47 / 148
【第3章】 最低の家畜たち
09 41人の選択肢⑥
しおりを挟むついに1人目が自分の選択をした。
それからは今まで、岩か何かで勢いを止めていた川が一気に流れるように、次々と囚人たちは樽のようなカゴに腕を突っ込んでいく。
ある男は剣を手に取ってマリアンヌを睨みつける。
「生きがいなんていらねーよ」
ある女は微笑みながら矢を手に取って言った。
「うふ、私は矢を選ぼうかしら。こんなにかわいいご主人様の元で飼われるのら、ペット生活も悪くないわ」
躊躇いながら刺す者もいれば、迷い無く涼しい顔で刺す者もいた。
その一喜一憂を観察しながら興味深そうに眺めるマリアンヌ。
その中で最後まで選択を渋っていたのはあの大量殺人犯の少年だった。
少年は矢を手に持ってマリアンヌに向かって小さく手を挙げる。
「…軽くでいいですか? ぼく、痛いのは苦手で」
マリアンヌは満面の笑みで答えた。
「骨に届くほどザクッとやれ」
「そんな…」
「俺がやってやろうか?」
一番最初に矢を打ち込んだ男
包帯で自らの傷を止血しながらその厳つい顔を緩ませて話しかけてくる。
少年は思った。
この人に任せたら骨が突き破られる、と。
首を全力で振る。
「お気になさらず!!結構です!!」
× ×
「カーナ、矢を取った人数は?」
「22名です」
「ふ~ん、半分てところか、予想よりも多かったな」
いずれ裏切る人間は今から篩いに掛けたほうがいい
不穏分子の除去、だからわざと自分に矢を刺せと無理難題を吹っ掛けた
にも関わらず半数も残る
こんなにも残るとは…
予想に反した結果
最初に矢を取った男に流し目を送る。
この男はそれだけの統率力、カリスマ性みたいなものがあるということか?
あまりそうは見えないが
では我(われ)の言葉が心を突いたから?
そうであって欲しいという願望はあるが真実はどうだか
「まぁ、よいだろう。カーナ」
「はい」
マリアンヌはコロッと表情を変えてニコニコと微笑んで言った。
「カーナ、剣を手に取った者をすべて殺せ」
カーナは静かに頷いた。
「はい、マリアンヌ様」
「矢を取った残りの家畜への見せしめの為にも派手にな」
「もちろんよろんで」
その2人の話を聞きいていた全身傷の男
助け舟を出すように話しかけた。
「おいおい姫さん、本気でそんな女にやらす気かよ?外にいる兵士を入れたくないなら俺が手伝ってやろうか?」
男は残った半数の囚人を1人で相手にしても十分勝てると判断したのだろう
手当てを終えた肩を準備運動がてら、グルグルと回しながら自信満々に言った。
マリアンヌは今にも笑い出しそうな口を押さえる。
押さえた手の上、指と指の隙間から見える目はニターと笑っていた。
「必要ない、お前も怪我人なのだからおとなしくしておけ」
剣を握り締めてじりじりとマリアンヌとの間合いをつめてくる囚人たち
マリアンヌは扉を背に立つ
そしてその端整な顔からは想像できないような、どす黒い声で言う。
「お前たちは選択を間違えた。素直に我の物になっていればよかったものを、、」
その言葉は囚人たちに確信を与える。
この女は今から背後の扉を開けて兵士達をこの地下室に引き入れようとしている。
そう思った勘と頭の切れる数人は足に力を入れて地面を大きく蹴ろうとした
だが、その直進を防ぐように赤髪のメイドがマリアンヌと囚人たちの視線の間に割り込む。
「ゲス共が、誰に断わってマリアンヌ様に近づこうとしている?」
カーナはそう言うとゆっくりち囚人たちに近づいていく
そして大量の剣が入ったカゴの前まで行くと大きく上に蹴り上げた
宙を舞う銅製のカゴと中に入っていた大量の剣
飛び交う1本を一瞥もすることもなくバッと掴むと頭上から降ってくる大量の金属音が豪雨のように鳴り響く中、カーナはその無機質で抑揚の無い声で言った。
「マリアンヌ様の御前で死ねること、光栄に思え」
そして静まり返った地下室で肩を慣らすように剣を2回、3回と腕の周りで転がすと感情の無い瞳が剣を持って構えている囚人たちを捕らえる。
「来い家畜ども」
「上等だ!!いくぞぉぉお前ら!!!」
0
お気に入りに追加
21
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
御機嫌ようそしてさようなら ~王太子妃の選んだ最悪の結末
Hinaki
恋愛
令嬢の名はエリザベス。
生まれた瞬間より両親達が創る公爵邸と言う名の箱庭の中で生きていた。
全てがその箱庭の中でなされ、そして彼女は箱庭より外へは出される事はなかった。
ただ一つ月に一度彼女を訪ねる5歳年上の少年を除いては……。
時は流れエリザベスが15歳の乙女へと成長し未来の王太子妃として半年後の結婚を控えたある日に彼女を包み込んでいた世界は崩壊していく。
ゆるふわ設定の短編です。
完結済みなので予約投稿しています。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
私はお母様の奴隷じゃありません。「出てけ」とおっしゃるなら、望み通り出ていきます【完結】
小平ニコ
ファンタジー
主人公レベッカは、幼いころから母親に冷たく当たられ、家庭内の雑務を全て押し付けられてきた。
他の姉妹たちとは明らかに違う、奴隷のような扱いを受けても、いつか母親が自分を愛してくれると信じ、出来得る限りの努力を続けてきたレベッカだったが、16歳の誕生日に突然、公爵の館に奉公に行けと命じられる。
それは『家を出て行け』と言われているのと同じであり、レベッカはショックを受ける。しかし、奉公先の人々は皆優しく、主であるハーヴィン公爵はとても美しい人で、レベッカは彼にとても気に入られる。
友達もでき、忙しいながらも幸せな毎日を送るレベッカ。そんなある日のこと、妹のキャリーがいきなり公爵の館を訪れた。……キャリーは、レベッカに支払われた給料を回収しに来たのだ。
レベッカは、金銭に対する執着などなかったが、あまりにも身勝手で悪辣なキャリーに怒り、彼女を追い返す。それをきっかけに、公爵家の人々も巻き込む形で、レベッカと実家の姉妹たちは争うことになる。
そして、姉妹たちがそれぞれ悪行の報いを受けた後。
レベッカはとうとう、母親と直接対峙するのだった……
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる