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【 史上最高の番犬であり忠犬 】
窮地のオーキス
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険悪な様子を見かねたのだろう。エルダーブルグ公爵が仲裁に入ってくれた。
「お前も年頃だ。それに近しい男性などいなかったからな、混乱するのも無理はない。しかしこれからの事を考えれば、今のうちに慣れておくべきだろう。なあに、安心しろ。大切な娘の傍に置くのだ。身元に関しては完璧な調査をしてあるし、もちろん去勢済みだ。全部取ってある。だから安心していいぞ」
知って驚く意外な事実。そんな設定だったんだ!?
確かに乙女ゲーでそんな生々しい設定語れないわ。
でも確かに当り前よね。万が一伯爵令嬢が傷ものにされたなんて事になったら、スキャンダルじゃすまないもの。
もっとも、クラウシェラにそんな心配いらないと思うけど……禁断のロマンスとか無い限りね。
「ふうん。お父様がそこまでおっしゃられるなら、間違いないのでしょうね。顔を上げなさい。発言を許します」
「はっ、私はオーキス・ドルテと申します。この身をクラウシェラ・ローエス・エルダーブルグ様に捧げるため、全てを捨てて参りました。この名も今や仮の物。どんな名前でもお申し付けください」
「別に名前なんて呼びやすければどうでも良いわ。好きに名乗りなさい」
「ははっ」
「それより、これから主となる私をどう思うか、率直に述べなさい」
悪意が濁流のように渦巻いてゆく。
今までもずっと包まれていたどす黒い感情。
それさざわめき、波打ち、激しく動き出した感覚。
何かを始める気なんだろう。
でも何を?
ああー、もうっ! あれだけプレイしたのに、自由度が高すぎて特定できない。
それにこの時代の事なんて何も知らないし!
分かるのは、このままでは絶対にダメって事。
この空間に無数の思考の紙が渦を巻いているけど、数が多すぎてさっぱりよ。
「怖れ多きことながら、とてもお美しく思います」
「それで?」
クラウシェラは興味ないといった感じだ。
そりゃまあね、挨拶のように言われ続けているだろうし。
ただそれよりも、何かこれまでとは違った不自然さを感じる。
ほぼ直立不動で睨みつけていた感じから一転。
少し表情が和らいで話しやすくなっている感覚がある。それに動きも出て来たわね。
でもなんかこう、不自然な動き?
視点は相変わらず彼女の物だと思うけど、今どんな顔をしているかとかが鏡を見なくても分かるのは便利。
あ、でも、大抵はそうよね。
自分がどんな顔をしているかなんて、よほど混乱していない限り分かるか。
逆にそれだけに、あたしと彼女が深く繋がっているという証でもあるわ。
って、あたし大ピーンチ! この状況、抜けられるの?
あわよくば別の誰かに移り変りたいところだけど、そんなことできるのかしら?
ううん、諦めちゃあだめ。今は無理でも、きっと出来るようになるわ。
それはともかく、続けての質問を投げかけられたオーキスもピンチのようね。
確かにさっきの様子からすれな、相当に苛烈な人物だって事は分かっているだろうし、去勢された……というか受け入れた時点で、この公爵家というものがどんな所か分かっているわよね。
それ以前に、クラウシェラの事はそもそも聞かされているか。
なんか必死に他の言葉を探しているけど、高貴な人に対して「美しい」を封じられると厄介だわ。
「とても知的な方とお見受けいたしました」
「会ったばかりで、私の内面を計ったと?」
オーキスの全身から流れた汗が、ポタポタと床を濡らす。
場の空気が重くなる。
この方面も潰されたかー。
頑張れオーキス! この窮地を脱するのよ!
少なくともあんたがいないと、盾を失って間違いなく即破滅するから。この子、こんな性格だから。
というより、世の中全部を恨んでいるから!
……主にあたしのせいで。
というより、これからどうするのかしら?
彼女がこの会見に選んだのは、自らを誇示するような派手なドレスではなく、白と緑の清楚なワンピース風のドレス。
……なんか変だ。
これがすごく立派なドレスだとしたら、要旨じゃなくてそっちをほめる手がある。
あたしが知るオーキスは博識な人物だった。
そりゃ公爵家の近習ともなれば、将来は身近な護衛か政務官……秘書かな?
どっちにしても、常にクラウシェラの近くにいる以上、武芸だけでなく知識、教養も徹底してしているだろう。
おそらく――じゃないわ。さっき公爵が言っていたもの。ここで謁見するずっと前から、徹底した英才教育が施されている。
単純に似合っているだのいうセリフはNGだと思う。
だけど、生地や装飾、縫製、そういった点などの方面を誉めれば、間接的にクラウシェラを褒めつつ知識を披露できる。
有能な人間だとアピールできるわけね。
でも当然、それは彼女も知っている。
だから先に封じた?
それも変よね。着替えてからここまで、彼女は彼を処刑する事しか考えていなかった。
この謁見がうまくいかなければ、おそらく公爵は彼を遠い場所へと移すだろう。
そこから人を雇って?
いやいや、ないない。なんと言ってもクラウシェラ公爵令嬢。平民の暗殺者や、ましてやごろつきなんて雇わない。接触すらしない。
そもそも、そう言った身分卑しい連中とは無縁。貴族社会に咲き誇る、1点の曇りなき存在。それが彼女なのだから。
なら下級貴族の兵士にやらせる?
