孤独な王女

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一旦立ち止まって振り返る

墓参り①

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 ――知らない。なんだ、それ。

 別に覚悟していたことだ。覚えていないことくらい。
 そんな素振り、全くなかったんだもの。

 でも同時に期待していたのも確か。……期待、していた。
 あまりにも姉さまの記憶とそっくりな二人。言動も思考判断も全て。ガルダと交渉しているのを見ているうちに、また場所を見失いかけたけど……でも、紛れもなく「ここ」だった。

「……『なんだ』じゃなくて。人だからさ……」

 建物の影で、三人の少年たちに怒濤の勢いで追いついた男二人を交えた五人のやり取りを聞きながら、そうぼやいた。声が震えたのは自分で無視した。
 前の世界には、もうあんな大人たちは生き残っていなかった。
 引き止めるために全速力で追いかけ、腕にものを言わせて強引に先へ進めないようにする人なんて。そこには怒りもあっただろうけど……でも、それよりも。
 心配だったから。

「……帰ろう、ガルダ」

 姉さまの分の別れは済んだ。「リエン」ももう、あの二人に用はない。……ない、のだ。
 胸に吹きすさぶ隙間風は無視した。ついでに昼間に感じた全ての感情の揺れ動きも全部、闇に葬り去る。
 寄りかかっていた建物から背中を引き剥がすと、ぱしんとガルダに右手をとられた。夜目で見上げると、色んなものがごちゃ混ぜになった顔をしていた。……こんなに迷ってるらしいのは、珍しい。
 なに、と問いかけると「……ナヅミという人物は、一体今どうしているんですか」と尋ねられた。それが一番に聞きたいことじゃないのは、そのどうにもならないという顔を見ればすぐにわかった。
 いつも通りに微笑もうとして、失敗した気がする。口角が変にひきつった感覚。喉の奥がつんと痛くなったが、なんとか平坦な声を出した。

「……いなくなったよ。もう」

 後宮から。私の中から。……この世界から。






 ねえ、ネフィル。
 姉さまは消えてしまったんだろうね……。  





















「――リエン姫。リィ。おい」

 暗闇の彼方に沈んでいた意識が、ゆっくりと浮上していく。ぱちりと瞬いて……首がひどく凝っている感覚に顔をしかめた。あと腰と足も痛い。

「そんな態勢で長時間本を読んでいるからだ」

 今度ははっきり聞こえた。斜め下から、呆れとも怒りとも似つかぬ声が梯子を登ってくる。また瞬いて、見下ろした。

「……あれ。いつ帰ってたの、ネフィル」

 薄暗い図書館の床にカンテラを持って立つネフィルは、変な顔をしていた。何か言いたいけど言えない、みたいな。
 まあそんなのはともかく、十何日かぶりの再会だ。

「今さっきだ。出迎えに来ないからまさかと思ったが……」
「ああ、うん、ごめん。忘れてたみたい」
「……だと思ったよ」
「ヴィーはいないのね?」
「……ああ。ナキアが屋敷を案内しているからな」

 ネフィルは、姉が出迎えに来なかったことで弟が無意識にかほっとしていたことを伝えようか迷って……結局言わないことにした。旅の間にたくさんの人間からこてんぱんにされた弟もそうだが、姉も姉で、弟命のはずが『忘れていた』とのたまう。何があったのかは知らないが、どっちも重症だ。

「……調べものは捗っているのか」
「まあまあだね。……意外に、なんだろう、外れの書物がないからびっくりしてる……」

 リエンは梯子から降りようとして、あれ、と首をかしげた。今もそばにいるガルダが、時間になったのに私に声をかけないで空気になっていたのは珍しい。それと同じに、ネフィルがちゃんと王女さまの格好をしている私をリィと呼ぶのも。

「ネフィル、リィって……」
「ああ、ついさっきまで忘れていたんだが、……けっこうな昔に、私もリーナをそう呼んでいた時期があったんた」
「へえ……愛称おんなじなのかぁ」

 手に取っていた、かろうじて装丁がなされているだけの紙の束を撫でた。さっき、なんとなく変な感覚がしたのを思い出す。どの本を開いても外れのない書物たち。たまたまここの本棚だけだったのかもしれない。けれど。……お母さまは、もしかしたら……。

「そうだな。名前自体が単純で呼ぶ者は滅多にいなかったが。リエン姫。引きこもってばかりだとナキアから聞いたが……気分転換に墓参りでもどうだ?」

 おかしな誘い文句に目を丸くした。墓参りが気分転換って。だから奥さんがいまだにいないんだよこの人。
 手を差し伸べるネフィルはまだ変な顔で、何を思っているのかわからなかった。……お墓って、もちろんお母さまのものなのだろうけど。
 けど、最後には頷いて、その手に書物を載っけた。高い天井まで届くほど大きいけれど私でも持ち上げられる軽さの梯子の足に手をひっかけて、ひょいと飛ぶ。薄青いドレスのスカートが一瞬だけ浮いて、すぐに収まった時には、目と鼻の先にネフィルの見開かれた緑の瞳があった。
 驚いて少し後ずさっていたネフィルに少し笑った。……図書館の中に、他人はいないんだから、多少は、ね?













