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【 魔族と人と 】
飛甲騎兵襲来 後編
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飛甲騎兵による攻撃の為に一度退いたマリクカンドルフであったが、自らの手で魔王を倒すことを諦めたわけでは無い。
さりとて、商国飛甲騎兵に勝る有効打があるわけでもない。仕方なく、全体の再編と補給をしながら状況確認をしている状態だった。
しかしこちらも、言うほど楽な状況ではない。
魔王が蘇ってから、再び森が人類に牙を剥いた。
しかもそれだけではない。かつて見たことの無い、人類の鎧と武器を使う不死者が現れたのだ。
しかも相当な魔力を持っているらしく、並の兵士では相手にならない。
一撃必殺の威力に異常な硬さ、首や手足を撥ねても死なない強靭さ。そして何より、味方が斃されるたびに数が増えるのが厄介だった。
「再編成は上手くいきそうかね?」
「こうしている間にも、襲撃の手は止まりません。各員奮闘していますが……」
「崩壊しつつある……そういって差し支えはないか」
集合し、再編する端から減らされている。
何とか円形陣を取りはしたものの、飛んでくる虫や獣に魔法攻撃は容赦なく内側の味方を攻撃する。
外周では異様な強さの不死者に加え、狼や猪、果ては大型の鹿までもが襲い掛かってくる始末だ。
更に続々と、魔王の魔力を目指して生存者が集結して来る。
味方が増えるのは単純に考えればありがたい。だが指揮系統が確立していなければ、それは不死者の群れと変わらない。
戦力になるどころか、勝手に崩壊し味方の力を削いでいるのが現状だ。
理想としては、もういっそこのまま数で押し包むことだ。
集結した生存者は、推定で20万人。まともに戦える者は半分程度だが、それでも一人を倒すには不足とは思えない。
いや、それでだめなら、そもそもそれは人の手に余る。
抵抗するだけ、馬鹿々々しいではないか。
だがそれでも我らは――
「商国軍の様子はどうだ?」
抵抗を諦めることなど、出来ようはずがない。そんな当たり前の事を考えるより先に、戦況の把握こそが重要だ。
「斉射と突撃を繰り返しています。しかし、被害も相当かと」
攻撃しては離脱してを繰り返している飛甲騎兵隊。だがその勢いは、目に見えて弱まっている。
今までは地上部隊が追撃し、飛甲騎兵は散発的に補助をする状態であった。魔王の位置が分からなかったからだ。
しかし位置がハッキリしている今となっては、地上部隊に出番はない。
そもそもが、飛甲騎兵と歩兵では戦力差が違いすぎるのだ。この両者は連携など取りようが無い。
その飛甲騎兵が主体で攻撃する以上、地上部隊が介入できる要素は皆無。ただ見守るしかない。
◇ ◇ ◇
「現状報告! どうなっている!」
操縦桿を握りしめながら、飛甲騎兵隊隊長、ラウ・ハルミールが吠える。
「現在42騎が墜とされました。潰れた騎体が27、それ以外が15。こちらの原因は不明ですがおそらく……死霊と魔法攻撃かと」
――化け物共が……。
この短時間で42騎。それだけで中規模国家の全戦力にも相当する数だ。
昨日からの損失を数えれば、おそらく四大国でも屋台骨を揺るがすほどの大損害だ。
この失態を償うには、もはや魔王を倒す以外にあろうはずもない。
「再度仕掛けるよ! 各隊縦列! たとえ潰されても、その残骸を押して魔王を潰せ!」
◇ ◇ ◇
――飛甲騎兵の攻撃が止まらない……。
本当に、逃げない連中との戦いは厄介だと思う。
相和義輝は逃げながらも、テルティルトの魔法で確実に相手の数を減らしていた。
もう結構墜としたはずだが、それでも人間の攻撃は止まらない。
あれだけ墜とされたら、普通は作戦を変えるなりしそうなものだ。だが愚直ともいえる射撃と体当たり。その戦術を変えようとしない。
だがまあ――、
当たる寸前の投擲槍を紙一重で交わす。
多分だが、魔王の魔力が無ければ100本くらい突き刺さり、同じくらいの数だけあの衝角に突き刺さっているか真っ二つになっている。
あの攻撃は確かに有効なのだ。そしてそれは、同時にそれ以上の攻撃が無い事を現している。
――もう一手何か欲しい。攻撃は何とかなるが、それは時間の問題だ。反撃の手段が何かないと……。
そう考えている間にも、真上から鉄塊が降ってい来る。
真上から攻撃してきた飛甲騎兵をテルティルトが潰したが、勢いそのままに降って来たのだ。
――連中、もう潰されることを前提に攻撃して来るな。
避けた地点に飛んでくる無数の投擲槍。
僅かな隙間に飛び込んで躱すが、そこに飛び込んで来る飛甲騎兵。
――やばい、連携が正確になってきている! やはり単純にはいかないか!
同時にそれもまた魔法によって潰れるが、その後ろから更なる一騎の飛甲騎兵が飛び出してくる。
今までよりも早く、そして正確な操作。
「くたばりな! 魔王!」
ラウの眼前に魔王が立っている。同時に衝角を切り離した。たとえこれで騎体が潰れようが、衝角は慣性のままに魔王を貫く――そう思った時だった。
騎体の左から衝撃を受ける。いや、それはそんな単純なものではない。騎体は歪み、そして裂けた。
世界がゆっくりと回っているように感じる。ラウは、自分の騎体が真っ二つになった事を理解した。だがこれ程の威力、同じ飛甲騎兵の体当たりでもなければ出来ないはずではないのか?
