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八章 希望と叡智の街
回帰
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「だから、「雷霆」貸せって言ってんの」
「いや、そうじゃなくて」
リーエイが困惑していると、リールも困惑したように、だがリーエイよりは冷静さを保ちつつ「どうしてそれを知ってるんだ?」と僕に訊いた。おぉ、やらかした。
「実は──」
僕は正直に話すことにした。
「僕の異能もちゃんと二段階に力が分かれてるんだ」
「へぇ」
「あらゆるものの生死を逆転する「輪廻」と、特定の条件でだけ使える「回帰」がある」
「「回帰」………聞いたことないな」
二人は不思議そうに僕の話を聞く。
「「回帰」の条件は、僕がこの現実を、世界を真っ向から拒絶して否定する。その上で、自死をすることだよ」
「「自死……!?」」
「そう。それで、「回帰」は僕の運命が変わり、使命を果たすために必要な時にまで遡ることが出来る」
僕は、リーエイと僕が出会うのは必然だったと伝える。
「じゃあ、前の俺たちはどんな感じだったんだ? どうしてお前は現実を無に還すようなことを……」
「──西の森の怪物、すべての未来を物語るもの」
「「!」」
「アレと出会ったら僕たちは終わり。未来をどんどん書き換えられて、僕たちは殺し合うよう仕向けられる」
そして、今回のふたりがまだ知らなかったことも話しておく。
「んで……もうひとつ前回と違うのは、もうひとつの霧の街に行ってないこと」
「もうひとつの……?」
リーエイが何だそれと言わんばかりに不思議そうにする。リールは様子から見て図書館で何か知っているらしい。
「この地下にもうひとつ、かつて使われていた霧の街がある。前回の僕たちはそこを経由して最上層に辿り着こうとした。でも……正直言って逃げ場がない。それに、その地下都市の入口は最下層で……出口があるはずの最上層まで地上に戻ることが出来ないから、一回足を踏み入れて中層辺りまで来ても、すぐに地上に上がって家に一旦戻ることも出来ない。………リーエイの異能は抜きにしてな」
「地下都市は危険と?」
「そう言わざるを得ない。あと……前回このふたつをしたことで僕の出自についてもわかってることが沢山ある」
僕の出自については西の森へ行ったことで判明している。あの時は「不要」なことが怖くてたまらなかった。見捨てられる。最下層でまた暴力を振るわれながら生きる日に戻るかもしれないと怯えながら正体を言った。その時の反応を知っているから、僕はもう恐れることなく僕の出自を明かせる。
「僕は世界一不要な存在の一族、ゲレクシスの末裔。ゲレクシスは不要って意味で、昔の霧の街──地下都市を作った一族。……特徴は全員人間であり先天性異形の特殊な体を持つことと、その身体故に人間ながら異能を扱うことが出来ること」
「だからユーイオも人間なのに異能が使えるってこと?」
ユーイオは頷く。
「僕は末裔ながら特別血が濃いらしくて、だからはじめは人間の脆い身体なのが、成長していくにつれて先天性異形としての力強くタフな身体に変わっていくんだって教わった」
「確かに最近力強いなって思うことはあったけど………」
リーエイは納得したように頷く。人間の身体としての華奢な見た目はそのままに、ここ最近のユーイオの力はとても強く、後天性異形であり元軍人のリーエイやリールに引けを取らなかった。
「それはどこで誰から……」
「西の森の怪物。ちなみに僕はあまりにも世界から──街じゃなくて世界からね、必要とされてないせいであらゆる未来を予見して記述する怪物の予見から外れるんだ。……その分僕と関わりを持った奴らから怪物は僕の未来を予見しようとしてたけど。会ってもない今回なら、そもそも僕っていう不要の末裔が生き残ってることさえ知らないはずなんだ」
今度こそ、とユーイオは固い決意を持って話を続ける。
「でも最上層に行く上でまず一つ困難にぶち当たるとするならその怪物になる」
「え?」
「怪物はただの賢者じゃない。最上層に仕える「警察」なんだ」
