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第三章:罪人の記し
罪人の記し 18
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「なるほどな」
「……何か、わかったのですか?」
探るような視線をお兄ちゃんへ向け、美九佐さんが訊ねる。
「ベッドの上に、切断された舌とは別に違う血痕が残っている。笠島は、寝ているところをいきなり襲われ身体のどこかを傷つけられた可能性が高い。そこで目を覚ました笠島は抵抗したのかどうかは知らないが、逃げようとしてベッドから移動し個室へ立てこもった。ドアノブにも内側と外側に血痕が付いているから、それが根拠になりそうだ」
ベッドの上、そしてトイレと順番に指差しながら、お兄ちゃんは言葉を続けていく。
「そして、その中で笠島はどういうわけか、自分が持っていたペンで付箋の一枚を黒く塗りつぶして床に捨てた。その後、おそらくは犯人にドアを開けられ、とどめを刺されたのだろうな。そして床に寝かされた後に舌を切断され、沈黙に見立てられた」
そこまで告げ、お兄ちゃんはもう一度手にしたままの付箋に目を落とす。
「つまり、この塗りつぶされた付箋は笠島が最後に残した、ダイイング・メッセージである可能性が高い」
「だ、ダイイング・メッセージ?」
復唱するように言う伊藤さんの声に頷き、お兄ちゃんは付箋を顔の位置まで掲げて示す。
「ああ。身体を刺され殺されかけている人間が、意味のない落書きなどして遊んだりするわけがない。笠島はこの付箋を塗りつぶすことで、生き残っているオレたちに何かを伝えようとしたのではないだろうか。そう思うのだが」
「し、しかし、そうは言いましても、そのような塗りつぶしただけの付箋で何を伝えていると?」
「それがわかれば苦労はしない。考えるしかないだろう」
ふぅっと息をつき、お兄ちゃんは廊下へと出てくる。
「断罪された罪人の記しだ。解読する価値がある」
「……何か、わかったのですか?」
探るような視線をお兄ちゃんへ向け、美九佐さんが訊ねる。
「ベッドの上に、切断された舌とは別に違う血痕が残っている。笠島は、寝ているところをいきなり襲われ身体のどこかを傷つけられた可能性が高い。そこで目を覚ました笠島は抵抗したのかどうかは知らないが、逃げようとしてベッドから移動し個室へ立てこもった。ドアノブにも内側と外側に血痕が付いているから、それが根拠になりそうだ」
ベッドの上、そしてトイレと順番に指差しながら、お兄ちゃんは言葉を続けていく。
「そして、その中で笠島はどういうわけか、自分が持っていたペンで付箋の一枚を黒く塗りつぶして床に捨てた。その後、おそらくは犯人にドアを開けられ、とどめを刺されたのだろうな。そして床に寝かされた後に舌を切断され、沈黙に見立てられた」
そこまで告げ、お兄ちゃんはもう一度手にしたままの付箋に目を落とす。
「つまり、この塗りつぶされた付箋は笠島が最後に残した、ダイイング・メッセージである可能性が高い」
「だ、ダイイング・メッセージ?」
復唱するように言う伊藤さんの声に頷き、お兄ちゃんは付箋を顔の位置まで掲げて示す。
「ああ。身体を刺され殺されかけている人間が、意味のない落書きなどして遊んだりするわけがない。笠島はこの付箋を塗りつぶすことで、生き残っているオレたちに何かを伝えようとしたのではないだろうか。そう思うのだが」
「し、しかし、そうは言いましても、そのような塗りつぶしただけの付箋で何を伝えていると?」
「それがわかれば苦労はしない。考えるしかないだろう」
ふぅっと息をつき、お兄ちゃんは廊下へと出てくる。
「断罪された罪人の記しだ。解読する価値がある」
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