月の騎士と誘蛾灯 子爵の婿取り事情

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初日

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 使用人の一人を捕まえて尋ねてみたところ、レオンは庭にいるとのことだった。毎朝の日課らしい。こういう屋敷の造りには馴染みがあったので、案内は頼まず、見当をつけて庭まで歩いた。
 一瞬、朝から花でも愛でるとは意外な趣味があるんだな、と思ったが、どうやら違うらしいとすぐに察した。
 レオンは子爵であり、騎士である。それも、実際の小競り合いに自ら出動して采配とともに剣を振るう、お飾りとは程遠い実力者。
 庭に顔を出せば、そこでは、練習着を着たレオンが剣を振っていた。生け垣も花壇も可憐な花々を咲かせているというのに、見向きもしないで、剣の切っ先の奥に見えない敵を見据えている。

(昨日言っていた朝駆けも日課ってところか)

 じっくり観察しながら歩み寄ると、近づく影に気づいたレオンがふと顔を上げて、目が合った。上気した頬が淡く色づき、汗に濡れた髪は鈍色に色を落として肌にへたりと張り付いている。レオンは邪魔そうに顔を袖で乱雑に拭って、カルロスに爽やかに笑いかけてきた。

「おはよう。寝心地はどうだった。ずっと部屋にこもりきりだったと聞いたが」
「昨日はあんな態度ですまなかった。客として礼儀を欠いていた。だが、寝覚めは爽快だ。心のこもった手配りに感謝している」
「それはよかった。ところで、今、空腹か?」

 唐突な質問にカルロスは首を捻った。

「どういう質問だ?」
「君の生活習慣……習慣と呼べるかどうかもよく知らないな、とにかく私の朝食の時間はもう少し遅いんだ。君が腹を空かせているなら、早めに支度をさせるが」
「ああ、そういうことか。あんたと一緒でいい。ついでといってはなんだが、おれも鍛錬の時間と場所が欲しいんだが、いいか?」

 レオンの表情がいきなりぱっと輝いた。

「もちろん構わないとも。場所はここを使え。なんなら今から始めるか?」
「そうだな、いや、待て、服の替えがまだ……」
「兄の練習着が残っている。見たところ体格はほとんど同じだ。どうせなのでもらっていってくれ」
「それは悪いだろう」
「二度と使われることもない衣服だ。兄の部屋もその私物も残しているが対外的な理由のためで、別に思い入れもなにもない。だがそろそろ結婚すれば処分できるようになるな。うむ、ぜひ手伝ってくれ」
「対外的な理由ってのは……」
「兄の出奔は、私が子爵となるための策謀ではないかという馬鹿のような勘繰りがあってな。この件で一番迷惑したのは私だというのに、よく考えるものだ。それなりに私がうまくやり過ぎたことが原因の一つだろうがな。どこにでも出る杭を打たねば気が済まぬ輩がいるわけだ」
「……あー、そりゃあ、苦労してるな……」

 なんと言おうか考えるとこんな間抜けな言葉になった。しかしレオンは気にした様子もなく、「だが私が結婚するとなれば、私の子が後継になると表明することになるからな。やっと兄の部屋という名の物置を潰せるぞ」とかうきうきしている。唯一の兄の形見を丸ごと物置扱いな上に、潰す気満々なのか。

「……お言葉に甘えていいなら、遠慮なくもらっていくが」
「なんなら、小物の類も気に入ったものがあればいくらでも持っていってくれ」
「後でな。先に朝食で、その前に鍛錬だろう」

 これは兄への怨念は深そうである。カルロスは苦笑してたしなめ、早速練習着をもらい受けることにして、着替えに一旦部屋に戻った。

 庭では、レオンと二人きりだったわけではない。白々した朝の青葉の影に従者や庭師の形がちらついていて、従者はレオンの言葉で即座に動いてくれたようで、部屋に着いたら練習着を差し出された。ついでに着替えの手伝いを申し出された。
 庭でのレオンとのやり取りの様子から、カルロスへの印象がただの遊び人から「未来の旦那さま」へ格上げされたのか、それとも、朝から屋敷を一人勝手にぶらついた上に、アルハイド子爵の兄の財産もせしめようとする居候へ警戒しているのか。従者がどう考えようとも構わないが、露骨すぎて笑ってしまった。

「自分の世話くらい一人でできるから、気にしないでくれ」
「では外でお待ちしています。お庭までご案内いたしますので」

 もう庭までの経路は覚えていたが、ここは素直に甘えておくことにした。相手が慣れてくれるまではしばらく、監視か親切かを味わうことになるのだろう。なにも気にしなかったレオンの方がおかしいので、不満には思わない。いや本当に、レオンのあの屈託のなさは一体――。