☆☆☆
















 姫と別行動になっても、ネフィルはナキアからの報告を二日に一回受け取っていた。何しろ王族の警護なのに、精鋭とはいえ護衛する騎士が十人といないのだ。大所帯を嫌った姫の意見だったり最強の従者がいることに配慮したりはしたが、心配はするものである。ましてやあの姫はあっさりぶっ飛んだことをしでかす。後のお説教も視野に入れた監視が必要だった。
 実際、馬車の中でじっとするのに耐えきれず男装して外に出たり、決闘騒ぎを起こし(完膚なきまでに少年をへし折るところまでお約束じみていた)たり、次の街では馬泥棒に遭い、行程を早めてその日のうちにウェズ東端まで取り返しに行ったこともあったらしい。
 異変はその翌日からだったという。
 姫はそれ以降、アルビオン公爵邸に着くまで、むやみに馬車から出ることもなかったらしい。騎士たちは懲りたのだろうと考えたが、それにしてはいささか様子がおかしい。大人しすぎるのだ。従者もずっと口を閉ざしたまま、近衛を鍛えるいじめることもせず、朝稽古に黙々と剣を振っていたそうな。

 アルビオン公爵邸に着いたら着いたで、「至宝」だなんだとわんさか一族の連中が押し寄せたが、姫は一顧だにせず出迎えたエドガーと挨拶をし、早速図書館に閉じこもるようになったそうだ。それ以来寝不足も続いているとのこと。
 ちなみに王子がやって来たときは閑散としたものだった。お前など呼んでないという駄々もれが激しすぎて、ネフィルも思わずフォローしようとしてしまったくらいだ。しなかったが。同じように出迎えてくれたのはアルブス一家のみ。
 エドガーは姫に釘を刺されるまでは王子排斥派だったが、心変わりしたのか、あれ以来黙々とネフィルの補佐を果たしている。

「はじめまして、王子殿下。アルビオン領領主のエドガー・アルブスと申します。優秀とのお噂はかねがね」
「……はじめまして」

 アルブス夫妻は揃って困惑した。王子の笑顔が建前だとすぐにわかったので。
 わかるくらいには、張りぼての天使像は崩壊寸前だった。姫が出迎えに来ていないことに気づきながらも会うことに怯え、ネフィルが適当に忘れてるんだろうと言えば、会わなくてすんだことに安心した。完璧王子が挙動不審になっている様は、燦然と輝く噂ばかりを耳にしていたエドガーを真顔にさせた。

「ネフィル。おかえり、久しぶりのところ悪いけど……」
「構わない。そちらはナキアに任せるが、いいか」
「いいよ。優先順位は大事だ。お前も成長したなぁ」
「何の話だ?」
「自覚してなくてもいいんだ。おにーちゃんは嬉しいぞ。今日は夜、一緒に飲もう」
「誰が兄だ」
「冷たいなぁ全くもう」

 もしこの場に身内しかいなければ、昔のようにネフィルの頭をぐしゃぐしゃと乱雑に撫でていそうなはしゃぎようだった。実際に右手はそう動いたが、ナキアの「旦那さま」という瞬間冷凍の声で進行方向を肩に変えた。ぽん……ぽん……と重々しく叩き、ごまかすように笑う。歳上の嫁に敷かれるタレ目の旦那さまだった。
 エドガーはそのまま、そそくさと息子二人を連れて王子一行の世話を焼きに行った。王子本人にはナキアがつく。部屋まで案内しに行ったのを見送ったネフィルは、一応姫の部屋を訪ねて、いないことを確認してから図書館まで足を運んだのだった。








 図書館は公爵邸の裏庭のさらに先にある。
 四季折々の色とりどりな花園に紛れるように建つ、二階分の高さの建物がそれだった。内部は階の隔たりをぶち抜いて本がぎっしりと詰まっており、管理は二人の司書に委ねられている。

 ネフィルがここに足を踏み入れるのは、ほとんど十年以来だった。リーナがよくここに出入りしたからネフィルも立ち寄った、その程度だったのだ。しかもリーナは大人しく読書を楽しむだけでなく、薄暗い館内を我が物顔で闊歩し、追いかけるネフィルを尽く罠に嵌めまくった。ネフィルが最後に泣き出してリーナが慌てて慰めるところまでがお約束だ。司書や父から雷を落とされるほどの大騒ぎをしたこともしょっちゅうだ。当時、まだ舌足らずだったネフィルは、リーナを「リィねえさま」と呼んで、物々しい館内を遭難した。
 暗闇に金の髪が踊れば、そこがネフィルの目的地になった。エドガーもたまについてきた。しかしもっぱらいじめられるのはネフィルで、リーナ曰くエドガーは「張り合いがなくてつまらない」らしい。タレ目じゃなくなったら遊んであげると言われたエドガーは「光栄だ」と笑い続けた。あの二人はよく分からない関係だったな、と思う。
 高い梯子に座っていることが多く、何度もニケから注意されても糺さなかったことも、思い出した。

