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第四章:<CONVICT>
<CONVICT> 11
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葵さんの話を聞き終えて真っ先に思ったのは、ただただ信じられず常軌を逸した内容だということ。
上手くまとまらない思考を必死に整理し、聞いたばかりの話を簡略化するとどうなるのかを考える。
復讐、ではないはずだ。
それならば、根塚とか言う男を殺した時点でもう終わっていなくてはならない。
ここでみんなを殺す理由として相応しくない。
では、結局何なのだ?
チラリと周りを窺えば、伊藤さんや美九佐さんたちでさえも、どう反応するべきか戸惑うように口を閉ざしている。
「……なるほどな。どんな理由で殺人をしていたかと思えば、お前、精神に異常をきたしているのか」
そんな中で、最初に口を開いたのはお兄ちゃん。
あんな意味不明な話を聞かされても、全くもってぶれていない。
「精神に異常?」
補足を求めるように、伊藤さんがお兄ちゃんを見る。
「ああ。こいつはきっと、本当に優しい人間だったんだろう。それが、最悪なかたちで人に裏切られ心が折れたことで、精神面が情緒不安定になってしまった。その結果、自暴自棄に陥り憎悪や周囲への悲観、不信感が強くなり全てのものが敵に思えてきてしまい、ついには殺人に手を染めた。……外国とかの話で聞いたことはないか? 幼い頃に体験した経験がトラウマになり、成人してから殺戮に手を染めるような話を。あれに似ているな」
「……そんな、サイコ映画じゃあるまいし」
「純粋故に、闇に染まるときの反動も大きかった。それだけだろう」
サラリと告げ、お兄ちゃんは葵さんへ視線を戻す。
「お前個人の事情はまぁ、わかった。だが、お前がここで行った一連の行動に正当性は微塵もない。あるのは、救いようのないほどの異常性だけだ。大人しく、空き部屋に入っていてもらえると助かるんだが」
「ふざけないでください。あたしの何が異常なんですか? どう考えても間違えてるのはあなたたちの方。だってそうでしょう? 人間以外に、地球の生態系を壊している生物がいる? 都合の良いことばかり言い訳にしていつだって――」
「もう良い。お前の言い分はこれ以上聞く気はない。本州に戻ればおそらく精神鑑定に回されることだろうから、じっくりと診てもらえ」
喚くように喋る葵さんを遮り、お兄ちゃんはうんざりしたようにため息をつく。
「……馬鹿にして。誰が警察になんか。あんなの、どうせ裏では意図的に冤罪や不正なやり取りをしてるような人たちじゃない! 誰がそんな人たちの世話になんかなるもんか!」
痙攣でもしているかのように拳を震わせたかと思うと、葵さんは突然廊下へ向かって駆け出した。
「あ!」
いきなりのことで反応が遅れたあたしたちは、何もできないままそれを見送ってしまう。
「ど、どうします?」
混乱しそうな川辺さんの問いかけに、
「追うぞ。何をしでかすかわからない」
きっぱりとそう告げてお兄ちゃんが走り出した。
それに続くようにしてあたしたちも走り出す。
廊下を出てすぐに右へ向かったお兄ちゃんを追うと、振り返ることなく
「食堂に入った」
と告げてきた。
何をするつもりなのかはわからない。
逃げるのなら、食堂なんか行かずに窓でも開けて飛び出した方が確実っぽいのに。
お兄ちゃんが食堂へ入り、数秒遅れてあたしも到着。
ざっと中を見回すも人の姿はなく、中扉が僅かに開いているだけ。
「奥じゃないでしょうか?」
その扉を指差し、美九佐さんが言った。
窓も開けた形跡がないことを踏まえれば、それしか考えられないか。
全員でそちらへ急ぎ、扉を開けて調理場へと進んだ。
「――!」
そして、その調理場の奥で目的の姿を確認する。
こちらを睨むようにして見つめ、葵さんは手に持った包丁を自らの首に押し当て直立している。
「月見坂様、早まった真似はおやめください」
制止するように両手を前にかざし、川辺さんが声をかけた。
葵さんの話を聞き終えて真っ先に思ったのは、ただただ信じられず常軌を逸した内容だということ。
上手くまとまらない思考を必死に整理し、聞いたばかりの話を簡略化するとどうなるのかを考える。
復讐、ではないはずだ。
それならば、根塚とか言う男を殺した時点でもう終わっていなくてはならない。
ここでみんなを殺す理由として相応しくない。
では、結局何なのだ?
チラリと周りを窺えば、伊藤さんや美九佐さんたちでさえも、どう反応するべきか戸惑うように口を閉ざしている。
「……なるほどな。どんな理由で殺人をしていたかと思えば、お前、精神に異常をきたしているのか」
そんな中で、最初に口を開いたのはお兄ちゃん。
あんな意味不明な話を聞かされても、全くもってぶれていない。
「精神に異常?」
補足を求めるように、伊藤さんがお兄ちゃんを見る。
「ああ。こいつはきっと、本当に優しい人間だったんだろう。それが、最悪なかたちで人に裏切られ心が折れたことで、精神面が情緒不安定になってしまった。その結果、自暴自棄に陥り憎悪や周囲への悲観、不信感が強くなり全てのものが敵に思えてきてしまい、ついには殺人に手を染めた。……外国とかの話で聞いたことはないか? 幼い頃に体験した経験がトラウマになり、成人してから殺戮に手を染めるような話を。あれに似ているな」
「……そんな、サイコ映画じゃあるまいし」
「純粋故に、闇に染まるときの反動も大きかった。それだけだろう」
サラリと告げ、お兄ちゃんは葵さんへ視線を戻す。
「お前個人の事情はまぁ、わかった。だが、お前がここで行った一連の行動に正当性は微塵もない。あるのは、救いようのないほどの異常性だけだ。大人しく、空き部屋に入っていてもらえると助かるんだが」
「ふざけないでください。あたしの何が異常なんですか? どう考えても間違えてるのはあなたたちの方。だってそうでしょう? 人間以外に、地球の生態系を壊している生物がいる? 都合の良いことばかり言い訳にしていつだって――」
「もう良い。お前の言い分はこれ以上聞く気はない。本州に戻ればおそらく精神鑑定に回されることだろうから、じっくりと診てもらえ」
喚くように喋る葵さんを遮り、お兄ちゃんはうんざりしたようにため息をつく。
「……馬鹿にして。誰が警察になんか。あんなの、どうせ裏では意図的に冤罪や不正なやり取りをしてるような人たちじゃない! 誰がそんな人たちの世話になんかなるもんか!」
痙攣でもしているかのように拳を震わせたかと思うと、葵さんは突然廊下へ向かって駆け出した。
「あ!」
いきなりのことで反応が遅れたあたしたちは、何もできないままそれを見送ってしまう。
「ど、どうします?」
混乱しそうな川辺さんの問いかけに、
「追うぞ。何をしでかすかわからない」
きっぱりとそう告げてお兄ちゃんが走り出した。
それに続くようにしてあたしたちも走り出す。
廊下を出てすぐに右へ向かったお兄ちゃんを追うと、振り返ることなく
「食堂に入った」
と告げてきた。
何をするつもりなのかはわからない。
逃げるのなら、食堂なんか行かずに窓でも開けて飛び出した方が確実っぽいのに。
お兄ちゃんが食堂へ入り、数秒遅れてあたしも到着。
ざっと中を見回すも人の姿はなく、中扉が僅かに開いているだけ。
「奥じゃないでしょうか?」
その扉を指差し、美九佐さんが言った。
窓も開けた形跡がないことを踏まえれば、それしか考えられないか。
全員でそちらへ急ぎ、扉を開けて調理場へと進んだ。
「――!」
そして、その調理場の奥で目的の姿を確認する。
こちらを睨むようにして見つめ、葵さんは手に持った包丁を自らの首に押し当て直立している。
「月見坂様、早まった真似はおやめください」
制止するように両手を前にかざし、川辺さんが声をかけた。
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