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第二章:宿直の先生
宿直の先生 3
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自由創作部の記念すべき最初の活動が決まらないまま、一週間も過ぎてしまった木曜日の昼休み。
あたしと流空の元へ、新しい謎が落ちてきた。
お昼を食べ終えて、早く活動内容を決めねばと部室へ直行したあたしたち二人を待っていたのは、困ったようなマロンちゃんの姿だった。
そのすぐ横には、相変わらず澄ました表情でちょこんと座るよーみもいる。今日は黒猫になっている。
「マロンちゃん、よーみ、こんにちは」
にこやかに流空が声をかけると、マロンちゃんは何かを言いたそうな様子で顔を上げ、「こんにちは」とあからさまに元気のない声で挨拶を返してきた。
昨日帰るときはいつもと変わらぬ元気っぷりを発揮していたはずなのに、丸一日も経たずにこの変化はなんなのだろうか。
説明を求めようと、よーみへ視線で問いかけてみても、すっとぼけた様子で欠伸をしているだけで、答えをくれるつもりはなさそうだ。
流空もマロンちゃんの普段とは違う態度を気にしてか、思案するように横目であたしを見つめてきた。
具合が悪い……とは違う。例えるなら、言うことを聞かなかった子が親に叱られた直後みたいな、そんなしょげ方をしているマロンちゃんのつむじ部分を数秒間二人で眺めて、結局あたしが疑問を口に出すことで事態が先へと進むこととなった。
「……マロンちゃん、何かあったの?」
恐る恐る、俯いたままの頭へ声をかけると、マロンちゃんはその小さな頭をゆっくりと上げ、縋るようにあたしを見つめてくる。
「あのね、おこられちゃった」
「怒られた?」
更に意味がわからなくなり、あたしはしょんぼりするマロンちゃんを見つめ返すことしかできない。
「せんせいに、あそんでちゃだめだって」
「先生? 湯々織先生、ついに吹っ切れたのかな?」
あれほどビビりまくっていた湯々織先生が、こんな短期間で幽霊との接触を克服できるものだろうか。
疑問をむくむくと膨らませながら流空へ意見を求めると、不思議そうに首を傾げてスッとマロンちゃんの前へしゃがみ込んだ。
「私たちが帰った後に、湯々織先生が旧校舎へ戻ってくる理由があるかしら? マロンちゃん、ひょっとしてあっちの新しい校舎へ入り込んで遊んだりしなかった?」
責めるではなく、あくまでもただ訊いただけという柔らかいニュアンスで流空が問うと、マロンちゃんは「してない」と首を横へと振って答えてくる。
「新校舎へ行って叱られたわけではないのね……。それじゃあ、偶然旧校舎に入ってきた他の先生がいて、それで見つかって叱られた?」
顎に手を当て、自分の発した言葉を疑うように流空は呻く。
「いや、それはおかしいよ。もしそうならさ、その先生はマロンちゃんの姿が視えていて、尚且つ生きてる子と勘違いしたってことにならない? だとすれば、今頃学校で噂になったり、先生たちが何か対策とかしてる雰囲気が漂ってたりしてそうなものだけど、今日一日何もなかったじゃん」
夕方以降の敷地内、それも関係者ですら滅多に立ち入らない旧校舎に、幼い幼女が入り込んでいましたとなれば、百パーセント問題になるはず。
しかし、今日ずっと校内で過ごしていても、そんなことが起きていたと騒ぎになるようなことは何一つなかった。
「なるほど。確かに鈴の言うとおりだわ。となると……マロンちゃんは誰に叱られた? やっぱり、湯々織先生なのかしら?」
自由創作部の記念すべき最初の活動が決まらないまま、一週間も過ぎてしまった木曜日の昼休み。
あたしと流空の元へ、新しい謎が落ちてきた。
お昼を食べ終えて、早く活動内容を決めねばと部室へ直行したあたしたち二人を待っていたのは、困ったようなマロンちゃんの姿だった。
そのすぐ横には、相変わらず澄ました表情でちょこんと座るよーみもいる。今日は黒猫になっている。
「マロンちゃん、よーみ、こんにちは」
にこやかに流空が声をかけると、マロンちゃんは何かを言いたそうな様子で顔を上げ、「こんにちは」とあからさまに元気のない声で挨拶を返してきた。
昨日帰るときはいつもと変わらぬ元気っぷりを発揮していたはずなのに、丸一日も経たずにこの変化はなんなのだろうか。
説明を求めようと、よーみへ視線で問いかけてみても、すっとぼけた様子で欠伸をしているだけで、答えをくれるつもりはなさそうだ。
流空もマロンちゃんの普段とは違う態度を気にしてか、思案するように横目であたしを見つめてきた。
具合が悪い……とは違う。例えるなら、言うことを聞かなかった子が親に叱られた直後みたいな、そんなしょげ方をしているマロンちゃんのつむじ部分を数秒間二人で眺めて、結局あたしが疑問を口に出すことで事態が先へと進むこととなった。
「……マロンちゃん、何かあったの?」
恐る恐る、俯いたままの頭へ声をかけると、マロンちゃんはその小さな頭をゆっくりと上げ、縋るようにあたしを見つめてくる。
「あのね、おこられちゃった」
「怒られた?」
更に意味がわからなくなり、あたしはしょんぼりするマロンちゃんを見つめ返すことしかできない。
「せんせいに、あそんでちゃだめだって」
「先生? 湯々織先生、ついに吹っ切れたのかな?」
あれほどビビりまくっていた湯々織先生が、こんな短期間で幽霊との接触を克服できるものだろうか。
疑問をむくむくと膨らませながら流空へ意見を求めると、不思議そうに首を傾げてスッとマロンちゃんの前へしゃがみ込んだ。
「私たちが帰った後に、湯々織先生が旧校舎へ戻ってくる理由があるかしら? マロンちゃん、ひょっとしてあっちの新しい校舎へ入り込んで遊んだりしなかった?」
責めるではなく、あくまでもただ訊いただけという柔らかいニュアンスで流空が問うと、マロンちゃんは「してない」と首を横へと振って答えてくる。
「新校舎へ行って叱られたわけではないのね……。それじゃあ、偶然旧校舎に入ってきた他の先生がいて、それで見つかって叱られた?」
顎に手を当て、自分の発した言葉を疑うように流空は呻く。
「いや、それはおかしいよ。もしそうならさ、その先生はマロンちゃんの姿が視えていて、尚且つ生きてる子と勘違いしたってことにならない? だとすれば、今頃学校で噂になったり、先生たちが何か対策とかしてる雰囲気が漂ってたりしてそうなものだけど、今日一日何もなかったじゃん」
夕方以降の敷地内、それも関係者ですら滅多に立ち入らない旧校舎に、幼い幼女が入り込んでいましたとなれば、百パーセント問題になるはず。
しかし、今日ずっと校内で過ごしていても、そんなことが起きていたと騒ぎになるようなことは何一つなかった。
「なるほど。確かに鈴の言うとおりだわ。となると……マロンちゃんは誰に叱られた? やっぱり、湯々織先生なのかしら?」
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