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第二章:懊悩の足枷
懊悩の足枷 9
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「スランプってやつか。俺はまだ経験がないから、あんまりあれこれ言える立場でもないけど、あり得ないとは言えないな。九条先輩、俺らよりもこれまでに書いた作品の数も多そうだし」
「かもね。あたしもまだスランプに陥るってよくわからないけど、確かにここ数日の先輩は雰囲気がおかしかった感じはしてたかも。悩みがあるんならあたしたちで助けてあげられないかな? 役者不足かもしれないけどさ」
提案を口にした妃夏は、俺と泉の反応を期待するような眼差しで見つめてくる。
「気持ちはわかるけど、俺たちに何かできるか? 他人の創作、それも先輩に対して口出しできるほど俺は立派でもないし、偉そうにアドバイスできるような実績もないんだぞ」
スランプにせよ他の悩みにせよ、俺が九条先輩の助けになれるイメージは全然わかない。
大体、こういうのは男の俺より、女子同士とかで対応した方がうまくいく気もするのだが。
「そんなの、あたしだって同じだよ。でも、悩みとかってさ、具体的に何かをしてあげられなくても、話を聞いてあげるだけでもマシになるとかよく言うじゃない。だから、まずはみんなで九条先輩が何に悩んでいるのか、そこを教えてもらうところからだよね」
「いや、だよねじゃないんだわ」
既に行動に移すことが前提となっているような、前向き発言を放ってくる妃夏へ待ったをかけて、俺は困ったなという思いで頭を掻く。
「そもそも、九条先輩が相談に乗ってもらうことを望んでいるかってのも大事な部分だろ。それに、たぶん俺がしゃしゃり出るより、妃夏か泉が声かけた方が話しやすいと思うんだよな。いくら毎日のように顔合わせてる相手とはいえ、男子からいきなり話聞きますよなんて言われても、余計な困惑を与えるだけだろうし」
「それを言ったら、わたしだってですよ。先輩からすれば、一年の後輩にいつでも相談してくださいなんて言われたら、喜ぶよりも逆に惨めな気分にさせちゃう可能性があります。危険です、極めて」
「いや、別に危険ではないと思うが……」
真面目な顔で大袈裟なことを言う泉へ突っ込みを入れ、俺はどうしたものかと考えてみる。
同じ部の仲間であり、創作を理解し合える仲間でもある九条先輩を、みんなが助けてあげたいと思うのは当然の流れだろう。
だけど、どう助ければ良いのか。
悩みを打ち明けてくれたとして、それが自分たちにとって手に負えるものなのか。
何もしてあげられなかったり、最悪の場合は下手に首を突っ込んだせいで、余計に迷惑をかける事態になることだって、あり得えないとは言い切れない。
「先輩の悩みが何なのか、それはまだよくわかんないけどさ、まずは聞くだけ聞いてみようよ。みんなが気が引けるって言うなら、あたしがそれとなく声かけてみるからさ。ね? このまま九条先輩が悩んでたら、心配過ぎて新しい話の執筆も捗らなくなっちゃうよ」
俺が一人で逡巡している最中に、妃夏は迷う必要なしと言わんばかりの快活な口調でそう話を続けてきた。
「星咲先輩が悩みを聞いてくれるなら、わたしも協力するのはやぶさかではありません」
泉が迷いなく同意し、大きく首を縦に振る。
「やぶさかなんて言葉をリアルで使う後輩は始めて見たな……」
「え? 使いません? やぶさか」
「かもね。あたしもまだスランプに陥るってよくわからないけど、確かにここ数日の先輩は雰囲気がおかしかった感じはしてたかも。悩みがあるんならあたしたちで助けてあげられないかな? 役者不足かもしれないけどさ」
提案を口にした妃夏は、俺と泉の反応を期待するような眼差しで見つめてくる。
「気持ちはわかるけど、俺たちに何かできるか? 他人の創作、それも先輩に対して口出しできるほど俺は立派でもないし、偉そうにアドバイスできるような実績もないんだぞ」
スランプにせよ他の悩みにせよ、俺が九条先輩の助けになれるイメージは全然わかない。
大体、こういうのは男の俺より、女子同士とかで対応した方がうまくいく気もするのだが。
「そんなの、あたしだって同じだよ。でも、悩みとかってさ、具体的に何かをしてあげられなくても、話を聞いてあげるだけでもマシになるとかよく言うじゃない。だから、まずはみんなで九条先輩が何に悩んでいるのか、そこを教えてもらうところからだよね」
「いや、だよねじゃないんだわ」
既に行動に移すことが前提となっているような、前向き発言を放ってくる妃夏へ待ったをかけて、俺は困ったなという思いで頭を掻く。
「そもそも、九条先輩が相談に乗ってもらうことを望んでいるかってのも大事な部分だろ。それに、たぶん俺がしゃしゃり出るより、妃夏か泉が声かけた方が話しやすいと思うんだよな。いくら毎日のように顔合わせてる相手とはいえ、男子からいきなり話聞きますよなんて言われても、余計な困惑を与えるだけだろうし」
「それを言ったら、わたしだってですよ。先輩からすれば、一年の後輩にいつでも相談してくださいなんて言われたら、喜ぶよりも逆に惨めな気分にさせちゃう可能性があります。危険です、極めて」
「いや、別に危険ではないと思うが……」
真面目な顔で大袈裟なことを言う泉へ突っ込みを入れ、俺はどうしたものかと考えてみる。
同じ部の仲間であり、創作を理解し合える仲間でもある九条先輩を、みんなが助けてあげたいと思うのは当然の流れだろう。
だけど、どう助ければ良いのか。
悩みを打ち明けてくれたとして、それが自分たちにとって手に負えるものなのか。
何もしてあげられなかったり、最悪の場合は下手に首を突っ込んだせいで、余計に迷惑をかける事態になることだって、あり得えないとは言い切れない。
「先輩の悩みが何なのか、それはまだよくわかんないけどさ、まずは聞くだけ聞いてみようよ。みんなが気が引けるって言うなら、あたしがそれとなく声かけてみるからさ。ね? このまま九条先輩が悩んでたら、心配過ぎて新しい話の執筆も捗らなくなっちゃうよ」
俺が一人で逡巡している最中に、妃夏は迷う必要なしと言わんばかりの快活な口調でそう話を続けてきた。
「星咲先輩が悩みを聞いてくれるなら、わたしも協力するのはやぶさかではありません」
泉が迷いなく同意し、大きく首を縦に振る。
「やぶさかなんて言葉をリアルで使う後輩は始めて見たな……」
「え? 使いません? やぶさか」
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