(……だんだん、王都の別邸がリーナの生活の中心になっていって、帰ってきても図書館に寄り付かなくなったんだったな……)

 そしてそれを追いかけないネフィルではなかった。だから、公爵邸の図書館で過ごした記憶は、その後の王都での目まぐるしく輝かしい毎日に埋もれていき……ネフィルは、忘れ果ててしまっていたのだった。
 はっきり思い出したのは、暗がりに佇む少女が記憶通りの姿でいたからだ。リエンに声をかける前、ネフィルは思わず息を呑んでいた。

 梯子の上部に雑に腰かける少女。足元で守るように立つ従者。リーナとニケのありし日の姿のようで……しかし、違う。
 ネフィルには不思議だった。顔も仕草もリーナに瓜二つなのに、その魂にはナヅミという別の世界の存在が紛れ込んでいる。そもそも姫はリーナのことなど覚えていないのに……。
 ナヅミがリーナにそっくりなのかもしれないと、変なことを考えた。世界が違えども、似たような二人。
 それは、なんとなく嬉しい……。

「……ネフィル?おーい?視点定まってないまま笑ってるの、怖いだけなんだけど……」

 はっと我に返ったネフィルは、眼前の姪の顔にぎょっとした。乗っている馬の進路を気にせず、じいっとこちらを見上げている。

「わ、笑っていたか?」
「うん。悪役みたいな笑い方してた。アルビオン家ってみんな似たような笑顔するよね。ぶっちゃけベリオルの真顔並みに怖いよ」
「…………」

 身も蓋もない講評だが、言っている本人も同じ血を引き継いでいるのを忘れていやしないか。……そういえば、誰よりも一族の血を濃く受け継いでいるのに、リーナは「魔の微笑」とはとんと縁がなかった。内側から輝かんとする溌剌とした笑顔。だからこそ、一族全員がリーナを愛していたのかもしれない。

「君の笑い方は、リーナに似ているな」
「ほんと?」
「ああ。うちの一族のような陰険腹黒謀略策略とにかく正攻法以外に特化した人間は揃って私のような笑い方だ。反対に、君はとにかく明るいからな。リーナもそうだった」
「……自己評価そこまでいくんだ……」
「自覚はしている。直しはしないが」
「開き直ってるってことね。エドガーはなんか違う気がしたけど」
「あれはリーナと張る男だ。あんななりでも裏は相当だが、その分、度量が桁違いだからな」
「へぇ……」

 他愛もない雑談をゆっくりと続けるのは、ネフィルにとっては久しぶりの娯楽だった。最近は避けまくっていたし、和解したあとはずっと別行動だった。しかも今現在、墓へ向かう馬に、ネフィルと姫の相乗り。
 なぜか従者の馬を選ばなかった姫はやはりどこかがおかしい。黙って反応を示さない従者もおかしい。どいつもこいつも、と思った(ネフィルだって最近まで不安定だったが棚上げ)が、相乗りは素直に嬉しかった。乗馬も、一人で突っ走るリーナを追いかけるために身につけた技術の一つだ。クッキー作りも髪結いも。
 それが今、リーナの娘のために活用されていく……。

(…………一族は……改めて馬鹿だったな)

 リーナそのものじゃないと受け入れられなかった。しかし、人は受け継いで、繋いでいくものだ。時代の先へ、人々をつれて行く。それが大人のすべきこと。
 それを認めず、頑迷なる一族は生まれたばかりの姫を見捨てたのだ。

 ――まだ三歳だった私がネフィルを負かせられるわけないじゃない。

 ネフィルの横っ面をひっぱたき、認めさせた。目を覚まさせた。
 と。たった一人、孤独の生きざまを。
 あの出会いが変えたのは姫自身の未来だけではなく、ネフィルの人生もだった。

(……ナヅミ。あなたに感謝を)

 あなたがいたから、この時間がある。
 この時なぜか、「婚約者いないの?」という姫の言葉がよみがえった。
 そして自分は気が合う人間がいいと言った。それが、もしナヅミであれば、自分はどうだろう?
 一瞬後に、馬鹿馬鹿しいと一人で首を振った。確かにリーナにそっくりだから、かなり魅力的ではある。しかし、抱いているのは敬慕の念と懐かしさと謝意だけのはず。それに、既にナヅミはいない。考えるだけ無駄だ。……無駄のはずだが。

 なんとなく、胸の奥で姫から聞いたその女性の姿を思い描いた。



  
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