 ――もちろん構わないとも。

 手頃な壁に額を打ち付けたくなったのをなんとか踏みとどまった。
 月の騎士の異名に見合う超然とした微笑みではなく、子爵らしい泰然とした笑みでもなく。
 あんな無邪気な、全力で喜びを表現する笑顔を向けるタイミングだっただろうか。とっておきのおもちゃを持って、遊んでくれと駆けてくる子どものような……。

「ない。ありえない。色気のなさは過去一番だぞ。やっぱりまだ疲れが取れてなかったりするのか……」

 ぐちぐち言いながら、遅くならないようにと着替えはじめる。レオンの見立て通りに、練習着はそれなりに体に合っていた。ただ若干体の厚みが違うのか、肩や腰回りの布が緩い。……これを目安に鍛えてみるのもいいかもしれない。一心不乱に。心頭滅却して。

 ……今日は仕方ないとしても、明日からは、レオンのいない時間を狙って、鍛錬するようにしよう。












 この日のレオンは仕事という仕事がないらしかった。
 鍛錬をそれぞれこなし、朝食を一緒に摂った後。兄への尽きない怨念ゆえかさっさと処分できるなら済ませたいとのことで、その部屋へ二人で向かうことになった。「若さま」がいつ戻ってきてもいいように、と領地の本館もここ王都の屋敷も、手入れを欠かさず行っているらしい。カーテンやシーツといった布の類には色落ちやしわがなく、そこだけ見ると生活感は一切ないが、細かな傷が入って味が出てきたソファの革張りや歪に光を反射する書斎机、使い込まれた跡の残る書棚の革表紙の本など、そこかしこにティグレ・アルハイドのいた頃の残り香が漂っている。

「あの兄、使い慣れた剣や籠手などは持ち去っていてな。対照的に、本や筆記具、ついでに宝飾品の類は一切持ち出さなかった」
「一切?本当にか?」
「目録を作って確認した。切羽詰まった親戚が探す前に私や父も手を尽くすだけはしたんだ。宝石や本など、売りに出されればそこから足跡を追えただろうが、あの兄はどこか別の資金で持って国外でも行って、傭兵稼業でもやっているのだろうな」
「あのティグレ・アルハイドなら、本当に剣一つで身を立てていそうだな」
「大怪我で働けなくなったと厚顔無恥にも顔を出したなら、領地の物見塔に笑い者として飾ってやろうと思っている」
「飾るのか……」

 飾られる予定の第一番(夫)カルロスは微妙な半笑いになった。叩き出さない分が妹としての優しさなのだろうか。
 さて、実際の処理についてレオンが最初に見せてきたのが、装飾が少ない重厚なデザインの宝石箱だった。カルロスはちらっと覗き見て、少しだけ考えた。

「……これ、貸してくれないか」
「貸す?全部くれてやるが。君がいらなくても、他人にやってもいい。その場合、鋳潰すなり石だけにするなりしてからにしてくれれば」
「あんたはその思いきりのよさをどうにかしろ。これほとんど家宝だろう。ずいぶんと世代が経って、値もつけられないはずだ」
「詳しいな?」
「趣味の一環だ。ってわけで、貸してくれるだけでいい。十日ほどくれたら返す。そうだな、先に目録作っとくか」

 ティグレの書斎机でティグレの筆記用具を借りて、手近の紙に書きつけていく。レオンが宝石箱を机の上に置いて、一つ一つ出して見せてくれたので、特徴を書き込んでいく。レオンが興味深そうに見つめているのはわかっていたが、カルロスは特に言ってやることはなかった。別の紙に同じ内容を書き写し、レオンと二人で間違いないと確認したら、両名の署名の上、一つの紙束はレオンに預けた。カルロスが返すときの確認用だ。
 レオンはカルロスの字を眺めながら、得々と頷いた。

「なるほどな。もしかすると、君の最近の寝不足はこういう趣味のためだったのか?道理で私がいくつかの夜会で空振っていたのに寝不足だと言っていたわけだ。エルンスト家も裕福だからな」
「……あんたの空振りは知らないが、まあ、そういうわけだ」
「ディールフィーネなら無理やりにでも休ませそうなものだが、彼女はどうしていたんだ?」
「あっちはあっちで好きにしていた」