「警察……層と層の行き来を勝手にした者を処罰する役職か」
リールは厄介だと顔を顰める。
「アレの本体は本。だから、層と層──下から上へ勝手に行き来した人を本に閉じ込めて、その本の物語の中で生かす。……ただ、その本の話はどれも悲惨で残酷。本を開いて読み終わり、また本を開けば………どうなるかわかるな?」
「ああ、本の中に閉じ込められた人が何回もその話の中で無惨な結末を迎え、ループするんだな?」
「そういうこと」
リーエイは答えにくかったら答えなくていいんだけど、と前置きしてある質問をした。
「ユーイオはこれで何回目?」
「…………………」
何回目だろう。おそらく、幼少期の記憶は全て勝手に植え付けられている──わかりやすく言えば初期装備のようなものだ。人間の赤ちゃんが何か訴えたければ泣くように、十歳のあの日に戻った時点で「こうだった」と変えられない記録として植え付けられているもののはず。それなら、何回繰り返しても僕がリーエイに拾われるまでの記憶に変わりは無いはずだ。
「そう、だな……僕はよく予知夢を見ていたろ」
「うん」
「アレは多分全部予知夢じゃなくて、前々回とか、かなり前の記憶……体験を再生してるだけ」
「え」
リーエイが僕を庇って最上層者によって殺されたのも、脳を砕かれることで異能が使用不可となり、代償が切れたことで死んだのもすべて、きっとかつての僕が体験した映像だ。
「最低でも今回は三回目。でも………多分平気でそれ以上」
「なんで……」
「あくまで多分、なんだな」
「そう……っていうのも、前回はちょっとミスったみたいでさ。最初の記憶が曖昧というか、そもそも「回帰」が使えることを思い出したのがこの年齢になったあたりだったんだよ」
「何がダメだったんだろう?」
「さあ……ただ、記憶の欠落があった時点で条件が達成出来ないまま「回帰」を無理矢理使ったんじゃないかなって思ってる」
多分、絶望して現実を強く拒絶したまま殺されたとか。知らんけど。
「リーエイたちも多分そういう条件、あるんじゃない?」
「………そうだね、俺も全く無いわけじゃないよ。「時空超過」が結構疲れるって話はしたと思うんだけど。あれは生命力を引き出して、そのうえでまあまあ削って使うからなんだ。リールとかならわかると思うけど……塹壕足のまま気合いで何とか戦場──塹壕を全力疾走するような感じ」
「お前それはアホだろ……」
リールは頭を抱えた。
塹壕足──寒い上にジメジメと不潔な環境に足が長時間晒されると起きる症状を指す。塹壕は雨が降れば、ただの土を掘って作った穴なのでその地面が水浸しになる。寒い空気の中で出来た水溜まりは当然とても冷たく、それが兵士たちの足を冷やし血行を悪くした。その結果彼らの足は青白く湿り、腫れて冷たくなってしまう。冷たいからと言って温めると今度は赤くなって触れるだけで痛みを感じてしまう。壊死することもあるため、壊死の初期症状が始まると腐敗臭を放ち始める場合もあった。治療を怠れば壊疽となり足の指や足そのものを切断することもあるが、適切な治療さえすれば完治は出来た。とはいえ、戦時中の前線で丁寧な治療を施す余裕などあるはずも無いので、兵士たちは定期的に足を洗うこと、他の兵士とペアで足の状態を確認しあうことで何とか予防しようと試みていたのだ。
「だから正直あんまりパシらないでほしいんだよ。代償のおかげで死なないからいいけど体感二回死んでるからね!?」
流石にそれは大袈裟だとユーイオは思ったが、リールはよしよしとリーエイの背中をさする。
「リールのは?」
「俺? 俺の「記憶呼出」は睡眠時間が延びるだけだ。お前らほど現実に影響を与えて、干渉するような力でもないんでね」
異能が与える現実への影響によってやはり使用者の負荷はかなり変わるらしい。僕は失敗したら記憶を失いリスタート、つまりリセットだ。リーエイは生命力の消耗、時空間を無理矢理操っているということなのだろう。リールの場合は元々の異能で記録した過去のことを再現するだけ──だけと言っては失礼なのだが──そんな力なので、負荷が比較的少ない。
「つまりユーイオの異能が一番リスキーで負荷が強いってことだね!」