吹き飛ばされ地面へと激突する騎体の中で、ラウは今まで見た事の無い生物の姿を見た。
さりとて、商国飛甲騎兵に勝る有効打があるわけでもない。仕方なく、全体の再編と補給をしながら状況確認をしている状態だった。
しかしこちらも、言うほど楽な状況ではない。
魔王が蘇ってから、再び森が人類に牙を剥いた。
しかもそれだけではない。かつて見たことの無い、人類の鎧と武器を使う不死者が現れたのだ。
しかも相当な魔力を持っているらしく、並の兵士では相手にならない。
一撃必殺の威力に異常な硬さ、首や手足を撥ねても死なない強靭さ。そして何より、味方が斃されるたびに数が増えるのが厄介だった。
「再編成は上手くいきそうかね?」
「こうしている間にも、襲撃の手は止まりません。各員奮闘していますが……」
「崩壊しつつある……そういって差し支えはないか」
集合し、再編する端から減らされている。
何とか円形陣を取りはしたものの、飛んでくる虫や獣に魔法攻撃は容赦なく内側の味方を攻撃する。
外周では異様な強さの不死者に加え、狼や猪、果ては大型の鹿までもが襲い掛かってくる始末だ。
更に続々と、魔王の魔力を目指して生存者が集結して来る。
味方が増えるのは単純に考えればありがたい。だが指揮系統が確立していなければ、それは不死者の群れと変わらない。
戦力になるどころか、勝手に崩壊し味方の力を削いでいるのが現状だ。
理想としては、もういっそこのまま数で押し包むことだ。
集結した生存者は、推定で20万人。まともに戦える者は半分程度だが、それでも一人を倒すには不足とは思えない。
いや、それでだめなら、そもそもそれは人の手に余る。
抵抗するだけ、馬鹿々々しいではないか。
だがそれでも我らは――
「商国軍の様子はどうだ?」
抵抗を諦めることなど、出来ようはずがない。そんな当たり前の事を考えるより先に、戦況の把握こそが重要だ。
「斉射と突撃を繰り返しています。しかし、被害も相当かと」
攻撃しては離脱してを繰り返している飛甲騎兵隊。だがその勢いは、目に見えて弱まっている。
今までは地上部隊が追撃し、飛甲騎兵は散発的に補助をする状態であった。魔王の位置が分からなかったからだ。
しかし位置がハッキリしている今となっては、地上部隊に出番はない。
そもそもが、飛甲騎兵と歩兵では戦力差が違いすぎるのだ。この両者は連携など取りようが無い。
その飛甲騎兵が主体で攻撃する以上、地上部隊が介入できる要素は皆無。ただ見守るしかない。
◇ ◇ ◇
「現状報告! どうなっている!」
操縦桿を握りしめながら、飛甲騎兵隊隊長、ラウ・ハルミールが吠える。
「現在42騎が墜とされました。潰れた騎体が27、それ以外が15。こちらの原因は不明ですがおそらく……死霊と魔法攻撃かと」
――化け物共が……。
この短時間で42騎。それだけで中規模国家の全戦力にも相当する数だ。
昨日からの損失を数えれば、おそらく四大国でも屋台骨を揺るがすほどの大損害だ。
この失態を償うには、もはや魔王を倒す以外にあろうはずもない。
「再度仕掛けるよ! 各隊縦列! たとえ潰されても、その残骸を押して魔王を潰せ!」
◇ ◇ ◇
――飛甲騎兵の攻撃が止まらない……。
本当に、逃げない連中との戦いは厄介だと思う。
相和義輝は逃げながらも、テルティルトの魔法で確実に相手の数を減らしていた。
もう結構墜としたはずだが、それでも人間の攻撃は止まらない。
あれだけ墜とされたら、普通は作戦を変えるなりしそうなものだ。だが愚直ともいえる射撃と体当たり。その戦術を変えようとしない。
だがまあ――、
当たる寸前の投擲槍を紙一重で交わす。
多分だが、魔王の魔力が無ければ100本くらい突き刺さり、同じくらいの数だけあの衝角に突き刺さっているか真っ二つになっている。
あの攻撃は確かに有効なのだ。そしてそれは、同時にそれ以上の攻撃が無い事を現している。
――もう一手何か欲しい。攻撃は何とかなるが、それは時間の問題だ。反撃の手段が何かないと……。
そう考えている間にも、真上から鉄塊が降ってい来る。
真上から攻撃してきた飛甲騎兵をテルティルトが潰したが、勢いそのままに降って来たのだ。
――連中、もう潰されることを前提に攻撃して来るな。
避けた地点に飛んでくる無数の投擲槍。
僅かな隙間に飛び込んで躱すが、そこに飛び込んで来る飛甲騎兵。
――やばい、連携が正確になってきている! やはり単純にはいかないか!
同時にそれもまた魔法によって潰れるが、その後ろから更なる一騎の飛甲騎兵が飛び出してくる。
今までよりも早く、そして正確な操作。
「くたばりな! 魔王!」
ラウの眼前に魔王が立っている。同時に衝角を切り離した。たとえこれで騎体が潰れようが、衝角は慣性のままに魔王を貫く――そう思った時だった。
騎体の左から衝撃を受ける。いや、それはそんな単純なものではない。騎体は歪み、そして裂けた。
世界がゆっくりと回っているように感じる。ラウは、自分の騎体が真っ二つになった事を理解した。だがこれ程の威力、同じ飛甲騎兵の体当たりでもなければ出来ないはずではないのか?
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