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階段をのぼる
振り子
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軟禁が解除されて半月が過ぎたこの日は、朝から隠し部屋に籠って仕事をしていた。長年かけて取り組んでいる、誰も知らない私だけがやっている仕事。それももう目処が立っている。
「――完成した」
かちり、と最後の『鍵』を嵌めて、箪笥から一歩さがった。
達成感の中でこくりとひとつ頷く。数少ない趣味と実益をかねたものだけあって、やたらと時間を懸けて工夫を凝らしてしまった。
(……あとは『研究』を仕上げるだけ……)
色んなことが書き込まれた紙の束を、仕掛けを解いて箪笥の引き出しに仕舞い、また『鍵』をかける。ちょうどその時、時計の運針のような音が響き、慌てて部屋の中央の絨毯に座り込んだ。
こつ、こつ、と土の床に靴の当たるくぐもった音が聞こえて、ばーんと木製の扉が開けられた。勢いよく開け放ったヴィーから挨拶もなく一声。
「リィ!今日こそ教えてよ!」
「嫌だって言ってるでしょ。どのみちその時になったらわかるから」
「けち!いけず!ネフィルさまからもらったお菓子あげないよ!」
「それとこれとは話が別よ!」
ヴィーが歩み寄りながらちらつかせた巾着を見て立ち上がった。最近のヴィーは王さま周辺――とりわけネフィルと仲がいいらしく、毎日外宮に行ってはよくお菓子をもらってくる。そうなれば必ずヴィーは私に半分分けてくれるから、貴重なエネルギー源になっていた。
ヴィーがネフィルに頼まれて私まで橋渡しをしていたと知るのは後になってから。臣下が王子を使いっ走らせることをそう簡単に予想できるわけがない。ネフィルならやりそうだけれども。
「それより、宿題は?」
「終わったよ」
「なら、居間でお茶にしましょう」
「……はぁい」
ヴィーが不服げに隠し部屋の隅の箪笥に目を向けたのに気づいたが、なにも言わず笑顔で答えてくれた。
……次に私が危機的状況になったら、今度こそ独断で動くだろうな、という予感はある。その方がヴィーにとっても楽だろうという打算も混じってる気はするが。
裏を返せばそれまでは我慢してくれるということ。だから私にそこまで突っ込んで聞いてこない。
(どのみちもう危ない橋を渡る必要はなくなるし……予想外の事態が起きなければ)
自分で自分に保険をかけているのに気づいて、苦笑した。これでも前向きになった方なのだった。
「リィは、この後出かけるの?」
「ええ、図書館に。この間面白い本見つけたから」
「ぼくも行きたい」
「失礼ですが殿下、勉強が残ってますよ」
「うぐっ。ティオ、それは言わない約束でしょ」
さりげなく、しかし私にも聞こえるように言うティオリアは確信犯だろう。それでもヴィーはティオリアを気に入ってるようで、この主従はわりかし仲がいい。
ああ、この子も堂々とサボり宣言をするほど図太くなって、としみじみとしてしまった。まあ腹黒が判明した今となっては今さらだけど。自由奔放になり始めたヴィーを諌めるのが、最近のティオリアの役目になっている。本当に優秀な護衛で、姉として嬉しい限りだ。
「そうねえ、しっかり身に付けること身に付けないと、教えられないわね。あとはあなたの成長待ちだもの」
「……じゃあやる」
お茶を飲み干したヴィーは決然とした顔で立ち上がった。立ち居振舞いも幼い頃から教育係が仕事を頑張ったお陰か、かなり洗練されている。
「私はまだ寛いでるから、片付けはしなくていいわ。頑張って」
「わかった、ありがとう。じゃあまた今日の晩餐会でね」
ティオリアが扉を開けると、私を主に負の感情でもって見つめる兵士が二人。相変わらず嫉妬や侮蔑が続いていてうざったいけど、ヴィーは彼らを堂々と睨み付けるようになったので、少し息がしやすくなった。
「私も、お菓子ありがとう」
立ち上がって見送りながら言うと、がらりとヴィーは相好を崩し、輝かんばかりの笑顔になった。
☆☆☆
いつもの図書館で日当たりのいい場所を見つけて、日向ぼっこをする気持ちでゆっくり読書していると、珍しい人が近寄ってきた。
集中していたので気づくのが遅れたが、ふと顔をあげると、その人物が対面に座っていたので驚いた。しかもこちらをじっと観察していたようで、私と目が合うとふいっと薄い色の瞳を逸らす。
「……え、王さま、どうしました?一人ですか?」
「……散歩だからな」
この人にこんな趣味があったのか、と驚いた私は悪くないと思う。嘘が下手くそすぎないか。外宮の端の図書館でもあることに加えて、奥まったこの閲覧場所は散歩には絶対に向かない。
なんとなく無視しづらくて、ぱたんと本を閉じた。王さまは相変わらず顔を背けたまま、横の窓から庭をぼんやりと眺めていた。
実はあの襲われた日以来顔を合わせていなかったので、数ヶ月ぶりの邂逅だ。これまでは何だかんだで毎月楽しくもない晩餐会で面白くもない顔を付き合わせていたものだが。新鮮というか懐かしいというか、よく分からない気持ちになった。
(……あれ?痩せた?)
