病み憑き

雪鳴月彦

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第四章:風岡夏純――②

風岡夏純――②

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「……? ――っ!」

 そこから更に距離を詰め、わたしは反射的に足を止めると、漏れ出そうになった声を抑えるため口元へ両手を押し付けた。

「お、おい……。これって……」

 距離を縮めたことで、横たわる物の正体がはっきりとなる。

 全員が手にするライトの光は問題となるその一ヶ所に集約され、より明確にそこにある存在を際立たせてしまっていた。

 わたしたちの通う滝竹高校の女子制服を着た、人間らしきモノ。

 最初はうつ伏せに倒れているのかと思いかけたが、服の向きでそうではないことに気づく。

「……それ、人間なの?」

 横たわるモノは、顔面が墨でも被せられたかのように真っ黒く染まっていた。

 いや、顔だけではない。

 微かに開いた口の中も、服の袖から出る両手も、見える全てが黒に変色している。

 真っ先に頭に浮かんだのは、目の前のそれが時間をかけて腐敗した死体ではという、おぞましい想像。
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