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【第4章】 三日月峠の戦い
11 日記の評価と分析①
しおりを挟む――世の中には我慢できないことがあるのをご存知だろうか?
「ぐぬぅぅぅ、ぐぐぅぅぬぅうぅううぅぅ」
もじもじと忙しなく動く足
ユラユラと動く体
荒い息遣い
額を伝う冷や汗
それら全てが物語っていた…
そう
限界だ
「と、めろ」
「マリアンヌ様? 顔色がよろしくありませんが」
「もう…無理だ、、これ以上は…」
「は?」
「すぐに馬車を止めろ!」
凄い勢いでドアノブを握り締めるマリアンヌにカーナは必死になって止めた。
「今、走行中ですよ!?危ないです!」
「じゃあすぐ止めろ!」
「現在我が軍は森と森の間にある街道を突っ切って進軍していますが、ムンガル将軍によると、どうやらこの辺りの森には魔獣が出るそうなので、出来る限り止らずに一気に進みたいとのことらしいので、もし止まるとしたらもう少し、最低でも森を抜けてからでないと」
「説明が長げーよ!!そんなこと知るか!すぐ止まれ!今止まれ!これは命令だ!!」
「わ、わかりました。では今すぐ御者に言って急停車させます」
「いや!やっぱりダメだ、急停車はマズイ!」
「えっ!?」
「振動が体によくない、ゆっくり、しかし速やかに、、止まれ、分かった…な?」
「は、、、はい」
命令どおり緩やかに止まる馬車と軍の隊列。
一歩一歩確実に、そして振動を極力抑えるように馬車の階段を下りていく。
そして馬車を降りたマリアンヌ、蒼白な表情のままムンガルに言った。
「ちょっと花を摘んでくる、お前達は人が来ぬように見張っておけ」
「花ですか?恐れながらマリアンヌ皇女殿下、なぜ今花なのですか? このムンガルにも分かるように説明していただきたい」
なぜって、、、嘘だろ?
なんでこれで通じぬのだ…
マリアンヌは頭を抱え込むようにして言った。
「トイレだ」
「え?すいません、聞こえづらかったので、もう少し大きな声でお願いいたします!」
「トイレだよ!!!いいか!こっち来るなよ!!部下どもにもそう伝えておけ!!」
「…はい」
少しして森から出てきたマリアンヌは力なく呟く。
「死にたい」
少し躊躇った表情で駆け寄ってきたカーナ
マリアンヌはただジッと地面方向を見ていた。
「マリアンヌ様…あの、、、なんて言うか…顔色が、、」
「人として大切な物を失った気がする。 もう帰りたい」
事切れる寸前の人間のような弱々しい声。
全てを失った、そう言わんばかりの表情で馬車に戻っていくのであった。
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