光の当たり方か、目が落ち窪んで見える。そっと手を伸ばすと、触れる直前で視界に入ったのか、王さまがびくりとこちらを振り返った。その拍子に、さらりと長い襟足が揺れた。
不躾だったか、と手を下ろすと、王さまは目でその手を追いかけて、ぽつりと呟いた。
「……なんだ」
「いえ、痩せたなと思いまして。体調崩すとベリオルが大変になるんだから、気をつけてください」
一瞬の空白のあと、ものすごく変な顔をされた。口が見事なへの字になっている。
「……そなたにだけは言われたくない」
「これまで私が倒れたのは全部不可抗力ですけど?」
「そこではない」
じゃあどこだ。
匙を投げかけたところで思い直し、ちょっとだけ考えて、本の表紙を手でなぞった。ここ最近何度か読み返している冒険小説だ。噂話いわく、市井で現在流行りなのだそうだが、相変わらず感情移入できなくて困っていた。たぶん、一生私には無理なのだろうが、最近、心境の変化がもたらされていた。
「……もしも私が倒れてもう目覚めなくなったところで、ベリオルたちは悲しみはするでしょうが、困りはしませんよ。むしろ争いの種が消えてほっとするでしょう。私の代わりに引っ掻きまわす役どころが新たに必要になるでしょうけど……あ、最近はヴィーが頑張ってるんだった」
「……違うと言っている」
「じゃあ何なんですか」
「…………」
王さまは何とも言えない顔で黙りこくった。言いたいけど言えない、といった顔。何かあるならさっさと教えてほしい。
「……それで、実のところ、何の用なんですか。王さまなのに仕事ほったらかしてこんなところで油売ってていいんですか」
「私は王だからいいのだ」
「わぁー……即答したと思ったら何という横暴な」
呆れていると、ふと、こんなにこの人とどうでもいいことを言い合ったのも久しぶりだと思い出す。これまではお互い、基本的に必要なことしか言葉を交わさなかった。
(昔、何も知らなかった頃は、この人のことお父さまって言ってたんだよなぁ……)
絶望するより前。私をどぶから掬い上げてくれることを期待する前。
この人がいなければ、私は生まれなかった。
姉というそれだけで慕ってくれるヴィーのようにひねくれていなかったら、この人の呼び方は変わっていたかもしれない。
……この時、私は心底寛いでいた。毒を盛られて襲われかけて軟禁された、命がけの踏んだり蹴ったりな経験をし、それなのに穏やかに過ごせている儚い日々に、今の間だけでも浸っていたかった。
……だから、つい口が滑ったのだ。
「……お父さま」
囁きとも言えないほど小さな声だった、のに。
途端、幻でも見るようにカッと目を見開いて凝視してくる王さま。夢うつつから覚めるように。私が実体であるのを確かめるように。……めちゃくちゃ見てくる。瞬きしてない。怖い。
「あ、あの、油売るんだったら部屋で寝てたらどうですか」
それで王さまはごまかされてはくれなかった。もう顔面に視線をびしばし感じて穴が開きそうなんだけど。なんなんだ一体。
「――王さま。いい加減にして」
謎の緊張感がすんっと掻き消えた。ゆるゆると瞑目してくれたので、ほっとする。王さまはこんな昼行灯のようななりでも「王」なのだろう。鋭い眼光に、無駄に神経を張り詰めさせられた。
やれやれと胸を撫で下ろしていると、王さまは相変わらず目を閉じていたが、ふっと息をつくと瞼を上げた。ガラスでもなく中途半端な揺らぎもない、これまでの中で一番深い瞳の色に、自然と目が吸い寄せられた。
「……そなたの神経は虫より図太いな」
「は?」
私が脈絡がなくて目を白黒させてしまうのを無視して、王さまは独白するように続けた。
「過信とも違う。あれほどの目に遭ったのに懲りない。外宮はそなたの目で見て浄化されたと思うか?」
「……いや、ないでしょう。こないだ処罰されたのはとかげの尻尾のようなものでしょう?元を絶たない限り、いくらでも湧いてきますよ。……藪から棒に、なんですか?」
「対策はしているのか」
……質問を無視されたことに、なんとなくむかついた。
この人はどうしてこんな顔をしている。どうしてそんな関係のないことを聞いてくるのだ。
「あなたにとやかく言われる筋合いはありませんよ。あれから学習して石を持ち歩いてますし、笛も持ってます。外宮で手を出せばすぐ釣り上げられますよ」
あくまでも私は病弱でいなきゃいけないから、使うとしたら最終手段だけど。貞操を守るか、死なない程度の効果しかない……のを言ってないのに、王さまはことさらに目を険しくした。
まるで認識が甘いとも言いたげな……。だからあなたには関係ないでしょうに。心配してるように眉根を寄せてだんまりだ。…………心配?