「まぁそうなるな」
「………それに過去の記憶を持ったままってことは死に方もバッチリ覚えてるからな、「雷霆」で首を突くのはめちゃくちゃ痛かった」
「は!? え!? ユーイオまさかまた自害するんじゃ……」
「少なくとも今はしない。絶望するようなことも起きてない。そもそも軽く突いただけで……感覚的には肌に当てただけであんなに痛くて血が止まらなかったのはびっくりした。僕の力で異武装自体の力を増幅させてたとはいえ……あれは」
ああ、本当に痛かった。指先で首筋を撫でて、改めてあの痛みを思い出す。
「あぁでも、確か前々回はリーエイが目の前で死んだから冷静さを失ってアイツに内臓全部消し飛ばされたんじゃなかったかな、あれよりはマシだったと思う」
「ひぇっ……」
「まぁ自分でやるのと相手にやられるのじゃタイミングもわからないからな」
「……本当に死ぬために借りたいとかじゃないんだよね?」
「うん」
「特性も知ってるんだよね」
「雷を纏って突くか雷を落とす」
リーエイはユーイオを信じることにした。子供を信じない親に成り下がりたくなかったからだ。
「わかった」
「リーエイ」
「……リール、俺たちが出来るのは全力で毎日生きて、最善策に少しでも近付くことだよ。危険からユーイオを遠ざけるのは違う。ユーイオは最初から危険なのをわかってる上で動いてるんだ」
「っ…………わかった」
リールが納得したのを見て、リーエイは「雷霆」を顕現させる。
「わかってると思うけれど、この槍は神の名を持つ槍だからね。普通の異武装とは違って持ち主の意のままに存在する場所を変えられる。何なら槍そのものが身の回りになくても雷の一発や二発程度なら落とせる。………死なないで欲しいのが一番の願いだけども、親は子供の願いを叶える手伝いをするのが仕事だから。だから俺に出来ることはこれくらい」
「リーエイは異能で何回も僕たちを助けてくれてる。これくらいなんて言わなくていい。……でも、ありがとう」
リーエイから「雷霆」を受け取る。やはり古い槍だ。槍に込められていたはずの力が枯渇している。
「ちょっと下層に行ってくる」
それだけ言って下層に行き、誰もいない路地に隠れてから力を込め直して、僕は「雷霆」を空に向けて高く掲げた。──西の森。その最奥の家に雷を取り敢えず五発。リールが図書館に務めている以上リールと関わってるリーエイの未来も記述されるのはどうしようもないが、世界から見放された僕だけはその記述に載らない。だから、下層から撃てばきっと「下層より雷撃五発」としか記述されないはずだ。それに異武装はモノで、確かアレに書かれた未来はあくまでも人とヒトに起きる未来しか書かれていなかったため、「雷霆」も気付かれにくくなるはずだ。
──西の森・最奥。
「……んん? 雷?」
おかしい、今日の天気は崩れないはずだったのだが。サージュが不思議に思っていると、人型の分身が突然焼け焦げた。
「ん!?」
何が起きているのかと複製を出して様子を伺おうとするが、何故か複製が作れない。
「あがっ……!!」
複製が作れず焦っているうちに本体に雷が二発直撃した。まずい。雷が穿ったせいで全ページの特定の箇所だけ綺麗に記述が抜けている。
「………」
ユーイオはなんとなくサージュがどうなっているのかがわかっていた。というのもこの「雷霆」、神の名を宿すだけあってとんでもなく使い勝手がいいのだ。生命の力を与え、腕鳴らしに出した雷撃から誰のどこに当たったのかという感覚まで伝わってくる。一発目に人型の分身を消し、二発目、三発目で本体を穿った。四、五発目は次に廻している。ちなみに複製本を作られては困るので、一時的に「複製」という概念そのものを「輪廻」で無かったことにしている。
「七秒後に三発分の威力を乗せた雷撃一発」
七秒にしたのはなんとなくだ。
リーエイたちが居る中層からは、西の森の奥に雷が三発落ちたのが見えた。
「おいおいアレ大丈夫か?」
「何が?」
「槍が」
「うーん、あの子が扱うなら大丈夫じゃないかな」
「また呑気な……」
リーエイはミルクティーを飲み、新聞を読みながら言った。
