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第一章:秋本夢美――①
秋本夢美――①
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じっと下を向き、六人が動くのを待つ。
(お願いだからこっちには気づかないで……)
面倒なく、切り抜けられますように。
だけど、そう胸中で囁くあたしの願いは空しくも却下され、すぐ前の通路を通り過ぎようとしていた一人がピタリと足を止めこちらを見下ろしてくるのが気配でわかった。
「どうしたの、角田くん?」
心臓の鼓動が速くなる。
愛の呼びかけから、側に立つのが角田 貴秀だと理解する。
(…………)
身体中を駆け巡る血液の騒々しさとは裏腹に、努めて冷静を装いながらあたしは下げていた顔を上げた。
「……? 何ですか?」
耳に付けたばかりのイヤホンを外し、あなたのことなど何も知らないという風に小首を傾げてみせる。
若干警戒するような芝居も心掛けるが、実際に警戒しているのも事実なため下手な演技よりはリアリティを作れているのではと自己評価できた。
(お願いだからこっちには気づかないで……)
面倒なく、切り抜けられますように。
だけど、そう胸中で囁くあたしの願いは空しくも却下され、すぐ前の通路を通り過ぎようとしていた一人がピタリと足を止めこちらを見下ろしてくるのが気配でわかった。
「どうしたの、角田くん?」
心臓の鼓動が速くなる。
愛の呼びかけから、側に立つのが角田 貴秀だと理解する。
(…………)
身体中を駆け巡る血液の騒々しさとは裏腹に、努めて冷静を装いながらあたしは下げていた顔を上げた。
「……? 何ですか?」
耳に付けたばかりのイヤホンを外し、あなたのことなど何も知らないという風に小首を傾げてみせる。
若干警戒するような芝居も心掛けるが、実際に警戒しているのも事実なため下手な演技よりはリアリティを作れているのではと自己評価できた。
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