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第2章  ダンジョンを知る

第38話  ゴヴニュの力

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 嘘をつきたくない、と思ったフィーラは、彼女が『ゴヴニュ』というレジェンダリースキルを保有していることと、その効果を教えたのである。
 仲間たちは初めは驚いていたもの、納得し、自分にもその恩恵を分けるように、強引に迫ってきたのである。

 その時彼女は実感したのだ。
 レジェンダリースキルは、今まで築き上げてきた関係を壊すほどに、強力であるということを。もう、友人は自分のことを以前のようには見てくれないということを。

 フィーラは冒険者を辞め、商人の家の跡継あとつぎをした。それに伴って、素顔を隠して、レジェンダリースキルの恩恵を商売で利用するようになった。
 フィーラとしてではなく、『謎のアジーン』として。
 それ以来は、命を狙われることも、強引に恩恵を求めてくる者はいなくなった。

 これがフィーラの、フィーラ・メイシスの生きてきた人生である。だから彼女は言う、レジェンダリースキルは明かしてはならないと。

「以上です」

 そう言って、彼女は自分の体験を語り終えた。
 話を聞いた水城は、今更ながらに、レジェンダリースキルについての考えを改めた。

 俺が思っていた以上に、人を狂わせるのかもな。

「ちなみに、フィーラさんのレジェンダリースキルは何なんですか? ……答えたくなければ答えなくてもいいですけど」

「別に問題ないです。私のレジェンダリースキルは、話の中にも登場しましたが『ゴヴニュ』というもので、効果は、コモンスキルを作ることができる、というものです」

 コモンスキルを……作る?
 それは、チートでしょうか? ひかえめに言ってチートでしょうか?

「スキルを作ると言っても、月に一度しかできないですし、素材を必要とするんですけどね」

 素材?

「分からないことが多いでしょうから、実際にやってみましょうか」

 そう言ってフィーラは俺の近くへ来た。

「何か、何でもいいので、素材を出してください。その素材と、あなたとの関係性によって、スキルが発生します」

「素材……は何でもいいんですか?」

「はい。極端な話、ゴミでも構いません」

 ゴミ……本当に何でもいいんだな。何かあるかな?

 そう思いながらポケットをさぐってみると、ハンカチを見つけた。
 これは、昨日、『完治』でミアに治してもらうまで、怪我の応急手当に使っていたもので、少し血がついていた。

「これでもいいですか?」

「もちろんです」

 俺が不安ながらに確かめると、全く問題ない、といった様子でフィーラさんが答えた。

「では行きますね」

 そう言って、フィーラが杖をかざすと、ハンカチが消滅した。

「きえた!」

 先程まで、珍しく黙っていたミリアが反応した。

「もういいですよ。ステータスを確認してみてください」

 ステータス、オープン!

 指示された俺がステータスを開くと、――


――――――――――――――――――――――――――――――

名前  水城新太

年齢  16

レベル  1 ( 0/100 )

MP  8/14 ( 0/100 )

スキル
 コモン  4
 レジェンダリー  2

アビリティーボーナス
 剣捌き  +1%
 忍び歩き  +1%

称号  ドヴァ― 転移者

――――――――――――――――――――――――――――――


 ――コモンスキルが、3から4に増えていた。



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