――きり、と胸のどこがが引き絞られる音がした。
「王さま」
「そなたがその姿で外宮に赴く理由は、もはやなかろう。病弱というならなぜ後宮でじっとしていない」
あからさまに切られた。
名前の知れぬ感情がふつふつと沸いてくるのを感じて歯がみする。――押さえなければ。深窓の令嬢は、こんな誰の目につくところで大声を上げるわけにはいかない。
「……だからといって閉じ籠っては、怪しまれます」
大体、今さら何なのだ。身分証を渡したのはあなただろう。閲覧権をくれたのも。
「侍女も外させて、そなたの様子を直接知れる相手はいない。なればいくらでもごまかせよう」
何なのだ。あなただって私に晩餐会をけしかけて、後宮から出させているじゃないか。
「身を張って囮となる前に、これまでのあれこれを思い返してみればどうなのだ。何度殺されかけた?」
「あれは、不可抗力で――」
「死ねば変わらん」
受け流せばいい。リィの格好なら別に構わないのだろうと、その発言の穴をつつけばいい。
意味のない空っぽの一方的な罵倒なんて慣れてる。否定してくる言葉にも笑えるくらいには大人になった。女王陛下に虐められてもいちいち泣かず、暴力に怯えるふりもできる。
……なのに。なぜ。
「――王さま」
もう我慢できなかった。机に手をついてがたりと椅子から立ち上がる。淡々と見上げてくる王さまを見下ろしても、胸の内は晴れない。さっきまで穏やかだった日差しを冷たく感じる。心の柔らかくほぐされていた部分が凍りつくようだった。
……何なのだ、この人は。なぜ今さら私を揺さぶってくる。
ぴたりと口をつぐんだ王さまに怒鳴ろうと思ったら、声が掠れて情けない声量になった。
「……私の邪魔はしないと、かつて言いましたよね?」
「はて?私にはそなたが何をしたいのか見えてないのだ。私の行動の何が邪魔になるのか皆目見当がつかん」
「……質問を変えます。なぜ私に関わろうとするんです?これまで傍観していただけじゃないですか」
「……さてな」
「はぐらかさないでください」
「どうせ聞きたくもないだろう。本当に私の口から言ってほしいのか?」
まるで私の心を見透かすように。……いや、とっくに見透かしてるだろう。この人が自覚してるならば。そして、してないとこんなこと言えないのだ。
沸き起こる激情に目眩がした。
「…………帰ります」
本を取った。王さまの視線が追いかけてくるのを知っているけど、無視した。じゃないとみっともないことになりそうだった。
(――今さら。何なんだ)
「今夜の晩餐会以降、後宮から出ることは許さん」
背中を追いかける声に、本当に叫びそうになった。
今さら。今さらだ。何年放置してきた?何年振り返らなかった?歪ませたのはあなただろう。掬い上げてくれなかったのはあなただろう。だから自分の足で歩いてるのに。何をするかと思えば通せんぼ?
――今さら!!
(――もう何を言われたところで止まれはしないんだよ!!)
