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第二章:断罪決行
断罪決行 13
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建物内の探索は、屋上から開始された。
殺風景で特に目立つ物もない屋上を見て、それから三階にある客室全てを確認し――あたしやお兄ちゃん、笠島さんの部屋も当然調べた――、誰もいないことを確かめる。
トイレやベッドの下くらいしか人間が身を潜められそうな場所がないため、一部屋にかかる時間はそれほどでもない。
おかげで、予想以上にスムーズな流れで二階の探索へと移行することができた。
二階の客室は二○一号室から順に、貴道さん、葵さん、木ノ江さん、花面さん、伊藤さん、美九佐さん、そして亡くなった絵馬さんの部屋となっており、三階同様に全員で全ての部屋をチェックした。
最後に調べた絵馬さんの部屋には、当然ながら死体が動かされることなく残っており、それを確認した招待客メンバーは一様に声を無くして青ざめていた。
お兄ちゃんが言ったことが嘘や冗談ではないことがはっきりしてしまったことで、自分たちの置かれた状況を嫌でも自覚させられたことだろう。
重苦しい空気になりながら一階に向かい、食堂と調理場、そして調理場から行ける地下室を最初に調べた。
食堂は一目で十分なくらいに殺風景なので特に目をつける部分もなく、調理場も人の入れるようなスペースは全て確かめるも収穫なし。
地下室である冷蔵室と冷凍室はすごく怪しいと思っていたけど、実際に足を踏み入れてみるとそれほど広くもなく、こんな低温な場所に人間が長時間いられるわけがないという結論がすぐに下されて終わった。
その後、川辺さんの部屋、談話室、シャワールームの順に調べていくも得られるものは皆無で、最後に二つ並んでいる物置部屋へと移動した。
物置部屋は両方とも同じ間取りで、窓がないため圧迫感を覚える室内。中央に吊るされた裸電球の明かりも、心なしか薄暗く感じられた。
室内に置かれていた物は、建物の修復に使うような大工道具や物を運ぶ台車。ガラクタにしか見えない何かを詰め込んだ棚などがいくつか。
何に使うのかわからない、棺みたいな形と大きさをした箱なんかもあり――因みに中は空っぽだった――、ちょっとだけ薄気味悪く感じてしまった。
でも一番びっくりしたのは、一番端にある物置の中。
こちらも最初に入った部屋と同様窓がなく薄暗かったけれども、照明を点けた途端女性陣全員で短い悲鳴をあげてしまった。
ガラクタが放置された空間の右隅に、一瞬人間が立っているように錯覚をしてしまったからなんだけれど、その正体が何故かマネキン。
よくデパートの服売り場なんかにあるあのマネキンが、全裸でこっちを見つめ立っていたのだ。
「ビックリした! どうしてこんな物があるのよ!」
心臓を押さえた木ノ江さんが八つ当たり気味な声を出したりもしたけれど、当然ながらそれに答えられる人はなく。
「おい、そっちには斧持った甲冑まであるぜ?」
代わりに、伊藤さんがマネキンとは逆の方向を指差してみんなの意識をそちらへ逸らす。
「ここの主さんの趣味なのか? 理解できそうな気がしねぇな」
呆れたような笑いを見せる伊藤さんの台詞を聞きながら、お兄ちゃんが代表してその西洋風の甲冑を調べてみるも中には誰も隠れてはいなかったようだ。
そうして全ての探索を終了し、再び談話室へと戻り今に至るわけで。
「結局、何もありませんでしたね。少なくともこの九十九研究所の中には、我々以外に人間は存在しないことがわかってしまった。ひょっとしたら、外のどこかに潜んでいる可能性は残っていますが……川辺さん、確かこの島には他に建築物は無いとおっしゃいましたよね?」
椅子に座り、みんなが息をつくのを待ったようなタイミングで口を開いたのは美九佐さん。
一人壁際に立つ川辺さんへ、冷静な口調で問いを投げかける。
「はい。そう説明を受けておりますし、実際わたくし自身も周囲を散歩させていただいたりしていたのですが、建物はおろか洞窟のような場所すら発見はできませんでしたね」
