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【 魔族と人と 】
年越しパーティ その1
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碧色の祝福に守られし栄光暦218年10月51日。
リッツェルネールは浮遊城ジャルプ・ケラッツァで、年越しの祝賀行事を行っていた。
同月に行われた戦闘で大勢の犠牲者を出している事を鑑みれば、あまり祝賀行事を執り行うような雰囲気にはない。
しかし一方で、年末年始にかけての行事は宗教的に絡む者も多い。
そのため、あくまで参加者自由の儀礼的なものとして開かれていた。
リッツェルネールの本分でいえば、そもそもパーティーというのは性に合わない。
どんよりとした油絵の具の空でも眺めながら、軍用食を食べていた方が気が楽だ。
だがこうした催しに参加する機会がある時、彼が欠席した事は無い。
それは彼が商人であるからであり、それが今も変わってはいないという事を現していた。
炎と石獣の領域戦に参加した内、総大将を務めていたマリクカンドルフ率いるハルタール帝国軍の被害は甚大であった。
そう、総大将はあくまでマリクカンドルフだ。リッツェルネールは、中央から派遣された主席幕僚であり、同時に城主代行を兼ねているという立場だった。
だがその権勢と浮遊城の情報処理能力は他を圧倒しており、事実上の指揮権限はリッツェルネールが握っていたと言って良かっただろう。
これはべつに、彼が独裁の果てにそうなったのではない。マリクカンドルフをはじめとした、各諸将が納得した上での事だった。
そのハルタール帝国軍は、針葉樹の森へ出撃し120万人中、帰還したの6万人弱。
およそ114万人の損害を出した訳である。1つの小国分にも匹敵する損害だが、魔族領侵攻では珍しくはない。第八次魔族領侵攻戦では2千万人近い被害を出しており、それはそれ以前の侵攻作戦でも同じだった。
現在は、本国から派遣されたリーヴェブッフ・エヴィンカインが指揮を執り、副官であったミルクス・ラスコンはそのまま副官に収まっている。
本国からの増援部隊100万人に加え、ミルクスが率いていた60万人。それに予備部隊80万人、今回は参加しなかったが、後衛補佐のユーディザード王国軍40万を含めた総勢は280万人。
ラッフルシルド王国、スパイセン王国の戦力は壊滅したとはいえ、まだまだ北方方面では最大戦力を誇っている。
ラッフルシルド王国の生き残りは18名だった。軍民合わせて10万人が遠征し、僅かこれだけ。壊滅というより消失と言える。
しかしこちらは、ハルタール帝国軍とはまた状況が違う。本来ならば、全滅するためにここに来たのだ。反乱の懲罰として。
だからむしろ、生存者達は晴れやかに帰って行った。死んでいた者たちの活躍を土産話として。
どちらかといえば、スパイセン王国の方が大問題だった。
こちらは総軍30万人で参加。生存者は7千人だ。ラッフルシルド王国より残ってはいるが、そういた話ではない。
スパイセン王国はクラキアの指示――いや、先代の シコネフスの頃から、軍民キッチリ分けた編成で知られている。
たとえ戦闘部隊が壊滅しても、本来なら民兵3万人は確実に生き残るはずであった。
その被害が拡大した理由は、言うまでもなくリッツェルネールの突撃命令のせいだ。
ではあるが、その死にはしっかりと意味がある。魔族……或いは魔王による領域修復能力の確認。それを確実に観測するために、よりストレスを掛ける必要があった。
そして実績を上げた以上、文句をつけるわけにはいかない。
それに何より、現在は国王不在が最大の問題として立ちふさがっている。
クラキア・ゲルトカイムは、本来なら死ぬために送られた代理王である。
祖国は人類の為にこれ程の犠牲を払って戦い抜きました……そう、内外に宣伝するための存在だ。
こうして、それに見合う代償――つまりは資金や食料を中央から受け取る。
それは魔族領に近い北の貧しい国家にとっては、最大の産業ともいえる。
クラキアの次の代理王も30人程が決められており、全員死ぬ頃には20万から25万人の損失が出ているだろうと予測された。
それでこの遠征は終了だ。後はいつも通り、沢山の人間が死に、代わりにこれだけの土地を得ました――そのニュースを聞くだけであるはずだった。
だが、彼女はまだ生きている。炎と石獣の領域が溶岩に包まれたにもかかわらずだ。
この情報は、”今も戦い続ける奇跡の女王”と報道され、人間領では大きなニュースになっている。
しかしそのせいでスパイセン王国は戦闘を終了することが出来ず、反乱終了後に”隠居王”というあまりありがたくない異名を貰ったリーシェイム・スパイセンが、新たに10万人の兵を連れて魔族領入りを行う事が予定されていた。
ティランド連合王国もまた大きな損害を出していたが、遠征軍が壊滅するほどではない。
総大将であるリンバート・ハイン・ノヴェルド・ティランド率いる本隊と、グレスノーム・サウルス率いる別動隊、それにハーノノナート公国、合計160万人は健在だ。
一方、アルダシルが率いていた30万人は、初期に運び出された負傷者が3千人ほど残るのみ。マリセルヌス王国軍に至っては、生存者2名と散々である。
こうして各国軍を見ると、戦闘に参加した部隊はほぼ壊滅したと言えるだろう。