何度私が絶望したと思ってる。何度泣いたと思ってる。疲れて休みたくて、でもぼろぼろになりながら起き上がって道を歩いたのは。
誰も一番に私を大切にしてくれないなら。何を捨てても私を優先してくれないなら。そんな風に歪ませたのに、今さら中途半端な情をかけるというのか?……ふざけるな。ふざけるな。
目頭が熱くなる。必死に歯を食いしばって本棚の密林を潜り抜ける。
司書の人たちに挨拶もせずに、ひたすらに走り出したい気持ちを堪えるだけで精一杯だった。
――早く。
早く。早くここから立ち去って、心を立て直して、明日から、また。
「――残念だったわねぇ」
……ぴたりと、足を止めた。
かつん、こつん、と廊下にその靴音が落ちる。どこまでも人がいない、静まり返った不気味さを助長するように。日だまりに浸っていた私を攻めたてるように。
いやに動悸が激しく、冷や汗が出た。……今日は、どこまでも私を落とす日らしい。ささやかな幸せすら、噛みしめさせてもらえない。なんで、いつも。いつも。
すぅ、と濁った空気を吸って、潤んだ瞳を瞬きで乾かして。正面から悠々堂々とやってくるその人を見据えた。
「……お一人ですか。こんなところで珍しいですね、女王陛下」
「ごきげんよう。妾がここにいるのが、そんなに嫌かしら?」
「……いいえ」
いつもの毒が鳴りを潜めたような静かな微笑みが逆に気持ち悪い。その分目がにたにたと下品に嗤っていた。愉しくてたまらないとばかりに。
「こんなところを彷徨いていていいの?また襲われるかも知れなくてよ」
「……それは、事件解決に尽力したヴィーやベリオルさまたちを侮辱しているともとれますが」
「妾はただ、心配しているだけよ?」
いつもなら激昂しているはずの女王陛下は、穏やかに静かに歪んでいた。
「――ぅぐっ!?」
突然喉に衝撃を受けて、壁に叩きつけられた。
「ほら。こんな風に」
「はな……して……っ」
両手でぎりぎりと首を絞められて息ができない。体が壁に押しつけられて、その腕を掴むことしかできなかった。乱れた髪の向こうで、恐怖を呼び起こすような無機質な瞳がどろりと溶かすようにこちらを見ていた。
……ただ、見ていた。
「大人しくしていれば、もっとましになったのにねぇ?息ができるだけでも、ありがたいことでしょう?どうして望んだりしてしまったの?」
(……誰も、誰も。私に与えてくれなかったから)
唾を吐きかけたいのに喉が押さえられて口すら動かせない。
「あなたの帰る場所は所詮後宮にしかないのに。ここ数年、外宮を鼠のようにうろうろとして。……今さら遅いけれどね。思い上がりは正されるものなのだから」
言ってる意味がわからない。でもそれまでの言葉はぐさぐさと胸に突き刺さった。――帰る場所。
(……嫌だ。そんなことない。私は出るって決めたんだ。こんなどぶの世界から、出て、自由になるって)
それだけを糧に、この十年以上を費やしてきたのだ。
「家族ごっこは楽しかった?陛下に目をかけてもらえて嬉しかった?あの方は妾を見てくれないの。どんな気持ちだったか教えてくれないかしら?」
きゃらきゃらと壊れたオルゴールのように嗤う姿を見て、妙に冷えた頭で先程の王さまの様子の意味を理解した。
何か唆したのだ、この人が。私がまた襲われるかもしれないと、そんな風に。わずかに揺れ始めていたのだろう王さまを中途半端に大きく揺らして、私を探しに向かわせた。
(…………惨めだったよ)
私を助けてくれた少年よりも。逃げろと選択肢を示してくれたベリオルたちよりも。同類と思って接していたはずなのに、その一線を越えてこちらに踏み込んできた王さまが、何よりも一番私を惨めにさせた。私自身が認められない私の脆さを、あっさりと許容しようとしてくるから。
「……まあ、それももうおしまい」
ふいに息が口を通った。首を絞めていた手が外れたのだ。
床に座り込んで、ごほごほとえずいた。目の前に爪先があったけれど、今日は蹴飛ばさないらしい。ありがたいことだ。
「卑しいあなた。可哀想なあなた。せいぜい、そうして這いつくばっていなさいね?」
……そうして立ち上がれないまま、女王陛下の去っていく足音を聞いた。
その日、初めて晩餐会をさぼった。誰も呼びに来なかったからこれ幸いと寝台に転がり、首に残った痕を撫でながら昼のことを反芻しては叫びたい気持ちを堪えた。
逃げたと思われるのは癪に障る。けど何食わぬ顔で晩餐会に行けるほど面の皮は厚くない。王さまの顔を見たら癇癪を起こしそうだった。
……そうしてふて寝をしている間に、一国を揺るがす一大事が起こってしまっていた。
☆☆☆
「――リエン王女殿下。国王陛下並びに王妃殿下の毒殺未遂容疑にて、あなたを連行させていただく」
……ヴィーに絆されてばかりで忘れていた。