控える執事のような姿勢で、かしこまったように答える川辺さん。
建物内の探索は、屋上から開始された。
殺風景で特に目立つ物もない屋上を見て、それから三階にある客室全てを確認し――あたしやお兄ちゃん、笠島さんの部屋も当然調べた――、誰もいないことを確かめる。
トイレやベッドの下くらいしか人間が身を潜められそうな場所がないため、一部屋にかかる時間はそれほどでもない。
おかげで、予想以上にスムーズな流れで二階の探索へと移行することができた。
二階の客室は二○一号室から順に、貴道さん、葵さん、木ノ江さん、花面さん、伊藤さん、美九佐さん、そして亡くなった絵馬さんの部屋となっており、三階同様に全員で全ての部屋をチェックした。
最後に調べた絵馬さんの部屋には、当然ながら死体が動かされることなく残っており、それを確認した招待客メンバーは一様に声を無くして青ざめていた。
お兄ちゃんが言ったことが嘘や冗談ではないことがはっきりしてしまったことで、自分たちの置かれた状況を嫌でも自覚させられたことだろう。
重苦しい空気になりながら一階に向かい、食堂と調理場、そして調理場から行ける地下室を最初に調べた。
食堂は一目で十分なくらいに殺風景なので特に目をつける部分もなく、調理場も人の入れるようなスペースは全て確かめるも収穫なし。
地下室である冷蔵室と冷凍室はすごく怪しいと思っていたけど、実際に足を踏み入れてみるとそれほど広くもなく、こんな低温な場所に人間が長時間いられるわけがないという結論がすぐに下されて終わった。
その後、川辺さんの部屋、談話室、シャワールームの順に調べていくも得られるものは皆無で、最後に二つ並んでいる物置部屋へと移動した。
物置部屋は両方とも同じ間取りで、窓がないため圧迫感を覚える室内。中央に吊るされた裸電球の明かりも、心なしか薄暗く感じられた。
室内に置かれていた物は、建物の修復に使うような大工道具や物を運ぶ台車。ガラクタにしか見えない何かを詰め込んだ棚などがいくつか。
何に使うのかわからない、棺みたいな形と大きさをした箱なんかもあり――因みに中は空っぽだった――、ちょっとだけ薄気味悪く感じてしまった。
でも一番びっくりしたのは、一番端にある物置の中。
こちらも最初に入った部屋と同様窓がなく薄暗かったけれども、照明を点けた途端女性陣全員で短い悲鳴をあげてしまった。
ガラクタが放置された空間の右隅に、一瞬人間が立っているように錯覚をしてしまったからなんだけれど、その正体が何故かマネキン。
よくデパートの服売り場なんかにあるあのマネキンが、全裸でこっちを見つめ立っていたのだ。
「ビックリした! どうしてこんな物があるのよ!」
心臓を押さえた木ノ江さんが八つ当たり気味な声を出したりもしたけれど、当然ながらそれに答えられる人はなく。
「おい、そっちには斧持った甲冑まであるぜ?」
代わりに、伊藤さんがマネキンとは逆の方向を指差してみんなの意識をそちらへ逸らす。
「ここの主さんの趣味なのか? 理解できそうな気がしねぇな」
呆れたような笑いを見せる伊藤さんの台詞を聞きながら、お兄ちゃんが代表してその西洋風の甲冑を調べてみるも中には誰も隠れてはいなかったようだ。
そうして全ての探索を終了し、再び談話室へと戻り今に至るわけで。
「結局、何もありませんでしたね。少なくともこの九十九研究所の中には、我々以外に人間は存在しないことがわかってしまった。ひょっとしたら、外のどこかに潜んでいる可能性は残っていますが……川辺さん、確かこの島には他に建築物は無いとおっしゃいましたよね?」
椅子に座り、みんなが息をつくのを待ったようなタイミングで口を開いたのは美九佐さん。
一人壁際に立つ川辺さんへ、冷静な口調で問いを投げかける。
「はい。そう説明を受けておりますし、実際わたくし自身も周囲を散歩させていただいたりしていたのですが、建物はおろか洞窟のような場所すら発見はできませんでしたね」
控える執事のような姿勢で、かしこまったように答える川辺さん。
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