 なにが楽しいのか、作業に集中して一切構わないカルロスの横顔をじっと見つめていたり、一人で遊びに出かけたり、同じ部屋に居座って刺繍や弦を嗜んだり。ディールフィーネは本当に自由だった。他の家では恋人といる時は自主的に趣味を控えていたため、ディールフィーネの家ではそれがなくなったので歯止めが利かず、連日徹夜するほどまで没頭したわけだ。ディールフィーネがはじめに笑って許してくれたので罪悪感はなかったが、稀有な女性だとつくづく思わされたものだった。

 ここで一旦形見分けは止めることにして、昼食の後は今さらながら、邸内の案内になった。案内役は当然のような顔でレオンが名乗り出た。暇なんだなという言葉を飲み込み、そんなに広くはない邸内を雑談を混じえながらぐるりと見て回った。趣味については明日から、なるべく徹夜などせず自制しながらやっていこうと思っている。ここはディールフィーネの家ではなく、そしてカルロスには婚約者ができたのだ。鍛錬の時間もほしいし、これから少なく見積もっても結婚までは同居するのだから、円満な関係を構築する努力は必要だった。

「君は、酒はよく飲む方か?」
「蒸留酒一瓶程度なら酔わないが、普段はあまり飲んでない」
「それではほどほどに飲もうか」
「飲むのか」
「ああ、ほどほどに」

 夕方頃に一度解散して、暮れにカルロスの部屋で一緒に夕食を摂ることになった。持ち込まれた瓶のラベルにカルロスは思わず目を剥き、レオンはにやりと笑んだ。

「とっておきだ。二日遅れだが、私たちの婚約祝いとしよう」
「いやあんた、祝いって、これ『熊殺し』だろ!」
「乾杯といこうか!」
「楽しそうだなおい!」

 熊が飲めばその場でひっくり返るほどと言われる強い酒を二つの酒杯にドバドバ注ぎ、レオンは溢れそうなそれを掲げた。どこがほどほどなのか。
 カルロスはため息をつきながら杯を合わせてやり、先に食事の方に手を付けはじめた。
 煩わしくないほうがいいということで、料理は丸々全部運ばれてきて、給仕も下げている。レオンは時々こうしているらしく、使用人は慣れている様子だった。

 レオンとの話題の半分はティグレのものだった。ティグレはカルロスと同年代で、若き勇士として王国に名を馳せた騎士である。実際の面識こそないが、国境守りのアルハイド家の総領息子の噂は華々しくもてはやされていたのだ。レオンにしてみれば実兄なので、もちろん話題に困ることはない。その中で、レオンの飾り気のない口調で、噂に形作られた人物像が色々台無しになっていくのは少し面白かった。
 大して酒に強くもないのにかっ喰らった挙げ句、酔っ払って半裸で屋敷中を走り回って果てにはどうやったのか屋根に登って高笑いし、「近所迷惑だ!」と父にしこたま怒られたとか、幼い妹を連れて木登り乗馬川泳ぎなどして何度も屋敷を脱走し、「妹を巻き込むな!」とこれまた怒られたとか。
 兄との思い出という名の醜態を酒の肴にしている辺り、レオンの恨みは相当に濃い。怒らせないようにしようとカルロスはひっそり決めた。
 だが、ついでではあるが、幼少のレオンの様子を知れたことはよかったように思う。とりあえずいきなり騎士子爵として立ったレオンは、問題児な兄の影響で、剣も馬もそして政治すらも、全く馴染みがないものではなかったのだ。
 流れでカルロスもぽつぽつと自分の生い立ちを語り、なんだかんだお互いの情報をそれなりに共有した結果になった。
 酒もそれなりに進み、果実酒や糖蜜酒なども開けて二人で飲んだ。

 夜も更けた頃、カルロスは皿や空き瓶を部屋の隅に置かれたワゴンに載せていった。食事が持ってこられた時に使われていたものだ。はじめは酒杯を片手に片付けをぼんやり眺めていたレオンだが、途中から手伝いはじめた。

「君は、けっこう真面目というか、律儀な質だな。細々と働く」
「愛人生活をしていたらこれくらい身につく。というか、大丈夫なのか。あんた、おれの倍は飲んでいただろ」
「これくらいなら朝までには抜ける」
「経験済みな上に二日酔いもなしか……」

 テーブルクロスも外して折りたたみ、ワゴンの持ち手に引っかけて、扉を開けた。
 二人きりの宴会もお開きだ。レオンに自室に帰れと促すと、レオンは多少は酔っているのか、鈍い動きでカルロスの後ろに続いた。

「わざわざ厨房にまで持っていかずともいい。部屋の外に置いておけば回収しにくる」
「そうか……おわっ!?」
「しーっ」

 ワゴンから手を離した途端、カルロスは後ろに引っ張られてたたらを踏んだ。レオンのくすくすという笑い声が耳元を掠める。そのままぐいぐい引っ張られ、カルロスの部屋に逆戻りだ。

「おい、なんだ、どうした」
「どうしたもこうしたもないだろう?」

 いつの間に火を落としたのか、燭台の一つだけが頼りなく照らす暗闇の中、レオンが楽しげに笑いながらカルロスを振り返り、カルロスの腕を引っ張りながら後ろ向きに部屋の奥へ奥へと進む。
 その先には寝室があった。

「おい、待て」

 カルロスは大いに慌て、手を振り払おうとしたが、意外なほどの敏捷性で飛びつかれた。他の女性に比べれば凹凸の少ない体だが、全体的に感触は柔らかい。暗がりでその姿がよく見えないからこそ、カルロスはいやに想像を掻き立てられた。

「年頃の男女が、夜中に密室で二人きり、酒も飲んだ。となれば最後にすることは一つだろう?」
「あんた、はじめからそのつもりだったのか!?」
「後継は早く産まれるに越したことはない。結婚してから悠長に十ヶ月、そこから更に十日程度は療養を見込まなくてはならないとなれば、婚約期間に種の一つでも仕込んでおいた方が、手っ取り早い」

 思いがけない強行手段とあんまりにもあんまりな言い草に、カルロスは思考を粉微塵にした。
 しかしここで負けてはいけない。なんとか粉をかき集めて水を叩きつけて揉み込むように、全速力で頭を回転させた。半分以上空回りだが。

「あんた、生娘か?」
「もちろんだ。それが?」
「いや、だから……」
「君にそのつもりがないとは言わせないぞ。私の求婚を、その名をもって受けると宣言したのは君自身だ。ありがたく据え膳を頂いておけ」

 据え膳は置いておいて、確かにレオンの言う通りではあった。レオンが後継を欲する以上、結婚とはそういうことを加味しての話だったし、それを理解した上でカルロスは応じると決めたのだ。
 つまり、だから、まあ、この誘いに受けて立つのはやぶさかではない。
 この急な状況に戸惑っているだけで。

「あんた、本当にそれでいいのか?効率云々よりも自分の体のことを考えろよ」
「うん?」

 なぜだか、レオンのきょとんとした顔がはっきりとカルロスの脳裏に描かれた。

「考えた上でのことだが。結婚の事実が前後するだけで、やること自体は変わらないだろう。いつまで駄々をこねるつもりだ」
「駄々ってなあ」

 既婚者の愛人稼業ならともかく、相手は生娘だ。中々踏ん切りがつかないカルロスに、レオンはかなり苛立ったらしい。遂に足払いをしかけてその場に押し倒した。

「いいか。私は、今晩この部屋で一緒に食事をすることに、君が意識した素振りがなかったことを気にしているし、兄の部屋で二人きりだったときに、嬉しそうにディールフィーネとの思い出を語ったことも気にしている」
「う、嬉しそうだったか?」
「物凄く嬉しそうだった」

 レオンはカルロスの上に跨りながら髪をほどいた。僅かな明かりがしゃらりと星のような煌めきを映す。

「何度も言ったように、私は君を誰かと共有することはやぶさかではないが、忘れるなよ。君は、私の夫だ」

 なんだかとんでもない殺し文句が聞こえた気がした。
 思わず両手で顔を覆ったカルロスだが、レオンの気配はいかにも不穏な動きを見せていて、余韻に浸る間もない。腹筋を使って起き上がりながらレオンの背を抱き寄せた。酒の匂いに紛れながらも、清涼であり仄かに甘さをも含む香りを吸い込む。
 そんな香りとはちぐはぐの、朝方に見た弾けるような笑顔を思い出して、レオンの肩越しに降参のため息をついた。

「暴れるなよ。落ちるぞ」

 レオンを抱き上げて一息に立ち上がると、今度はカルロスの意志で、カルロスの足で寝室へと踏み出した。







ーーー
こういうの書き慣れてないんですが、攻めすぎましたかね……。それとも全然足りませんか……?

アルハイド家、父上のティグレ少年へのお仕置きは物見塔から吊すことでした。


※一話目でレオンの本名をレオーネとしていましたが、レオーネが男性名だったため、レオノーラに変更しました。申し訳ありません。
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