孤独な王女

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階段をのぼる

会心の一撃①

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 破裂しそうな気持ちをもて余して、でも寝台でごろごろしていたら、気づいたら寝ていた。
 最悪な寝つき方だったにも関わらずしっかり睡眠はとれていたから驚きだ。まだ空は明け方に差し掛かった頃のようで、カーテンを開けても薄暗かった。
 いやに澄み渡る黎明の空はむかつくけど、空気は美味しくいただきました。

 ――さて。心を繕いながら、今日も頑張ろう。










☆☆☆











「あなたの不幸な境遇には同情しています。それでも、この仕打ちはあんまりでしょう。愛されていないからといって、憎しみでこんなことまでやってしまうとは……失望しました」

 朝食はまだかと居間で待っていたら、ノックされた。部屋の前の兵士は仕事をしないつもりらしい。普通取り次ぎがあるんだけどね。
 侍女かなとどうぞと言おうと思ったら、それにしてはうるさいことに気づいた。……朝ごはんじゃないのか?

 そうして自ら開けに行ったらこれだ。
 狭い廊下にひしめき合う人、人、人。でも軍服を着てるのは前の五、六人ほど。つまり他は野次馬。仕事しろよ。

 先頭の人がすごくどうしようもない人を見る目で言うことが、全然理解できなかった。意味がわからない。私が一体何をしたというの?なぜみんな私を隠そうともしないでぎらぎらと睨み付けるの?
 ……ああ、でもそれよりも。ひとこと言わせてほしい。


「はあ?何を寝言をいってるの?」



 ……何度も、何度も。懲りない人たち。

 ――いい加減、私も長年の積み重ねが消え去りそうで苛ついてるんだ。









 ざわりと、みんなの空気が歪んだのがわかった。一番前の男は不審に眉をひそめている。何を言うのか、そんなことを言いたそうな顔。すっごい間抜け。
 私は気にせず微笑んだ。
「愛されていないから?やってしまう?あなたたちバカなの?人の食事に毒を盛って苦しんでいるのを見て楽しんでいるのが同情?言葉の意味をもう一度調べてみたらどうなのかしら。絶対安全なところから人をいじめ、なおさら私が何かしでかしてもないのに捏造して、それを同情で済ますのがあなたたちの常識なら、とんだ無能ものの集まりね。そんな人間がこの城を、この国を。人々を守ってるなんて。無責任にもほどがある。そう思わない?」
 くすくす、と声が漏れる。
 もう病弱設定は捨てよう。どうせ私が自分から申告したことはないのだから。勝手に踊らされたそっちが悪い。
「同情?してたの?私がどんなにひとりでいようとお腹を空かせていようと毒に苦しんでいても、泣いていようとも熱にうなされていても。助けもせずひたすら嘲って罵って嫉妬するだけして、自分たちは憎まれてないと思ってたの?ねえ。教えてちょうだい。あなたたち、そんなに幸せなおつむでよく人生送ってこれたわね?」
 
 私が浮かべているのは嘲笑だ。それ以外ない。
 だって。本当に笑えてしかたがない。こんなバカな人間たちに踊らされ、苦しめられて、それでも耐えようとしてたなんて。こんな最低な世界をあえて壊さずに十年以上も血を噛みしめて。……私って、何てかわいそうなの。

「反省していないのか!」
 そんな怒号が飛んできた。
 いつの間にかう周囲がるさくなっていた。反省?何それ。私何かした覚えないんだけど。

「――お前が陛下たちに毒を盛ったんだろうが!」

 ……へええ?
 きょとんとした直後ににんまり笑って見せたので、一番前の男は嫌な予感がしたのだろう。黙れと背後に一喝しようとしているのを私が押さえた。ちょうどいい。
「私がしていないと言っても?」
「お前以外ありえるものか!昨晩、お前と王子以外みんな毒で苦しんだんだぞ!」
「ほんっとうに幸せな頭してるわね。蝶々でも飛んでそう。私がした証拠は?」
「なっ……!」
 その人は勝手に怯んでいた。こんな挑発で言葉を飲み込むなら最初から口を開かなければいいのに。代わりに別の人が叫ぶ。
「お前に頼まれて毒をもったというものがいる!」
「まああ。そうなんですか。私、毒を持っていたのね。驚きだわ。それで?部屋の中を確かめようとせず今から私を玉座の間へ連れていこうとするのよね?なんて杜撰なの。あなたたち墓穴掘ってるの気づいてないの?」
「……王女」
「あら、あなたはお前呼ばわりしないのね。全然敬った雰囲気ではないけれど」
 それにしても本当にうるさくなってきた。
 言っても言っても私がすぐにやり返すから、我慢も限界なんだろう、さっさと連れていけ!なんて聞こえてくる。考えることをやめちゃってるんだ。お人形さんと何らかわりない。誰も愛でたいとは思わないだろうけどね、こんな屑たち。
 さてと。言いたいことはまだまだあるけれど、ここからは場所を選ぶとしよう。

