この争いの絶えない世界で ~魔王になって平和の為に戦いますR

ばたっちゅ

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【 儚く消えて 】

商人として 後編

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 中央軍事管理室に戻ったリッツェルネールを二人の男が待っていた。偶然出くわしたのではなく、本当に待っているといった風に立っていた二人の男。
 ティランド連合王国グレスノーム・サウルス将軍とパイセン王国リーシェイム・パイセン将軍だ。

  ――これはまた複雑な二人だな……。

「お待ちしておりました、リッツェルネール殿。是非一度、会ってお礼を申し上げたく思いまして」

 そう言ったグレスノーム・サウルス将軍は、少し高めの187センチの身長に濃い栗色の髪、そして黒の瞳。薄い褐色の肌はリッツェルネールに近い。現在の国王であるカルターの直系の子孫に当たるが、病弱のため他家の血族に養子に出された男。
 だがその後は精密で素早い軍団運用を得意とし、数多くの戦場で実績を積み将軍になった。
 叩き上げのプロフェッショナルだ。

「貴殿の国の簡易浮遊式輸送板、実に助かりました。あれが無ければ我々はどうなっていたか判りません。本当に感謝いたします」

「いえ、仕事ですから。個人的に礼を言われる事ではありません」

 簡易浮遊式輸送板ニーバブル22式は、およそ63人の完全装備の兵員を時速60キロメートルの速度で運搬できる。
 コンセシール商国は、ティランド連合王国の命によりこれを3000騎納入。
 更に元々保持していた連合王国の浮遊式輸送板1600騎を加えた運搬能力はおよそ31万人分にも及ぶ。
 この展開能力のおかげで短期間に多くの兵を集めることが出来、また撤退も容易だった。
 逆にそれが無かったら、ティランド連合王国軍はあの地で壊滅していたかもしれない。

「それでなのですが、我が国にもニーバブル22式を売って頂きたいのです。勿論、それなりの金額は用意させて頂きます」

 そう言って話しかけてきたもう一人の男、こちらの事情はもっと複雑だ。
 地球で、例えば日本であれば、その国を治めるのは日本だれそれさんではない。他の国も同様だ。求心力は国家にあり、個人ではないからだ。

 逆に、この世界では求心力は血族にある。だからティランド連合王国はティランド血族が、ゼビア王国はゼビア血族が納める地となる。もし滅べば、その血族は奴隷になるか希望塚送り――つまり名誉を守るために殉死となる厳しい世界だ。

 では確実のその国の血族が王になるのか? ところがそうではない。血族外の人物が特別な功績をあげ、国民の支持が集まり過ぎた場合は、その人間が一代限りの代理王となる事もある。
 特に魔族領で大量戦死者の出ている現在ではさほど珍しくはない。

 彼――リーシェイム・スパイセンの祖国スパイセンもその一つで、現在国家を収めているのは”有能ではないが無能でもない”シコネフス・ライン・エーバルガット。
 特に大きな業績を上げているわけではないが、国民の支持が高い男が代理国王となっている。

 一方、この背の高くシャープな顔つき、そして金色の髪に金色の瞳を持つリーシェイム・スパイセンの業績も決して劣らない。天才的な軍事センスと外交力で国内外にも名を轟かせていおり、彼を王にという声も高い。

 ――さて、この男に投資すべきかどうか……。

 リッツェルネールとしては値踏みの難しい男だ。彼が王になるなら少し無理をしてでも貸を作っておきたいが、あの腰の低い男、 シコネフス王の下に甘んじているようであれば貸を作る価値はない。

「大変申し訳ありませんが、現在生産ラインが埋まっております。どうでしょう、緊急用であれば1つ型落ちになりますが、ニーバブル19式であれば幾許いくばくかはご用意できますが」

「そうですか……そうですね、では詳細を詰めましょう」

 こうしてリッツェルネールは再び個室へと消えていった。
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