孤独な王女

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見上げた空は・下章

流れ星⑥

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 すんと鼻をひくつかせた。

「……甘いな」

 広大な平原を吹き渡る風にも、故郷にはない香りを感じられた。
 これまで羨む以外の感情を抱けなかった場所に、自分たちがいる。
「緑の都」ジヴェルナ。周辺を大国に囲まれながらなお、豊かに栄える国。
 これが単なる観光や、親善外交での訪れだったらもっと感慨に耽ることもできただろうが、あいにくと今回は荒んだ心持ちでしかおれない。どんな弱小国でも、一国の正規軍――国王に仕える身分は変わらないはずなのに、他国のお膳立ての上に、傭兵稼業に身を落としての訪問だ。これに屈辱を覚えない者はいない。だが、甘んじる他に道がないのも、またしかり。

「翻意しようにも、相手が悪いからな……」
「さりげなく裏切ろうかなとかおっしゃらんでください」
「裏切りようがないだろう、わかっとる」

 四十がらみのミレイ王国の武将は、若い従者の突っ込みに素っ気なく言い返した。
 彼らは本来、アルダとジヴェルナの戦には全く関係がない。だがミレイは事実上アルダの属国だった。紛争地帯にあって財力や物質などをアルダに支えてもらっている関係で、こうして武力を寄越せと要求されて断りきれなかったほどには、国力の差は歴然としている。
 しかもアルダの連中は鼻持ちならない者ばかりだった。文明も開けきれぬ田舎の小国だと、頭から見下しているのが丸わかりなのだ。決して同じ土俵には下りず上からああしろこうしろ、対価と呼べる対価も用意しない。それでもアルダの支援がなければ立ち行かないので、結局は言いなりになるしかないのが苦しいところ。
 しかも神聖王国の土地の一部に駐留するのがはじめの話だったというのに、なぜジヴェルナまで派兵されることになっているのか。大国ジヴェルナの内部激震は遠国であっても伝え聞いていたのでこうなるやもと予想はしていたが、的中してほしくはなかった。自分たちが仕掛けた戦なのだから、自分たちだけでどうにかすればよいものを。

「だが、折角だしここで女王を見ておくか。土産にはならんが目の保養くらいにはなるだろう。麗しい容姿に、緋金の鎧というぞ。大層絵になるんだろう」
「いやあ、まさか先頭切って駆けてくるとは、誰も思いませんよね……」
「あれにはたまげた。しかし不遇に耐え忍ぶ性だけ持っていては、王が務まらんのも確かだ」
「でも、どうします?我らがご友人の方々は、どうせ我が国をうまく走らせて矢の的にさせますよ。姫王を目にできても冥土の土産になるかも」
「こんなところでくたばるつもりはない。深入りだけは絶対にするなと、全員に周知させろ」
「もちろんです」

 武将は従者の返事に満足そうに頷きながら、ほんの少し眉を寄せた。

「勝算のある裏切りなら、一時の不名誉などたやすく濯がれる」
「まだ諦めてないんですか」
「後継がお一人、王女だ。この先が見えているとは思わんか」
「……それは……」
「隠せているのだけが唯一の抵抗よな。陛下の歯がゆさは想像するのもおこがましい」

 アルダは一度風が吹けば、属国であろうと併合に動くだろう。今の屈辱的な扱いが最悪というわけでもないのだ。彼らには、なんとしても抗わねばならない理由があった。
 だが、彼らだけではどうにもならないのも事実。
 敵の敵は味方とは言えずとも、少なくとも共通項を持っていて、接点ならこの戦場にある。賢い従者はもう呆れ顔をしていなかった。密やかに問いかけた。

「深入りせずとも、あちらから誘いがあれば、受けますか?」
「どうだかな……儂の一存では、この状況は厳しかろう」
「では、『挨拶』だけでもしておきましょうか。『次の機会』に足元を見られないために」

 これには将軍の方が呆れてしまい、従者をはっきり振り返った。

「お前、儂より際どいこと言っとるぞ」
「なにをおっしゃる。アルダは私たちの働きをご覧になっているんですから、適当な仕事では済まされないなあ、と独り言を言っただけですよ?」

 さらっと言い切った年若い従者の肝の太さよ。実はこの従者、将軍の身内ではなく友人から預けられた子息なのだが、友人が手を焼いていると言っていた意味がよくわかった気がした。
 将軍は思わず天を仰いだが、一息つくとにやりと笑った。

