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第四章:決壊する絆
決壊する絆 7
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机の上に置かれたコーヒーの湯気が、ユラユラと揺れては消えていくのを横目に見ながら、私はずっと進むことのない問題集を睨みつけている。
つい先日、大学へ進学するための共通テストを受けたばかりで、その結果は当然まだわからない。
試験である以上、望んだ結果に及ばない可能性は誰しもあるが、結果が出る前から悪い方向へ思考を傾けても意味がないと自らに言い聞かせ、個別試験を見据え勉強を続けるよう努力はしているものの、どうにも集中力が低下してしまっている。
その原因は、至極単純。
去年の秋に応募した小説賞の中間発表が、今月末に控えている。
一縷の望みに託す思いで長編三作を仕上げ応募した賞だからこそ、結果が気になって勉強が手につかなくなってしまっている。
三作の内二作は、今までで一番良くできたと自負している。
それ故に、自信もまた過去一番と言っていいくらいにある。
最低でも、最終選考まで残るくらいの結果は出したい。
その想いが強く胸中を支配していて、年が明けてからは何をしていても、すぐに小説のことで頭がいっぱいになってしまっていた。
――これじゃ駄目なのはわかっているのに……。
百パーセント受賞できるわけではない以上、落選したときのことを考慮し今は勉強に注力しなくてはいけない時期だ。
お父さんとの約束がある以上、これは変えられない。
無理矢理にでも、勉強に意識を向けないと。
冷め始めたコーヒーを一口すすり、私は一度だけ大きく深呼吸をした。
「今が正念場。きっと……いえ、絶対にうまくいくはず」
賞を取り作家デビューを果たせれば、このまま創作を続けられる。
仮にそれが駄目でも、最終選考まで行ければお父さんも最低限は私の実力を認めてくれるかもしれないし、そうなれば大学生活に慣れた後からでも、創作に復帰する大きなモチベーションは得られるはず。
だからこそ、今は全力を尽くした自分の結果を信じて、目の前のことだけに取り組まねば。
「…………」
開かれたままの問題集に向き直ったほんの一瞬、活字愛好倶楽部のメンバーの顔が頭をよぎった。
色々と忙しいのと、星咲さんの姿を見るのが嫌で、もう三ヵ月以上顔を出していない。
有野先生とは何度も廊下で擦れ違うことがあったけれど、何かを言いたそうに視線を向けてくることは多々あれど、声をかけられたことは一度もなかった。
気を遣われているのが嫌でもわかり、ばつの悪い気持ちになってしまったが、その自身の気持ちからも逃げるようにして、私はいつも自分から視線を逸らし露骨に避けるような行為を続けてきてしまっている。
――そう言えば……星咲さんの小説賞も、最終結果が今月発表だったはずよね。
彼女は、このまま受賞して夢を掴んでしまうのだろうか。
「駄目……勉強に集中しないと」
早くも止まってしまっていた手を動かし、無理矢理意識を問題集へ切り替える。
私は私であって、星咲さんの結果は気にするべきことではない。
そう自分へ言い聞かせ、問題の続きを解き始める。
ほんの刹那、星咲さんに対して落選すれば良いのにという、黒い気持ちが己の胸に噴き出してきたことを誤魔化すために。
机の上に置かれたコーヒーの湯気が、ユラユラと揺れては消えていくのを横目に見ながら、私はずっと進むことのない問題集を睨みつけている。
つい先日、大学へ進学するための共通テストを受けたばかりで、その結果は当然まだわからない。
試験である以上、望んだ結果に及ばない可能性は誰しもあるが、結果が出る前から悪い方向へ思考を傾けても意味がないと自らに言い聞かせ、個別試験を見据え勉強を続けるよう努力はしているものの、どうにも集中力が低下してしまっている。
その原因は、至極単純。
去年の秋に応募した小説賞の中間発表が、今月末に控えている。
一縷の望みに託す思いで長編三作を仕上げ応募した賞だからこそ、結果が気になって勉強が手につかなくなってしまっている。
三作の内二作は、今までで一番良くできたと自負している。
それ故に、自信もまた過去一番と言っていいくらいにある。
最低でも、最終選考まで残るくらいの結果は出したい。
その想いが強く胸中を支配していて、年が明けてからは何をしていても、すぐに小説のことで頭がいっぱいになってしまっていた。
――これじゃ駄目なのはわかっているのに……。
百パーセント受賞できるわけではない以上、落選したときのことを考慮し今は勉強に注力しなくてはいけない時期だ。
お父さんとの約束がある以上、これは変えられない。
無理矢理にでも、勉強に意識を向けないと。
冷め始めたコーヒーを一口すすり、私は一度だけ大きく深呼吸をした。
「今が正念場。きっと……いえ、絶対にうまくいくはず」
賞を取り作家デビューを果たせれば、このまま創作を続けられる。
仮にそれが駄目でも、最終選考まで行ければお父さんも最低限は私の実力を認めてくれるかもしれないし、そうなれば大学生活に慣れた後からでも、創作に復帰する大きなモチベーションは得られるはず。
だからこそ、今は全力を尽くした自分の結果を信じて、目の前のことだけに取り組まねば。
「…………」
開かれたままの問題集に向き直ったほんの一瞬、活字愛好倶楽部のメンバーの顔が頭をよぎった。
色々と忙しいのと、星咲さんの姿を見るのが嫌で、もう三ヵ月以上顔を出していない。
有野先生とは何度も廊下で擦れ違うことがあったけれど、何かを言いたそうに視線を向けてくることは多々あれど、声をかけられたことは一度もなかった。
気を遣われているのが嫌でもわかり、ばつの悪い気持ちになってしまったが、その自身の気持ちからも逃げるようにして、私はいつも自分から視線を逸らし露骨に避けるような行為を続けてきてしまっている。
――そう言えば……星咲さんの小説賞も、最終結果が今月発表だったはずよね。
彼女は、このまま受賞して夢を掴んでしまうのだろうか。
「駄目……勉強に集中しないと」
早くも止まってしまっていた手を動かし、無理矢理意識を問題集へ切り替える。
私は私であって、星咲さんの結果は気にするべきことではない。
そう自分へ言い聞かせ、問題の続きを解き始める。
ほんの刹那、星咲さんに対して落選すれば良いのにという、黒い気持ちが己の胸に噴き出してきたことを誤魔化すために。
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