「俺たちが無理に関わったらアレに未来が記述されるらしいじゃん? だから今俺たちは下手に動かない方がいいんだよ」
──実際その通りだ。ユーイオの言葉に嘘はひとつも無かった。すべてユーイオが経験したことで、事実だ。
「これで楽になるといいけど」
──森の最奥では、穴だらけになった本が家から逃げ出しているところだった。
「……なんで………っ……どうして……! 助けてよ……カーラマン………ッ!」
必死にばたばたと空中を舞って逃げる本に、だがそれでも雷が的確に真上に落ちてくる。
「ぎゃあッ!!」
また、記述が消えた。消えた記述の代わりに恐ろしい記述が書き込まれる。
「我雷を束ねられし光によって消滅………は?」
その瞬間、何も見えなくなった。眩しくて、暗くて、熱かったと思う。様々な記述がみるみる消えていくのに、その一文だけが色濃く残って消えない。どうして、どうして何もしていないのに。自分が消えたら森の奥の家にある本の管理は誰がするのだろう。
「………………死んだ? 多分死んだね」
よし、と「雷霆」に力を込め直し、ユーイオは中層へ戻った。それにしても会わないままだとこんなにも呆気ないものだったのか。前回あれだけ苦戦したのがアホらしく思える。
「ただいまー」
「おかえりー。すんごい光ってたね」
「え? ここからでも見えてたんだ」
「ばっちりな」
二人は凄かった、と驚いていた。
「俺でもあんなに使いこなせたことなかったと思うよ」
リーエイは笑いながら言った。
「異能の応用だよ。異能を使うための力が切れかけてたから、それを充填し直して使っただけ。そうしたらあれくらいは軽く出来るよ」
軽く、というのはユーイオの異能と先天性異形として変わりつつある身体があってこそだ。実はこの「雷霆」という槍はとてつもなく重たい武器で、高く掲げること自体困難な扱いづらいものなのだ。普通の人間ならまず持ち上げること自体難しいそれを、ユーイオは簡単に掲げて八発分の雷を落としきったのだから、もう先天性異形としての身体に完全に変わりつつあるのだろう。
「取り敢えず最上層の従者は殺ったから、ひとまず安心」
──出来なかった。
「「「え」」」
突然家中を青い炎が囲んだ。
「お前か?」
「うわっ」
ユーイオの周囲にだけ炎が巻き上がったと思うと、それは次第に人の形に変わっていく。
「ユーイオ!」
「…………まだ大人にもなってないお前がやったのか?」
「っぐ………」
炎と同じ、青い髪。限りなく白に近い灰色の目がユーイオだけを映す。大きい手でユーイオの華奢な首を絞め、身体を軽々と持ち上げている。
「答えろ」
「………………っらぁ! っはぁ………はぁ……何? アレ始末したら………ダメだった?」
何とか気合いで手を解き、床に着地する。睨みつけて、いつ「雷霆」で穿ってやろうかと思ったが、よく考えてみれば炎と雷はあまり相性が良くない気がする。
「……………いや、駄目とかどうとかの話ではなく生意気だと言いたいんだ」
「はぁ?」
百九十センチほどあるリールの背丈よりも高い身長の彼がユーイオを見下ろす。炎は不思議と家具を燃やすことはなく、リーエイやリールにとっては特別熱いとも感じない。
「お前みたいなガキが最上層に足を踏み入れて良いわけがない」
「で、お前誰だよ」
無視して名前を尋ねる。
「ああ失礼した………これから死んでもらうのだから、名乗っても構わないだろう。俺はシャーマ」
ぼおっと蒼炎がユーイオを包んだ。
「名を聞いたお前は死ね」
何故かリーエイとリールには目もくれず、シャーマと名乗った男はユーイオにだけ攻撃を仕掛ける。
「──この程度? 絶対違うでしょ」
ぼぼっと炎が消え去り、無傷のユーイオが現れた。
「ほう? 何者だお前」
「なんでこれから死んでもらう相手に名乗んなきゃいけないわけ」
「……………は?」
「え? 聞こえなかった? ……優しいからもう一度言ってやる。なーんーでー、これからー、死んでもらう奴にー、名前、言わなきゃいけないのー? 聞こえた?」
ユーイオが煽ると、炎はいっそう大きくなる。
「お前………死にたいんだな?」
「どうだろうね」
にぃっと笑ってユーイオは手招きをする。
