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【 滅び 】
エスチネルの戦い その1
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暗闇の中、相和義輝はユニカの淹れたお茶を飲んでいた。
場所はかつて人間世界に行った時と同じ、ファランティアの中だ。
服はテルティルトが変形した外骨格。また戦闘前なので兜は無し。武器もまた、状況次第なので形成していない。
死霊の明かりに照らされた外は、直系4メートル位の円形の穴。後ろにはずっと同じような道が続いている。
そんな穴を、窮屈そうにファランティアが器用に羽を使って歩いていた。
壁面は真っ白い綿の様。ここは白き苔の領域に広がる地下茎の中。苔の本体が密集する中を掘り進んでいるのだった。
「そろそろかな」
同行者は鎧になっている魔人テルティルトにユニカ、それに魔人エヴィアだ。
エヴィアはいつもの黒い帯を三本巻いただけの衣装に、ユニカの編んだセーター。ある意味、毎度の格好だ。戦闘となれば、セーターを体内に収納するのも同じだろう。
外には魔人テラーネが座っており、透き通ったファランティアの向こうに潰れたお尻が饅頭の様に見えている。そう、こいつもいつもと同じ、自分の皮ビキニだ。
そして前方、進行方向には虫のお尻が見える。巨大だ――この穴は、その虫が掘っているものだ。
まあ、虫といってもそのままの意味じゃない。魔人プログワード。かつてゲルニッヒとスースイリアが融合し別れた時、この魔人と魔人テラーネとになった。
暫く成長の為に別行動をしていたが、こうして間に合って良かったよ。
「プログワードが動いているからまだまだ先かな。魔王はもう少し落ち着きを覚えた方が良いよ」
「それは言いすぎだけど、まあ気にしすぎよね。さっきも同じ事を言っていたけど、いつもこんな感じなの? 魔王なんだからドーンと構えていればいいのに」
エヴィアとユニカ方ツッコミが入るが、そんなお気軽に構えてはいられない。
今現在、俺達は人類軍への反撃の為に移動中だ。目標は、南から来るムーオス自由帝国の浮遊城。
北と東から来た部隊は、まだ当分の間、壊された壁への対処に時間を割かれるだろう。
今の内に、こっちの方をなんとかする。
穴を掘り進むのは、勿論発見されないためだ。視覚もそうだが、人間の魔力検知――あれは途中に障害物があると機能しない。水に潜っても探知は出来ないそうだ。ましてやここは地面の中。絶対にばれないから安全だ。
無限図書館で2つの浮遊城とその動きや計画を聞いた時、南の浮遊城は何とかなると思った。
栄光の道だったか? 通る場所さえ判ってしまえば、こうして先に準備することが出来るからだ。
見つからずに懐に潜り込んでしまえば、浄化の光は怖くはない。あれは撃つまでに、少しの時間差がある。
「あとどれくらいだっけ?」
「残り120キロメートルくらいですわ」
ファランティアの外から死霊のルリアの声がする。
こうしている今も、死霊隊が人間の状況を確認し、逐一報告に来る。
そんな事をしなくても空に意識を向ければ確認はできるのだが、今は出来ない状態だ。
あの日――俺が死んだ日から、いくつかの変化があった。
空に意識を向けると、今までよりも詳細に、より強く生命を感じる。これまでが曇りガラス越しと例えると、今は液晶モニター並みにくっきりだ。
ただそれと同時に、空に渦が出来る。それはかつて、魔王が空の雲と完全に接続されていた状況に近いそうだ。
「接続はされていないね。何かの副作用みたいだけど、これは魔人でも分からないかな。これからの研究により明らかになるってウラーザムザザが言ってたよ」
まあ問題が無ければ構わないが、今接続すると渦が見える。当然それは、人類からも見えるだろう。地下に潜っている意味がゼロだ。
それが名を意味するのかは分からないとしても、空の――いわゆる魔王の魔力に変化があれば」
「絶対バレるだろうなあ……」
因みに魔人ウラーザムザザは目玉と羽だけになったまま、この穴を後ろから付いて来ている。
魔人ヨーツケールMk-II8号改は今回は不参加。なんでも、まだまだ大きくなる必要があるからだそうだ。
あれ以上大きくなると不便ではないだろうかとも思うが、その辺りは魔人の生き方なので干渉しても仕方が無いだろう。
ついでに言うと首無し騎士も今回は不参加だ。
見た目に反して飛行は出来ないからな、あいつらは。ただ単に浮いているだけで。
まあその分、他の任務を任せたが……なんだろう、ものすごい心配だ。
その代わりと言っては何だが、今回は無限図書館から司書の精霊をたっぷりと連れてきた。
まあ普段は消えているから見えないが、呼び出せばぞろぞろと湧き出てくる。ちょっとで良いと言ったのだが、面白そうに思ったのかついてきた……100体くらい。
おかげでちょっと魔力の支払いが痛い。
「まっおおー、着いたよーん」
