この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 大火 】

魔王というシステム 前編

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 ユニカが妊娠……本気マジで血の気が引く。

「ええと、マジですか?」

 俺の子供? いや、他に父親候補なんていないよ。だが全く覚悟が出来ていない。
 そもそも今のこの状態でなんて子供なんて……いや、逃げてはいけない事だ。それは解っている。

「マジと言うものデス。推定デスガ、282日後に出産の公算が高いと思われマス」

 そうか……だが彼女が本当に心から望んでいるかは解らない。
 あの後、本人の意志だと確認は取ったが、その意図は断じて語ろうとはしなかった。
 本当にどう云うつもりなんだろう……ふと遠い目をしてしまう。
 だがこれは考えても仕方がない。これから受け止めるべき問題だろう。

「他には何か判ったか?」

「デハ、サキュバスの方からお願いシマス」

 ゲルニッヒの頭が一回転すると、サキュバス達の方に話を振る。
 先ほどからルリアが天井の隅で睨んでる事を考えると、さっさと話を終わらせてホテルから追い出せと言う事なのだろう。
 相変わらず死霊レイスとサキュバスの相性はあまり良くないらしい。

「ではではお待ちかねー」
「調べてきた情報でーす」

「あ、そういえば名前聞いてなかったな。えーと……」

「私がレトゥーナ、こっちがオゼットですわ」

 自己紹介をした方、レトゥーナは艶やかなロングの黒髪に黒い瞳。肌は少し褐色で、全体的痩せ型のスレンダー体系だ。
 身長は156センチと言ったところだろうか。少し目じりが下がった優しそうな顔立ちで、全体的に清楚でお淑やかな雰囲気だ。
 まあサキュバスなんだが。

 オゼットと呼ばれたサキュバスは細くふわりとした金髪を肩で切り揃えており、瞳は碧色。肌は白く身長は147センチ程度と小さめだが、その見た目に反して胸はなかなか凶悪なものをお持ちだ。
 こちらは逆に勝気で活発な感じのする子だ。少し子供っぽさはあるが、サキュバスの見た目は変幻自在だからな……あまり意味はないだろう。

 服装はサキュバス共通なのだろう、コウモリ柄のチューブトップブラに布地が極端に少ないビキニパンツ。色は両方とも黒だ。

 おそらく、今後は彼女達がサキュバスとの窓口役になるんだろう。しっかりと覚えておかないとな。

「それで何が判ったんだ?」

「人類は何処の国も、大きな食糧問題を抱えていますわ」
「海で大量の魔族が暴れ出したので、海路が全滅だって」

 ……ゲルニッヒとエヴィアを交互に見る。何か知っているだろ?

「魔王が領域移動の許可を出した時、多分海の方も出しているかな。それで自由に移動を始めたと思うよ」

 ――参ったね……予定外に出てきたのは軍隊蟻だけじゃなかったのか。その様子だと、こっちの領域にも問題が出ている可能性がある。一度、全部を見回って確かめないといけないかもしれない。

 それにしても海か……確かこの世界は大陸は一つ。他には小群島があるだけだったか。だとすれば海路はあまり重要じゃないだろう。
 漁業に関しては打撃だろうが、俺の世界では漁業が占める食料事情はどうだったかな? 
 無視できるものではないだろうが、それでも人類の滅亡には至るまい。この問題はあまり重視しなくていいだろう。
 それよりも――

「何とか領域解除とか制限とか、そういった技能を覚えたいよ。多少スパルタでも良いからどうにかならないかな」

「サホド難しくは有りまセンヨ。タダ、魔王の魔力は世界に散っていマスガ、ソレがまばらデス。ソノ為不具合が出ているのデショウ」

「あれかー……全部集まるまでに5千年だっけ?」

 しかも支払いで使っているから、カウンターは1日分も動いていない。後5千年だ。この数字は当分減る事は無いと思われる。

「大体、なんで俺の魔力はあんな風に空を覆っているんだ? 体には入りきらないって事か?」

 言ってみて気が付く。それは少し違う……いや、明確に違う。
 姿勢を正し、少し前のめりになって真面目にただす。

「質問を変えるぞ。俺はずっと、何かのミスで俺の魔力が空にあるのだと思っていた。だけど違うよな? 俺が来る前から、あれは空にあったんだ。どうなんだ?」

「ハイ、ソノ通りです。あれは魔王がこの世界をあまねく管理するためのシステム。歴代魔王の記憶と意識の集合体でもアリマス。勿論貴方が来る前からありマシタ。そして今は、貴方自身が含まれマス。先代魔王が死した後、一度エヴィアの中に収納されマシタガ、何らかの理由で放出されてしまいマシタ。収納されていた間は、接続が切れていたと認識してイマス」

 疑問はあったが、同時に予感もあった。
 最初、俺はこの姿で日本で生きていたから、この姿形でこちらの世界に転生してきたのだと考えた。
 だが違う。この体は地上で行動するための端末みたいなもので、本体は空にある。あの空を覆う雲を、自分だと直感していたのはそのためだ。
 地上の肉体と空の雲、両方合わせた物が俺の転生してきた真の姿という訳だ。

 召喚されて暫くの違和感も、俺自身が分断されていたからなのだろう。
 そしていきなり出会ったばかりのエヴィアに親近感を感じたのも、おそらく俺自身が中に収納されていた時期があったからだと考えられる。
 結局、放出と同時に接続とやらが戻り、俺は俺自身に戻った。あのタイミングは、偶然だったのだろうか……。

「今までの魔王とどう違うんだ?」

「接続が弱すぎるのデス。本来なら正しい手順がありマスガ、今回は先代魔王の意向でそれを省略しマシタ。従来であれば正しく接続サレ、貴方は真の魔王として絶大な力を行使出来たデショウ。デスガ結果は今の通りデス。地上の貴方は魔王というより人に近い。魔王の魔力……つまり空の貴方の多くも行き場を失い、世界に溶け込みつつアリマス」

「それはいずれ戻るんだろ。それならいいよ。だけど接続ねぇ……」

 地上の俺はまぁ俺なのだろう。だが空の、歴代魔王の意志とやらが混じった俺はどこまでが俺なのだろうか。だが実際の所、ただの一般人だった俺がここまでやれているのにも、歴代魔王の記憶や意識とやらが関係していると思われる。それに強大な力……惹かれはするが、同時にかなりリスキーな事も解ってきた。

「地上の貴方が失われレバ、もはや空にある魔王の魔力を繋ぎ止めることは出来マセン。魔王の終焉を意味します。その点はお気を付けクダサイ」
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