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第2章  ダンジョンを知る

第50話  魔法って、便利!

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 俺は、金魚の糞のように彼女について行った。

 こうして俺の、人生初のダンジョン攻略が始まった。


  ■  □  ■  □  ■


「ところでモンスターはいないのか?」

 俺たちは4~5分歩いたが、迷路のような道をひたすら進み続けるだけで、特に戦闘をすることはなかった。

「ここは1層だからな。そこに見えている階段を下りればお待ちかねのモンスターに会えるぞ」

 へラトリアが指差す先に、階段が見えた。指されるまでは気づかなかった。
 ダンジョン内は光源(ランプのようなもの)が所々に設置されており、多少は明るいが、完全に見渡せるわけではなく、多少の死角があった。

「モンスターは危険なのかな?」

「ゴブリン自体はそこまで強くないが、上位の個体や、武器持ちには気を付けたほうがいいぞ」

 なかば俺の独り言であったが、へラトリアが聞き取り、応答してくれた。

 そして俺たちは、2層への階段を下りた。

「見えるか? あれがゴブリンだ。2層にいるゴブリンは武器を持っていない。安心して戦うことができるぞ」

 そうは言われたものの、人生で初めてゴブリンを見た直後に、戦えというのは中々ハードである。

「直接戦うのは緊張するだろうから、まずは、拘束を使ってみたらどうだ? スキル使用のいい練習にもなるだろう」

 言われた通りに俺はスキルを発動させた。

「拘束!」

 すると、俺の持っていた剣が布状に変化し、それと同時に、俺が剣を向けた先にいたゴブリンが、両腕とどうを布で拘束された状態になった。

「おお」

 自分で発動させた魔法だというのに、自分自身が一番驚いていた。

「ギィ? ギャギャ!!」

 ……いや、そんなこともないのかもしれない。拘束されたゴブリンも、負けずおとらず驚いていた。

 そんなゴブリンに対して、俺は布状になった剣を向けながら進んでいった。
 ゴブリンどころか、動物を斬ったことなど一度もない俺にとって、ゴブリンを自分の手であやめるという行為は、背を向けたくなるような行為だった。
 実際、もし俺が背を向ければ、へラトリアが両断していただろう。
 しかし、それでは駄目だ。冒険者としてダンジョン攻略をすると決めた俺は、ここで逃げてはいけないのだ。ここで斬れなければ、たぶん俺は一生、斬れない。
 だから俺は、自分の手で、このゴブリンを葬ることを決意し、進み出た。
 へラトリアは止めなかった、むしろ、俺の行動の真意を理解したようで、何も言わず、ただ見つめていた。

「はぁっ!」

 俺は威勢いせいのいい声とともに、剣をゴブリン目がけて振り下ろした。

 ばしっ!

 乾いた音が、ダンジョン内に響いた。

「あれ?」

 俺の剣は、『拘束』を発動したことで、布状になっていたことを思い出した。

 魔法を発動して形状が変化したら、効果も依存するのか。「見た目は布だけど、効果は剣!」みたいなことは起きないんだな。
 ってか、俺の決意を返せよ!

 ……ちょっとがっかりだけど、得られたことはあった。やはり、効果は依存するんだな。

「ギィ? ギィ?」

 俺がで叩いたゴブリンは、叩かれたところから、別の布でさらに拘束されていたのだ。

「いろいろ分かったところで、悪いけど、俺のかてになってもらうよ」

 そう言って、俺は、『拘束』の発動を解除した。俺の剣は元の形に戻ったが、ゴブリンを拘束する布はそのままだ。

「魔法って、便利!」

 そう言いながら、俺はゴブリンを両断した。
 先程の一件があったことで、実にリラックスして斬ることができた。

 俺が一安心していると、斬られたゴブリンが少しして四散しさんし、消滅した。
 そこには、――


 ――3枚のメダルと、1つの宝箱が落ちていた。



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