死神の腕時計

三成

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突然目の前が明るくなり、地面に横たわっていた。薄れゆく視界の前には女性が倒れて込んでいる。
周りからは悲鳴や心配する声が聞こえてくるが私は、ゆっくりと目を閉じた。

俺は何時間寝ていたのだろか、身体中が痛いのと感覚が鈍い。

女性が上から覗き込んでいる。
「先生、患者さんが意識を取り戻しました」
白衣を着た中年の男が駆けより、目を無理やり開けさせてライトを当て始めた、
また眩しく身体も怠かったのでまた目を閉じた。

ハッと目を覚ますと周りは真っ暗だった。先程の白衣の中年と違い、漆黒のマントを着込んでる初老の男が私を覗こき込んでいた。
何故か感覚で直ぐに初老の男が死神と判った。

「あんたは、死神か」

「いかにも、私は死神だ」

「俺はもうすぐ死ぬのか」

「お前はまだ死なない」

「そうか…後ろ乗って彼女 真美は生きてるのか!?」

「生きてるがただ、もう直ぐ死ぬ、横を見てみろ」

横のベッドに目をやると呼吸器や色々な管がつけられていた真美の姿が有った。腕には俺が真美の誕生日にプレゼントしたピンク革ベルトの腕時計と古びた腕時計が着いていた。

死神は腕時計の説明を始めた。
「あの腕時計を見て見ろあれが彼女の命時間だ短い針が寿命で長い針が重なると彼女は死ぬ」

普段の時計の数字と違いメモリが100まで有る。真美の時計は短い針が21歳を指していた。もう直ぐ長い針が重なそうだっだ。

「後、3時間の命だ」と死神は無感情で私に告げたのだ。
「嘘だろ」と俺は呟き死神に確認するが何も答えず彼女をジッと見ていた。

「お前にも腕時計を渡しておこう」と死神は腕時計を左手首に巻いた。
時間を見ると短い針が22歳を指していたのと長い針は22近くに来ていた。

「俺はもう直ぐ死ぬのか??」

「お前はまだ死なない、ただ、13日後に 
 死ぬ、ただ……い」

俺は意識が遠のき出して最後まで死神の言葉を聞き取れなかった。


慌し声で目を覚ますと真美のベッド近くで複数の白衣を着た人物が騒いででいた。

ピーーーと電子音が鳴り響いている。

白衣の人物が「電気ショック用意して」と騒いでる。真美の身体が電気ショックを打つたび飛び上がる光景が薄ら見えた。

数分後、医者達が手を止めた。静かな夜中の病院の中電子音だけが鳴り響いていた。

丁度、死神が言っていた3時間後の事であった。

真美が死んでからあっという間に10日が過ぎた。

私は退院できる事になった。母親が迎えに来てタクシーに乗り実家に帰った。
タクシーの帰り道母親と何も話さず無言だった。

夕食は母親が私の好物のチキン南蛮を作ってくれた。正直味が分からなかった。

食事中に母親が重い口をあげ話始めた。私の彼女の真美についてだ。
彼女の母親に何度も謝りに行ったそうだ。

私も真美も母子家庭で女で一つで育てくれた。そんな事も有り真美と気が合って付き合う事になった。

母親は真美の葬儀が3日後に有ると言うと涙をこぼしながら食べた茶碗を片付けてた。

真美がこの世から居なくなった実感がやっとわかると、私は一日中ベッドで泣いた。

時間が過ぎのは早く3日経った。
私は真美の葬儀に向かった。母親は一緒に行こうと言ってくれたが真美との思い出を確認したく歩いて行く事にした。

川沿いの桜の木が植えている遊歩道を歩いてると2ヶ月前に真美と桜を見に行った時の事を思い出していた。

前から喪服を着ている髪の長い女性が見えてた。真美に似た目元と鼻立ちだった。
直ぐに真美の母親だと分かった。
声を出そうとした瞬間、右腹部に強烈な痛みが走った。

「うっっ」

見ると包丁が腹部に突き刺ささっていた。

私はまた地面に横たわっていた。
見上げると真美の母親は鬼の形相で涙を浮かべながら「この人殺、娘を返せ、返して」と怒鳴り走って逃げた。

私は殺されても仕方ないと思いつつふと左腕を見ると死神の腕時計を見た。長い針が22歳に掛かろうしていた。
あぁ、俺はこれで死ぬのかと悟ったが最後に真美に会いたいのと謝りたいと強く思った。

何気なく腕時計を見ると死が迫ってるのが判った。

ふと、つまみを回した。
何と短い針が動いたのだ長い針がカチッと音を立てて22歳を指した。

だが、私は死ななかった。

また黒服の人が向かってくるのがわかった。病院で会った死神だった。

「時計の針を動かしたのか…それは生き 
 たと強く思う人間しか動かせないんだ 
 お前はどんな理由で生きたのか??」

「俺は真美の顔を最後に見て謝りたいし
 変われる事なら今の俺と変わってやり
 たい」

「そうか…それなら彼女の所に向かうんだ」と言い最後に私の耳元で囁き死神は消えた。

腹部の包丁を抜き、真美の家に向かった。
血は止まっていたが激痛は残っていた。

真美のアパートには葬儀に駆けつけでいた何人かの人が集まっていた。

俺は震える手で受付を済まし真美の遺体が有る所に向かった。
真美の母親は真美の遺体近くに座っていた。真美の母親は驚きの余り氷のように固まった。

「何で、ここにいるの……」

真美の母親に「娘さんを返しに来ました」そう伝えて真美の遺体の手を握り死神の腕時計をかけた。

その瞬間、俺はまた地面に横たわった。
また、意識が薄らいできたが真美が起き上がるのが見えた。

そのまま俺は真暗な闇に向かっていった。






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