44 / 365
【 戦争 】
はじめて
しおりを挟む
だが何とかしようにも、裸一貫、無位無官の一文無し。そして下手すりゃ子供より弱い。一応魔王の特性か、死にそうな時が判るのと言葉が解るのだけは誇って良い能力だろう。しぶとさだけは一人前ってね。しかし、言葉の理解力は何のためについているんだろう?
「それは魔人と話すためかな」
どこかでエヴィアの声がする……上流だ。ざぶーん、ざぶーんと音を立てて近づいて来ている。
だが違う、この音はもっと巨大な生物だ。まさか巨大キリギリスとか持ってきたんじゃないだろうな! もう喰わないぞ!!!
湯煙を割って表れたのは魔人エヴィアだ、それは間違いない。それも全裸!
だが瞼は腫れ、横幅は広くなり、腕も足も膨れ上がっている。それはまさに水死体、いや遮光器土偶のようだ。
余りの驚きに声も出ない。口を鯉のようにパクパクさせ全身がひきつる。
互いの間に走る緊張と沈黙。いったいエヴィアに何があったというのか!
しかし――、
ざばあああぁぁぁぁぁぁぁ……という水の音と共に魔人エヴィアから大量の水が流れ落ち、その体はみるみる元に戻っていく。
水で膨らんでたのかよ!
「疲れてる魔王にサービスしてあげたかな。でも魔王は少し特殊性癖?」
そういや脂肪がついている方が美しいんだったな、この世界。だがあれは土左衛門っていうんだ。
元に戻った全裸のエヴィアが横に座るが、先ほどのインパクトが強すぎてエロさを欠片も感じない。
いや元々そう言った感情は無いな。なんか自分の一部みたいな、そんな気分すらある。
「ああ、そうだ。魔人と話すためってどういう意味だ?」
あまりの衝撃に忘れそうになった話に戻す。
「言葉通りかな。魔人は知識を必要とするの。他の魔人の知らない事、知らない生き物、知らない世界。そう云ったのを求めるの」
いつの間にかエヴィアが近い!
隣に座っていたのに、今は俺の右足腿を両足で挟んで座っている――
「そうやって知識を沢山持っている相手を求めるかな。魔王はとても魅力的だよ」
両手を肩に置き、ぴったりと体をくっつけてくる。瞳は怪しい光を放ち怪しい神秘性を漂わせる。
む、胸が! 小さな胸が! ―――だが思ったような感触では無い。
互いの胸が合わさっている部分はまるで張り付いているような、浸透しているような、そんな不思議な感覚に包まれる。
「私たち魔人はこうやって一つの魔人になるかな。でも魔王は魔人じゃないからムリかな。だから言葉で……ごめんね、こんな事して……」
次第に魔人エヴィアはその輪郭を失い、ゆっくりと、まるで白い大きな餅のように変化していく。
ああ、こうやって……次第に理解してゆく。エヴィアになって700年くらい、単独行動が魅力のためってこういう意味か。
魔人は知らない知識を求めて魔人同士で融合し、新しい魔人になるのだ。
魔人エヴィアの体は溶け、徐々に俺の肌に沿って広がっていく。
ぴったり合わさった互いの胸から、首、肩、背中、腹……吸いつくように、舐めるように、肌に沿って俺を包んでいく。
だが、エヴィアは俺一つになることは出来ない。魔王と魔人――それぞれ違う生き物なのだから。
俺からもまた、その体は白い塊となり、何処が顔で何処が手や足なのかもわからない。想像したこともない、初めて触れる不思議な命。
だがなぜだろう。この顔も形も解らない生命に慈しみを感じる。
異性として……いやそれは違う。今エヴィアは人の形をしていない。
では小動物などに向ける愛玩の心……それも違う。俺はエヴィアに何の優位性も感じていない。むしろ保護されているのは俺の方だ。
魔人エヴィアの体はどんどん柔らかく溶けて肌の上を進む。もう水をすくっているような感覚でエヴィアを掴むことは出来ない。一方でエヴィアも俺と融合する事は無い。
互いに決して交わる事の無い関係……
だけど理由は解らないが、この生命がたまらなく愛おしい――そう心の底で感じる。
ん、ちょっと待って!
皮膚を浸透していくエヴィアが次第に下へと延びてゆく。
だが俺の口の部分は空けてある、理性は残っているはずだ。
「ちょっとストップ! エヴィアストップ! その先はまずい!」
だがエヴィアは止まらない。ゆっくりと張り付くように下半身に到達すると、さらなる皮膚を求めてついにある一点に集中する。
「エヴィアストップ! そこはダメ、絶対ダメ! やめてやめてやめてやめて! エヴィアステイ! ステーーーーイ!」
だが叫びは届かない。エヴィアの動きは止まらない。
「そこはお尻のあ……あっ! あああぁぁァァァァァ――!」
――初めてを……失った
「それは魔人と話すためかな」
どこかでエヴィアの声がする……上流だ。ざぶーん、ざぶーんと音を立てて近づいて来ている。
だが違う、この音はもっと巨大な生物だ。まさか巨大キリギリスとか持ってきたんじゃないだろうな! もう喰わないぞ!!!
