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MISERABLE SINNERS
アザゼルの山羊 一章三節
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荒野の夢を見た。
一っ子一人いない不毛の大地を、俺は歩いた。
曇天の空。視界は悪いのに、どこまでも続いているのがわかる絶望。果ては見えぬ。ひび割れに足をとられ、躓いた。起き上がり、また歩く。逆風が吹きつけ、推進を阻む。なぜ歩くのかと問われたら、すぐには答えられない。そうするよう義務付けられているからだろうし、もしそうでないとしても――俺は歩き続けるだろう。止まるのが怖いからだ。立ち止まったが最後、きっと、もう足は踏み出せない。
歩けなくなるのが怖いから、歩みを止めないのだ。
ふくらはぎが浮腫み、爪が割れ、唇が渇き、空腹が襲っても、進んでいく。
これは贖罪の旅。
いつか差し伸べられる救いを夢見て。
赦しを得るために。
どこまでも。
どこまでも――。
ところが旅は、いつの間にかその目的を変えてしまった。心細さが牙を向いて襲い掛かってきたのである。容赦なく引き裂かれた傷口は膿み、凍えるような寒さを体に覚えさせた。罪を償うための旅は、誰かと出会うための旅へと変わっていた。やはり、孤独は自分に堪えきれるものではなかった――だれか、と俺は叫んだ。だれか。助けてください。ただ一度、手を握ってくれるだけでいいのです。たった一言、短い言葉を掛けてくれるだけでいいのです。それだけで俺はまた足を動かせる。しかし、その望みも絶たれたとあらば、もう何を標に進めばいいかわかりません。当てもなく彷徨うのはもう疲れました。光をください。希望を。いつか救われるという救いを。どうか。どうか――。
遠くに人影が見えた。
それは俺にとって、まさしくの光だった。
こちらに背を向けているため、顔は見えない。ああ、だけどわかる。瞼の裏に鮮烈に焼きついている。その後ろ姿。俺の。俺の大切な人。恋い焦がれた人。大好きだった人。もう――会えない人。
煙草を吸っているようだ。
俺は、その紫煙の香りがとても好きだった。
「おとうさん」
「目が覚めましたか」
声がする。
呼吸が苦しい。喉に何か詰まっているような感覚がある。喘ぐように息を吸った。それだけで、身震いするような刺激が走った――額から足の先まで、全身が火照っている。ぐらついた鍋に浸かっているようだ。
助祭の顔が見えた。
すぐ後ろからジュリアを見下ろしている。距離は近い。自分はどうやら、彼の胸に寄りかかっているらしい。随分とにこやかだ。上機嫌に見える。
「イ……イッシュ、様」
ジュリアは朦朧とした意識の中、彼を呼んだ。
「俺……何が……」
どうなったというのだろう。思い出せない。食事の最中だった気がするが、それすらも曖昧だ。思考は奪われていた。靄が掛かったように何も考えられない。
物悲しい夢を見た気がする。
気分は最悪なのに――何故だか、忘れてしまったのが酷く切なかった。
助祭がジュリアの頬に手を添えた。彼もジュリアに負けず劣らず熱を孕んでいた。
「おはようございます。気持ちよさそうに眠っていましたね――淫らな夢でも、見ていましたか」
瞳が。
まるで蛇のように。
「え……?」
ひた、と腿に冷たいものが触れた。見れば、死人のごとき青白い手が、ジュリアの足を掴んでいる。ジュリアは悲鳴を上げた。自分は服を剥かれていた。助祭の繊細な指がジュリアの胸元を這い、広げられた足の間には――かの司祭の姿があった。表情がない。息を乱す様子もない。それなのに怒張したそれは、ジュリアの体を今まさに貫こうとしている。
体が熱い。
この感覚を知っている。
自分は――薬を盛られたのだ。
「ひ……っ」
「ああ、いい、いいですね、たまりません……っ」助祭は恍惚として言った。「その顔。あなたのような罪深き者が迷い込んでくるのを、我々は待ち望んでいたのです。精々、神に祈りなさい――これから訪れる、悪夢のような日々を思って」
