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第四章:決壊する絆
決壊する絆 1
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自分が吐き出す白い息越しに、開け放った部屋の窓から外を眺め、俺は感傷的な気分に浸っていた。
クリスマスが昨日で終わり、後はもう大晦日を迎えて一年が終わるのを待つだけの、イベントの中休みのような曖昧な一週間。
このまま年が明けて数ヵ月も経てば、学年が上がり三年になってしまう。
高校生活なんてあっという間だなという思いが、冬の冷え切った空気と共に身に沁み込み、自然と溜息がこぼれてしまった。
冬休みに入ってからは、学校へは一度も顔を出していない。
活字愛好倶楽部には、他の部のように練習で集まるような理由がないし、幸運なことに補習を受けなくてはいけないほど学業の成績も悪くなかった。
ただひたすら創作へ打ち込める文句なしに最高の数週間に身を委ね、俺は来年の応募へ向けて毎日ノートパソコンの前に座る日々を過ごしている。
――そう言えば、妃夏の最終結果が出るのは来月だっけな。
最終選考進出の結果を受けてから数ヶ月が経過し、さすがの本人も今は気持ちも平常に戻っている様子だが、この後に控える最終結果を意識すると緊張してくると、冬休み前に言っていた。
運が良ければ、一ヵ月後には夢を叶えた側の人間になれているわけだから、それを想像すれば落ち着かなくなる感覚は普通に共感することができる。
もしも、大賞とはいかなくと準大賞や佳作に妃夏の名前があったら、どんな気分になるのだろうかとリアルに想像し、自分のことじゃないにも関わらず俺まで高揚感が湧き上がりそうになる。
これがもし、自分のことだったら――。
「来年こそは、俺も続きてぇな」
無意識に、そんな呟きが漏れた。
夢を実現することなんて、よほどの幸運の持ち主か一握り以下しかいない真の天才でもない限り、楽にできることではない。
もちろん、俺は天才なんかじゃないし、楽して夢を掴めるほどの強運を持っているなんて自惚れてもいないつもりだ。
となれば、やるべきことはひたすら量をこなしつつ、自分の至らない部分を改善できるよう悩みながら書き続けるのみ。
――わかっちゃいるけど、これが辛いんだよな。
もう一度、今度は気合を入れる意味で大きく深呼吸をしてキンキンに冷えた空気を肺と脳に送り込み、まだ頭の奥に残留していた眠気の欠片を吹き飛ばす。
夢を追う者に、ぼやぼやしていられる時間は少ない。
「さて、と。今日も頑張って書きますかぁ」
独り言を言いながら窓を閉め、冷え切った室内を温めるためにストーブを付けてから、俺はノートパソコンを起動させると、コーヒーを淹れるために部屋を出て台所へと向かった。
自分が吐き出す白い息越しに、開け放った部屋の窓から外を眺め、俺は感傷的な気分に浸っていた。
クリスマスが昨日で終わり、後はもう大晦日を迎えて一年が終わるのを待つだけの、イベントの中休みのような曖昧な一週間。
このまま年が明けて数ヵ月も経てば、学年が上がり三年になってしまう。
高校生活なんてあっという間だなという思いが、冬の冷え切った空気と共に身に沁み込み、自然と溜息がこぼれてしまった。
冬休みに入ってからは、学校へは一度も顔を出していない。
活字愛好倶楽部には、他の部のように練習で集まるような理由がないし、幸運なことに補習を受けなくてはいけないほど学業の成績も悪くなかった。
ただひたすら創作へ打ち込める文句なしに最高の数週間に身を委ね、俺は来年の応募へ向けて毎日ノートパソコンの前に座る日々を過ごしている。
――そう言えば、妃夏の最終結果が出るのは来月だっけな。
最終選考進出の結果を受けてから数ヶ月が経過し、さすがの本人も今は気持ちも平常に戻っている様子だが、この後に控える最終結果を意識すると緊張してくると、冬休み前に言っていた。
運が良ければ、一ヵ月後には夢を叶えた側の人間になれているわけだから、それを想像すれば落ち着かなくなる感覚は普通に共感することができる。
もしも、大賞とはいかなくと準大賞や佳作に妃夏の名前があったら、どんな気分になるのだろうかとリアルに想像し、自分のことじゃないにも関わらず俺まで高揚感が湧き上がりそうになる。
これがもし、自分のことだったら――。
「来年こそは、俺も続きてぇな」
無意識に、そんな呟きが漏れた。
夢を実現することなんて、よほどの幸運の持ち主か一握り以下しかいない真の天才でもない限り、楽にできることではない。
もちろん、俺は天才なんかじゃないし、楽して夢を掴めるほどの強運を持っているなんて自惚れてもいないつもりだ。
となれば、やるべきことはひたすら量をこなしつつ、自分の至らない部分を改善できるよう悩みながら書き続けるのみ。
――わかっちゃいるけど、これが辛いんだよな。
もう一度、今度は気合を入れる意味で大きく深呼吸をしてキンキンに冷えた空気を肺と脳に送り込み、まだ頭の奥に残留していた眠気の欠片を吹き飛ばす。
夢を追う者に、ぼやぼやしていられる時間は少ない。
「さて、と。今日も頑張って書きますかぁ」
独り言を言いながら窓を閉め、冷え切った室内を温めるためにストーブを付けてから、俺はノートパソコンを起動させると、コーヒーを淹れるために部屋を出て台所へと向かった。
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