「やるなら今やっておこうよ。その為にお前はここまで来たんだろ?」
シャーマは頷いて、ユーイオに飛びかかった。
「いや、そうじゃなくて」
リーエイが困惑していると、リールも困惑したように、だがリーエイよりは冷静さを保ちつつ「どうしてそれを知ってるんだ?」と僕に訊いた。おぉ、やらかした。
「実は──」
僕は正直に話すことにした。
「僕の異能もちゃんと二段階に力が分かれてるんだ」
「へぇ」
「あらゆるものの生死を逆転する「輪廻」と、特定の条件でだけ使える「回帰」がある」
「「回帰」………聞いたことないな」
二人は不思議そうに僕の話を聞く。
「「回帰」の条件は、僕がこの現実を、世界を真っ向から拒絶して否定する。その上で、自死をすることだよ」
「「自死……!?」」
「そう。それで、「回帰」は僕の運命が変わり、使命を果たすために必要な時にまで遡ることが出来る」
僕は、リーエイと僕が出会うのは必然だったと伝える。
「じゃあ、前の俺たちはどんな感じだったんだ? どうしてお前は現実を無に還すようなことを……」
「──西の森の怪物、すべての未来を物語るもの」
「「!」」
「アレと出会ったら僕たちは終わり。未来をどんどん書き換えられて、僕たちは殺し合うよう仕向けられる」
そして、今回のふたりがまだ知らなかったことも話しておく。
「んで……もうひとつ前回と違うのは、もうひとつの霧の街に行ってないこと」
「もうひとつの……?」
リーエイが何だそれと言わんばかりに不思議そうにする。リールは様子から見て図書館で何か知っているらしい。
「この地下にもうひとつ、かつて使われていた霧の街がある。前回の僕たちはそこを経由して最上層に辿り着こうとした。でも……正直言って逃げ場がない。それに、その地下都市の入口は最下層で……出口があるはずの最上層まで地上に戻ることが出来ないから、一回足を踏み入れて中層辺りまで来ても、すぐに地上に上がって家に一旦戻ることも出来ない。………リーエイの異能は抜きにしてな」
「地下都市は危険と?」
「そう言わざるを得ない。あと……前回このふたつをしたことで僕の出自についてもわかってることが沢山ある」
僕の出自については西の森へ行ったことで判明している。あの時は「不要」なことが怖くてたまらなかった。見捨てられる。最下層でまた暴力を振るわれながら生きる日に戻るかもしれないと怯えながら正体を言った。その時の反応を知っているから、僕はもう恐れることなく僕の出自を明かせる。
「僕は世界一不要な存在の一族、ゲレクシスの末裔。ゲレクシスは不要って意味で、昔の霧の街──地下都市を作った一族。……特徴は全員人間であり先天性異形の特殊な体を持つことと、その身体故に人間ながら異能を扱うことが出来ること」
「だからユーイオも人間なのに異能が使えるってこと?」
ユーイオは頷く。
「僕は末裔ながら特別血が濃いらしくて、だからはじめは人間の脆い身体なのが、成長していくにつれて先天性異形としての力強くタフな身体に変わっていくんだって教わった」
「確かに最近力強いなって思うことはあったけど………」
リーエイは納得したように頷く。人間の身体としての華奢な見た目はそのままに、ここ最近のユーイオの力はとても強く、後天性異形であり元軍人のリーエイやリールに引けを取らなかった。
「それはどこで誰から……」
「西の森の怪物。ちなみに僕はあまりにも世界から──街じゃなくて世界からね、必要とされてないせいであらゆる未来を予見して記述する怪物の予見から外れるんだ。……その分僕と関わりを持った奴らから怪物は僕の未来を予見しようとしてたけど。会ってもない今回なら、そもそも僕っていう不要の末裔が生き残ってることさえ知らないはずなんだ」
今度こそ、とユーイオは固い決意を持って話を続ける。
「でも最上層に行く上でまず一つ困難にぶち当たるとするならその怪物になる」
「え?」
「怪物はただの賢者じゃない。最上層に仕える「警察」なんだ」
「警察……層と層の行き来を勝手にした者を処罰する役職か」
リールは厄介だと顔を顰める。
