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【 大火 】
魔人の性質
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「なあ、再び寿命を有りにして、俺が50年くらいでぽっこり逝ってしまったら……魔人的にはどうなんだ?」
「「「それは魔王の生命に関わる問題です。我々は、決してそれを容認しないでしょう。ですが、その心配は無用です。既に誕生している命の形に関して、システムは何も影響を及ぼしません」」」
「今不老の人間には影響がないのか……」
これで人間との交渉材料は大方揃ったと言って良いだろう。残るは方法だ。
「魔王の魔力の透明化、それと寿命を再び全ての生き物に与える事、その方法を教えてくれ」
「その辺りは大陸のちょうど反対、海上にあるシステムの中枢へ行けば可能だ。魔力の透明化はさほど難しくはない。だが寿命の変更には…………」
なんだ? 言葉に引っかかったわけでも無いのにラジエヴの言葉が詰まる。他の魔人達も語らない。ラジエヴの触手がニュルニュルと蠢く音だけが場を支配する。思案している……大抵こういう時は、禄でもない答えしか返ってこないわけだが。
「「「正しく接続されていた場合、およそ6年をかけて変更は完了いたします。ですが、現在魔王は正しく接続されていません。よって、千年を待つか、魔人が直接アクセスして使用することになります」」」
「使用ってのは俺の魔力……つか空にある俺自身にだよな? 領域を作るのと同じようなものか?」
「似てはいますが、規模が違うデシ。おそらくほぼ全てを使う事になるデシ。つまり、貴方の意識はこの世界から消滅するデシ。廃人化、そう言って差し支えは無いデシ」
「……参考までに、その後の公算を教えてくれ」
「「「使った魔力は星に戻り、やがて元の様に空に上がります。そのように作りました。
ですが、使ってしまい消えたものは戻りません。戻ってくるのは、ただの魔力です。貴方や歴代魔王の意志や記憶は消滅しています」」」
「だがシステムの維持は必須事項だ。だから許可が欲しい、再び召喚するだけの魔力が溜まり次第、貴殿を殺し新たな魔王を呼ぶことを」
「それまでは介護してくれるって事か……」
意識も記憶も失えば、それはもう死んでいるのと同じだろう。だからその後の事は、あまり気にしなくて良いか。
問題は、自分に死ぬ覚悟があるかどうかだ。それも今現在、敵である人類の為……しかも余計なお節介だ。むしろ、永遠に若いままでいる事を願う人間からしたら、明らかな敵対行動とも取れる。不老長寿……それが人類が夢見た姿に他ならないのだから。
だが、覚悟さえ出来ればかなり大きな交渉材料だ。良い方にも悪い方にもだ。
これでこちらが切れる交渉材料は、大体揃ったと言って良いだろう。
「人類の、出来得る限り偉い人間と合いたい。いきなり和平への話し合いってのじゃなくていいんだ。人類社会が、今何を望み、これからどんな世界を求めているか、それを聞いてみたい。出来るか?」
「ソレでしたら……」
これまで沈黙を守っていたゲルニッヒがようやく動く。これで十分満足したと言う事なのだろう。
「コチラで手はずを整えておきまショウ」
いつものように仰々しいお辞儀。こっちに関しては任せて大丈夫だろう。
そうすると残りは小さな疑問がいくつかだ。
「結局、何のために俺をここに呼んだんだ? 封印はしないって話だけじゃないんだろ?」
俺が話を遮ってしまったので、そっちの話がまだ終わっていない。是非とも彼らの本来の用件を聞きたい処だったのだが――
「いえ、その話は終わっているデシ。ゲルニッヒから、魔王の欲している知識を集めるように依頼されたため、集めてきたデシ」
そうだったのか……裏で色々と動いてくれていたことに感謝しかない。本当に助かる。
聞きたい事は――そうだな、後2つ位か。
「その話をするのに、どうしてこの場所を選んだんだ? ホテルでも良かっただろ?」
「「「理不尽な命令が出そうになったら、すぐに逃げるためです。ここなら、魔王は移動手段が限られます」」」
……こいつら。いや、魔人が結構自由気ままなのは分かっている。あまり干渉されたくない魔人なのだろう。それでもこうして俺の為に動いてくれて、質問にもきちんと答える。本当に、誠実な存在なのだな。
だが、封印を検討するほど大切な割には扱いはぞんざいだ。もう少し位は守ってくれても良いと思う。
「最後の質問だ。一度人類を滅ぼしたのに、どうして魔王なんて不穏な名前まで引き継いだんだ?」
「魔王も当初は「神の代行者」を名乗っていた。だが、滅ぼした人類の文献から、彼が魔王だと云う記述があった。その為だ」
「滅ぼした人間の遺した物をそのままにしたのか?」
それはちょっと間抜けなのではないだろうか? 魔王や魔人との闘いの記録。人間が残した物であれば、実際がどうあれ徹底的に悪として残されているはずだ。そんなものがあれば、逆に新しい人類を同じ道に誘導しかねない。
「それは彼らの生きた証デシ。そして、我々の愚かさの戒めでもあるデシ」
「「「どれほど都合が悪くても、それは大切なものなのです」」」