「――お黙りなさい」

 低く深く命じた声に、しんと沈黙が降りた。誰もが目を奪われ、声を奪われ、私を見つめてくる。なぜそんなに驚くのかは、わからない。
 ……さて。一番前にいる人。
「ザルム近衛騎士長。私を玉座の間へ案内なさい。そこでたっぷり話を聞いてあげるわ」
 にっこりと笑って、そう言った。













『――リエン王女殿下。国王陛下並びに王妃殿下の毒殺未遂容疑にてあなたを連行させていただく』

 体裁を整えるためか本心から思ってるのか……どうでもいいけど、近衛騎士長は律儀にそう言って、私を部屋から連れ出した。

 なんとなく察するのは、玉座の間でも、もう猫を被らなくてもいいということ。この後の公開尋問だって、どうせ形ばかりのものになるんだろうから。




「……やっぱりね」

 ぽつりと呟いた。まさかの玉座におわすは麗しの女王陛下。昨日絞められた首が疼くわ。
 周囲は兵士かルシェル派の貴族、官僚。ベリオルたち反ルシェル派が大部分弾き出されてるのを見て何も察しないわけがない。

殿。毒に倒れたと伺いましたが、お加減はよろしいようですね」
 お披露目での謁見の際の停止位置に立って、首をかしげた。斜め後ろに、私をいつでも押さえられるようにだろう、近衛騎士長が立っていた。
「……妾は失望した」
 女王陛下は開口一番にそう言った。思わず笑いがこぼれた。
「何を笑っている」
「だって、みんな同じことを言うんですもの」

 くすくすとまた笑う。今日はよく笑う日だ。愉しくて愉しくてしょうがない。もう我慢しなくていいと確信したらば、とても心が清々しくなる。
 どす黒い感情をごまかさなくてすむ。

「遮って申し訳ありません、王妃殿下?続きをお願いします」
「お前は……。そんなに、妾たちが苦しんだことが楽しいか。人から愛されなかった憎しみを晴らせたか。孤独な王女よ。お前を愛していた陛下すら殺しかけておいて、平然と笑っていられるとは。とんだ悪魔を、わが王子も気に召したものだ」
 ……ふむ。殺しかけたということは、王さまはまだ生きてるんだ。よかったよかった。
「悪魔を作ろうとしている人にいわれても、欠片も説得力がありませんわね」
 ぴくりと女王陛下の柳眉が波打った。
「さっさと事情を説明してくれません?私起き抜けで頭がぼんやりしてますの。あんな早くからの訪問なんて、非常識です」
「――貴様!」
「黙って聞いていれば!」
 女王陛下の側近の方々が顔を真っ赤にして怒鳴った。この策、女王陛下じゃ頭が足りないだろう。……この人たちが仕組んだのかな。演技だとしたら立派。けれど、何も知らなかったとしたら……とんだ無能もの。
「よせ。わざわざそういうのだ。妾から説明しようではないか」
 そこで告げられた内容は全くさっきと同じことだった。
「証拠は?」
 うんざりしながら問うと、一番はじめに怒鳴った人が鼻で笑った。
「証拠など。あなた以外にする方はいない」
「あらそうですか。スリエランドさまはたしか法務大臣でいらっしゃいましたよね?法で民を裁くのに証拠が必要ないとなれば、冤罪の処刑にあっさり判を押して執行するのですね。言い分も聞いてもらえず一方的な思い込みで裁かれるなんて、民はなんとかわいそうなのでしょう。ああ、でも法務大臣ともあろうものが、法すら無視するんですもの。今さらですわよね。改名したらいかが?そうね、冤罪大臣なんてどうかしら」
 馬鹿丸出しだなこの人。わざわざ玉座の間に人を集めておいて、やることが虐めな訳がないだろう。さすが金とコネで大臣になった人は違う。
「なっ……!」
「ほら、何も言えない。それで?証拠は?」
 にっこり笑いかけると、他にも広がっていたざわめきが一瞬小さくなった。