「アレの本体は本。だから、層と層──下から上へ勝手に行き来した人を本に閉じ込めて、その本の物語の中で生かす。……ただ、その本の話はどれも悲惨で残酷。本を開いて読み終わり、また本を開けば………どうなるかわかるな?」
「ああ、本の中に閉じ込められた人が何回もその話の中で無惨な結末を迎え、ループするんだな?」
「そういうこと」
リーエイは答えにくかったら答えなくていいんだけど、と前置きしてある質問をした。
「ユーイオはこれで何回目?」
「…………………」
何回目だろう。おそらく、幼少期の記憶は全て勝手に植え付けられている──わかりやすく言えば初期装備のようなものだ。人間の赤ちゃんが何か訴えたければ泣くように、十歳のあの日に戻った時点で「こうだった」と変えられない記録として植え付けられているもののはず。それなら、何回繰り返しても僕がリーエイに拾われるまでの記憶に変わりは無いはずだ。
「そう、だな……僕はよく予知夢を見ていたろ」
「うん」
「アレは多分全部予知夢じゃなくて、前々回とか、かなり前の記憶……体験を再生してるだけ」
「え」
リーエイが僕を庇って最上層者によって殺されたのも、脳を砕かれることで異能が使用不可となり、代償が切れたことで死んだのもすべて、きっとかつての僕が体験した映像だ。
「最低でも今回は三回目。でも………多分平気でそれ以上」
「なんで……」
「あくまで多分、なんだな」
「そう……っていうのも、前回はちょっとミスったみたいでさ。最初の記憶が曖昧というか、そもそも「回帰」が使えることを思い出したのがこの年齢になったあたりだったんだよ」
「何がダメだったんだろう?」
「さあ……ただ、記憶の欠落があった時点で条件が達成出来ないまま「回帰」を無理矢理使ったんじゃないかなって思ってる」
多分、絶望して現実を強く拒絶したまま殺されたとか。知らんけど。
「リーエイたちも多分そういう条件、あるんじゃない?」
「………そうだね、俺も全く無いわけじゃないよ。「時空超過」が結構疲れるって話はしたと思うんだけど。あれは生命力を引き出して、そのうえでまあまあ削って使うからなんだ。リールとかならわかると思うけど……塹壕足のまま気合いで何とか戦場──塹壕を全力疾走するような感じ」
「お前それはアホだろ……」
リールは頭を抱えた。
塹壕足──寒い上にジメジメと不潔な環境に足が長時間晒されると起きる症状を指す。塹壕は雨が降れば、ただの土を掘って作った穴なのでその地面が水浸しになる。寒い空気の中で出来た水溜まりは当然とても冷たく、それが兵士たちの足を冷やし血行を悪くした。その結果彼らの足は青白く湿り、腫れて冷たくなってしまう。冷たいからと言って温めると今度は赤くなって触れるだけで痛みを感じてしまう。壊死することもあるため、壊死の初期症状が始まると腐敗臭を放ち始める場合もあった。治療を怠れば壊疽となり足の指や足そのものを切断することもあるが、適切な治療さえすれば完治は出来た。とはいえ、戦時中の前線で丁寧な治療を施す余裕などあるはずも無いので、兵士たちは定期的に足を洗うこと、他の兵士とペアで足の状態を確認しあうことで何とか予防しようと試みていたのだ。
「だから正直あんまりパシらないでほしいんだよ。代償のおかげで死なないからいいけど体感二回死んでるからね!?」
流石にそれは大袈裟だとユーイオは思ったが、リールはよしよしとリーエイの背中をさする。
「リールのは?」
「俺? 俺の「記憶呼出」は睡眠時間が延びるだけだ。お前らほど現実に影響を与えて、干渉するような力でもないんでね」
異能が与える現実への影響によってやはり使用者の負荷はかなり変わるらしい。僕は失敗したら記憶を失いリスタート、つまりリセットだ。リーエイは生命力の消耗、時空間を無理矢理操っているということなのだろう。リールの場合は元々の異能で記録した過去のことを再現するだけ──だけと言っては失礼なのだが──そんな力なので、負荷が比較的少ない。
「つまりユーイオの異能が一番リスキーで負荷が強いってことだね!」
「まぁそうなるな」
「………それに過去の記憶を持ったままってことは死に方もバッチリ覚えてるからな、「雷霆」で首を突くのはめちゃくちゃ痛かった」
「は!? え!? ユーイオまさかまた自害するんじゃ……」