……そう言われてしまうと反論は出来ない。少し真っ正直すぎるが、それを悪いとは決して言えなかった。
「「「それは魔王の生命に関わる問題です。我々は、決してそれを容認しないでしょう。ですが、その心配は無用です。既に誕生している命の形に関して、システムは何も影響を及ぼしません」」」
「今不老の人間には影響がないのか……」
これで人間との交渉材料は大方揃ったと言って良いだろう。残るは方法だ。
「魔王の魔力の透明化、それと寿命を再び全ての生き物に与える事、その方法を教えてくれ」
「その辺りは大陸のちょうど反対、海上にあるシステムの中枢へ行けば可能だ。魔力の透明化はさほど難しくはない。だが寿命の変更には…………」
なんだ? 言葉に引っかかったわけでも無いのにラジエヴの言葉が詰まる。他の魔人達も語らない。ラジエヴの触手がニュルニュルと蠢く音だけが場を支配する。思案している……大抵こういう時は、禄でもない答えしか返ってこないわけだが。
「「「正しく接続されていた場合、およそ6年をかけて変更は完了いたします。ですが、現在魔王は正しく接続されていません。よって、千年を待つか、魔人が直接アクセスして使用することになります」」」
「使用ってのは俺の魔力……つか空にある俺自身にだよな? 領域を作るのと同じようなものか?」
「似てはいますが、規模が違うデシ。おそらくほぼ全てを使う事になるデシ。つまり、貴方の意識はこの世界から消滅するデシ。廃人化、そう言って差し支えは無いデシ」
「……参考までに、その後の公算を教えてくれ」
「「「使った魔力は星に戻り、やがて元の様に空に上がります。そのように作りました。
ですが、使ってしまい消えたものは戻りません。戻ってくるのは、ただの魔力です。貴方や歴代魔王の意志や記憶は消滅しています」」」
「だがシステムの維持は必須事項だ。だから許可が欲しい、再び召喚するだけの魔力が溜まり次第、貴殿を殺し新たな魔王を呼ぶことを」
「それまでは介護してくれるって事か……」
意識も記憶も失えば、それはもう死んでいるのと同じだろう。だからその後の事は、あまり気にしなくて良いか。
問題は、自分に死ぬ覚悟があるかどうかだ。それも今現在、敵である人類の為……しかも余計なお節介だ。むしろ、永遠に若いままでいる事を願う人間からしたら、明らかな敵対行動とも取れる。不老長寿……それが人類が夢見た姿に他ならないのだから。
だが、覚悟さえ出来ればかなり大きな交渉材料だ。良い方にも悪い方にもだ。
これでこちらが切れる交渉材料は、大体揃ったと言って良いだろう。
「人類の、出来得る限り偉い人間と合いたい。いきなり和平への話し合いってのじゃなくていいんだ。人類社会が、今何を望み、これからどんな世界を求めているか、それを聞いてみたい。出来るか?」
「ソレでしたら……」
これまで沈黙を守っていたゲルニッヒがようやく動く。これで十分満足したと言う事なのだろう。
「コチラで手はずを整えておきまショウ」
いつものように仰々しいお辞儀。こっちに関しては任せて大丈夫だろう。
そうすると残りは小さな疑問がいくつかだ。
「結局、何のために俺をここに呼んだんだ? 封印はしないって話だけじゃないんだろ?」
俺が話を遮ってしまったので、そっちの話がまだ終わっていない。是非とも彼らの本来の用件を聞きたい処だったのだが――
「いえ、その話は終わっているデシ。ゲルニッヒから、魔王の欲している知識を集めるように依頼されたため、集めてきたデシ」
そうだったのか……裏で色々と動いてくれていたことに感謝しかない。本当に助かる。
聞きたい事は――そうだな、後2つ位か。
「その話をするのに、どうしてこの場所を選んだんだ? ホテルでも良かっただろ?」
「「「理不尽な命令が出そうになったら、すぐに逃げるためです。ここなら、魔王は移動手段が限られます」」」
……こいつら。いや、魔人が結構自由気ままなのは分かっている。あまり干渉されたくない魔人なのだろう。それでもこうして俺の為に動いてくれて、質問にもきちんと答える。本当に、誠実な存在なのだな。
だが、封印を検討するほど大切な割には扱いはぞんざいだ。もう少し位は守ってくれても良いと思う。
「最後の質問だ。一度人類を滅ぼしたのに、どうして魔王なんて不穏な名前まで引き継いだんだ?」
「魔王も当初は「神の代行者」を名乗っていた。だが、滅ぼした人類の文献から、彼が魔王だと云う記述があった。その為だ」
「滅ぼした人間の遺した物をそのままにしたのか?」
それはちょっと間抜けなのではないだろうか? 魔王や魔人との闘いの記録。人間が残した物であれば、実際がどうあれ徹底的に悪として残されているはずだ。そんなものがあれば、逆に新しい人類を同じ道に誘導しかねない。
「それは彼らの生きた証デシ。そして、我々の愚かさの戒めでもあるデシ」
「「「どれほど都合が悪くても、それは大切なものなのです」」」
……そう言われてしまうと反論は出来ない。少し真っ正直すぎるが、それを悪いとは決して言えなかった。
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