「そうだな、お前のぼやいた通りだ。暴れ回るくらいせねば、ミレイ軽騎兵団の名が廃るというものだ」
「どころか中央にこの名を馳せてみせましょう」
「それはいい考えだ」

 預け先の将軍も従者と似たところがある証に、二人はふてぶてしい笑みを交わし合ったのだった。










☆☆☆











 リエンは弟の物騒な予告の翌日から順次軍勢を進め始めた。次に奪還すべき砦――宿場町の名はエルエーレだ。そこからテルミディアまでは目と鼻の先。新たな軍勢の登場だけでなくても、苦しい戦いになるのはわかりきっていることだった。
 王都のヴァイス離宮と違って広々とした平地を塀で囲い、王城のそれに多少は劣るものの、造りも設備もしっかりしている宮殿は、今やアルダの重要な軍事拠点になっているだろう。当然、エルエーレが追い込まれたら、ジヴェルナ侵攻とは別に特別にテルミディアに駐留させている軍が助勢に出るだろうし、さらにはテルミディアとアルダの間の連絡網も緊密になっているはずだった。
 アルダ本国からいくらでも増援を送り込めてしまうのだから、相手がジヴェルナの消耗を狙ってくるのは必定だった。その場合泥仕合になるし、戦争に慣れていないジヴェルナの方の内部だって綻んでいくだろう。

(分断してから各個撃破、は無理だな……楽になるのは色々すっ飛ばしての国境の砦奪還だけど、簡単なわけないし)

 もう出かけてしまったヴィーたちはなにを狙っているのかな、とリエンは考えながら、別のところで細かな戦術を練っていた。昨夜の衝撃は一晩の睡眠で押し流した。約束と言われたからには待っておくべきだろうが、なにもしないで、とは言われていない。ヴィーに蹴落とされるほどの活躍をされる前にさっさとリエンが勝ちを納めてしまってもいいわけだ。
 だが、だからといって焦るつもりもない。
 堅実に、しかし機敏に。
 今朝からも軍議で大まかな方針を決めていたが、それだけで足りるわけもない。行軍中の様子すら大切な判断要素だった。勇み足の兵士たち、見晴らしのいい平野、曖昧な天候。特に、今夜辺りに雨が降るだろうと言われていた。雨のあとの進軍を勧められて一言のもとに断ったのはリエンだった。相手が確実な勝ちを狙っているならまだしも、持久戦に持ち込む気満々なのだ。そこに足場が不利になった状態で軍勢を進めて消耗を大きくさせれば、まともに戦えるとは思えなかった。先に進められるところまで進めると言ったリエンに、エルサやレズウェルドも賛同した。

(雨で興奮がほどよく冷めてくれると楽なんだけど、どうかな)

 日暮れ前に降り出した雨は未明にはすっかり止んでしまい、磨かれた夜空には星が瞬いていた。地面の状況はわりと酷い。大街道はともかく、その周辺は農地が広がっているので、固さがあまりないところにぬかるんでしまったのだ。馬も人も兵糧などを載せた力車も足を取られる。それは敵方も同じなので夜襲の心配がいらないことだけはありがたかった。暗くなる前に野営の支度をして充分に休んで、翌朝から行軍を再開し、粛々と進めていくこと、昼過ぎ。明らかに敵方のものと思われる閧の声が広く鳴り渡った。
 奇襲には奇襲で返すということらしい。まだ先頭も敵の姿を目撃していないので、陣中には緊張より混乱が広がった。逐一斥候を出して様子を見ながら進んでいたが、その斥候もまだ帰ってきていなかったのだ。
 どこから敵が来るのかと不安げに見回る兵士がいる。中陣で女王を囲む将らの中には、主将もまた狼狽するのではと焦ってリエンを振り返る者もいた。主将が乱れれば一気に軍勢の統率がたわんでしまうからだ。
 だが、リエンはまっすぐ前だけを見ながら、索敵に出かけた兵士が敵に悉く潰されたことを静かに受け止めていた。

「慌てるな」

 リエンは凛と言った。

「後ろを振り向かなければ、敵は目の前に現れる。備えろ」

 今朝までは斥候はきちんと帰ってきていた。半日だけでジヴェルナの背後に気づかれずに回り込むには時間も手間も足りないはずだ。だからこそ、来るとしても真正面、もしくは左右のどちらかだ。
 混乱は緊張に取って変わった。果たして真っ先に声を上げたのは左側、南の方面を見ていた将だった。