実際には戦場外で活動していた人間がそれなりに残っているが、報道されるのはあくまで魔族領入りしたした将兵と、戦闘での生存者のみ。
世間的には、これが結果となる。
リッツェルネールは浮遊城ジャルプ・ケラッツァで、年越しの祝賀行事を行っていた。
同月に行われた戦闘で大勢の犠牲者を出している事を鑑みれば、あまり祝賀行事を執り行うような雰囲気にはない。
しかし一方で、年末年始にかけての行事は宗教的に絡む者も多い。
そのため、あくまで参加者自由の儀礼的なものとして開かれていた。
リッツェルネールの本分でいえば、そもそもパーティーというのは性に合わない。
どんよりとした油絵の具の空でも眺めながら、軍用食を食べていた方が気が楽だ。
だがこうした催しに参加する機会がある時、彼が欠席した事は無い。
それは彼が商人であるからであり、それが今も変わってはいないという事を現していた。
炎と石獣の領域戦に参加した内、総大将を務めていたマリクカンドルフ率いるハルタール帝国軍の被害は甚大であった。
そう、総大将はあくまでマリクカンドルフだ。リッツェルネールは、中央から派遣された主席幕僚であり、同時に城主代行を兼ねているという立場だった。
だがその権勢と浮遊城の情報処理能力は他を圧倒しており、事実上の指揮権限はリッツェルネールが握っていたと言って良かっただろう。
これはべつに、彼が独裁の果てにそうなったのではない。マリクカンドルフをはじめとした、各諸将が納得した上での事だった。
そのハルタール帝国軍は、針葉樹の森へ出撃し120万人中、帰還したの6万人弱。
およそ114万人の損害を出した訳である。1つの小国分にも匹敵する損害だが、魔族領侵攻では珍しくはない。第八次魔族領侵攻戦では2千万人近い被害を出しており、それはそれ以前の侵攻作戦でも同じだった。
現在は、本国から派遣されたリーヴェブッフ・エヴィンカインが指揮を執り、副官であったミルクス・ラスコンはそのまま副官に収まっている。
本国からの増援部隊100万人に加え、ミルクスが率いていた60万人。それに予備部隊80万人、今回は参加しなかったが、後衛補佐のユーディザード王国軍40万を含めた総勢は280万人。
ラッフルシルド王国、スパイセン王国の戦力は壊滅したとはいえ、まだまだ北方方面では最大戦力を誇っている。
ラッフルシルド王国の生き残りは18名だった。軍民合わせて10万人が遠征し、僅かこれだけ。壊滅というより消失と言える。
しかしこちらは、ハルタール帝国軍とはまた状況が違う。本来ならば、全滅するためにここに来たのだ。反乱の懲罰として。
だからむしろ、生存者達は晴れやかに帰って行った。死んでいた者たちの活躍を土産話として。
どちらかといえば、スパイセン王国の方が大問題だった。
こちらは総軍30万人で参加。生存者は7千人だ。ラッフルシルド王国より残ってはいるが、そういた話ではない。
スパイセン王国はクラキアの指示――いや、先代の シコネフスの頃から、軍民キッチリ分けた編成で知られている。
たとえ戦闘部隊が壊滅しても、本来なら民兵3万人は確実に生き残るはずであった。
その被害が拡大した理由は、言うまでもなくリッツェルネールの突撃命令のせいだ。
ではあるが、その死にはしっかりと意味がある。魔族……或いは魔王による領域修復能力の確認。それを確実に観測するために、よりストレスを掛ける必要があった。
そして実績を上げた以上、文句をつけるわけにはいかない。
それに何より、現在は国王不在が最大の問題として立ちふさがっている。
クラキア・ゲルトカイムは、本来なら死ぬために送られた代理王である。
祖国は人類の為にこれ程の犠牲を払って戦い抜きました……そう、内外に宣伝するための存在だ。
こうして、それに見合う代償――つまりは資金や食料を中央から受け取る。
それは魔族領に近い北の貧しい国家にとっては、最大の産業ともいえる。
クラキアの次の代理王も30人程が決められており、全員死ぬ頃には20万から25万人の損失が出ているだろうと予測された。
それでこの遠征は終了だ。後はいつも通り、沢山の人間が死に、代わりにこれだけの土地を得ました――そのニュースを聞くだけであるはずだった。
だが、彼女はまだ生きている。炎と石獣の領域が溶岩に包まれたにもかかわらずだ。
この情報は、”今も戦い続ける奇跡の女王”と報道され、人間領では大きなニュースになっている。
しかしそのせいでスパイセン王国は戦闘を終了することが出来ず、反乱終了後に”隠居王”というあまりありがたくない異名を貰ったリーシェイム・スパイセンが、新たに10万人の兵を連れて魔族領入りを行う事が予定されていた。
ティランド連合王国もまた大きな損害を出していたが、遠征軍が壊滅するほどではない。
総大将であるリンバート・ハイン・ノヴェルド・ティランド率いる本隊と、グレスノーム・サウルス率いる別動隊、それにハーノノナート公国、合計160万人は健在だ。
一方、アルダシルが率いていた30万人は、初期に運び出された負傷者が3千人ほど残るのみ。マリセルヌス王国軍に至っては、生存者2名と散々である。
こうして各国軍を見ると、戦闘に参加した部隊はほぼ壊滅したと言えるだろう。
実際には戦場外で活動していた人間がそれなりに残っているが、報道されるのはあくまで魔族領入りしたした将兵と、戦闘での生存者のみ。
世間的には、これが結果となる。
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