所詮私はこんなものなのだ。思い上がってはいけなかった。
何もせずとも転がり落ちてくるなら、私は足掻いたりしなかったのだから。
「――完成した」
かちり、と最後の『鍵』を嵌めて、箪笥から一歩さがった。
達成感の中でこくりとひとつ頷く。数少ない趣味と実益をかねたものだけあって、やたらと時間を懸けて工夫を凝らしてしまった。
(……あとは『研究』を仕上げるだけ……)
色んなことが書き込まれた紙の束を、仕掛けを解いて箪笥の引き出しに仕舞い、また『鍵』をかける。ちょうどその時、時計の運針のような音が響き、慌てて部屋の中央の絨毯に座り込んだ。
こつ、こつ、と土の床に靴の当たるくぐもった音が聞こえて、ばーんと木製の扉が開けられた。勢いよく開け放ったヴィーから挨拶もなく一声。
「リィ!今日こそ教えてよ!」
「嫌だって言ってるでしょ。どのみちその時になったらわかるから」
「けち!いけず!ネフィルさまからもらったお菓子あげないよ!」
「それとこれとは話が別よ!」
ヴィーが歩み寄りながらちらつかせた巾着を見て立ち上がった。最近のヴィーは王さま周辺――とりわけネフィルと仲がいいらしく、毎日外宮に行ってはよくお菓子をもらってくる。そうなれば必ずヴィーは私に半分分けてくれるから、貴重なエネルギー源になっていた。
ヴィーがネフィルに頼まれて私まで橋渡しをしていたと知るのは後になってから。臣下が王子を使いっ走らせることをそう簡単に予想できるわけがない。ネフィルならやりそうだけれども。
「それより、宿題は?」
「終わったよ」
「なら、居間でお茶にしましょう」
「……はぁい」
ヴィーが不服げに隠し部屋の隅の箪笥に目を向けたのに気づいたが、なにも言わず笑顔で答えてくれた。
……次に私が危機的状況になったら、今度こそ独断で動くだろうな、という予感はある。その方がヴィーにとっても楽だろうという打算も混じってる気はするが。
裏を返せばそれまでは我慢してくれるということ。だから私にそこまで突っ込んで聞いてこない。
(どのみちもう危ない橋を渡る必要はなくなるし……予想外の事態が起きなければ)
自分で自分に保険をかけているのに気づいて、苦笑した。これでも前向きになった方なのだった。
「リィは、この後出かけるの?」
「ええ、図書館に。この間面白い本見つけたから」
「ぼくも行きたい」
「失礼ですが殿下、勉強が残ってますよ」
「うぐっ。ティオ、それは言わない約束でしょ」
さりげなく、しかし私にも聞こえるように言うティオリアは確信犯だろう。それでもヴィーはティオリアを気に入ってるようで、この主従はわりかし仲がいい。
ああ、この子も堂々とサボり宣言をするほど図太くなって、としみじみとしてしまった。まあ腹黒が判明した今となっては今さらだけど。自由奔放になり始めたヴィーを諌めるのが、最近のティオリアの役目になっている。本当に優秀な護衛で、姉として嬉しい限りだ。
「そうねえ、しっかり身に付けること身に付けないと、教えられないわね。あとはあなたの成長待ちだもの」
「……じゃあやる」
お茶を飲み干したヴィーは決然とした顔で立ち上がった。立ち居振舞いも幼い頃から教育係が仕事を頑張ったお陰か、かなり洗練されている。
「私はまだ寛いでるから、片付けはしなくていいわ。頑張って」
「わかった、ありがとう。じゃあまた今日の晩餐会でね」
ティオリアが扉を開けると、私を主に負の感情でもって見つめる兵士が二人。相変わらず嫉妬や侮蔑が続いていてうざったいけど、ヴィーは彼らを堂々と睨み付けるようになったので、少し息がしやすくなった。
「私も、お菓子ありがとう」
立ち上がって見送りながら言うと、がらりとヴィーは相好を崩し、輝かんばかりの笑顔になった。
☆☆☆
いつもの図書館で日当たりのいい場所を見つけて、日向ぼっこをする気持ちでゆっくり読書していると、珍しい人が近寄ってきた。
集中していたので気づくのが遅れたが、ふと顔をあげると、その人物が対面に座っていたので驚いた。しかもこちらをじっと観察していたようで、私と目が合うとふいっと薄い色の瞳を逸らす。
「……え、王さま、どうしました?一人ですか?」
「……散歩だからな」
この人にこんな趣味があったのか、と驚いた私は悪くないと思う。嘘が下手くそすぎないか。外宮の端の図書館でもあることに加えて、奥まったこの閲覧場所は散歩には絶対に向かない。
なんとなく無視しづらくて、ぱたんと本を閉じた。王さまは相変わらず顔を背けたまま、横の窓から庭をぼんやりと眺めていた。
実はあの襲われた日以来顔を合わせていなかったので、数ヶ月ぶりの邂逅だ。これまでは何だかんだで毎月楽しくもない晩餐会で面白くもない顔を付き合わせていたものだが。新鮮というか懐かしいというか、よく分からない気持ちになった。
(……あれ?痩せた?)
