この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 それぞれの未来 】

祖国への帰還 後編

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 そしてその右には商国ナンバー6。実働軍を統括し、実施での指揮監督を掌握するマインハーゼン商家党首、ウルベスタ・マインハーゼンが座る。
 身長は150センチほど。顔つきもまた、少しふっくらとした童顔だ。
 紺地のキッチリしたブランドスーツは、外見の幼さを何とかしようとする努力の表れだろうか。だがどう考えても、外しているとしか思えない。
 基本的に背広組であり、戦地で共に戦った事は少ない。だがリッツェルネールが自由に行動できたのは、彼の協力あっての事だ。今回の件では、一番の協力者と言って良いだろう。
 商人らしいずる賢さと気さくな性格で、リッツェルネールとウマが合うのも大きかった。

 更に右隣は空席だ。
 商国ナンバー8。海運を統括するペルカイナ商家が本来は座る。だが当主は不在であり、ここは代理を送ってよい場ではない。従って、今回は欠席となっている。

 その先は、丁度リッツェルネールの対面となる。
 商国ナンバー10。中小商工会統括を行うルホナイツ商家当主、ジャナハム・コルホナイツは、白目が僅かに赤い独特の瞳でリッツェルネールを値踏みするように見つめていた。
 身長は177センチ。長身ではないが、細くて長い手足により抜群のプロポーションを保っている。
 もっとも、太さと筋肉が美の価値観であるこの世界では美しい類ではない。それを隠すかのように、派手な服装を好む男だ。
 今日はヒョウ柄のシャツに真っ黒な毛皮のコート。12ホールのブーツの底は銀製だ。
 髪はいつもの様にオールバックにし、少し斜に構えた姿勢は、まるでギャングの様にも見える。

 ナンバー4のフォースノー商家と同じくアンドルスフ派の商家であり、今回の一件には深くは係わっていない。
 本来なら中立の立場をとると目されていたが、今回は途中から参加した。
 その意図は測りかねないが、アンドルスフ商家の意向でもあったのだろうか……。

 リッツェルネールから左側は、奇数番の商家が並ぶ。
 一番左は真っ白いスーツの男。商国ナンバー3にして、軍事全ての統括者。ジャッセム・ファートウォレルだ。
 商国の軍事関連は、全て彼の決済が無ければ予算が通らない。
 本人はいたって風来坊だが、その責任は重大だ。
 今回の一件では完全中立を保ちつつも、軍を動かすための予算は全て通している。事実上の協力者と言って良いだろう。

 その左には商国ナンバー5。商家統括を担当するテリアス・アーウィンが座る。
 身長は170センチとそれなりにあるが、痩せ型で乳は無いに等しい。淡い褐色の肌にイェアと同じく艶やかな黒い髪。だが彼女の髪は、イェアと違い肩までで切りそろえている。
 女性3人の内2人が絶世の美女なだけに、周囲の陰口は酷いものだ。だが本人に、それらを気にする様子は無い。
 確かな実力が、中傷などを打ち消しているのだ。

 商国は、トップ三家がそれぞれ階位1から3となっており、残り7家は階位4、全て同格だ。4から10までの数字ナンバー自体にはさほど意味は無い。
 だが一応、ナンバー4のフォースノー商家は情報を扱う観点から完全独立体制を取り、残りの6家の代表がアーウィン家となっている。
 そのため、事実上はアーウィン商家が商国のナンバー4と言えるだろう。

 そしてそのまま左に目を向ければ、そこにはイェア程ではないが、絶世の美女が座る。
 商国ナンバー7、技術開発と工業統括を担当するキスカ・キスカだ。
 今日は上下分けセパレートの水色ドレスを身に纏い、空いた中央からはでっぷりとしたお腹が見える。
 少しクセのあるセミロングの金髪は左右で纏められており、ボリューム感のあるツインテールになっていた。

 名目上は工業総括となっているが、実際には、そちらは殆どナンバー5のアーウィン商家とナンバー10のコルホナイツ商家が行っている。
 彼女の担当業務の殆どは兵器開発に当てられており、実際にそれで大きな業績を上げているのだ。
 もし彼女が人馬騎兵を発明しなければ、全ては変わっていただろう。

 そして最後は、その隣に座る男。
 商国ナンバー9。外交……いや、商国らしく言えば渉外担当ズーニック商家党首、ラハ・ズーニックだ。
 彼と会うのは初めてのことだ。これはリッツェルネールとしては珍しい。
 何と言ってもリッツェルネールの領分は軍略であり、そこには当然のことながら外交も含まれる。
 だがラハは、最近になってズーニック商家の党首になったわけではない。実際、ティランド連合王国との戦いでは、彼と共に多くの調略・交渉を行ってきたものだ。
 しかしそれは書面だけの間柄であり、今こうして初対面を果たしたのだが……。

 全身を覆う金属的な灰色メタリックグレーの金属的なローブ。かつてケーバッハが着ていたダッフルコートと同じ金属繊維だが、更に織り目が細かく、まるで流体金属の様だ。
 頭はフードに覆われ、その奥は漆黒の闇。そのほぼ中心に、青い炎がチラついて見える。

 ――人間でないことは明白だが……今までどうやって誤魔化してきたのだろうか。

 だが、もう良いと決めたではないか。
 今ここに魔族がいる。国を代表する十家の当主にだ。事実は事実、受け入れよう。
 大切なのは、これから何をすべきかなのだから。

「これより、十家会議を始める」

 リッツェルネールの高らかな宣言が鳴り響いた。
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