「陛下!」
「待て!正面からも……!」

 これではまるきり、ジヴェルナ反撃初日と真逆である。挟撃は戦力を二分にして受けて立つのが定石だ。だが、攻めるならよくても受けるなら心の準備がまるで違うらしい。リエンは周辺の動揺を悟ったが、なにか言うまでもなく、遥か前方でユーリの旗がぐわんと跳ね上がった。不意に強風に煽られたかのような、そんな大きな動きだ。
 リエンは笑った。少し遅れて先鋒から使者がやって来て、リエンに一方的に報告した。

「陛下への道を開けるお役目、我らユーリがつかまつります!」
「許す。『ジヴェルナの守り刀』の真価を見せつけてみよ!他も続げ!」

 リエンが言い終えると同時に、側に控えていたガルダ以下国王親衛隊、近衛大隊がさすがの息の読み方で、馬に鞭を当てた。さらにそれを囲む貴族勢、国軍が慌てたように駆け出す。

「クレマン家、ディナガット隊は南へ応じます!」
「我らリグロア家も援護いたします!」
「ゼローネも同じく!」

 鉄砲水のように割かれた軍勢が飛び出していき、そう経たずに両面で両軍が激しく衝突した。

「分断を許すな!固まって前進しろ!」

 敵が狙うのはこけ脅しで撤退を誘うことではない。腹を食いちぎられて前後を挟まれるのだけは避けなくてはならなかった。
 リエンは片手で剣を抜きながら、ヴィーは大丈夫かな、と一瞬だけ思った。









 エルサ率いるユーリ辺境伯軍は、戦を知らない者が多いジヴェルナにおいて百戦錬磨であることに加え、守るに堅く攻めるに柔い戦術を得意としている。こうした場で最前線に据えられたのは、リエンがその特性と価値をよく把握していたからだ。
 もちろんエルサたちは、その期待に応えるべく勇躍した。

 敵は、エルサたちが個々の顔を視認できるほどの距離に迫ってから一斉に矢をつがえた。見えた旗の紋様にエルサは眉を跳ね上げ、矢の雨が唸りを上げて降り注ぐのとほぼ同時に叫んだ。

「――駆けなさい!」

 こともあろうか、ユーリの兵士たちは矢盾も構えず、矢から逃げることもせず、むしろ馬足を速めて矢の雨の最中に突っ込む荒業に出たのである。

「変幻自在と噂のミレイの軽騎兵団を『ジヴェルナの守り刀』にあてがうとは、なかなか洒落たことをするものだわ」

 アルダの作戦を真っ先に理解し皮肉を呟くエルサも、当然のごとく無謀な騎士の一人に仲間入りをしている。視界を邪魔する矢は右手を庇にして籠手で防ぎ、後は鎧の性能任せだ。敵方はこの恐れ知らずの集団に動揺したようだが、判断は速かった。すぐに弓を剣に持ち変えて同じく速度そのままに突っ込んでくる。エルサたちも武器を抜いた。

「『ジヴェルナの守り刀』の名において、陛下へ近づけさせるな!!」

 エルサの怒号のような鼓舞はユーリへ向けたものであり、後方で急襲に怯んだ友軍へのものでもあった。
 勝ち戦だけが戦ではない。エルサはそれをよくわかっている一人であり、だからこそ先陣を任され、エルサ自らも望んでここにいる。負けたからといって、リエンが無事なら敵の勝ちではないのだ。敗北を知らず、本当の勝利すら知らず、ただ先手を取られただけでまごついている彼らには及びもつかない覚悟だ。
 守るのは軍の体裁ではなく国の未来。エルサが約二十年積み重ねた実績は、その信念に裏打ちされている。
 応と答えた部下たちはエルサの二つ名を構成する、一人一人が近衛にも劣らぬ精強な騎士である。なによりもエルサと王国に忠実だった。

 対するミレイは半ばやけくその心境に陥っていた。まさに貧乏くじを引かされた気分だ。

(西の貴族が先頭という話だったが、よもや『ジヴェルナの守り刀』とは!)

