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第二章:断罪決行
断罪決行 18
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お兄ちゃんが示す先には、二〇一号室のドア。
階段から一番近い場所にあり、ここからでも余裕で目視することができる。
そのドアの入口に。
「あれって……」
白い、トランプに似たカードが一枚貼りつけられていた。
見覚えがある。あり過ぎるくらいに。
無言のまま、お兄ちゃんはそのドアへと近づいていく。
あたしの記憶に間違いがなければ、二〇一号室を利用していたのは、料理評論家で元料理長の貴道 勇気さんだったはず。
恰幅の良い丸いお腹とバーコード頭がトレードマークになっているような、愛想の良いおじさんの姿が脳裏に浮かぶ。
川辺さんがお兄ちゃんを追いかけたので、あたしもそれに倣う。
「同じだな。辞書の切れ端は無いが」
ドアに貼られたカードには、<晩餐>の二文字。そして、その下には小さくLv.2の表記。
それを乱暴に剥がし、裏返すお兄ちゃん。
「……Lv.2、CONVICT。二つ目の断罪か」
裏に書かれた文字も読み上げて、お兄ちゃんは二〇一号室のドアノブを掴んだ。
カチャリという小さな金属音がして、あっさりとドアが開く。
「鍵がかかっていない。無理矢理こじ開けたような痕跡もないようだな」
そのまま中を覗き込み様子を窺うお兄ちゃんの背を見守っていると、すぐに顔を引っこめて川辺さんへと向き直った。
「はっきり言うぞ? 調理場に、この部屋を使っていた人間の死体があるな?」
ビクリと、川辺さんの肩が震える。
「は、はい。つい先程朝食の準備を調理場へと行きましたら、作業台の上に……」
「そうか。なら、まずはそれを確認しよう」
ドアを閉めなおし、また階段へ向かい黙々と歩きだす。
今、部屋を覗いて何を見たのか。凄く気になったけれど、気楽に訊ける内容ではない。
聞いて後悔しそうな予感が強すぎて、あたしは問うことを諦めた。
たぶん、後から嫌でも知らされることになるかもしれないし。
早朝のためか、それともみんな部屋から出ることを躊躇ってかはわからないけど、周囲にはまだ誰の姿もなく静まり返っていて、あたしたちの足音以外に聞こえてくる音は無い。
一階に到着し、廊下の奥を見定める。
窓の外は西側になるのか太陽は確認できないけれど、穏やかな快晴で散歩でもしたら気持ちが良さそうだ。
きっと、何も起こらずに今日を迎えていたのなら、本当に周囲を散策でもしていたかもしれない。
二部屋並ぶ物置部屋の前を通過し、シャワールーム、談話室も背後に消える。
川辺さんの部屋も通り越し、食堂入口へと着いた。
調理場へは、廊下から入る入口がない。食堂の中にある中扉でしか繋がっていないため、そこから進んでいくかたちになる。
そっと、お兄ちゃんは食堂へと入り気配を窺うようにしながら中へと進んだ。
「……」
あたしの横を歩く川辺さんの顔色は一段と青ざめたようになり、今にも倒れてしまうのではと心配になるほど辛そうに見えた。
「……何か作っていたのか?」
振り返らず、お兄ちゃんが言った。
それが川辺さんへ告げられたものだとわかったから、あたしは黙って耳をすませる。
「いえ、まだ今朝は何もしていません。できるような状態でもありませんでしたので……」
震える声でそう答える川辺さんは、調理室に続くドアを避けるように視線を下へ向けた。
「そうか。なら、この匂いは何だ?」
食堂に入ってから、室内にほんのりと香ばしい匂いが漂っていることに、あたしもすぐ気がついていた。
場所が場所だし、食べ物の匂いがしても特に不思議ではないと思い込みスルーしかけていたけれど、食事の準備を始めてもいないのにこんな香りが漂っているのは、冷静に考えればちょっとおかしい。
昨夜あたしたちが食べたのは、レトルトのカレー。
でも、今この食堂に漂う匂いは――。
「……」
中扉へ到着し、お兄ちゃんは躊躇いなく調理場を覗く。
階段から一番近い場所にあり、ここからでも余裕で目視することができる。
そのドアの入口に。
「あれって……」
白い、トランプに似たカードが一枚貼りつけられていた。
見覚えがある。あり過ぎるくらいに。
無言のまま、お兄ちゃんはそのドアへと近づいていく。
あたしの記憶に間違いがなければ、二〇一号室を利用していたのは、料理評論家で元料理長の貴道 勇気さんだったはず。
恰幅の良い丸いお腹とバーコード頭がトレードマークになっているような、愛想の良いおじさんの姿が脳裏に浮かぶ。
川辺さんがお兄ちゃんを追いかけたので、あたしもそれに倣う。
「同じだな。辞書の切れ端は無いが」
ドアに貼られたカードには、<晩餐>の二文字。そして、その下には小さくLv.2の表記。
それを乱暴に剥がし、裏返すお兄ちゃん。
「……Lv.2、CONVICT。二つ目の断罪か」
裏に書かれた文字も読み上げて、お兄ちゃんは二〇一号室のドアノブを掴んだ。
カチャリという小さな金属音がして、あっさりとドアが開く。
「鍵がかかっていない。無理矢理こじ開けたような痕跡もないようだな」
そのまま中を覗き込み様子を窺うお兄ちゃんの背を見守っていると、すぐに顔を引っこめて川辺さんへと向き直った。
「はっきり言うぞ? 調理場に、この部屋を使っていた人間の死体があるな?」
ビクリと、川辺さんの肩が震える。
「は、はい。つい先程朝食の準備を調理場へと行きましたら、作業台の上に……」
「そうか。なら、まずはそれを確認しよう」
ドアを閉めなおし、また階段へ向かい黙々と歩きだす。
今、部屋を覗いて何を見たのか。凄く気になったけれど、気楽に訊ける内容ではない。
聞いて後悔しそうな予感が強すぎて、あたしは問うことを諦めた。
たぶん、後から嫌でも知らされることになるかもしれないし。
早朝のためか、それともみんな部屋から出ることを躊躇ってかはわからないけど、周囲にはまだ誰の姿もなく静まり返っていて、あたしたちの足音以外に聞こえてくる音は無い。
一階に到着し、廊下の奥を見定める。
窓の外は西側になるのか太陽は確認できないけれど、穏やかな快晴で散歩でもしたら気持ちが良さそうだ。
きっと、何も起こらずに今日を迎えていたのなら、本当に周囲を散策でもしていたかもしれない。
二部屋並ぶ物置部屋の前を通過し、シャワールーム、談話室も背後に消える。
川辺さんの部屋も通り越し、食堂入口へと着いた。
調理場へは、廊下から入る入口がない。食堂の中にある中扉でしか繋がっていないため、そこから進んでいくかたちになる。
そっと、お兄ちゃんは食堂へと入り気配を窺うようにしながら中へと進んだ。
「……」
あたしの横を歩く川辺さんの顔色は一段と青ざめたようになり、今にも倒れてしまうのではと心配になるほど辛そうに見えた。
「……何か作っていたのか?」
振り返らず、お兄ちゃんが言った。
それが川辺さんへ告げられたものだとわかったから、あたしは黙って耳をすませる。
「いえ、まだ今朝は何もしていません。できるような状態でもありませんでしたので……」
震える声でそう答える川辺さんは、調理室に続くドアを避けるように視線を下へ向けた。
「そうか。なら、この匂いは何だ?」
食堂に入ってから、室内にほんのりと香ばしい匂いが漂っていることに、あたしもすぐ気がついていた。
場所が場所だし、食べ物の匂いがしても特に不思議ではないと思い込みスルーしかけていたけれど、食事の準備を始めてもいないのにこんな香りが漂っているのは、冷静に考えればちょっとおかしい。
昨夜あたしたちが食べたのは、レトルトのカレー。
でも、今この食堂に漂う匂いは――。
「……」
中扉へ到着し、お兄ちゃんは躊躇いなく調理場を覗く。
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