湯煙を割って表れたのは魔人エヴィアだ、それは間違いない。それも全裸!
だが瞼は腫れ、横幅は広くなり、腕も足も膨れ上がっている。それはまさに水死体、いや遮光器土偶のようだ。
余りの驚きに声も出ない。口を鯉のようにパクパクさせ全身がひきつる。
互いの間に走る緊張と沈黙。いったいエヴィアに何があったというのか!
しかし――、
ざばあああぁぁぁぁぁぁぁ……という水の音と共に魔人エヴィアから大量の水が流れ落ち、その体はみるみる元に戻っていく。
水で膨らんでたのかよ!
「疲れてる魔王にサービスしてあげたかな。でも魔王は少し特殊性癖?」
そういや脂肪がついている方が美しいんだったな、この世界。だがあれは土左衛門っていうんだ。
元に戻った全裸のエヴィアが横に座るが、先ほどのインパクトが強すぎてエロさを欠片も感じない。
いや元々そう言った感情は無いな。なんか自分の一部みたいな、そんな気分すらある。
「ああ、そうだ。魔人と話すためってどういう意味だ?」
あまりの衝撃に忘れそうになった話に戻す。
「言葉通りかな。魔人は知識を必要とするの。他の魔人の知らない事、知らない生き物、知らない世界。そう云ったのを求めるの」
いつの間にかエヴィアが近い!
隣に座っていたのに、今は俺の右足腿を両足で挟んで座っている――
「そうやって知識を沢山持っている相手を求めるかな。魔王はとても魅力的だよ」
両手を肩に置き、ぴったりと体をくっつけてくる。瞳は怪しい光を放ち怪しい神秘性を漂わせる。
む、胸が! 小さな胸が! ―――だが思ったような感触では無い。
互いの胸が合わさっている部分はまるで張り付いているような、浸透しているような、そんな不思議な感覚に包まれる。
「私たち魔人はこうやって一つの魔人になるかな。でも魔王は魔人じゃないからムリかな。だから言葉で……ごめんね、こんな事して……」
次第に魔人エヴィアはその輪郭を失い、ゆっくりと、まるで白い大きな餅のように変化していく。
ああ、こうやって……次第に理解してゆく。エヴィアになって700年くらい、単独行動が魅力のためってこういう意味か。
魔人は知らない知識を求めて魔人同士で融合し、新しい魔人になるのだ。
魔人エヴィアの体は溶け、徐々に俺の肌に沿って広がっていく。
ぴったり合わさった互いの胸から、首、肩、背中、腹……吸いつくように、舐めるように、肌に沿って俺を包んでいく。
だが、エヴィアは俺一つになることは出来ない。魔王と魔人――それぞれ違う生き物なのだから。
俺からもまた、その体は白い塊となり、何処が顔で何処が手や足なのかもわからない。想像したこともない、初めて触れる不思議な命。
だがなぜだろう。この顔も形も解らない生命に慈しみを感じる。
異性として……いやそれは違う。今エヴィアは人の形をしていない。
では小動物などに向ける愛玩の心……それも違う。俺はエヴィアに何の優位性も感じていない。むしろ保護されているのは俺の方だ。
魔人エヴィアの体はどんどん柔らかく溶けて肌の上を進む。もう水をすくっているような感覚でエヴィアを掴むことは出来ない。一方でエヴィアも俺と融合する事は無い。
互いに決して交わる事の無い関係……
だけど理由は解らないが、この生命がたまらなく愛おしい――そう心の底で感じる。
ん、ちょっと待って!
皮膚を浸透していくエヴィアが次第に下へと延びてゆく。
だが俺の口の部分は空けてある、理性は残っているはずだ。
「ちょっとストップ! エヴィアストップ! その先はまずい!」
だがエヴィアは止まらない。ゆっくりと張り付くように下半身に到達すると、さらなる皮膚を求めてついにある一点に集中する。
「エヴィアストップ! そこはダメ、絶対ダメ! やめてやめてやめてやめて! エヴィアステイ! ステーーーーイ!」
だが叫びは届かない。エヴィアの動きは止まらない。
「そこはお尻のあ……あっ! あああぁぁァァァァァ――!」
――初めてを……失った
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
無能スキルと言われ追放されたが実は防御無視の最強スキルだった
さくらはい
ファンタジー
主人公の不動颯太は勇者としてクラスメイト達と共に異世界に召喚された。だが、【アスポート】という使えないスキルを獲得してしまったばかりに、一人だけ城を追放されてしまった。この【アスポート】は対象物を1mだけ瞬間移動させるという単純な効果を持つが、実はどんな物質でも一撃で破壊できる攻撃特化超火力スキルだったのだ――
【不定期更新】
1話あたり2000~3000文字くらいで短めです。
性的な表現はありませんが、ややグロテスクな表現や過激な思想が含まれます。
良ければ感想ください。誤字脱字誤用報告も歓迎です。
Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~
月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。
目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。
「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」
突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。
和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。
訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。
「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」
だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!?
================================================
一巻発売中です。
クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる