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【 儚く消えて 】
サキュバスの酒場 後編
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今日は旅路で疲れているから――そう言われて部屋へ案内されると、そこは中央に丸いベッドとガラスで仕切られたバスルーム。
原理は解らないが、部屋はピンクの照明で照らされ怪しい雰囲気が滲み出ている。
だが気にしたら負けだろう……。
「風呂があるのか! 助かるよ」
どちらかと言えば、やはり風呂だ。
極寒の中、ずっとスースィリアの頭の上にいたので汗はかいていない。だがそれでも入浴は疲れを癒してくれる。
「お背中流しましょうかー?」
さっきまで消えていた死霊のルリアがやってくる。お前触れないだろうが。
最近分かってきた、油断しなければ過剰に吸われることは無いという事を。色香に負けなければ大丈夫だ。
「大体、今までどこにいたんだ? こっちは横綱に囲まれて大変だったんだぞ」
……まあルリアが居ても何にもならないが。
「んー、なんかサキュバスとは相性が悪いのですよね。まあ死霊の性と申しましょうか。互いの魔力の関係ですわ。アッチは剥き出しと言いますか、わたくし達のふわふわ系とはあまり合いませんの」
さっぱり判らんが、一緒には行動しないって事だけ分かればいいか。
しかし油断しなければ良いとはいえ、ルリアは魔力が欲しくなると挑発的だ。
宙をひらひら舞いながら胸元や太腿をチラチラ見せてくる。しかも俺は、一糸纏わぬ全裸状態!
うーん、だが惜しいな。確かに魅力的だが、触れない事が分かっているだけにあまり反応しない。もしスカートのたくし上げとかしてくれたら危なかったが……
「なるほどー、魔王様はこういったのがお好きですのね」
そう言うと、ルリアはゆっくり、じっくりと膝下メイド服のスカートをたくし上げる。
「な、なに!? なんで?」
――さすがに今ちょっと魔力を持っていかれた!
「ふふふ、お分かりになりませんの? わたくし達は魔王様の魔力で生きる者。頂いておりますのは魔王様の一部でもありますのよ」
「俺の影響を受けるって事か!?」
だとしたら不死者達が肉々言っていたのも、実は俺の精神状態が影響を与えていたのか!?
「さあどうです? どうですか? 出そうでしょう? 我慢しなくってもいいのですよ」
だんだんとルリアのスカートが上に上がり、微かに白いものが見えそうで見えない!
「さあ魔王様、ドーンと出しちゃってください! 遠慮なさらずドーンとですよ!」
……やばい、本当に出てしまいそうだ、魔力が。
だがすんでの所で、真っ裸のエヴィアのチョップがルリアの脳天に突き刺さる。見事なまでに垂直の一撃だ。
ルリアは口からポワンと何か白いものを出して消えてしまったが、あれ大丈夫なのか? 殺してないよな?
「魔王はもうちょっと精神を鍛えた方が良いかな。ルリアは大丈夫だよ。死霊は触られるのに慣れていないから、驚いただけだよ」
そう言いながらざぶんと風呂に一緒に入ってくる。浴室に入ってきたときに既に脱いでいたから最初からそのつもりだったのか? いつもの無表情からは、今一つわからない。
「さあ魔王、ドーンと出しちゃってくださいかな」
いきなりの不意打ちセリフで一瞬思考が止まる。どことなくルリアの口調を真似てはいるが、表情が無いので台無しだ。
「そういう事は覚えなくていいの」
両手でほっぺたをムニムニする。なんかこう、心から落ち着いた気分になるのは何時以来だろう。この世界に来てから、ずっと気を張っていた気がするな……。
そうか、そうだな……俺は壊れかけていたのかもしれない。あの戦いの後から、ずっと人間を殺すための方法ばかりを考えていたのだ。そんな人間がまともなはずがない。
エヴィアも、そしておそらくルリアも、そんな俺に気を使ってくれたのだ。
何かお礼をしないといけないな……そうだ!
「エヴィア、俺の世界の話をしよう」
◇ ◇ ◇
「へえ、結構大切なものかと思ったけど、案外扱いはぞんざいだな」
俺の魔力を拡散させる柱、本来は魔王魔力拡散機と言うらしいが、それは倉庫の奥に無造作に転がっていた。しかも上には箱が大量に積まれ、なんとも不安定だ。丸い物の上に荷物置いちゃいけませんって習わなかったのか?
「それねー、もう魔王は千年以上も来てないのよ。だからそこらに放置してたのよね」
倉庫には野次馬サキュバス達がぎゅうぎゅうに詰まっている。
魔王――それ自体が彼女たちにとっては数少ない娯楽なのだろう。しかもこれから、千年以上ぶりに魔力が供給されるとなれば尚更だ。
「それだけ放置して動くものなのかね。ほらよっと」
上に積んであった荷物をポイポイとどかす。サキュバスワッペンとかサキュバスシールとか店の地図とかそんなのだ。だがこの店に客が来るかは疑わしい。
何とか掘り出して柱を立てると、やることはいつも通り。
だが少し違うのは――
(俺の影響を受けるんだったな……)
「それじゃ、いつもの様にするかな」
俺が柱に触れ、エヴィアが魔力の調整をする。
『可愛い姿、俺好み、可愛い姿、俺好み、可愛い姿……』
俺の魔力が蟻の巣の様な世界を廻る……ぐるぐる流れる不思議な感覚。
そしてその影響が見る間に顕れていく。
丸々とした巨体だったサキュバスが、瞬く間に普通のサイズに縮んでいく。服も一緒に縮んでいくのは残念だが、その美しさ、可愛さの前では些細な事だ。
それにしても、背は高かったり低かったり、胸も大きかったり小さかったりとバラバラだ。
俺の影響……と言う割には多彩すぎやしないか?
「魔王は節操なしかな……」
ああ、エヴィアはものすごく呆れた口調だ。
だが仕方ないんだよ、女を知らない俺には、本当の好みなんて定まっちゃいないんだ!
だがこれで全ての問題はなくなった。もう拒否すべき理由は何もないのだ!
お姉さま方、よろしくお願いします!
「あ、もう魔力は供給したから絞られる必要はないかな。無駄遣いはいけないって誰かが言ってたよ」
「そ、そんなぁー! お願いエヴィア! 捨てさせてー!」
「ダメかな。それに元々は魔力の調節方法を学びに来たんだよ」
あー、そう言えばそうだ。スースィリアとも約束していたんだっけ。
だけど、ここでどうやって勉強すればいいんだ?
「魔王には、サキュバスの子供たちに離乳食を与える仕事をしてもらうかな」
……なんだ、その色々な意味で超危険なパワーワードは。
原理は解らないが、部屋はピンクの照明で照らされ怪しい雰囲気が滲み出ている。
だが気にしたら負けだろう……。
「風呂があるのか! 助かるよ」
どちらかと言えば、やはり風呂だ。
極寒の中、ずっとスースィリアの頭の上にいたので汗はかいていない。だがそれでも入浴は疲れを癒してくれる。
「お背中流しましょうかー?」
さっきまで消えていた死霊のルリアがやってくる。お前触れないだろうが。
最近分かってきた、油断しなければ過剰に吸われることは無いという事を。色香に負けなければ大丈夫だ。
「大体、今までどこにいたんだ? こっちは横綱に囲まれて大変だったんだぞ」
……まあルリアが居ても何にもならないが。
「んー、なんかサキュバスとは相性が悪いのですよね。まあ死霊の性と申しましょうか。互いの魔力の関係ですわ。アッチは剥き出しと言いますか、わたくし達のふわふわ系とはあまり合いませんの」
さっぱり判らんが、一緒には行動しないって事だけ分かればいいか。
しかし油断しなければ良いとはいえ、ルリアは魔力が欲しくなると挑発的だ。
宙をひらひら舞いながら胸元や太腿をチラチラ見せてくる。しかも俺は、一糸纏わぬ全裸状態!
うーん、だが惜しいな。確かに魅力的だが、触れない事が分かっているだけにあまり反応しない。もしスカートのたくし上げとかしてくれたら危なかったが……
「なるほどー、魔王様はこういったのがお好きですのね」
そう言うと、ルリアはゆっくり、じっくりと膝下メイド服のスカートをたくし上げる。
「な、なに!? なんで?」
――さすがに今ちょっと魔力を持っていかれた!
「ふふふ、お分かりになりませんの? わたくし達は魔王様の魔力で生きる者。頂いておりますのは魔王様の一部でもありますのよ」
「俺の影響を受けるって事か!?」
だとしたら不死者達が肉々言っていたのも、実は俺の精神状態が影響を与えていたのか!?
「さあどうです? どうですか? 出そうでしょう? 我慢しなくってもいいのですよ」
だんだんとルリアのスカートが上に上がり、微かに白いものが見えそうで見えない!
「さあ魔王様、ドーンと出しちゃってください! 遠慮なさらずドーンとですよ!」
……やばい、本当に出てしまいそうだ、魔力が。
だがすんでの所で、真っ裸のエヴィアのチョップがルリアの脳天に突き刺さる。見事なまでに垂直の一撃だ。
ルリアは口からポワンと何か白いものを出して消えてしまったが、あれ大丈夫なのか? 殺してないよな?
「魔王はもうちょっと精神を鍛えた方が良いかな。ルリアは大丈夫だよ。死霊は触られるのに慣れていないから、驚いただけだよ」
そう言いながらざぶんと風呂に一緒に入ってくる。浴室に入ってきたときに既に脱いでいたから最初からそのつもりだったのか? いつもの無表情からは、今一つわからない。
「さあ魔王、ドーンと出しちゃってくださいかな」
いきなりの不意打ちセリフで一瞬思考が止まる。どことなくルリアの口調を真似てはいるが、表情が無いので台無しだ。
「そういう事は覚えなくていいの」
両手でほっぺたをムニムニする。なんかこう、心から落ち着いた気分になるのは何時以来だろう。この世界に来てから、ずっと気を張っていた気がするな……。
そうか、そうだな……俺は壊れかけていたのかもしれない。あの戦いの後から、ずっと人間を殺すための方法ばかりを考えていたのだ。そんな人間がまともなはずがない。
エヴィアも、そしておそらくルリアも、そんな俺に気を使ってくれたのだ。
何かお礼をしないといけないな……そうだ!
「エヴィア、俺の世界の話をしよう」
◇ ◇ ◇
「へえ、結構大切なものかと思ったけど、案外扱いはぞんざいだな」
俺の魔力を拡散させる柱、本来は魔王魔力拡散機と言うらしいが、それは倉庫の奥に無造作に転がっていた。しかも上には箱が大量に積まれ、なんとも不安定だ。丸い物の上に荷物置いちゃいけませんって習わなかったのか?
「それねー、もう魔王は千年以上も来てないのよ。だからそこらに放置してたのよね」
倉庫には野次馬サキュバス達がぎゅうぎゅうに詰まっている。
魔王――それ自体が彼女たちにとっては数少ない娯楽なのだろう。しかもこれから、千年以上ぶりに魔力が供給されるとなれば尚更だ。
「それだけ放置して動くものなのかね。ほらよっと」
上に積んであった荷物をポイポイとどかす。サキュバスワッペンとかサキュバスシールとか店の地図とかそんなのだ。だがこの店に客が来るかは疑わしい。
何とか掘り出して柱を立てると、やることはいつも通り。
だが少し違うのは――
(俺の影響を受けるんだったな……)
「それじゃ、いつもの様にするかな」
俺が柱に触れ、エヴィアが魔力の調整をする。
『可愛い姿、俺好み、可愛い姿、俺好み、可愛い姿……』
俺の魔力が蟻の巣の様な世界を廻る……ぐるぐる流れる不思議な感覚。
そしてその影響が見る間に顕れていく。
丸々とした巨体だったサキュバスが、瞬く間に普通のサイズに縮んでいく。服も一緒に縮んでいくのは残念だが、その美しさ、可愛さの前では些細な事だ。
それにしても、背は高かったり低かったり、胸も大きかったり小さかったりとバラバラだ。
俺の影響……と言う割には多彩すぎやしないか?
「魔王は節操なしかな……」
ああ、エヴィアはものすごく呆れた口調だ。
だが仕方ないんだよ、女を知らない俺には、本当の好みなんて定まっちゃいないんだ!
だがこれで全ての問題はなくなった。もう拒否すべき理由は何もないのだ!
お姉さま方、よろしくお願いします!
「あ、もう魔力は供給したから絞られる必要はないかな。無駄遣いはいけないって誰かが言ってたよ」
「そ、そんなぁー! お願いエヴィア! 捨てさせてー!」
「ダメかな。それに元々は魔力の調節方法を学びに来たんだよ」
あー、そう言えばそうだ。スースィリアとも約束していたんだっけ。
だけど、ここでどうやって勉強すればいいんだ?
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……なんだ、その色々な意味で超危険なパワーワードは。
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