先頭の方から声がする。大きいが可愛らしい声――魔人プログワードだ。
ではさて、タイミングを計るとしよう。
場所はかつて人間世界に行った時と同じ、ファランティアの中だ。
服はテルティルトが変形した外骨格。また戦闘前なので兜は無し。武器もまた、状況次第なので形成していない。
死霊の明かりに照らされた外は、直系4メートル位の円形の穴。後ろにはずっと同じような道が続いている。
そんな穴を、窮屈そうにファランティアが器用に羽を使って歩いていた。
壁面は真っ白い綿の様。ここは白き苔の領域に広がる地下茎の中。苔の本体が密集する中を掘り進んでいるのだった。
「そろそろかな」
同行者は鎧になっている魔人テルティルトにユニカ、それに魔人エヴィアだ。
エヴィアはいつもの黒い帯を三本巻いただけの衣装に、ユニカの編んだセーター。ある意味、毎度の格好だ。戦闘となれば、セーターを体内に収納するのも同じだろう。
外には魔人テラーネが座っており、透き通ったファランティアの向こうに潰れたお尻が饅頭の様に見えている。そう、こいつもいつもと同じ、自分の皮ビキニだ。
そして前方、進行方向には虫のお尻が見える。巨大だ――この穴は、その虫が掘っているものだ。
まあ、虫といってもそのままの意味じゃない。魔人プログワード。かつてゲルニッヒとスースイリアが融合し別れた時、この魔人と魔人テラーネとになった。
暫く成長の為に別行動をしていたが、こうして間に合って良かったよ。
「プログワードが動いているからまだまだ先かな。魔王はもう少し落ち着きを覚えた方が良いよ」
「それは言いすぎだけど、まあ気にしすぎよね。さっきも同じ事を言っていたけど、いつもこんな感じなの? 魔王なんだからドーンと構えていればいいのに」
エヴィアとユニカ方ツッコミが入るが、そんなお気軽に構えてはいられない。
今現在、俺達は人類軍への反撃の為に移動中だ。目標は、南から来るムーオス自由帝国の浮遊城。
北と東から来た部隊は、まだ当分の間、壊された壁への対処に時間を割かれるだろう。
今の内に、こっちの方をなんとかする。
穴を掘り進むのは、勿論発見されないためだ。視覚もそうだが、人間の魔力検知――あれは途中に障害物があると機能しない。水に潜っても探知は出来ないそうだ。ましてやここは地面の中。絶対にばれないから安全だ。
無限図書館で2つの浮遊城とその動きや計画を聞いた時、南の浮遊城は何とかなると思った。
栄光の道だったか? 通る場所さえ判ってしまえば、こうして先に準備することが出来るからだ。
見つからずに懐に潜り込んでしまえば、浄化の光は怖くはない。あれは撃つまでに、少しの時間差がある。
「あとどれくらいだっけ?」
「残り120キロメートルくらいですわ」
ファランティアの外から死霊のルリアの声がする。
こうしている今も、死霊隊が人間の状況を確認し、逐一報告に来る。
そんな事をしなくても空に意識を向ければ確認はできるのだが、今は出来ない状態だ。
あの日――俺が死んだ日から、いくつかの変化があった。
空に意識を向けると、今までよりも詳細に、より強く生命を感じる。これまでが曇りガラス越しと例えると、今は液晶モニター並みにくっきりだ。
ただそれと同時に、空に渦が出来る。それはかつて、魔王が空の雲と完全に接続されていた状況に近いそうだ。
「接続はされていないね。何かの副作用みたいだけど、これは魔人でも分からないかな。これからの研究により明らかになるってウラーザムザザが言ってたよ」
まあ問題が無ければ構わないが、今接続すると渦が見える。当然それは、人類からも見えるだろう。地下に潜っている意味がゼロだ。
それが名を意味するのかは分からないとしても、空の――いわゆる魔王の魔力に変化があれば」
「絶対バレるだろうなあ……」
因みに魔人ウラーザムザザは目玉と羽だけになったまま、この穴を後ろから付いて来ている。
魔人ヨーツケールMk-II8号改は今回は不参加。なんでも、まだまだ大きくなる必要があるからだそうだ。
あれ以上大きくなると不便ではないだろうかとも思うが、その辺りは魔人の生き方なので干渉しても仕方が無いだろう。
ついでに言うと首無し騎士も今回は不参加だ。
見た目に反して飛行は出来ないからな、あいつらは。ただ単に浮いているだけで。
まあその分、他の任務を任せたが……なんだろう、ものすごい心配だ。
その代わりと言っては何だが、今回は無限図書館から司書の精霊をたっぷりと連れてきた。
まあ普段は消えているから見えないが、呼び出せばぞろぞろと湧き出てくる。ちょっとで良いと言ったのだが、面白そうに思ったのかついてきた……100体くらい。
おかげでちょっと魔力の支払いが痛い。
「まっおおー、着いたよーん」
先頭の方から声がする。大きいが可愛らしい声――魔人プログワードだ。
ではさて、タイミングを計るとしよう。
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