「……さすが父を殺そうとするだけはある。よく回る舌だ」
 女王陛下が言った。
「誰でも、誤解があれば解くのに必死になるものでしょう?それで?」
 証拠は?と無言で催促すると、女王陛下は手で扇を握りしめた。この人はよく言い聞かせられてると見た。さっさと私を悪者だとみんなの前で決めつけたいのだろうけど、私が認めない限り……この場の誰もが、私が悪いと認めなければ、ルシェル派は強引に事件を解決したとして体裁が悪くなる。なら言い逃れもできないほどに私を追い詰めればいいんだ。特に兵士は私への襲撃事件で配置換えがあってるはずだし、この場にはルシェル派ではない中立もいる。
 ……流血が伴うなら、なおさら。他国に申し開きもできなくなる。
 ――体裁を整えようとしてるのはいいけど。私にとっては知らない内に裁かれて処刑じゃないので嬉しい。
 王族殺しは未遂でも死刑。それだけわかれば充分。

 私、まだ死にたくないから。わざわざ箍をはずしてくれたんだから、存分に足掻かせてもらうよ?







「……お前に命じられて毒を盛ったという者がいる」
「もちろん、ここにいるのですよね?」
「……つれてきなさい」
 そう言われて現れたのは、かつて私の侍女だった者だった。全く意外じゃない。出るとしたらこの辺りかと思っていたよ。
「……私は、昨日の昼に、一人で呼び出されて。姫さまに脅されて、仕方なく毒を盛りました。姫さまは、やらなければ私の家族を処刑してやると言って……」
 意外にも演技派なのか、実に悲しそうに俯く元侍女。同情の視線が侍女に。義憤に刈られた視線が私を向く。これで私が怯めばよかったんだろうけどね?
「姫様に、毒を渡されて、握りしめられて。それを使いました」
「……そうこの者は言っておるが?」
「とんだ濡れ衣です」

 微笑みながらの一言に、場はまた騒然となった。怒号が飛び交うが、ここは謁見にも使われる場所と言うのを、誰も理解していないのか。ああ女王陛下が御しきれないって見せつけてるのかなるほど。

「私が毒を入手出来るはずも、ミモザに命じることが出来るはずもないのですから」
 誰も彼も。語るに落ちるとはこのことだ。

「先ほど女王陛下がおっしゃったように、私は誰からも愛されませんでした。あなたのお言葉を借りれば、孤独でしたので。朝起きれば世話をしてくれる侍女は誰一人おらず身支度を一人で整え、食事に毒が入れられても毒味役もおらず苦しみ、暴力が振るわれても嘲笑われるだけ。ああそうだわ。私、掃除洗濯も自力でどうにかしましたの。誰も訪ねてこないので。それなのに部屋の外に出れば私を見張るように兵士がいるのですもの。常々私は憎まれていると思っておりましたわ。そんな嫌われものの私が、いつ、どうやって、誰から毒を手に入れられると言うのでしょう?」

 誰も言い返せないような雰囲気にため息をつきたくなった。こっちを悪者に見せる捻りもない。ベリオルたちが頑張っているとはいえ、本当にこの国大丈夫かな。こんな人たちが国政を担っているなんて。

「それで、万一、いえ、全くない可能性ですが、私が毒を入手したとしましょう。それで?私がどうやってミモザと会うことができますか?私は嫌われていますのでしょう?一人で会おうというのも、そもそも彼女が私の呼び出しに応じるならば、どうしてかつて私は朝起きて侍女がいなくなっていたときの呼び出しには応じなかったのでしょう」

 非難の目が向けられているのに気づいたのだろうか。ふるふると侍女が震えている。
 ……ああ、本当に失態に気づいていなかったのか。全く欠片も悪いとすら思っていなかったのか。王女相手に好き勝手やっていたのに。
 職務怠慢、それであなたが頚を切られるのはいいけれど――どのみちあなたが毒を盛ったと証言した時点であなたの人生は終わったけど――私の獲物はあなただけじゃないの。

「それで?私はどうやって彼女の家族をとらえ、処刑をできるのでしょう?誰一人として私に権限を認めなかったのに?私が何をしたいと言っても許してくれなかったのに。ねえ、王妃殿下?」

 くすくす、にこにこ。顔色を変えた女王陛下を見てると、気づいたんだ、と思う。でも、本当に遅すぎる。
 どうしていつまでも私を無抵抗のままあしらえると思っているのか。こんな絶好の反撃の機会があなたたちから与えられておいて、逃すはずがないじゃないか。

