この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 それぞれの未来 】

人間の世界へ 後編

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 火山帯――。
 魔王が到着すると同時に、大量の灼熱の翼竜ファイヤーワイバーンが群がってくる。

「魔王ー、今日はどこ行くの?」
「なになにー? 用事?」
「また魔力の供給? いいよー、自由に入って行って」

 その手前、亜人達の森で集まって来なかったのは、彼らなりに他の領域を気遣っての事だろう。俺が考えているより、彼らの意識は高かったのだ。

「いや、今日は移動ともう一つ用事があってな。首無し騎士デュラハンはいるかー?」

「なんでしょうか、魔王様」

 俺の声に応えたのは、なんかいつもより少し小さく、可愛らしい声の首無し騎士デュラハンだった。見た目は全身鎧の首無し幼女といった感じだろうか? 等身の関係で妙に可愛らしく見える。馬も、なんかポニーの子供のような感じだ。いや待て――

「シャルネーゼはまだ戻ってないのか? それと、次に指示した奴は?」

「さぁ? 誰も戻っていませんのよ。わたくし、新人ですし」

 ちらっとエヴィアを見る……。

「リアンヌの丘で一人死んだから、代わりに一人湧いたかな。精霊は環境と魔力があれば一定数が維持されるよ」

 沼の精霊もそうだったか……と思いつつも、やってしまった感が重くのしかかる。

「完全に失敗した―!」

 二重遭難の可能性を考えてはいたが、本当にやらかすとは思っていなかった。
 彼女らの脳筋っぷりを甘く見過ぎていた。ここで残る一人に指示を出したら、そのまま3重遭難確定だろう。やむを得ない、最後の手段だ。

 ――首無し騎士デュラハンの領域移動を禁止する。

「魔王様! 酷いですわ!」

 すぐさま新人首無し騎士デュラハンから苦情が来るが、それは知った事ではない。と言うよりも……。

 ――首無し騎士デュラハンの領域移動を許可する。

 新人首無し騎士デュラハンは不思議そうに首をかしげているが、おそらくこれで伝わったはずだ。
 シャルネーゼは馬鹿ではない……いや訂正、ものすごく馬鹿という程ではない。異変を察知すれば、何かあったと理解して戻って来るだろう。
 ただ死霊レイスの様な速さは無いから、それまで待つわけにもいかない。

「領域に描いた文字は、どのくらいで消えるんだっけ?」

「軽い傷程度でアレバ、1日もあれば修復されマスネ」

 笑う仕草のゲルニッヒ。うん、そうだよね……。

 結局またもや灼熱の翼竜ファイヤーワイバーンの子供達に揉みくちゃにされながらも、何とか卵の殻をゲット。

「上陸ポイントを書き込んでくれ」

 エヴィア……ではなくゲルニッヒに渡す。昔見たエヴィアの書いた地図は、結構アバウト過ぎたからな。
 それで試しに任せたわけだが、こちらはこだわりの逸品という奴だろうか。海岸線のギザギザまでかなり細かく書き込んでいる。まだ実際には行った事は無いが、かなり正確なのだろう。後は――

「魔王はぷんすか丸だぞっと。この場所に集合せよ」

 首無し騎士デュラハン語でメッセージを書き込んでようやく完了。まさかシャルネーゼを呼び戻すのに、これほど手間がかかるとは思わなかったよ。今度合流したら、もう絶対に手放さないようにしよう。

「ソレは結婚すると言う事デスカ?」

「絶対に違うからな!」

 心の底からきっちり否定しておかないと、何をしでかすか分からないのが魔人の怖さでもある。だがそれよりも、俺は先ほどの正確な地図を見て少し思う所があった。

「ゲルニッヒ、世界地図を書いてくれ。地形の詳細とかは拘らなくていいが、面積とかは少し正確にだ」

「地面にで良いのデスネ」

 こちらの意図を察し、地面にガリガリと地図を書き始める。
 やはり、世界はかつてエヴィアが描いたように歪んだ菱形だ。だが少し違う点がある。
 続いて描かれた魔族領を囲う壁。その内側は大陸全体からすれば確かに小さいが、俺が思っていたほどには小さくない。おおよそ、地球でいえばEUくらいの広さがありそうだ。
 そしてその中に描かれる残っている魔族領。これは本当に小さなものだ。東西に広がる白き苔の領域以南は全て取られ、北側も炎と石獣の領域や亜人の森、それに火山帯周辺まで――およそ全体の半分ほど侵攻されている。

「ありがとう。大体判ったよ」

 初めて壁まで行った時、取られた魔族領の広さは予想が付いていた。だがこれで確信に変わったと言って良いだろう。

「まおー……」

 スースィリアの心配そうな様子も判る。あの日から、この件に関してずっと気にされている事も。だがこれは、いつかどこかで決断しなければいけない事だった。
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