様な腕が振り下ろされると、運悪く目の前に降り立った一体が真っ二つにされる。
まるで泥人形を切り裂いたかのように、一切の抵抗すらできなかった。
そして周囲に降りた兵士もまた、ブログワードの長大な体に巻きつかれ、押しつぶされ、床は一瞬で真っ赤な血の色に染まる。
時間としては、10秒程度だっただろうか。天井で更なる降下に備えていた兵士達から急速に血の気が引く。
「こ、こちらメインハッチ。大型魔族の戦力は、こちらの想定を大きく超えている。先行隊は壊滅だ――そう、一瞬でだ。もうやられちまったんだよ! 新たな指示を――」
「おい! 避けろ!」
通信をしていた兵士の横に、いつの間にかセミの様なブログワードの体が並んでいた。
一つ下の床からここまで、高さは20メートルを超える。だがこの程度の高さ、プログワードの巨体からすれば無いにも等しいのだ。
真っ赤に染まった体。表情を感じさせない大きな複眼。ずんぐりむっくりした体は、小さければもっと愛嬌を感じたかもしれない。
しかし今目の前にあるものは、殺戮を撒き散らす恐怖の対象でしかない。
上の階で準備をしていた重甲鎧を纏った兵士は55人。それが一斉に、悲鳴のような叫び声をあげて突撃していった。
ふと、横からテラーネがそんな事を言ってきた。
魔人スースィリアと魔人ゲルニッヒが一つの魔人となり、その後にプログワードとテラーネに分裂した。改めてこうしてみると、感慨深い。
背はマリッカと同じくらい。大体160センチそこそこだろう。
肩甲骨辺りまで伸ばした黒い艶やかな髪は、今はポニーテイルにしている。少し童顔だが和風美人少女という感じで、弓とかが似合いそうな感じだ。
服装がビキニに軍用ベルトというマニアックな衣装じゃなければだが。
いや、奇妙なイントネーションの言葉遣いや、良く言えば自信に満ちた、悪く言えば凶悪な笑顔もちょっと引っかかる。
俺の異性に対する好みを集めた形らしいが……絶対何処かで勘違いしたな。
まあそれはともかく……。
「いや、テラーネとエヴィアだけじゃ無理だな」
テラーネは浮遊城に関して知識は無いようだ。ちらりとエヴィアの方を見ると、こちらは分かっていると言いそうな目を向けてくる。
まあ、これは実際にやってみた方が早いだろう。
奥まで行くと、そこには大きな金属製のドア。ドアというより、隔壁と行った方が良いだろう。開閉するための大きな丸いハンドルが付いている。
当然ながら、それはロックされていてピクリとも動かない。
「さてと……」
テルティルトは、既にチェーンソーの形になっていた。刀ではなく、本当にそのままの形である。話が早い。
それを扉のロック部分に当てると、そのまま火花を散らしながら鍵を切断する。
「なるほどデスネー。そういう事ですかー」
「そういう事。こういった部分が沢山あるからな。俺が行かないとダメなんだよ」
浮遊城は、さすがは人類の技術の結晶と言って良いだろう。
その一つが、この気密性だ。エヴィアの目に見えない程に細い触手も、テラーネの毒も隔壁ごとに分断され届かない。
当然、進むには何らかの対策が必要になるわけだ。
ロックを切り離して扉を開けると、同時に数本の矢が飛んでくる。まあ、当然だろう。
更に後ろからは巨大な斧を持って兵士が迫り来る。
しかし、俺が武器を構えるまでもない。矢は軽々と切断され木の葉のように落ち、兵士はテラーネに右腕を握り潰されると同時に、耳をつんざくような悲鳴と共に絶命した。
転がった兵士の口からは赤黒い霧が漏れ、更に後ろにいた兵士もバタバタと倒れていく。
一瞬で撒き散らされた、テラーネの毒の効果だ。
「なあ、これって俺は大丈夫なのか?」
「テルティルトが止めていーますネー。ダイジョーブですよー」
「なら問題は無いか。それじゃ、俺達は目的地に急ごう」
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というより、ここから先へなかなか進めなかったからだというべきか。
開閉口はぺらぺらだったが、中はこの巨大な城を支える基幹部分だ。壁は厚く、またその分通路は狭い。
にっちもさっちもいかないため、手当たり次第に壁を裂き、扉を破壊し、どこかに進める道はないかと思案していた。
そんなプログワードの頭上、天井部分が開く。
「突入!」
「行け、行け、行け! 確実に仕留めよ!」
そこから次々と現れたのは、ムーオス自由帝国の重甲鎧。
城の警護を担当する精鋭部隊だ。それが降って来たのだった。
グレーを基調に円を書く様な白いライン。
北方では高級品だが、5メートルを超す半浮遊型の大型だ。
手足は根元が太く先端に行くほど細くなる特殊な形状をしている。これは、殆どが2メートルを超すムーオス人の為に開発された専用機ならではの形状だった。
降下したのは全部で30人。形状は全て同じで、武器も全員同じハンドアックスを両手に装備。
規格統一がなされているのも、重工業が発展したこの国ならではだろう。
それが一斉に、目の前の巨大魔族に襲い掛かった――が、
鎌の様な腕が振り下ろされると、運悪く目の前に降り立った一体が真っ二つにされる。
まるで泥人形を切り裂いたかのように、一切の抵抗すらできなかった。
そして周囲に降りた兵士もまた、ブログワードの長大な体に巻きつかれ、押しつぶされ、床は一瞬で真っ赤な血の色に染まる。
時間としては、10秒程度だっただろうか。天井で更なる降下に備えていた兵士達から急速に血の気が引く。
「こ、こちらメインハッチ。大型魔族の戦力は、こちらの想定を大きく超えている。先行隊は壊滅だ――そう、一瞬でだ。もうやられちまったんだよ! 新たな指示を――」
「おい! 避けろ!」
通信をしていた兵士の横に、いつの間にかセミの様なブログワードの体が並んでいた。
一つ下の床からここまで、高さは20メートルを超える。だがこの程度の高さ、プログワードの巨体からすれば無いにも等しいのだ。
真っ赤に染まった体。表情を感じさせない大きな複眼。ずんぐりむっくりした体は、小さければもっと愛嬌を感じたかもしれない。
しかし今目の前にあるものは、殺戮を撒き散らす恐怖の対象でしかない。
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