司祭が腰を進めた。ジュリアは逃げようとしたけれど、後ろに控えた助祭がそれを許さなかった。驚いたことに、そこはすでに慣らされていた。自分は一体、どのくらい眠っていたんだろう。眠っている間に、何をされたんだろう……? 涙が溢れた。巨大な圧迫感が、ジュリアの中に入ってくる。空気を孕んだ淫猥な水音が、狂った現実を突きつける。
やめて、と叫ぶことができたらどれだけ気が楽だっただろうか。
ジュリアはただ黙って受け入れる他なかった。心がどんなに拒絶したところで、口に出せないのなら意味はない。ジュリアはいつもそうだ。嫌だと思っても、嫌だと主張することができない。拒絶という行為が、ジュリアは不得手だった。
あ、と一つ呻いて、ジュリアは静かになった。
司祭の冷たい肌と、熱を帯びた自分の体は、焼きたてのパンケーキとバニラアイスを思わせた。腰を叩きつけられる度に、体が跳ねる。背中にいる助祭もまた自身を露わにしていたが、彼はジュリアの背中にそれを擦りつけ、こちらの動きで楽しんでいるようだった。
頭の中が真っ白になった。
湧き上がる快楽が、俺から俺を遠ざける。
「んッ、は、はあ……あ、あっ」
「慣れているね」
司祭が耳元で言った。
「これまでどれだけの罪を犯してきたんだ」
目を開く。
司祭はやはり、つまらなそうな顔をしていた。
なぜだかジュリアは、彼の問いに――答えなければと、思った。
「あ……ああ……!」
涙が止まらなかった。彼らには全てわかっているのだ。ジュリアの背負った業。しかし、それはなすりつけられたものではない。自ら背負い込んだ罪なのだ。自分は穢れている。
俺には。
「お……俺には……悪魔が、憑りついているんです……!」
お前のせいだ。
お前が悪い。
淫らなお前が――いけないのだと。
いつも言われてきた。どうやらジュリアは、他人の目にそれは美しく映るらしい。自分ではわからない。鏡を見ても何とも思わないからだ。陰気な目。丸まった背。ろくに返事もできやしない、うだつの上がらない自分。ただ――母は美しい人だった。その母の血を継いでいるのであれば、皆がそう勘違いしてしまうのも仕方がないと思った。
「み、みんな、それに、惑わされる、と、言います、んッ、ん……お、俺は……ぁ、い、いやなのに、いや、じゃ、ないんだ、ぁ、って……お、俺が、誘ったんだって……! う、ううっ、う……も、も、もう、つらいのです、苦しいのです! こ、こんな……ぅ、あ……!」
ジュリアは達した。
体を蝕む熱が、ジュリアの絶頂を後押しした。腹のうちに注ぎ込まれた息吹は、溶岩のようにジュリアの内臓を焼いた。
こんな様では言い訳ができない。
やはり自分は、濁って、凝って、どうしようもなく膿んでいる。
「ん、んん……、は、ま、まって、」
ジュリアも、司祭も、どちらも果てたというのに、司祭は律動を収めはしなかった。相変わらずむすっとした表情で、ただ少しだけ、先より汗ばんでいた。
「あ、や……はぁ、は……んッあ、ああ、あ」
助祭がジュリアの首筋に口付けた。熱い手が、鎖骨を撫で、胸骨を滑り、肋骨を一本一本数えるようにして下りていった。中指が尖った腰骨を柔く押す。足の付け根をなぞると、張り詰めたその裏筋を、つうと辿った。
「見えますよ。あなたの罪が」
彼の声は優しく、柔らかい。まるで幼子に語りかけるように、助祭は言う。
「あなたの身に刻まれた肉慾の魔性が、愚かな人間達を非行に駆り立てる。でも、安心なさい。私達が浄化して差し上げます。これは、そのための儀式なのです」
助祭の指が、ジュリアのものを緩く握った。それだけで甘い刺激が這い上がった――司祭の動きに連動してジュリアが動くと、そこにも快楽が生まれる。駄目だ、と思う。今度こそ、本当に――見失う。
自分がわからなくなる。
「主は見ておられます。あなたの献身と、信仰の全てを」
涙が頬を伝い、顎から落ちて、体に跳ねた。それすらも最早、快感である。自分は、なんて浅ましく、淫らで、低俗な生き物なのだろう。わかっていた。わかっていたことだ。だけど、こんなの――あんまりじゃないか。
神様。
「ゆるして。ゆるして、ください。かみさま。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさ」
