病み憑き

雪鳴月彦

文字の大きさ
上 下
226 / 341
第三章:風岡夏純――①

風岡夏純――①

しおりを挟む
 着ている黄色いパジャマも、見覚えのある馴染みの物。

 だけれど、それを着る娘の姿は到底馴染みのある姿とは異なり過ぎていた。

 息子か夫、どちらかが捲ったのか、布団はかけられていない。

 それ故に、全身が見えているわけだが、目にすることのできる娘の身体その全てが、焦げて炭にでもなったように真っ黒に染まっていた。

「あ……い……?」

 いや、染まっているのではないと、脳の冷静な部分が告げてくる。

 身体そのものが黒く変色していると言うべきだ。

 肌だけでなく、ぽかりと開いた口内に見える舌や歯、最期に果たして何を見たのか驚いたように見開かれた眼球も、見えている箇所の全てが黒く変色している。

 ピクリとも動かないその身体は、既に死んでいると嫌でも理解できてしまう。

「…………すみれ?」

 側に来た夫の手が、肩に触れる。

 その現実的な感触が、一気にすみれの意識をクリアなものへと引き戻した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

インター・フォン

ゆずさくら
ホラー
家の外を何気なく見ているとインターフォンに誰がいて、何か細工をしているような気がした。 俺は慌てて外に出るが、誰かを見つけられなかった。気になってインターフォンを調べていくのだが、インターフォンに正体のわからない人物の映像が残り始める。

蜥蜴の尻尾切り

柘榴
ホラー
 中学3年生の夏、私はクラスメイトの男の子3人に犯された。  ただ3人の異常な性癖を満たすだけの玩具にされた私は、心も身体も壊れてしまった。  そして、望まない形で私は3人のうちの誰かの子を孕んだ。  しかし、私の妊娠が発覚すると3人はすぐに転校をして私の前から逃げ出した。 まるで、『蜥蜴の尻尾切り』のように……私とお腹の子を捨てて。  けれど、私は許さないよ。『蜥蜴の尻尾切り』なんて。  出来の悪いパパたちへの再教育(ふくしゅう)が始まる。

ゾバズバダドガ〜歯充烏村の呪い〜

ディメンションキャット
ホラー
主人公、加賀 拓斗とその友人である佐々木 湊が訪れたのは外の社会とは隔絶された集落「歯充烏村」だった。 二人は村長から村で過ごす上で、絶対に守らなければならない奇妙なルールを伝えられる。 「人の名前は絶対に濁点を付けて呼ばなければならない」 支離滅裂な言葉を吐き続ける老婆や鶏を使ってアートをする青年、呪いの神『ゾバズバダドガ』。異常が支配するこの村で、次々に起こる矛盾だらけの事象。狂気に満ちた村が徐々に二人を蝕み始めるが、それに気付かない二人。 二人は無事に「歯充烏村」から抜け出せるのだろうか?

【完結】私は彼女になりたい

青井 海
ホラー
丹後アヤメは凛とした女の子。 かたや桃井雛子は守ってあげたくなるかわいらしい女の子。 アヤメは、嫌われているわけでなく、近寄りがたいのだ。 いつも友達に囲まれ、ニコニコと楽しそうな雛子が羨ましい。 アヤメは思う。 『私は彼女になりたい』 雛子も同じように思っていた。 ある時、神社をみつけた雛子は願ってしまう。

信者奪還

ゆずさくら
ホラー
直人は太位無教の信者だった。しかし、あることをきっかけに聖人に目をつけられる。聖人から、ある者の獲得を迫られるが、直人はそれを拒否してしまう。教団に逆らった為に監禁された直人の運命は、ひょんなことから、あるトラック運転手に託されることになる……

コルチカム

白キツネ
ホラー
都会から遠く、遠く離れた自然が多い田舎町。そんな場所に父親の都合で転校することになった綾香は3人の友人ができる。 少し肌寒く感じるようになった季節、綾香は季節外れの肝試しに誘われた。 4人で旧校舎に足を踏み入れると、綾香たちに不思議な現象が襲い掛かる。 微ホラーです。 他小説投稿サイト様にも掲載しております。

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

誰もいない城

月芝
ホラー
気がついたら見知らぬ場所にいた。 暗い部屋の中、自分がどこの誰か、名前すらも思い出せない。 冷たい石の壁と床。 廊下より聞こえてくる不気味な音。 顔が映らない姿見。 失われた記憶。 パニックに陥りそうな状況下にあって、 目に入ったのは小さな明かりとりの穴から差し込む、わずかな月明かり。 優しい月光に惹かれるようにして壁の穴へと近づき、のぞいた先。 そこにあったのは……。 ここにあるのは明けない夜と混沌と怪異のみ。 泣こうがわめこうが誰も助けてくれはしない。 頼れるのは己だけ。 跋扈する異形。 惜しみなく注がれるのは、絶望と恐怖。 ようこそ、理不尽な世界へ。

処理中です...