 話が違う、とミレイの将軍は思ったが口にはしなかった。ただしアルダへの不信感はいやに増した。側を駆ける従者もうんざりした顔を隠そうともしない。
 とんだところで囮の捨て駒をやらされているので当然だった。
 戦を知らないジヴェルナで唯一と言っていい精強な軍団であり、一地方での活躍しかしていないのに中央諸国に名を馳せる実力派集団と、真っ向からぶつかることになったのだ。
 安全第一に、適度に働いて適度に疲れて適当な口実をつけて引き上げる算段をしていたのに、これでおじゃんだ。
 だからもう、ここから先はミレイの騎士としての意地だった。
 こんな不毛な理由で死にたくはない。だが、一泡ふかせないと気が済まない。
 軽騎兵団の名の通り、最低限の装備で軽装の彼らは、馬を自在に操りながら猛攻を仕掛けた。馬で寄せて敵を斬っては離れ、また寄せていく。それはふわりふわりとつかみどころのない、かまいたちのような攻撃だった。だがさすがというべきか、敵はそう簡単に崩れてくれない。ミレイの攻撃に応じ反撃しながらも守りは堅牢と、こちらも柔軟かつ的確な用兵だ。
 シュバルツの虐殺王が執心の美女将軍を目に収める位置にまで近づいた。女王といいこの女将軍といい、女を矢面に立たせてばかりでジヴェルナの男どもは何をしているのかと思ったのは一瞬だけ。女だとか気にする前に、二人ともが優秀なのだ。
 ほんのわずかな間、乱戦の最中に女将軍と視線が交錯しただけでそのことを理解した。

「清緑の織り綾なす常春の国の方々とお見受けする!」

 薔薇の唇は、洗練された恋の詩を紡ぐにふさわしい、透き通った声と高い教養でもってミレイをそう称し、将軍を呼び止めた。

「我は『ジヴェルナの守り刀』。諸兄にお尋ねしたい!お背にお守りになられた友との絆は固いようだが、この戦はそも我が国と他国の間の行き違いから端を発している!その誤解も解けて友と我が国の戦の理はない!その上でなにゆえ諸兄は剣を揮る!?」

 友を背に守る、とは涼しい顔で痛烈な皮肉を言うものだ。もちろんそれはミレイへ向けたものではない。戦を仕掛けておきながら、無関係な第三国を盾にとって自分たちは美味しいところをかっさらおうとぬくぬくしている、アルダへ向けたものである。

(行き違い――神聖王国か。いつの間に?)

 一瞬だけ苦笑を浮かべながらも、将軍は冷静に考えた。はったりかとも思う。だが、問われれば簡単にわかることを偽るのは国家としての恥だ。
 と、いってもだ。
 ミレイが剣を収めるに足りるとは到底言い難かった。

「友と貴国の理は我が国の関与するところではない!」

 将軍も低く深い声音で応答した。後ろでアルダが聞いているのをわかっていながら思わず本音が半分漏れたのは、帰りたい思いが強すぎたせいだろうか。

「我らはよしみに預けた義を通すのみ!」

 使われるばかりで迷惑しているから、なんとかアルダを潰してくれないか。エルサには副音声でそう聞こえた気がした。
 エルサはミレイの彼らが死にものぐるいであることは確かにしても、その激烈な気迫はジヴェルナへ向けたものではないと肌に感じていた。加えてミレイの将はどうやら勢い任せの力自慢の武将ではない。保身のために計算している様子が用兵からも見て取れた。

(時間がもっとあれば、内密に交渉できたかもしれないわね……)

 だが今からは無理だ。エルサは思考をすぐに切り替えた。
 ミレイ軽騎兵団をまともに相手にするよりも、アルダを早急に叩いてしまうべきだ。横からも攻められている以上、時間を無駄にするのは下策。アルダの敗北を目の前で突きつければミレイも引き揚げる口実を作れるだろう。
 陛下へ進言を、と側で馬を駆る従者に端的に命じようとした声が、正面でも南でもないところから飛んできた音の固まりに掻き消された。

 ――北。

 ミレイの将軍は「全く、義理さえなければ」と呟きながら、手で合図した。今のうちにもっと攻め立てろと。
 南の部隊の囮。西の部隊の捨て駒。そして、さらにもう一つ、彼らには役割があった。

 ミレイの急襲にさえ動じなかったエルサの血相が、はっきりと変わった。

「よそ者が儂らを最初から最後までただの時間稼ぎに使うとは、業腹でしかない」

 西、南の攻撃で戦力が分散され進軍の勢いも衰えているジヴェルナの、その無防備な側面に、新たに現れた騎馬の軍勢が襲いかかった。
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