赦して。
お義父さん。
一っ子一人いない不毛の大地を、俺は歩いた。
曇天の空。視界は悪いのに、どこまでも続いているのがわかる絶望。果ては見えぬ。ひび割れに足をとられ、躓いた。起き上がり、また歩く。逆風が吹きつけ、推進を阻む。なぜ歩くのかと問われたら、すぐには答えられない。そうするよう義務付けられているからだろうし、もしそうでないとしても――俺は歩き続けるだろう。止まるのが怖いからだ。立ち止まったが最後、きっと、もう足は踏み出せない。
歩けなくなるのが怖いから、歩みを止めないのだ。
ふくらはぎが浮腫み、爪が割れ、唇が渇き、空腹が襲っても、進んでいく。
これは贖罪の旅。
いつか差し伸べられる救いを夢見て。
赦しを得るために。
どこまでも。
どこまでも――。
ところが旅は、いつの間にかその目的を変えてしまった。心細さが牙を向いて襲い掛かってきたのである。容赦なく引き裂かれた傷口は膿み、凍えるような寒さを体に覚えさせた。罪を償うための旅は、誰かと出会うための旅へと変わっていた。やはり、孤独は自分に堪えきれるものではなかった――だれか、と俺は叫んだ。だれか。助けてください。ただ一度、手を握ってくれるだけでいいのです。たった一言、短い言葉を掛けてくれるだけでいいのです。それだけで俺はまた足を動かせる。しかし、その望みも絶たれたとあらば、もう何を標に進めばいいかわかりません。当てもなく彷徨うのはもう疲れました。光をください。希望を。いつか救われるという救いを。どうか。どうか――。
遠くに人影が見えた。
それは俺にとって、まさしくの光だった。
こちらに背を向けているため、顔は見えない。ああ、だけどわかる。瞼の裏に鮮烈に焼きついている。その後ろ姿。俺の。俺の大切な人。恋い焦がれた人。大好きだった人。もう――会えない人。
煙草を吸っているようだ。
俺は、その紫煙の香りがとても好きだった。
「おとうさん」
「目が覚めましたか」
声がする。
呼吸が苦しい。喉に何か詰まっているような感覚がある。喘ぐように息を吸った。それだけで、身震いするような刺激が走った――額から足の先まで、全身が火照っている。ぐらついた鍋に浸かっているようだ。
助祭の顔が見えた。
すぐ後ろからジュリアを見下ろしている。距離は近い。自分はどうやら、彼の胸に寄りかかっているらしい。随分とにこやかだ。上機嫌に見える。
「イ……イッシュ、様」
ジュリアは朦朧とした意識の中、彼を呼んだ。
「俺……何が……」
どうなったというのだろう。思い出せない。食事の最中だった気がするが、それすらも曖昧だ。思考は奪われていた。靄が掛かったように何も考えられない。
物悲しい夢を見た気がする。
気分は最悪なのに――何故だか、忘れてしまったのが酷く切なかった。
助祭がジュリアの頬に手を添えた。彼もジュリアに負けず劣らず熱を孕んでいた。
「おはようございます。気持ちよさそうに眠っていましたね――淫らな夢でも、見ていましたか」
瞳が。
まるで蛇のように。
「え……?」
ひた、と腿に冷たいものが触れた。見れば、死人のごとき青白い手が、ジュリアの足を掴んでいる。ジュリアは悲鳴を上げた。自分は服を剥かれていた。助祭の繊細な指がジュリアの胸元を這い、広げられた足の間には――かの司祭の姿があった。表情がない。息を乱す様子もない。それなのに怒張したそれは、ジュリアの体を今まさに貫こうとしている。
体が熱い。
この感覚を知っている。
自分は――薬を盛られたのだ。
「ひ……っ」
「ああ、いい、いいですね、たまりません……っ」助祭は恍惚として言った。「その顔。あなたのような罪深き者が迷い込んでくるのを、我々は待ち望んでいたのです。精々、神に祈りなさい――これから訪れる、悪夢のような日々を思って」
司祭が腰を進めた。ジュリアは逃げようとしたけれど、後ろに控えた助祭がそれを許さなかった。驚いたことに、そこはすでに慣らされていた。自分は一体、どのくらい眠っていたんだろう。眠っている間に、何をされたんだろう……? 涙が溢れた。巨大な圧迫感が、ジュリアの中に入ってくる。空気を孕んだ淫猥な水音が、狂った現実を突きつける。