光の当たり方か、目が落ち窪んで見える。そっと手を伸ばすと、触れる直前で視界に入ったのか、王さまがびくりとこちらを振り返った。その拍子に、さらりと長い襟足が揺れた。
不躾だったか、と手を下ろすと、王さまは目でその手を追いかけて、ぽつりと呟いた。
「……なんだ」
「いえ、痩せたなと思いまして。体調崩すとベリオルが大変になるんだから、気をつけてください」
一瞬の空白のあと、ものすごく変な顔をされた。口が見事なへの字になっている。
「……そなたにだけは言われたくない」
「これまで私が倒れたのは全部不可抗力ですけど?」
「そこではない」
じゃあどこだ。
匙を投げかけたところで思い直し、ちょっとだけ考えて、本の表紙を手でなぞった。ここ最近何度か読み返している冒険小説だ。噂話いわく、市井で現在流行りなのだそうだが、相変わらず感情移入できなくて困っていた。たぶん、一生私には無理なのだろうが、最近、心境の変化がもたらされていた。
「……もしも私が倒れてもう目覚めなくなったところで、ベリオルたちは悲しみはするでしょうが、困りはしませんよ。むしろ争いの種が消えてほっとするでしょう。私の代わりに引っ掻きまわす役どころが新たに必要になるでしょうけど……あ、最近はヴィーが頑張ってるんだった」
「……違うと言っている」
「じゃあ何なんですか」
「…………」
王さまは何とも言えない顔で黙りこくった。言いたいけど言えない、といった顔。何かあるならさっさと教えてほしい。
「……それで、実のところ、何の用なんですか。王さまなのに仕事ほったらかしてこんなところで油売ってていいんですか」
「私は王だからいいのだ」
「わぁー……即答したと思ったら何という横暴な」
呆れていると、ふと、こんなにこの人とどうでもいいことを言い合ったのも久しぶりだと思い出す。これまではお互い、基本的に必要なことしか言葉を交わさなかった。
(昔、何も知らなかった頃は、この人のことお父さまって言ってたんだよなぁ……)
絶望するより前。私をどぶから掬い上げてくれることを期待する前。
この人がいなければ、私は生まれなかった。
姉というそれだけで慕ってくれるヴィーのようにひねくれていなかったら、この人の呼び方は変わっていたかもしれない。
……この時、私は心底寛いでいた。毒を盛られて襲われかけて軟禁された、命がけの踏んだり蹴ったりな経験をし、それなのに穏やかに過ごせている儚い日々に、今の間だけでも浸っていたかった。
……だから、つい口が滑ったのだ。
「……お父さま」
囁きとも言えないほど小さな声だった、のに。
途端、幻でも見るようにカッと目を見開いて凝視してくる王さま。夢うつつから覚めるように。私が実体であるのを確かめるように。……めちゃくちゃ見てくる。瞬きしてない。怖い。
「あ、あの、油売るんだったら部屋で寝てたらどうですか」
それで王さまはごまかされてはくれなかった。もう顔面に視線をびしばし感じて穴が開きそうなんだけど。なんなんだ一体。
「――王さま。いい加減にして」
謎の緊張感がすんっと掻き消えた。ゆるゆると瞑目してくれたので、ほっとする。王さまはこんな昼行灯のようななりでも「王」なのだろう。鋭い眼光に、無駄に神経を張り詰めさせられた。
やれやれと胸を撫で下ろしていると、王さまは相変わらず目を閉じていたが、ふっと息をつくと瞼を上げた。ガラスでもなく中途半端な揺らぎもない、これまでの中で一番深い瞳の色に、自然と目が吸い寄せられた。
「……そなたの神経は虫より図太いな」
「は?」
私が脈絡がなくて目を白黒させてしまうのを無視して、王さまは独白するように続けた。
「過信とも違う。あれほどの目に遭ったのに懲りない。外宮はそなたの目で見て浄化されたと思うか?」
「……いや、ないでしょう。こないだ処罰されたのはとかげの尻尾のようなものでしょう?元を絶たない限り、いくらでも湧いてきますよ。……藪から棒に、なんですか?」
「対策はしているのか」
……質問を無視されたことに、なんとなくむかついた。
この人はどうしてこんな顔をしている。どうしてそんな関係のないことを聞いてくるのだ。
「あなたにとやかく言われる筋合いはありませんよ。あれから学習して石を持ち歩いてますし、笛も持ってます。外宮で手を出せばすぐ釣り上げられますよ」
あくまでも私は病弱でいなきゃいけないから、使うとしたら最終手段だけど。貞操を守るか、死なない程度の効果しかない……のを言ってないのに、王さまはことさらに目を険しくした。
まるで認識が甘いとも言いたげな……。だからあなたには関係ないでしょうに。心配してるように眉根を寄せてだんまりだ。…………心配?
