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第1章  中々無い出会い方

第6話   毒……ではないよね?

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「おい、さっき俺に行ったよな? 俺のことを、召喚しに来たって」

 俺にはこれしかないような気がした。
 今更、学校に行ったとしても、病気が治ったからといって、周囲との関係性が良くなるとは思えないし、そもそも、行きたくない。
 他に行く当てはない。AIDSが治ったということは、俺は何かない限り、一般人と同じ寿命を生きることになった。
 そこで問題が発生する。俺は――
 
 ――仕事をしていなければ、数年分の預金しかないんだ。

 確か、自己破産とかいうものもあったが、よくわからないので出来れば関わりたくない。
 これらを考えると、俺は、「召喚」という、に賭けるしかないと思う。……ダジャレじゃないぞ。

「ああ、言ったな」

「『召喚』ってのは、どういうことだ? 俺のイメージとしては、異世界から魔法陣とかで強制的に呼び出されることのような気がするんだが」

 少なくとも、俺がネット小説で目にしてきたものの中では、その類が多かった。

「あー、ちょっと齟齬そごがあんな。ボクが言ってんのは、どちらかと言えば、招集に近いな」

 招集? どういうことだ?

「もう一つ気になるのが、召喚された人間の権利はどうなるんだ? 俺の知ってる話では、召喚された人間が、奴隷契約を結んだりしているものもあったんだが……」

 言わずものがな、これもネット小説知識である。
 そして、俺が一番忌避しているのがこれだ。奴隷契約なんて結ばれたらたまったもんじゃない。僕は人間だ。
 生物の中で一番人間が偉いと考えてるほど頭は腐っていないが――今、多くの人を敵に回した気がする――、それでも人間の権利を主張したい。

「そこは安心しろ。さっきも言ったが、これは招集に近い。水城が行きたくないなら断ってもいいし、行ったら行ったで、組織には縛り付けられず、自由な生活ができることを約束しよう。……まあ、冒険者になりてーなら、冒険者ギルドに登録する必要があるだろーけどな」

 待て、ちょっと待て。今、意外と情報がたくさんあったぞ。
 まず、組織ってなんだ? 悪の組織とかじゃないよな? ……じゃないと信じよう。
 次に、最も気になる単語、「冒険者ギルド」だ。まさか本当にあるのか、異世界系といえば定番の、冒険者ギルドが!
 そして最後だ。これは、先ほどまでの情報とは少し違うが、ちょっと気になった。

「お前、俺のこと、「さん」付けせずに、名字で呼んだだろ」

 そう、コイツは、なぜか急に呼び方を変えてきたのだ。

「別にいいだろ。消えるわけじゃねーし」

 消えたら怖いわ! ……まあいいか。いつまでも他人行儀じゃ、話しづらいし。
 ところで、俺の心はもう決まっていた。

「おい、ミア。俺を異世界へ連れて行ってくれ」

 これほど心躍る話はなかなか無いだろう。どうせ、死ぬと思っていたんだし、怖いものなんて何もないよ。

「よし、分かった。じゃあ、――


――この、二つの薬を飲んでくれ」

 そう言ったミアの手には、二つの瓶のようなものがあり、中には一粒ずつ、何らかの固形物が入っていた。

「なあ、毒じゃないよな?」



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