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第1章  中々無い出会い方

第7話   れっつごー

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「じゃあ、この、二つの薬を飲んでくれ」

 そう言って、手渡されたのは、中には一粒ずつ、何らかの固形物が入っている、瓶のようなものだった。
 その便には、金色の模様が美しく刻まれており、見るからに高価だった。

「なあ、毒じゃないよな? 何なんだ、これ」

 中に入っている固形物は、正四面体のような形をしていた。それを除けば、ただの薬のように見えた。

「よく知らねー。なんかの効果がある薬じゃねーのか?」

 は? ミアは何を言ってるんだ? なんで、自分の持ってきたものが分かんないんだよ。てか、こんなものが入ってたのかよ。

 ミアは全裸で、服を着ていなかったが、その代わり、手提げかばんのようなものを持っていた。先ほど、ミアが倒れたため、それは、ベットの横に置いておいたんだが……。

「なんかの効果、って無責任すぎるだろ!」

「いや、授業で習わなかったんだよ。たぶん、最近改正されたばっかなんじゃないかな? ……とにかく、水城のように地国から来た人間が、天国の環境に慣れるためのものらしいぞ」

 なるほど、生活環境が違うから、天国に慣れるために……。って、天国に今から俺は行くのか? むしろ、逝くのか?

「あ、俺、死ぬのか」

「水城、何言ってんだ? 天国って言っても、地国民ちこくみんが思ってるような場所じゃねーぞ。少なくとも、死んだら行く場所ではねーからな」

「『地国民』って、誰だ?」

「ああ、言ってねーな。水城たちの言う、地球人のことをボクらは地国民って呼ぶんだ」

「ということは、ミアたちが住んでいるのが……」

「天国って訳だ」

 納得した。これが文化の違いというやつかもしれんな。

「ところで、そろそろ飲まねーか? だいぶ時間押してんだ」

 確かにそうだろう。だいぶ寝てたしな。

「よし、飲もう」

 そう言って、台所から水を取ってきた俺は、ミアから薬を受け取った。
 意を決して飲むと、予想を裏切って、無味無臭だった。クソ不味いと思ったのに。

「いあ、あじいあいぞ」

「飲み込んでから、しゃべれよ。みっともねーな」

 注意を受けたので、飲み込んだ。

「ミア、味しなかったぞ」

「そうか、つまんねーな。不味そうな顔して飲み込むのが見えるかと思ったのにな」

 性格、クソだな。

「ところで、これからどうするんだ?」

「ああ、荷物をまとめとけ。一度出発したら、なかなか帰ってこれねーかもしれねーからな」

 待て。「なかなか帰ってこれない」ということは……

「また帰ってくること出来んのか? 俺はてっきり、一回行ったらもう二度と戻らないものかと……」

「そんな鬼畜なことがあるか。故郷に帰れねー召喚なんて、召喚じゃねーぞ。頭沸いてんのか?」

 ――はい、今彼女は、多くの作家とそのファンを敵に回しました。
 まあこれで行かない理由がなくなったな。もし、異世界が気に入らなかったら帰って来よう。……そんな簡単に帰れるか分かんないけど。


  ■  □  ■  □  ■


 それから俺は、言われた通り、荷物をまとめた。……といっても、元々俺に所有欲はあまりないため、水とか非常食だけだけど。

「よし準備できたぞ」

そういって俺がミアのほうを振り返ると、ミアはとても怯えているようだった。……俺、何かしたか?

「どうした、ミア? なんかあったか?」

 優しい声で俺が問いかけると、ミアは見るからに重そうな口を開いて、小さく話した。

「水城……。ボク……ボク――


――天国に帰れなくなっちゃった」



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