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第一章:偽りの招待状
偽りの招待状 19
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財布、免許証、ハンカチ、ポケットティッシュ、化粧品やコンパクトサイズの鏡、ここへ来るきっかけを生み出した招待状入りの封筒。
次々と取り出され床に並べられていく絵馬さんの私物を、あたしは少し後ろめたい気持ちで見つめる。
これは既に、亡くなった人の遺品。
ほんのちょっと前までは、そんな呼び方をするものたちじゃなかったのに。
「……薬のようなものは無いな。マリネ、詩織の服を調べてみてくれ。ポケットとかに何か入っていないか?」
「はぁ?」
いきなり下された突飛でもない指示に、あたしはこの場にそぐわないような素っ頓狂な声を上げてしまった。
「調べろって……だって絵馬さん、死んじゃってるんでしょ? 勝手に触ったりなんてできないよ!」
「男のオレが触るよりはマシだろう。もし問題がないのなら自分で調べても構わないが」
「……う~」
そもそも、どうしてあたしたちが警察や探偵の真似事みたいなことをしなくてはいけないのか。
下手にいじくりまわして、万が一後から警察の人たちにお叱りをいただいたら、ごめんなさいでは済まないかもしれないのに。
だけど、お兄ちゃんのことだからここであたしが断れば、本気で絵馬さんの身体をまさぐることは確実っぽい。
妹として、できることならそれはさせたくない。
絵馬さんだって嫌だろう。
「……ポケット調べるだけだよね?」
「ああ。何か入っていたら全部出してくれ」
渋々承諾するあたしへ、お兄ちゃんは無感情に言葉を返してくる。
「……はぁ」
服だけとは言え死んだ人の身体を調べるなんてした経験はないし、する日が来るなんても思ってもいなかった。
心の中でごめんなさいと謝りながらいくつかあるポケットの中を確かめるも、特に何も見つけることはできず。
ほんのりと服越しに体温が伝わってくる絵馬さんの身体は、本当に死んでいるのかと疑いたくなる。
「何も入ってないよ……」
調べ終え、振り向くあたしに
「わかった」
とだけ頷いたお兄ちゃんは、例の招待状が入った封筒を開き中からトランプ型のカード取りだし見つめていた。
<知識>
そうプリントされた、一枚のカード。
部屋の入口に貼られているものと同じカード。
「Lv.1、というのはどういうことなんだろうな……」
「え?」
まるで独り言のように呟くお兄ちゃんの声に、あたしは小首を傾げて訊き返す。
「ドアに貼られていたカードには、Lv.1という新たな記載がされていた。あれが一体どういう意味なのか気になってな。そして、何故辞書の切れ端が添えられていたのかも。あれは詩織が自分でやったのか?」
「うーん? 理由はわからないけど、たぶんそうかもしれないよ? あんなことをする必要誰にもないはずだし、いたずらって考えても、ちょっとピンとこないもん」
「一理はある。だが、そう考えるといくつかおかしい」
あたしの単純な発想に首肯して、そっと自分の顎に手を当てるお兄ちゃん。
「詩織がわざわざあんな送られてきたカードと類似したものを作成し、ここへ持ってきた意図がわからない。それと、辞書だ。詩織の荷物の中にそんな物はない。あらかじめ破いて持参したならわかるが、ドアに貼られているやつは皺も折り目もなく綺麗だった。クリアファイル等に挟んで保管しなければ、あそこまできちんとした状態は保てないはずだ」
お兄ちゃんが並べた絵馬さんの荷物には、クリアファイルみたいなプリントをしまえるような物はない。
「大体、荷物の整理はおろか、施錠すらする余裕もなく身を投げ出すようにベッドへ倒れ込むほど酷い状態だった詩織が、ドアの外に無意味な張り紙をするなんてことがあり得るか? それに、あの世話人はさっきまでこんなものはなかったと、そう言っていた。つまり、元々そこに貼りつけられていたわけでもないということにもなる」
そうなると――。
次々と取り出され床に並べられていく絵馬さんの私物を、あたしは少し後ろめたい気持ちで見つめる。
これは既に、亡くなった人の遺品。
ほんのちょっと前までは、そんな呼び方をするものたちじゃなかったのに。
「……薬のようなものは無いな。マリネ、詩織の服を調べてみてくれ。ポケットとかに何か入っていないか?」
「はぁ?」
いきなり下された突飛でもない指示に、あたしはこの場にそぐわないような素っ頓狂な声を上げてしまった。
「調べろって……だって絵馬さん、死んじゃってるんでしょ? 勝手に触ったりなんてできないよ!」
「男のオレが触るよりはマシだろう。もし問題がないのなら自分で調べても構わないが」
「……う~」
そもそも、どうしてあたしたちが警察や探偵の真似事みたいなことをしなくてはいけないのか。
下手にいじくりまわして、万が一後から警察の人たちにお叱りをいただいたら、ごめんなさいでは済まないかもしれないのに。
だけど、お兄ちゃんのことだからここであたしが断れば、本気で絵馬さんの身体をまさぐることは確実っぽい。
妹として、できることならそれはさせたくない。
絵馬さんだって嫌だろう。
「……ポケット調べるだけだよね?」
「ああ。何か入っていたら全部出してくれ」
渋々承諾するあたしへ、お兄ちゃんは無感情に言葉を返してくる。
「……はぁ」
服だけとは言え死んだ人の身体を調べるなんてした経験はないし、する日が来るなんても思ってもいなかった。
心の中でごめんなさいと謝りながらいくつかあるポケットの中を確かめるも、特に何も見つけることはできず。
ほんのりと服越しに体温が伝わってくる絵馬さんの身体は、本当に死んでいるのかと疑いたくなる。
「何も入ってないよ……」
調べ終え、振り向くあたしに
「わかった」
とだけ頷いたお兄ちゃんは、例の招待状が入った封筒を開き中からトランプ型のカード取りだし見つめていた。
<知識>
そうプリントされた、一枚のカード。
部屋の入口に貼られているものと同じカード。
「Lv.1、というのはどういうことなんだろうな……」
「え?」
まるで独り言のように呟くお兄ちゃんの声に、あたしは小首を傾げて訊き返す。
「ドアに貼られていたカードには、Lv.1という新たな記載がされていた。あれが一体どういう意味なのか気になってな。そして、何故辞書の切れ端が添えられていたのかも。あれは詩織が自分でやったのか?」
「うーん? 理由はわからないけど、たぶんそうかもしれないよ? あんなことをする必要誰にもないはずだし、いたずらって考えても、ちょっとピンとこないもん」
「一理はある。だが、そう考えるといくつかおかしい」
あたしの単純な発想に首肯して、そっと自分の顎に手を当てるお兄ちゃん。
「詩織がわざわざあんな送られてきたカードと類似したものを作成し、ここへ持ってきた意図がわからない。それと、辞書だ。詩織の荷物の中にそんな物はない。あらかじめ破いて持参したならわかるが、ドアに貼られているやつは皺も折り目もなく綺麗だった。クリアファイル等に挟んで保管しなければ、あそこまできちんとした状態は保てないはずだ」
お兄ちゃんが並べた絵馬さんの荷物には、クリアファイルみたいなプリントをしまえるような物はない。
「大体、荷物の整理はおろか、施錠すらする余裕もなく身を投げ出すようにベッドへ倒れ込むほど酷い状態だった詩織が、ドアの外に無意味な張り紙をするなんてことがあり得るか? それに、あの世話人はさっきまでこんなものはなかったと、そう言っていた。つまり、元々そこに貼りつけられていたわけでもないということにもなる」
そうなると――。
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