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第2章 ダンジョンを知る
第54話 括りたがる生き物
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見た目は今までの層のゴブリンと何ら変わらないが、ナイフのような小型の剣を持ったゴブリンが歩いていた。
「ふっ!」
次の瞬間、目の前の剣を持ったゴブリンの腕は、布で拘束されていた。
「無詠唱もだいぶ上達してきたな」
ヘラトリアが満足した様子で言った。
「後は先刻のように、『ふっ!』などと発さなくても発動できるようになれば、不意打ちにも対応できるようになると思うぞ」
魔法は、発動石が発動――1度魔法名を唱えてさえいれば、次からは、無詠唱でも魔法を放つことができる。……ただし、別の魔法を使うときには、その魔法を唱えなおす必要があるが。
この技術は、身につけてさえしまえばなんて事ないのだが、昨日魔法を知った俺にとっては、少し難易度が高かった。
「もっと、イメージを大事にするんだ。地国民は発想力が豊かなんだから、コツさえつかめば簡単だぞ」
『地国民』っていう、大枠で俺を括らないでくれよ……。
人間は括りたがる生き物である。男だから、女だから、外国人だから……。それが『地国民――地球人だから』というところに行き着いたとしても、何らおかしくはない。
むしろ必然なのかもしれない。
しかし、水城は、そんな『偏見』が、大嫌いだった。だから彼は心のどこかで、ほんの片隅で、ヘラトリアのことが嫌いになった気がした。
「フガッ! ガッ!!」
腕を封じられたゴブリンは、状況を飲み込み、必死に剣で布を切ろうとしていた。
「悪いが糧になってくれ」
そう言いながら俺が近づくと、布を切ることをあきらめたようで、拘束された状態のまま俺に剣を刺さんと走ってきた。
「ふっ!」
先程同様、俺は力を込め、それと同時に布が今度はゴブリンの足を拘束した。
「ガァッ――!」
唐突に足が動かせなくなったゴブリンは、つんのめって、見事な顔面ダイブを決めた。
すかさず俺は前へ進み、背を上にして倒れているゴブリンの前に立った。そしてゴブリンの背中に、剣を深々と突き刺した。
「ガァァ――!!」
先程までよりも大きな声を上げて、ゴブリンは息絶えた。少しすると、剣や周囲の地面を汚していた血とともに、体は消滅し、そこには、ゴブリンコイン1枚と、モンスターコイン3枚が落ちていた。
それを見て俺が気になったのは――
「――剣はドロップしないんだな」
ということである。モンスターの体が消滅するのは分かるが、装備もドロップしないということは少々意外だった。すると、俺の予想の範疇にあった仕組みをへラトリアが口にした。
「装備品はレアドロップとして手に入るものだ」
まあ、そうだろうな。
「だが、運の悪い私は今まで一度もドロップしたことはない」
あー、察し。
やっぱ哀れだな。
しかし、敵を倒すと消滅するとなると、倒していない状態で装備を奪い取ったらどうなるのだろうか。もし、倒さなければ消えないとすれば、わざと倒さずに強い武器を回収……なんてこともできるかもしれない。
次の戦闘で試してみるか。
そんなことを考えながらへラトリアの後ろを歩いていると、またへラトリアが止まった。
「これを見ろ」
そう言ったへラトリアの指すほうを見ると、――
――そこには、いかにも怪しすぎる木の宝箱が置いてあった。
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最後まで読んでいただきありがとうございます。
よろしければ、『お気に入り』への追加、感想の投稿をよろしくお願いいたします。
特に感想は、作品の向上や誤字脱字等の修正に役に立つので、どんなことでもいいので気になる点があれば是非お願いします。
『お気に入り』への追加をしていただくと、作品を書く活力になります。
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「ふっ!」
次の瞬間、目の前の剣を持ったゴブリンの腕は、布で拘束されていた。
「無詠唱もだいぶ上達してきたな」
ヘラトリアが満足した様子で言った。
「後は先刻のように、『ふっ!』などと発さなくても発動できるようになれば、不意打ちにも対応できるようになると思うぞ」
魔法は、発動石が発動――1度魔法名を唱えてさえいれば、次からは、無詠唱でも魔法を放つことができる。……ただし、別の魔法を使うときには、その魔法を唱えなおす必要があるが。
この技術は、身につけてさえしまえばなんて事ないのだが、昨日魔法を知った俺にとっては、少し難易度が高かった。
「もっと、イメージを大事にするんだ。地国民は発想力が豊かなんだから、コツさえつかめば簡単だぞ」
『地国民』っていう、大枠で俺を括らないでくれよ……。
人間は括りたがる生き物である。男だから、女だから、外国人だから……。それが『地国民――地球人だから』というところに行き着いたとしても、何らおかしくはない。
むしろ必然なのかもしれない。
しかし、水城は、そんな『偏見』が、大嫌いだった。だから彼は心のどこかで、ほんの片隅で、ヘラトリアのことが嫌いになった気がした。
「フガッ! ガッ!!」
腕を封じられたゴブリンは、状況を飲み込み、必死に剣で布を切ろうとしていた。
「悪いが糧になってくれ」
そう言いながら俺が近づくと、布を切ることをあきらめたようで、拘束された状態のまま俺に剣を刺さんと走ってきた。
「ふっ!」
先程同様、俺は力を込め、それと同時に布が今度はゴブリンの足を拘束した。
「ガァッ――!」
唐突に足が動かせなくなったゴブリンは、つんのめって、見事な顔面ダイブを決めた。
すかさず俺は前へ進み、背を上にして倒れているゴブリンの前に立った。そしてゴブリンの背中に、剣を深々と突き刺した。
「ガァァ――!!」
先程までよりも大きな声を上げて、ゴブリンは息絶えた。少しすると、剣や周囲の地面を汚していた血とともに、体は消滅し、そこには、ゴブリンコイン1枚と、モンスターコイン3枚が落ちていた。
それを見て俺が気になったのは――
「――剣はドロップしないんだな」
ということである。モンスターの体が消滅するのは分かるが、装備もドロップしないということは少々意外だった。すると、俺の予想の範疇にあった仕組みをへラトリアが口にした。
「装備品はレアドロップとして手に入るものだ」
まあ、そうだろうな。
「だが、運の悪い私は今まで一度もドロップしたことはない」
あー、察し。
やっぱ哀れだな。
しかし、敵を倒すと消滅するとなると、倒していない状態で装備を奪い取ったらどうなるのだろうか。もし、倒さなければ消えないとすれば、わざと倒さずに強い武器を回収……なんてこともできるかもしれない。
次の戦闘で試してみるか。
そんなことを考えながらへラトリアの後ろを歩いていると、またへラトリアが止まった。
「これを見ろ」
そう言ったへラトリアの指すほうを見ると、――
――そこには、いかにも怪しすぎる木の宝箱が置いてあった。
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特に感想は、作品の向上や誤字脱字等の修正に役に立つので、どんなことでもいいので気になる点があれば是非お願いします。
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