「少なくとも今はしない。絶望するようなことも起きてない。そもそも軽く突いただけで……感覚的には肌に当てただけであんなに痛くて血が止まらなかったのはびっくりした。僕の力で異武装自体の力を増幅させてたとはいえ……あれは」
ああ、本当に痛かった。指先で首筋を撫でて、改めてあの痛みを思い出す。
「あぁでも、確か前々回はリーエイが目の前で死んだから冷静さを失ってアイツに内臓全部消し飛ばされたんじゃなかったかな、あれよりはマシだったと思う」
「ひぇっ……」
「まぁ自分でやるのと相手にやられるのじゃタイミングもわからないからな」
「……本当に死ぬために借りたいとかじゃないんだよね?」
「うん」
「特性も知ってるんだよね」
「雷を纏って突くか雷を落とす」
リーエイはユーイオを信じることにした。子供を信じない親に成り下がりたくなかったからだ。
「わかった」
「リーエイ」
「……リール、俺たちが出来るのは全力で毎日生きて、最善策に少しでも近付くことだよ。危険からユーイオを遠ざけるのは違う。ユーイオは最初から危険なのをわかってる上で動いてるんだ」
「っ…………わかった」
リールが納得したのを見て、リーエイは「雷霆」を顕現させる。
「わかってると思うけれど、この槍は神の名を持つ槍だからね。普通の異武装とは違って持ち主の意のままに存在する場所を変えられる。何なら槍そのものが身の回りになくても雷の一発や二発程度なら落とせる。………死なないで欲しいのが一番の願いだけども、親は子供の願いを叶える手伝いをするのが仕事だから。だから俺に出来ることはこれくらい」
「リーエイは異能で何回も僕たちを助けてくれてる。これくらいなんて言わなくていい。……でも、ありがとう」
リーエイから「雷霆」を受け取る。やはり古い槍だ。槍に込められていたはずの力が枯渇している。
「ちょっと下層に行ってくる」
それだけ言って下層に行き、誰もいない路地に隠れてから力を込め直して、僕は「雷霆」を空に向けて高く掲げた。──西の森。その最奥の家に雷を取り敢えず五発。リールが図書館に務めている以上リールと関わってるリーエイの未来も記述されるのはどうしようもないが、世界から見放された僕だけはその記述に載らない。だから、下層から撃てばきっと「下層より雷撃五発」としか記述されないはずだ。それに異武装はモノで、確かアレに書かれた未来はあくまでも人とヒトに起きる未来しか書かれていなかったため、「雷霆」も気付かれにくくなるはずだ。
──西の森・最奥。
「……んん? 雷?」
おかしい、今日の天気は崩れないはずだったのだが。サージュが不思議に思っていると、人型の分身が突然焼け焦げた。
「ん!?」
何が起きているのかと複製を出して様子を伺おうとするが、何故か複製が作れない。
「あがっ……!!」
複製が作れず焦っているうちに本体に雷が二発直撃した。まずい。雷が穿ったせいで全ページの特定の箇所だけ綺麗に記述が抜けている。
「………」
ユーイオはなんとなくサージュがどうなっているのかがわかっていた。というのもこの「雷霆」、神の名を宿すだけあってとんでもなく使い勝手がいいのだ。生命の力を与え、腕鳴らしに出した雷撃から誰のどこに当たったのかという感覚まで伝わってくる。一発目に人型の分身を消し、二発目、三発目で本体を穿った。四、五発目は次に廻している。ちなみに複製本を作られては困るので、一時的に「複製」という概念そのものを「輪廻」で無かったことにしている。
「七秒後に三発分の威力を乗せた雷撃一発」
七秒にしたのはなんとなくだ。
リーエイたちが居る中層からは、西の森の奥に雷が三発落ちたのが見えた。
「おいおいアレ大丈夫か?」
「何が?」
「槍が」
「うーん、あの子が扱うなら大丈夫じゃないかな」
「また呑気な……」
リーエイはミルクティーを飲み、新聞を読みながら言った。
「俺たちが無理に関わったらアレに未来が記述されるらしいじゃん? だから今俺たちは下手に動かない方がいいんだよ」
──実際その通りだ。ユーイオの言葉に嘘はひとつも無かった。すべてユーイオが経験したことで、事実だ。