――きり、と胸のどこがが引き絞られる音がした。
「王さま」
「そなたがその姿で外宮に赴く理由は、もはやなかろう。病弱というならなぜ後宮でじっとしていない」
あからさまに切られた。
名前の知れぬ感情がふつふつと沸いてくるのを感じて歯がみする。――押さえなければ。深窓の令嬢は、こんな誰の目につくところで大声を上げるわけにはいかない。
「……だからといって閉じ籠っては、怪しまれます」
大体、今さら何なのだ。身分証を渡したのはあなただろう。閲覧権をくれたのも。
「侍女も外させて、そなたの様子を直接知れる相手はいない。なればいくらでもごまかせよう」
何なのだ。あなただって私に晩餐会をけしかけて、後宮から出させているじゃないか。
「身を張って囮となる前に、これまでのあれこれを思い返してみればどうなのだ。何度殺されかけた?」
「あれは、不可抗力で――」
「死ねば変わらん」
受け流せばいい。リィの格好なら別に構わないのだろうと、その発言の穴をつつけばいい。
意味のない空っぽの一方的な罵倒なんて慣れてる。否定してくる言葉にも笑えるくらいには大人になった。女王陛下に虐められてもいちいち泣かず、暴力に怯えるふりもできる。
……なのに。なぜ。
「――王さま」
もう我慢できなかった。机に手をついてがたりと椅子から立ち上がる。淡々と見上げてくる王さまを見下ろしても、胸の内は晴れない。さっきまで穏やかだった日差しを冷たく感じる。心の柔らかくほぐされていた部分が凍りつくようだった。
……何なのだ、この人は。なぜ今さら私を揺さぶってくる。
ぴたりと口をつぐんだ王さまに怒鳴ろうと思ったら、声が掠れて情けない声量になった。
「……私の邪魔はしないと、かつて言いましたよね?」
「はて?私にはそなたが何をしたいのか見えてないのだ。私の行動の何が邪魔になるのか皆目見当がつかん」
「……質問を変えます。なぜ私に関わろうとするんです?これまで傍観していただけじゃないですか」
「……さてな」
「はぐらかさないでください」
「どうせ聞きたくもないだろう。本当に私の口から言ってほしいのか?」
まるで私の心を見透かすように。……いや、とっくに見透かしてるだろう。この人が自覚してるならば。そして、してないとこんなこと言えないのだ。
沸き起こる激情に目眩がした。
「…………帰ります」
本を取った。王さまの視線が追いかけてくるのを知っているけど、無視した。じゃないとみっともないことになりそうだった。
(――今さら。何なんだ)
「今夜の晩餐会以降、後宮から出ることは許さん」
背中を追いかける声に、本当に叫びそうになった。
今さら。今さらだ。何年放置してきた?何年振り返らなかった?歪ませたのはあなただろう。掬い上げてくれなかったのはあなただろう。だから自分の足で歩いてるのに。何をするかと思えば通せんぼ?
――今さら!!
(――もう何を言われたところで止まれはしないんだよ!!)