「それから、疑問なのですが。誰にも愛されなかった私を愛してくれた父を、どうして殺してしまうというのでしょうか」
「……それは。騒動を起こしながらも反省せず好き勝手していたお前は昨日、陛下にいさめられただろう。その時憎しみを抱いたのだ」
「そ、そうだ!」
 騒動って私じゃなくてあなたたちが起こしたやつでしょそれ。
「先ほどの話に戻りますが。、私は毒を調達できたのでしょうか」
「それは、前から」
「誰に使おうとして?」
「それは……」
「お前は周囲を憎んでいる。妾も憎んでいただろう」
「そうであれば、もっと決定的な場面がございませんでしたこと?最近まで、私はあなたの命令で一方的に軟禁されたことを覚えていらっしゃらないのでしょうか。お父様もあの時助けてくださりませんでした。助けてくれたのは王子でした」
 そういえば、ヴィーは……おそらくこの騒動を知らないのだろう。まだ早朝だ。……平和で何より。
 さっさと勘づかれる前に止めを刺したい。
「っ……黙れ!」
 ああ、短気だな。むしろこれまでよくこらえた方か。そんなにあなたの王子が私を気にかけているのが気に入らないのか。自分の行動を反省するところから始めればいいのに。

「ずいぶんと、言いたい放題言ってくださりましたわね?」

 にこり。呆れも怒りも全て微笑みにのせて。おそらく私史上最も最低の悪人面をしてるな、今。女王陛下の顔がひきつってる。
 とは言っても、一瞬だけでも気圧されたのは矜持が許さないらしい。ぶるぶると扇を握りしめて、一声。

「――そこの衛兵!この娘を捕らえよ!妾を侮辱してただですむと思うな!」

 結局力業か。ああ嫌だ。本当にどうして私これまで何年も耐えてきたのだろう。時間の無駄だった。面倒くさがらず国ごと潰せばよかったかなぁ。

 ぴくりと、視界の端で近衛騎士長が身じろぎしたのが見えた。……どうしたんだろう。あなたも私を嫌っていたよね?どうしてすぐに動かないんだろう。

「っどうした!妾の命が聞けぬというか!」
 女王陛下、あなたもあなたで、本当にちょっとは、ほんの少しだけでも、捻りをいれようよ。まともな脅しもできないの?きゃんきゃん吠えてるだけじゃないの。
「ザルム近衛騎士長。動かないの?」
「私は……」
 振り向き顔を見上げると、苦悩するような顔で目線を揺らがせていた。それがしばらくして、私のもとに定まる。
「……あなたは抵抗ならさないのか?」
 そんなふざけたことをぬかされれば眉をしかめたくもなる。私をここまで連行しておいて何が言いたいんだこの人。
「嫌に決まってるでしょ。でもあなたの感情と私のものとは種類が違うでしょう。あなたの仕事なのに。いいの?動かなくて」
「……、は……」

「ええい!他の衛兵ども!即刻捕らえよ!妾の前にその小娘を引きずりなさい!!」

 ざわりと周囲が動いた。あまりにも素早いものだから、その場に未だ留まっていた偽証人の元侍女の姿はすぐに埋もれてしまった。
「……大丈夫かしらミモザ。あなたも動く気がないなら私から離れたら?ミモザをついでに回収していったらどう?」
 一瞬、近衛騎士長は目をこれでもかと見開いた。よく目玉こぼれないな、と能天気に感心してしまった。王国最強の精鋭部隊は眼球の神経まで最強らしい。そしてすぐにその鋼の瞳は閉ざされた。何かを決めたような顔。
 ああ、と吐息を漏らした。……そう、決めたんだね。


 ……だから、心底驚いた。







 ――迫り来る目の前の兵士たちの体が、突如吹っ飛んだ。













 あまりの剣風に、室内なのに髪が大きく舞い上がる。思わず目をぱちくりして、どこか滑稽な現実離れした光景を見つめる。

 誰が、とは言わない。わかっている。こんなことが出来る人はこの場にたった一人しかいない。いつの間に前に出ていたのだろう、後ろ姿を見つめる。

 ゆっくりと、しかし盛大に空を舞った兵士たちが床に打ち付けられているなかで、その声はささやかだった。

「……どうして……?」

 その人はその声が聞こえたのか聞こえなかったのか、こちらを振り向かず、ただ静かに鞘に入ったままの剣を構え直した。

 なぜ、私の方に背を向けて、女王陛下にそれを向けているの?











「……ザルム近衛騎士長」






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