この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 魔族と人と 】

復活 後編

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 碧色の祝福に守られし栄光暦218年10月51日。
 今年最後の日となる今日、ようやく相和義輝あいわよしきは自力で歩けるほどにまで復調していた。
 針葉樹の森で応急処置を済ませた後、ファランティアによってゲルニッヒの私室のある幽霊屋敷ゴーストハウスにまで運ばれた。
 ここは、地表から見れば広大な真っ黒い平野だ。だが所々に小さな入り口が隠されており、そこから地下世界へと広がっている。
 身を隠すには、うってつけの場所だった。

 俺が寝かされていたのは、かなり古い木のベッド。実に粗末なものだ。
 よく見ると赤黒い染みがあり、四カ所には何かを固定する様な金具が付いている。まあ、見なかった事にしよう。
 地下だから当然だろうが、窓は無く入り口は一か所だけ。
 常に数体の死霊レイスが俺を守っていて、辺りはユラユラ揺れる淡い緑色に照らされている。

 壁には一面にびっしりと棚が置かれており、そこにはホルマリンだろうか? 透明な液体の入った瓶が隙間もないほど並べられていて、その中には動物だったり内臓だったりどこかの部品だったりと、多種多様な生物が入っていた。

 たまにユニカが来ては明かりを点け食事を置いて行ってくれるが、あまり立ち寄ろうとはしない。なんだかここを避けているようだ。早く部屋を変えろと思う。
 そんな生活をしながらも、情報は色々と入ってきていた。

「そうか……スースィリアはもう……」

「ええ、そうデース。ゲルニッヒとスースィリアは一度、一つの魔人に融合しまシータ」

 ベッドに寝たまま、二人の魔人に関しての顛末てんまつを聞いた。
 二人は俺の体を修復するために、一人の魔人へと戻った。いや、それは少し正しくないか。
 一人の魔人となり、その後さらに二人の魔人に分裂した。

 片方は目の前にいる魔人テラーネ。ブルンブルンのバインバイン、普通の服さえ着ていれば清楚に見えなくはないが、如何せんビキニ姿だ。
 どこかノセリオさんを思い出すが、彼女よりは少し若い感じか。
 因みにビキニは本体の皮だそうだ。蛇の脱皮のように剥がすことが出来るらしい。ベルトは予想通り拾い物だった。

 そして今はいないが、もう一つ、大型の魔人に成長するために別れた魔人がいる。
 こちらは、大きいからこそ俺の役に立てるからという想いからなったという。
 本当に、この世から消えなくて良かった。もしそうなっていたら、魔人達の想いを無駄にしてしまっていただろう。
 会うのが楽しみだが、おそらくスースイリアの近い形態だと思われる。

 そしてこいつなのだが……。

「なあ、ゲルニッヒ……じゃない、テラーネ。お前はなんでそんな姿になったんだ?」

「フフフ、ソウですねー。貴方へ興味からといえばイイでショーカ」

 ゲルニッヒの時と同じようなオーバーアクション。そのたびに胸がポロリとはみ出そうでちょっと心臓に悪い。

「俺への?」

 だがそんなことはおくびにも出さず、質問を続ける。
 まあ、魔人はもう分かっているんだろうけどな。

「そのトーリですよ、魔王。ユニカ様の事、お気づきでショーカ?」

 突然に彼女の名前が出てきて驚いた。正直、全く心当たりがない。

「彼女は魔人に対する畏怖がありません。我々を本質的に恐れていないのです。もうヨーツケールMk-II8号改など、まるで小間使いのように使われていますよ」

 あの二人はどちらかといえば友人関係ではあるが……まあユニカの命令に逆らわないところからすると、そんな関係に見えるのか。

「原因は推測の域を出ませんが、おそらく彼女の体を修理した時です。貴方と非常に酷似したパーツを大量に使用しました。その影響が大きいのだろうと予想しています」

 俺からすれば全く分からなかったが、魔人は人間の感情には敏感だ。大きな変化を感じていたのだろう。
 だがそれはそれとして……。

「それがどうして、その姿と繋がるんだ?」

「分かりまセーンか? これは貴方の為であり、より効率化を追求した結果なのデース」

「もっと分かりやすく説明してくれ」

「要するにデスねー、貴方のパーツを増産しようという訳デースよ。本当であれば、あの戦いの後ゲルニッヒの体を使う予定デーシたが、こちらの方が好きでショー?」

 そう言いながら、扇情的なポーズをとって子宮の辺りを撫でる。
 成程、言いたい事はわかった。
 取り得ず、目の前にある大きな乳房ブツを握って揉む。

「オー、もうその気になりましたか。話が早くて助かりマース」

「……いや、これはダメだな」

「……なぜデスー? もっと小さな方がお気に召しマーシたか? エヴィアらの記憶に加え、魔王メモの内容も熟慮しマーシタ。完璧に、貴方を誘惑する形態にしたのデースよ?」

「なんだか不穏な言葉が出てきたが……まあいい。エヴィア!」

「何かな?」

 新しい魔王メモをしまいながら、エヴィアがベッドの下からひょっこりと出てくる。
 書いてある内容も気になる所だが、あれはいつでも処分できることが分かっているしな。あっちは好きにさせておこう。
 それよりも……。

「エヴィア、見本を見せてやれ」

 するとエヴィアは上目遣いになると――

「だ、ダメだよ、お兄ちゃん……わたしたち、血は繋がって無くても兄妹きょうだいなんだよ」

 顔を赤らめモジモジポーズ。台詞は拒絶しているが、表情はむしろ期待している点も高評価だ。

「素晴らしい! パーフェクトだ、エヴィア」

 思わずパチパチと感嘆の拍手がおきる。

「わかるか、テラーネ?」

「イエサッパリ」

 真顔で言われるとちょっと困るが、まあそういう事だ。

「分からないならこれは宿題だ。エヴィアから色々と教わるといい。さてと――」

 杖を突いて立ち上がると、素早くエヴィアがサポートをしてくれる。

「助かるよ」

「ユニカが御馳走を用意しているかな。早くいくよ」

 この世界に来て2回目の年が終わろうとしていた。
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