やめて、と叫ぶことができたらどれだけ気が楽だっただろうか。
ジュリアはただ黙って受け入れる他なかった。心がどんなに拒絶したところで、口に出せないのなら意味はない。ジュリアはいつもそうだ。嫌だと思っても、嫌だと主張することができない。拒絶という行為が、ジュリアは不得手だった。
あ、と一つ呻いて、ジュリアは静かになった。
司祭の冷たい肌と、熱を帯びた自分の体は、焼きたてのパンケーキとバニラアイスを思わせた。腰を叩きつけられる度に、体が跳ねる。背中にいる助祭もまた自身を露わにしていたが、彼はジュリアの背中にそれを擦りつけ、こちらの動きで楽しんでいるようだった。
頭の中が真っ白になった。
湧き上がる快楽が、俺から俺を遠ざける。
「んッ、は、はあ……あ、あっ」
「慣れているね」
司祭が耳元で言った。
「これまでどれだけの罪を犯してきたんだ」
目を開く。
司祭はやはり、つまらなそうな顔をしていた。
なぜだかジュリアは、彼の問いに――答えなければと、思った。
「あ……ああ……!」
涙が止まらなかった。彼らには全てわかっているのだ。ジュリアの背負った業。しかし、それはなすりつけられたものではない。自ら背負い込んだ罪なのだ。自分は穢れている。
俺には。
「お……俺には……悪魔が、憑りついているんです……!」
お前のせいだ。
お前が悪い。
淫らなお前が――いけないのだと。
いつも言われてきた。どうやらジュリアは、他人の目にそれは美しく映るらしい。自分ではわからない。鏡を見ても何とも思わないからだ。陰気な目。丸まった背。ろくに返事もできやしない、うだつの上がらない自分。ただ――母は美しい人だった。その母の血を継いでいるのであれば、皆がそう勘違いしてしまうのも仕方がないと思った。
「み、みんな、それに、惑わされる、と、言います、んッ、ん……お、俺は……ぁ、い、いやなのに、いや、じゃ、ないんだ、ぁ、って……お、俺が、誘ったんだって……! う、ううっ、う……も、も、もう、つらいのです、苦しいのです! こ、こんな……ぅ、あ……!」
ジュリアは達した。
体を蝕む熱が、ジュリアの絶頂を後押しした。腹のうちに注ぎ込まれた息吹は、溶岩のようにジュリアの内臓を焼いた。
こんな様では言い訳ができない。
やはり自分は、濁って、凝って、どうしようもなく膿んでいる。
「ん、んん……、は、ま、まって、」
ジュリアも、司祭も、どちらも果てたというのに、司祭は律動を収めはしなかった。相変わらずむすっとした表情で、ただ少しだけ、先より汗ばんでいた。
「あ、や……はぁ、は……んッあ、ああ、あ」
助祭がジュリアの首筋に口付けた。熱い手が、鎖骨を撫で、胸骨を滑り、肋骨を一本一本数えるようにして下りていった。中指が尖った腰骨を柔く押す。足の付け根をなぞると、張り詰めたその裏筋を、つうと辿った。
「見えますよ。あなたの罪が」
彼の声は優しく、柔らかい。まるで幼子に語りかけるように、助祭は言う。
「あなたの身に刻まれた肉慾の魔性が、愚かな人間達を非行に駆り立てる。でも、安心なさい。私達が浄化して差し上げます。これは、そのための儀式なのです」
助祭の指が、ジュリアのものを緩く握った。それだけで甘い刺激が這い上がった――司祭の動きに連動してジュリアが動くと、そこにも快楽が生まれる。駄目だ、と思う。今度こそ、本当に――見失う。
自分がわからなくなる。
「主は見ておられます。あなたの献身と、信仰の全てを」
涙が頬を伝い、顎から落ちて、体に跳ねた。それすらも最早、快感である。自分は、なんて浅ましく、淫らで、低俗な生き物なのだろう。わかっていた。わかっていたことだ。だけど、こんなの――あんまりじゃないか。
神様。
「ゆるして。ゆるして、ください。かみさま。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさ」
赦して。
お義父さん。
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