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【 それぞれの未来 】
謁見 魔王、相和義輝 その2
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「ふむ……平和、共存。耳触りはよいが、その実現は難しいの。今人類は、魔族を滅ぼすことに躍起になっておる。そう簡単には諦めまい」
「でも、人間同士で戦争を始める位の余裕はあるんですよね? こう言うのもなんだけど、魔族の事はもう放っておいてもらえないかな?」
「お主、本気でそれを言うか……」
呆れたような物言いだが、俺の考えは変わらない。
「こちらからは人間の戦争とかには……いや、社会全体にも干渉はしない。先ずはお互い落ち着いて、その後で交易とかを通じて友好関係を築きたいんだ。当面は、相互不干渉とはいかないものだろうか?」
「いや、勘違いしているの。今人間同士が戦っている原因は、全てお主のせいぞ」
「あ、まあ……ですよね」
そういやマリッカにも言われていた。予習していた内容に無かったとはいえ、それを含めず話に入ったのは失敗か。
うーむ、海の一件は俺の想定を超えたレベルで深刻化しているな……。
オスピアはじーっとこっちを見ているし、マリッカも食事をしながら同様の様子だ。
俺の言葉を待っているのは明白だが、さて何と言ったら良いものか。
「スミマセン、海の件は事故です。和平の為でしたら、善処いたします」
考えた末、俺は頭を下げてそう言った。いや、他に言いようが無かった。
「事故とは?」
当然聞かれるよな、うん。
仕方なしに、俺はリアンヌの丘での戦いの前にやってしまった失敗と、今なら戻せることを包み隠さず話した。
「呆れたの……」
「本当に呆れますよね……」
「呆れたかな」
3人から同時に言葉が飛んでくる。
うん……? 三人?
「おーまーえーがーいーうーなー!」
取り敢えず、エヴィアの頭を拳でグリグリしながら話を戻す。
「やっちゃった事は仕方がない。だけど、戻すことは出来る。だがタダじゃない、停戦との交換だ。どうだろうか?」
開き直りつつも最後に質問系の言葉を付けてしまう辺り、俺もまだまだ甘いと思う。
だけど、この際だから交換材料に使わせてもらおう。
人類が消費する食料の6割だったか……軽くはないはずだ。
だが――、
「無理であるな。確かに魅力的ではあるが、それでは他三国は動くまい。無論、我等ハルタールとて同じことよ」
「なぜだ? 6割だろ? その命が救われるのに、どうしてダメなんだよ!?」
淡く浮かんだ期待をポキリと折られて、つい立ち上がりそうになってしまう。
「第一に、今ティランド連合王国とジェルケンブール王国が戦っていることは知っておろう? 奴らも永遠に戦い続けるつもりは無い。明確に終わりを線引きし、そこまでに出来る限り有利な状況を作ろうとしておるのだの。その線引きとはつまり、今予定されている第九次魔族領遠征よの」
やっぱり、まだ魔族領を諦めていない……それどころか、再びの大規模軍事行動を起こそうとしているのか……。
「故に、この2国は通常では考えられぬほどの速度で殺し合っておる。双方主力を温存した上で、他は防備を無視した殺し合いよ。今になって、終わりの期限は無くなりましたなど許されまい」
「いや、今止めればいいじゃないか。戦争を止めて、魔族領侵攻も止めて、とりあえず平和な期間を置く事は悪い話じゃないんじゃないか?」
「魔王よ……魔族と人との戦いと違い、人同士の戦争とはすなわち政治よ。流血が加わっただけで、外交行為の一環である。先ほども申したように、互いに最終的な決着点を既に決めておるのだ。それを今すぐになど……優勢な方は承諾するかもしれぬが、劣勢の方は応じぬよ。それにお主の提案はそれなりに魅力的だが、次の点において否定される」
「それは?」
「次の魔族領侵攻戦はムーオス自由帝国が主体となる事が既に決まっておる。これは中央――つまり、人間の秩序において決定事項であるの。ここが止めない限り、魔族領侵攻は行われるのだ」
「なら、そのムーオスって帝国と連絡を取りたい。要は、そこが魔族領侵攻を止めればいいんだろ?」
「ムーオスは止めぬよ。先ほど言ったの、これは政治の話よ。一度追い込まれ決戦を決めた国が、魔族との和平に応じて手を引っ込めたとあっては民衆の信頼を失う。そして、戦争の止め時を失った二国からの対外的な信頼も失われよう。一時的に海が戻ったとしても、もはやムーオスに大国としての権威は残るまい。それは、国家が滅ぶのと大差無い。お主の提案も悪くはあるまい。だが、人類には人類の立場があるのだ。この三国が止めぬ以上、ハルタールもまた追随するしかないの」
「誇りみたいなものですか? そんなものの為に、結局は戦うしか道は無いという事なのか……」
「魔王よ、国家の誇りとは、人間社会の秩序を守るために存在する。目先の利で軽視できるものではないのだ。今となっては、次の第九次魔族領侵攻戦は止められぬ。何をしてもの。ここで決められるのは、その後の話だの」
「その後?」
「そうだの。次の戦いが終わり、お主が生き残った時……その時こそ、もはや人類には当面の余力は残るまい。その時に、スムーズに話し合いが出来るよう整えるのが今回の目的である。それなりに、考えてきたのだろう?」
「勿論、その話をしに来たんです」
俺はここまで知った事、そして感じてきたことを元に、平和への方法を考えてきた。
ようやく、それを話す時が来たんだ。
「でも、人間同士で戦争を始める位の余裕はあるんですよね? こう言うのもなんだけど、魔族の事はもう放っておいてもらえないかな?」
「お主、本気でそれを言うか……」
呆れたような物言いだが、俺の考えは変わらない。
「こちらからは人間の戦争とかには……いや、社会全体にも干渉はしない。先ずはお互い落ち着いて、その後で交易とかを通じて友好関係を築きたいんだ。当面は、相互不干渉とはいかないものだろうか?」
「いや、勘違いしているの。今人間同士が戦っている原因は、全てお主のせいぞ」
「あ、まあ……ですよね」
そういやマリッカにも言われていた。予習していた内容に無かったとはいえ、それを含めず話に入ったのは失敗か。
うーむ、海の一件は俺の想定を超えたレベルで深刻化しているな……。
オスピアはじーっとこっちを見ているし、マリッカも食事をしながら同様の様子だ。
俺の言葉を待っているのは明白だが、さて何と言ったら良いものか。
「スミマセン、海の件は事故です。和平の為でしたら、善処いたします」
考えた末、俺は頭を下げてそう言った。いや、他に言いようが無かった。
「事故とは?」
当然聞かれるよな、うん。
仕方なしに、俺はリアンヌの丘での戦いの前にやってしまった失敗と、今なら戻せることを包み隠さず話した。
「呆れたの……」
「本当に呆れますよね……」
「呆れたかな」
3人から同時に言葉が飛んでくる。
うん……? 三人?
「おーまーえーがーいーうーなー!」
取り敢えず、エヴィアの頭を拳でグリグリしながら話を戻す。
「やっちゃった事は仕方がない。だけど、戻すことは出来る。だがタダじゃない、停戦との交換だ。どうだろうか?」
開き直りつつも最後に質問系の言葉を付けてしまう辺り、俺もまだまだ甘いと思う。
だけど、この際だから交換材料に使わせてもらおう。
人類が消費する食料の6割だったか……軽くはないはずだ。
だが――、
「無理であるな。確かに魅力的ではあるが、それでは他三国は動くまい。無論、我等ハルタールとて同じことよ」
「なぜだ? 6割だろ? その命が救われるのに、どうしてダメなんだよ!?」
淡く浮かんだ期待をポキリと折られて、つい立ち上がりそうになってしまう。
「第一に、今ティランド連合王国とジェルケンブール王国が戦っていることは知っておろう? 奴らも永遠に戦い続けるつもりは無い。明確に終わりを線引きし、そこまでに出来る限り有利な状況を作ろうとしておるのだの。その線引きとはつまり、今予定されている第九次魔族領遠征よの」
やっぱり、まだ魔族領を諦めていない……それどころか、再びの大規模軍事行動を起こそうとしているのか……。
「故に、この2国は通常では考えられぬほどの速度で殺し合っておる。双方主力を温存した上で、他は防備を無視した殺し合いよ。今になって、終わりの期限は無くなりましたなど許されまい」
「いや、今止めればいいじゃないか。戦争を止めて、魔族領侵攻も止めて、とりあえず平和な期間を置く事は悪い話じゃないんじゃないか?」
「魔王よ……魔族と人との戦いと違い、人同士の戦争とはすなわち政治よ。流血が加わっただけで、外交行為の一環である。先ほども申したように、互いに最終的な決着点を既に決めておるのだ。それを今すぐになど……優勢な方は承諾するかもしれぬが、劣勢の方は応じぬよ。それにお主の提案はそれなりに魅力的だが、次の点において否定される」
「それは?」
「次の魔族領侵攻戦はムーオス自由帝国が主体となる事が既に決まっておる。これは中央――つまり、人間の秩序において決定事項であるの。ここが止めない限り、魔族領侵攻は行われるのだ」
「なら、そのムーオスって帝国と連絡を取りたい。要は、そこが魔族領侵攻を止めればいいんだろ?」
「ムーオスは止めぬよ。先ほど言ったの、これは政治の話よ。一度追い込まれ決戦を決めた国が、魔族との和平に応じて手を引っ込めたとあっては民衆の信頼を失う。そして、戦争の止め時を失った二国からの対外的な信頼も失われよう。一時的に海が戻ったとしても、もはやムーオスに大国としての権威は残るまい。それは、国家が滅ぶのと大差無い。お主の提案も悪くはあるまい。だが、人類には人類の立場があるのだ。この三国が止めぬ以上、ハルタールもまた追随するしかないの」
「誇りみたいなものですか? そんなものの為に、結局は戦うしか道は無いという事なのか……」
「魔王よ、国家の誇りとは、人間社会の秩序を守るために存在する。目先の利で軽視できるものではないのだ。今となっては、次の第九次魔族領侵攻戦は止められぬ。何をしてもの。ここで決められるのは、その後の話だの」
「その後?」
「そうだの。次の戦いが終わり、お主が生き残った時……その時こそ、もはや人類には当面の余力は残るまい。その時に、スムーズに話し合いが出来るよう整えるのが今回の目的である。それなりに、考えてきたのだろう?」
「勿論、その話をしに来たんです」
俺はここまで知った事、そして感じてきたことを元に、平和への方法を考えてきた。
ようやく、それを話す時が来たんだ。
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