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第一章:幸福の記憶
幸福の記憶 14
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ため息をつきたい気分を味わいながら前方、廊下の先を見れば澄ました顔の流空がこちらを見て佇んでいるのが瞳に映った。
「……まさか流空、こうなるのわかっててわざと二手に別れようとか言ったんじゃないよね?」
ほんの悪戯心であたしを引っかけてからかうとか、流空ならあり得る。事実、これまでにもたまーにではあるがそういうことをされた経験があるのだ。
しかも、その仕掛けてくるタイミングが絶妙で、毎回あたしが警戒心を無くして油断しきった頃を見計らってさり気なく仕掛けてくるから曲者だ。
「こっちには猫はいなかったけれど、鈴の方はどうだった?」
ゆっくりとこちらへ近づいてきた流空が問うてきたので、あたしはフルフルと首を横へ振った。
「こっちもいなかった。やっぱりあれ流空が言った通り幽霊だったのかも」
「この状況から考えると、そういうことになるんでしょうね。今はもう完全に気配が遠ざかったみたいだし、偶然迷い込んだのかもしれないわ。さぁ、これ以上は詮索しても何もできないし、改めて清掃の続きを始めましょう。今からでも少しは進められるわ」
「あ、ちょっと――」
一人でさっさと部室へ入っていってしまった流空へ届くはずのない手を伸ばして制止しようとするも、当然無意味なわけで。
「ああもう、面倒だなぁ」
あたしは独り言を宙に舞う埃へぶつけながらまた二階へと上がり、歩いたばかりのルートを戻り始めた。
「……まさか流空、こうなるのわかっててわざと二手に別れようとか言ったんじゃないよね?」
ほんの悪戯心であたしを引っかけてからかうとか、流空ならあり得る。事実、これまでにもたまーにではあるがそういうことをされた経験があるのだ。
しかも、その仕掛けてくるタイミングが絶妙で、毎回あたしが警戒心を無くして油断しきった頃を見計らってさり気なく仕掛けてくるから曲者だ。
「こっちには猫はいなかったけれど、鈴の方はどうだった?」
ゆっくりとこちらへ近づいてきた流空が問うてきたので、あたしはフルフルと首を横へ振った。
「こっちもいなかった。やっぱりあれ流空が言った通り幽霊だったのかも」
「この状況から考えると、そういうことになるんでしょうね。今はもう完全に気配が遠ざかったみたいだし、偶然迷い込んだのかもしれないわ。さぁ、これ以上は詮索しても何もできないし、改めて清掃の続きを始めましょう。今からでも少しは進められるわ」
「あ、ちょっと――」
一人でさっさと部室へ入っていってしまった流空へ届くはずのない手を伸ばして制止しようとするも、当然無意味なわけで。
「ああもう、面倒だなぁ」
あたしは独り言を宙に舞う埃へぶつけながらまた二階へと上がり、歩いたばかりのルートを戻り始めた。
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