「これで楽になるといいけど」
──森の最奥では、穴だらけになった本が家から逃げ出しているところだった。
「……なんで………っ……どうして……! 助けてよ……カーラマン………ッ!」
必死にばたばたと空中を舞って逃げる本に、だがそれでも雷が的確に真上に落ちてくる。
「ぎゃあッ!!」
また、記述が消えた。消えた記述の代わりに恐ろしい記述が書き込まれる。
「我雷を束ねられし光によって消滅………は?」
その瞬間、何も見えなくなった。眩しくて、暗くて、熱かったと思う。様々な記述がみるみる消えていくのに、その一文だけが色濃く残って消えない。どうして、どうして何もしていないのに。自分が消えたら森の奥の家にある本の管理は誰がするのだろう。
「………………死んだ? 多分死んだね」
よし、と「雷霆」に力を込め直し、ユーイオは中層へ戻った。それにしても会わないままだとこんなにも呆気ないものだったのか。前回あれだけ苦戦したのがアホらしく思える。
「ただいまー」
「おかえりー。すんごい光ってたね」
「え? ここからでも見えてたんだ」
「ばっちりな」
二人は凄かった、と驚いていた。
「俺でもあんなに使いこなせたことなかったと思うよ」
リーエイは笑いながら言った。
「異能の応用だよ。異能を使うための力が切れかけてたから、それを充填し直して使っただけ。そうしたらあれくらいは軽く出来るよ」
軽く、というのはユーイオの異能と先天性異形として変わりつつある身体があってこそだ。実はこの「雷霆」という槍はとてつもなく重たい武器で、高く掲げること自体困難な扱いづらいものなのだ。普通の人間ならまず持ち上げること自体難しいそれを、ユーイオは簡単に掲げて八発分の雷を落としきったのだから、もう先天性異形としての身体に完全に変わりつつあるのだろう。
「取り敢えず最上層の従者は殺ったから、ひとまず安心」
──出来なかった。
「「「え」」」
突然家中を青い炎が囲んだ。
「お前か?」
「うわっ」
ユーイオの周囲にだけ炎が巻き上がったと思うと、それは次第に人の形に変わっていく。
「ユーイオ!」
「…………まだ大人にもなってないお前がやったのか?」
「っぐ………」
炎と同じ、青い髪。限りなく白に近い灰色の目がユーイオだけを映す。大きい手でユーイオの華奢な首を絞め、身体を軽々と持ち上げている。
「答えろ」
「………………っらぁ! っはぁ………はぁ……何? アレ始末したら………ダメだった?」
何とか気合いで手を解き、床に着地する。睨みつけて、いつ「雷霆」で穿ってやろうかと思ったが、よく考えてみれば炎と雷はあまり相性が良くない気がする。
「……………いや、駄目とかどうとかの話ではなく生意気だと言いたいんだ」
「はぁ?」
百九十センチほどあるリールの背丈よりも高い身長の彼がユーイオを見下ろす。炎は不思議と家具を燃やすことはなく、リーエイやリールにとっては特別熱いとも感じない。
「お前みたいなガキが最上層に足を踏み入れて良いわけがない」
「で、お前誰だよ」
無視して名前を尋ねる。
「ああ失礼した………これから死んでもらうのだから、名乗っても構わないだろう。俺はシャーマ」
ぼおっと蒼炎がユーイオを包んだ。
「名を聞いたお前は死ね」
何故かリーエイとリールには目もくれず、シャーマと名乗った男はユーイオにだけ攻撃を仕掛ける。
「──この程度? 絶対違うでしょ」
ぼぼっと炎が消え去り、無傷のユーイオが現れた。
「ほう? 何者だお前」
「なんでこれから死んでもらう相手に名乗んなきゃいけないわけ」
「……………は?」
「え? 聞こえなかった? ……優しいからもう一度言ってやる。なーんーでー、これからー、死んでもらう奴にー、名前、言わなきゃいけないのー? 聞こえた?」
ユーイオが煽ると、炎はいっそう大きくなる。
「お前………死にたいんだな?」
「どうだろうね」
にぃっと笑ってユーイオは手招きをする。
「やるなら今やっておこうよ。その為にお前はここまで来たんだろ?」
シャーマは頷いて、ユーイオに飛びかかった。
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