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【 戦争 】
魔王、炎と石獣の領域に入る 前編
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全員で一つの入り口から入るのは無理だろう――そんな訳で全体を18個に分け、それぞれの道から進むことになった。
しかし他はどれもハズレって事か……本当にこんな場所を攻めた人間の考えは解らんが、そうせざるを得なかったのだろうな。
俺は魔人エヴィアと一緒に最短の、だが一番細い道を進むことになったわけだが……
「道が狭いというか、これ邪魔なんだけど!」
狭い幅の道にズラリと石の彫刻が並べられてある。いや道だけじゃない。両側の壁に埋まっているのもいれば、壁の上に飾ってある物もある。
大きさはまちまちで、手のひらサイズから俺の身長の倍以上の物もある。
形も世界中の動物や、空想上の生き物も作りましたって位にバリエーション豊かだ。
どれも黒曜石の様に黒く艶やかな表面だが、掘られた部分は白い。
目の部分は円を何重にも重ねたグルグル目玉で、体には動物の形に合わせて鱗や毛、はたまた変な模様が幾何学的に掘られている。
まるでかつての巨石文明の遺産、そういった風情の彫刻群。
面白い特徴としては、全部が等しく山の下。つまり登ってくる俺の方向を向いていると言う事だ。まるで上ってきた人間を歓迎……いや警戒しているかのような配置。
それが登頂からずっと道に大量に転がっているのだから歩きにくくてしょうがない。
一体誰がこんなものを作ったのやら……魔人スースィリアと別れるのは不安だったが、さすがにここはあの巨体では通れない。
「熱い……」
炎の竜巻は遠巻きに見ているだけだが、それでも地熱がすごい。
この超暑苦しい服を脱いでしまいたいが、それはさすがにみっともない。それにこれは、俺の決意の表れでもあるのだ。
「でもやっぱ休憩……」
だが体力の限界には勝てない。もう汗だくだし足もパンパンだ。少し休憩しないと身がもたない。やっぱ山は苦手だ、海が良い。
「お疲れ様かな、魔王。夜には坑道には入れるから、明日からはもっと楽だよ」
「坑道はどのくらい歩くんだっけ?」
手近な石像に座って汗を拭くが、後から後から噴き出してくる。マジできつい。
「坑道で4泊して、魔王の居城で3泊してみんなの到着待ちかな。そのあとまた坑道で3泊して朝には反対側の山に出るよ」
最後の待機を含めると本番は11日後か……にしても、エヴィアは暑さに強いのか結構ケロリとしているな。それにあの高露出で涼しげな服が羨ましい。こっちはどう見ても冬服だぞ。
しかも山道はかなりの長さで登りもきつい。スースィリアならもっと早いだろうが、不死者の軍団を引き連れてではそうもいかない。
それにしても周りの石像達は何なのだろう。じっとこちらを見ている彼らもまた、廃墟のようにかつての魔人が作ったのだろうか。
あの廃墟はどれほど時間が経っても永遠の廃墟として存在する。ならば一度は溶岩に沈んだこれらもまた、永遠に残り続けるんだろうか――
いや待て!! 立ち上がって周囲を確認する。
全ての石像は全部こちらを見ている。
山の上も、左右の壁からも、そして今登ってきたはずの麓方面に置かれて居るのも全てだ。
今までの暑さが嘘のように背筋が凍る。
この石像群は麓を向いているんじゃない、ずっと俺を見ていたのだ。
「これも、俺の魔力に反応しているのか?」
不死者や炎の竜巻と同じ――、
「ちょっと違うかな。彼らは石獣。ここに住む動物だよ。魔王はもう気が付いていると思ってたよ」
動物? これ……いやこいつら全部生き物なのか!?