何度私が絶望したと思ってる。何度泣いたと思ってる。疲れて休みたくて、でもぼろぼろになりながら起き上がって道を歩いたのは。
誰も一番に私を大切にしてくれないなら。何を捨てても私を優先してくれないなら。そんな風に歪ませたのに、今さら中途半端な情をかけるというのか?……ふざけるな。ふざけるな。
目頭が熱くなる。必死に歯を食いしばって本棚の密林を潜り抜ける。
司書の人たちに挨拶もせずに、ひたすらに走り出したい気持ちを堪えるだけで精一杯だった。
――早く。
早く。早くここから立ち去って、心を立て直して、明日から、また。
「――残念だったわねぇ」
……ぴたりと、足を止めた。
かつん、こつん、と廊下にその靴音が落ちる。どこまでも人がいない、静まり返った不気味さを助長するように。日だまりに浸っていた私を攻めたてるように。
いやに動悸が激しく、冷や汗が出た。……今日は、どこまでも私を落とす日らしい。ささやかな幸せすら、噛みしめさせてもらえない。なんで、いつも。いつも。
すぅ、と濁った空気を吸って、潤んだ瞳を瞬きで乾かして。正面から悠々堂々とやってくるその人を見据えた。
「……お一人ですか。こんなところで珍しいですね、女王陛下」
「ごきげんよう。妾がここにいるのが、そんなに嫌かしら?」
「……いいえ」
いつもの毒が鳴りを潜めたような静かな微笑みが逆に気持ち悪い。その分目がにたにたと下品に嗤っていた。愉しくてたまらないとばかりに。
「こんなところを彷徨いていていいの?また襲われるかも知れなくてよ」
「……それは、事件解決に尽力したヴィーやベリオルさまたちを侮辱しているともとれますが」
「妾はただ、心配しているだけよ?」
いつもなら激昂しているはずの女王陛下は、穏やかに静かに歪んでいた。
「――ぅぐっ!?」
突然喉に衝撃を受けて、壁に叩きつけられた。
「ほら。こんな風に」
「はな……して……っ」
両手でぎりぎりと首を絞められて息ができない。体が壁に押しつけられて、その腕を掴むことしかできなかった。乱れた髪の向こうで、恐怖を呼び起こすような無機質な瞳がどろりと溶かすようにこちらを見ていた。
……ただ、見ていた。
「大人しくしていれば、もっとましになったのにねぇ?息ができるだけでも、ありがたいことでしょう?どうして望んだりしてしまったの?」
(……誰も、誰も。私に与えてくれなかったから)
唾を吐きかけたいのに喉が押さえられて口すら動かせない。
「あなたの帰る場所は所詮後宮にしかないのに。ここ数年、外宮を鼠のようにうろうろとして。……今さら遅いけれどね。思い上がりは正されるものなのだから」
言ってる意味がわからない。でもそれまでの言葉はぐさぐさと胸に突き刺さった。――帰る場所。
(……嫌だ。そんなことない。私は出るって決めたんだ。こんなどぶの世界から、出て、自由になるって)
それだけを糧に、この十年以上を費やしてきたのだ。
「家族ごっこは楽しかった?陛下に目をかけてもらえて嬉しかった?あの方は妾を見てくれないの。どんな気持ちだったか教えてくれないかしら?」
きゃらきゃらと壊れたオルゴールのように嗤う姿を見て、妙に冷えた頭で先程の王さまの様子の意味を理解した。
何か唆したのだ、この人が。私がまた襲われるかもしれないと、そんな風に。わずかに揺れ始めていたのだろう王さまを中途半端に大きく揺らして、私を探しに向かわせた。
(…………惨めだったよ)
私を助けてくれた少年よりも。逃げろと選択肢を示してくれたベリオルたちよりも。同類と思って接していたはずなのに、その一線を越えてこちらに踏み込んできた王さまが、何よりも一番私を惨めにさせた。私自身が認められない私の脆さを、あっさりと許容しようとしてくるから。
「……まあ、それももうおしまい」
ふいに息が口を通った。首を絞めていた手が外れたのだ。
床に座り込んで、ごほごほとえずいた。目の前に爪先があったけれど、今日は蹴飛ばさないらしい。ありがたいことだ。
「卑しいあなた。可哀想なあなた。せいぜい、そうして這いつくばっていなさいね?」
……そうして立ち上がれないまま、女王陛下の去っていく足音を聞いた。
その日、初めて晩餐会をさぼった。誰も呼びに来なかったからこれ幸いと寝台に転がり、首に残った痕を撫でながら昼のことを反芻しては叫びたい気持ちを堪えた。
逃げたと思われるのは癪に障る。けど何食わぬ顔で晩餐会に行けるほど面の皮は厚くない。王さまの顔を見たら癇癪を起こしそうだった。
……そうしてふて寝をしている間に、一国を揺るがす一大事が起こってしまっていた。
☆☆☆
「――リエン王女殿下。国王陛下並びに王妃殿下の毒殺未遂容疑にて、あなたを連行させていただく」
……ヴィーに絆されてばかりで忘れていた。
所詮私はこんなものなのだ。思い上がってはいけなかった。
何もせずとも転がり落ちてくるなら、私は足掻いたりしなかったのだから。
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