うーん、同じ事だよね。
「お前も年頃だ。それに近しい男性などいなかったからな、混乱するのも無理はない。しかしこれからの事を考えれば、今のうちに慣れておくべきだろう。なあに、安心しろ。大切な娘の傍に置くのだ。身元に関しては完璧な調査をしてあるし、もちろん去勢済みだ。全部取ってある。だから安心していいぞ」
知って驚く意外な事実。そんな設定だったんだ!?
確かに乙女ゲーでそんな生々しい設定語れないわ。
でも確かに当り前よね。万が一伯爵令嬢が傷ものにされたなんて事になったら、スキャンダルじゃすまないもの。
もっとも、クラウシェラにそんな心配いらないと思うけど……禁断のロマンスとか無い限りね。
「ふうん。お父様がそこまでおっしゃられるなら、間違いないのでしょうね。顔を上げなさい。発言を許します」
「はっ、私はオーキス・ドルテと申します。この身をクラウシェラ・ローエス・エルダーブルグ様に捧げるため、全てを捨てて参りました。この名も今や仮の物。どんな名前でもお申し付けください」
「別に名前なんて呼びやすければどうでも良いわ。好きに名乗りなさい」
「ははっ」
「それより、これから主となる私をどう思うか、率直に述べなさい」
悪意が濁流のように渦巻いてゆく。
今までもずっと包まれていたどす黒い感情。
それさざわめき、波打ち、激しく動き出した感覚。
何かを始める気なんだろう。
でも何を?
ああー、もうっ! あれだけプレイしたのに、自由度が高すぎて特定できない。
それにこの時代の事なんて何も知らないし!
分かるのは、このままでは絶対にダメって事。
この空間に無数の思考の紙が渦を巻いているけど、数が多すぎてさっぱりよ。
「怖れ多きことながら、とてもお美しく思います」
「それで?」
クラウシェラは興味ないといった感じだ。
そりゃまあね、挨拶のように言われ続けているだろうし。
ただそれよりも、何かこれまでとは違った不自然さを感じる。
ほぼ直立不動で睨みつけていた感じから一転。
少し表情が和らいで話しやすくなっている感覚がある。それに動きも出て来たわね。
でもなんかこう、不自然な動き?
視点は相変わらず彼女の物だと思うけど、今どんな顔をしているかとかが鏡を見なくても分かるのは便利。
あ、でも、大抵はそうよね。
自分がどんな顔をしているかなんて、よほど混乱していない限り分かるか。
逆にそれだけに、あたしと彼女が深く繋がっているという証でもあるわ。
って、あたし大ピーンチ! この状況、抜けられるの?
あわよくば別の誰かに移り変りたいところだけど、そんなことできるのかしら?
ううん、諦めちゃあだめ。今は無理でも、きっと出来るようになるわ。
それはともかく、続けての質問を投げかけられたオーキスもピンチのようね。
確かにさっきの様子からすれな、相当に苛烈な人物だって事は分かっているだろうし、去勢された……というか受け入れた時点で、この公爵家というものがどんな所か分かっているわよね。
それ以前に、クラウシェラの事はそもそも聞かされているか。
なんか必死に他の言葉を探しているけど、高貴な人に対して「美しい」を封じられると厄介だわ。
「とても知的な方とお見受けいたしました」
「会ったばかりで、私の内面を計ったと?」
オーキスの全身から流れた汗が、ポタポタと床を濡らす。
場の空気が重くなる。
この方面も潰されたかー。
頑張れオーキス! この窮地を脱するのよ!
少なくともあんたがいないと、盾を失って間違いなく即破滅するから。この子、こんな性格だから。
というより、世の中全部を恨んでいるから!
……主にあたしのせいで。
というより、これからどうするのかしら?
彼女がこの会見に選んだのは、自らを誇示するような派手なドレスではなく、白と緑の清楚なワンピース風のドレス。
……なんか変だ。
これがすごく立派なドレスだとしたら、要旨じゃなくてそっちをほめる手がある。
あたしが知るオーキスは博識な人物だった。
そりゃ公爵家の近習ともなれば、将来は身近な護衛か政務官……秘書かな?
どっちにしても、常にクラウシェラの近くにいる以上、武芸だけでなく知識、教養も徹底してしているだろう。
おそらく――じゃないわ。さっき公爵が言っていたもの。ここで謁見するずっと前から、徹底した英才教育が施されている。
単純に似合っているだのいうセリフはNGだと思う。
だけど、生地や装飾、縫製、そういった点などの方面を誉めれば、間接的にクラウシェラを褒めつつ知識を披露できる。
有能な人間だとアピールできるわけね。
でも当然、それは彼女も知っている。
だから先に封じた?
それも変よね。着替えてからここまで、彼女は彼を処刑する事しか考えていなかった。
この謁見がうまくいかなければ、おそらく公爵は彼を遠い場所へと移すだろう。
そこから人を雇って?
いやいや、ないない。なんと言ってもクラウシェラ公爵令嬢。平民の暗殺者や、ましてやごろつきなんて雇わない。接触すらしない。
そもそも、そう言った身分卑しい連中とは無縁。貴族社会に咲き誇る、1点の曇りなき存在。それが彼女なのだから。
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うーん、同じ事だよね。
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