「彼らは普通に食事を採るから魔王の魔力はいらないかな。でも魔王の言う事もちゃんとは聞かないよ。世の中良い事ばかりじゃないって誰かが言ったよ」
いやどうせ要求されても魔力は空っぽ、先約が多すぎて支払いきれない。しかし言う事は聞かないが襲っては来ない。俺は彼らにとって敵ではない、その認識で良いのか? それともまだ警戒されているだけか? つかドカンと座っちゃってたけど良いのか? それに――、
「声が聞こえないんだけど? 本当に生きてる?」
「彼らは無口かな。年一回くらいはしゃべるよ。魔王には従わないけど、魔人の言葉は分かるから襲ってはこないよ」
しかし他はどれもハズレって事か……本当にこんな場所を攻めた人間の考えは解らんが、そうせざるを得なかったのだろうな。
俺は魔人エヴィアと一緒に最短の、だが一番細い道を進むことになったわけだが……
「道が狭いというか、これ邪魔なんだけど!」
狭い幅の道にズラリと石の彫刻が並べられてある。いや道だけじゃない。両側の壁に埋まっているのもいれば、壁の上に飾ってある物もある。
大きさはまちまちで、手のひらサイズから俺の身長の倍以上の物もある。
形も世界中の動物や、空想上の生き物も作りましたって位にバリエーション豊かだ。
どれも黒曜石の様に黒く艶やかな表面だが、掘られた部分は白い。
目の部分は円を何重にも重ねたグルグル目玉で、体には動物の形に合わせて鱗や毛、はたまた変な模様が幾何学的に掘られている。
まるでかつての巨石文明の遺産、そういった風情の彫刻群。
面白い特徴としては、全部が等しく山の下。つまり登ってくる俺の方向を向いていると言う事だ。まるで上ってきた人間を歓迎……いや警戒しているかのような配置。
それが登頂からずっと道に大量に転がっているのだから歩きにくくてしょうがない。
一体誰がこんなものを作ったのやら……魔人スースィリアと別れるのは不安だったが、さすがにここはあの巨体では通れない。
「熱い……」
炎の竜巻は遠巻きに見ているだけだが、それでも地熱がすごい。
この超暑苦しい服を脱いでしまいたいが、それはさすがにみっともない。それにこれは、俺の決意の表れでもあるのだ。
「でもやっぱ休憩……」
だが体力の限界には勝てない。もう汗だくだし足もパンパンだ。少し休憩しないと身がもたない。やっぱ山は苦手だ、海が良い。
「お疲れ様かな、魔王。夜には坑道には入れるから、明日からはもっと楽だよ」
「坑道はどのくらい歩くんだっけ?」
手近な石像に座って汗を拭くが、後から後から噴き出してくる。マジできつい。
「坑道で4泊して、魔王の居城で3泊してみんなの到着待ちかな。そのあとまた坑道で3泊して朝には反対側の山に出るよ」
最後の待機を含めると本番は11日後か……にしても、エヴィアは暑さに強いのか結構ケロリとしているな。それにあの高露出で涼しげな服が羨ましい。こっちはどう見ても冬服だぞ。
しかも山道はかなりの長さで登りもきつい。スースィリアならもっと早いだろうが、不死者の軍団を引き連れてではそうもいかない。
それにしても周りの石像達は何なのだろう。じっとこちらを見ている彼らもまた、廃墟のようにかつての魔人が作ったのだろうか。
あの廃墟はどれほど時間が経っても永遠の廃墟として存在する。ならば一度は溶岩に沈んだこれらもまた、永遠に残り続けるんだろうか――
いや待て!! 立ち上がって周囲を確認する。
全ての石像は全部こちらを見ている。
山の上も、左右の壁からも、そして今登ってきたはずの麓方面に置かれて居るのも全てだ。
今までの暑さが嘘のように背筋が凍る。
この石像群は麓を向いているんじゃない、ずっと俺を見ていたのだ。
「これも、俺の魔力に反応しているのか?」
不死者や炎の竜巻と同じ――、
「ちょっと違うかな。彼らは石獣。ここに住む動物だよ。魔王はもう気が付いていると思ってたよ」
動物? これ……いやこいつら全部生き物なのか!?
「彼らは普通に食事を採るから魔王の魔力はいらないかな。でも魔王の言う事もちゃんとは聞かないよ。世の中良い事ばかりじゃないって誰かが言ったよ」
いやどうせ要求されても魔力は空っぽ、先約が多すぎて支払いきれない。しかし言う事は聞かないが襲っては来ない。俺は彼らにとって敵ではない、その認識で良いのか? それともまだ警戒されているだけか? つかドカンと座っちゃってたけど良いのか? それに――、
「声が聞こえないんだけど? 本当に生きてる?」
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