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第一部
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首を折った男から剣を拾い上げたときから、じわじわと視界が赤く狭くなっていくのを、他人事のように感じていた。
無意識に近い反射で目に付く男たちを片端から斬り伏せ、逃げる者を追いかけ、死体の転がる階段を登りつめて二階の扉の向こうへ顔を出したトーサは、とうとう本格的に自分の頭のおかしさを実感して嗤った。
火が燃えている。熱気が頬をなぶる。白黒の煙が景色を霞ませている。扉を開けるまで気づかないのが異常なほどの火の回り具合だ。今さらドアノブの熱さに手を離す。どれだけ自分は殺しに熱中していたのだろう。わずかに残った理性で独りごちながら、ためらいなく一歩を踏み出した。
どこまでも赤い世界。自分は今、どこを歩いているのか、進みながらもわからなくなった。断片しか残ってない古い記憶に一人で放り込まれた気がしている。炎の舌に腕や足を舐められても焼け付くような痛みを感じるのは一瞬で、そして火が燃え移ることもなく。煙臭くもなく、普通に呼吸しながら歩いていくと、一歩ごとにどんどん現実味が薄れていく。
(火付けに強盗襲撃、ヘーゼルの常套手段だ。今回は出来が悪かったけど。ダグザがいなけりゃこんなもんか)
これまでのやり方を踏襲するだけに精一杯だったのだろう、ダグザがヘーゼルの首魁だった頃の残虐さはろくに発揮する間もなく終わりだ。
手下のほとんどがケルシュで削ぎ落とされ、王都では玄が中心になってヘーゼルの残党の行方を探すのと並行して駒となりうるチンピラを浮き上がらせて、トーサがそれらを刈っていった。玄の堅実かつ効果的な対策は今夜明らかになった。しかも、どんなに無様な仕業になろうと、残党に簡単には逃げを取らせない罠付き。無防備にもノコノコやって来た国王を討ち取れる絶好の機会が目の前にあったら、そりゃあ引き際を見誤るだろう。
ここまで「場」を用意してくれたカイトたちには、頭が上がらない。せめて後顧の憂いを完璧に絶つことで報いとしたい。
トーサは無造作に剣を横に薙いだ。
ばちりと弾けるような音がして、ふっと廊下の明るさが一段下がる。火勢が明らかに弱まった。冷たい空気が正面から顔に吹きつけて、さすがに目を丸めた。
「……おれの頭がおかしいだけか、これ?」
呟いてから、また無意識で剣を振る。人体を斬った手応えがした。見下ろせば黒い物体が二箇所に転がっている。
「なんだこいつ」
首を斬り飛ばしてからそこに人がいたのだと気づいた。さて、おれが今見ているのは幻覚か、現実か。
「どっちでもいいな」
目の前が血に塗れようと、煙で行き先を見失おうと、トーサの足は、血の垂れる剣は、斬ると決めた者を逃さない。
悠然と火の海を歩いてゆくと、さすがに呼吸が詰まり、手足に痺れるような焼け付く痛みを感じはじめた。どこをどう歩ききったかすら覚えていないから正気はいつの間にか失っていたかもしれないが、トーサはやっと目当ての男を見つけて足を止めた。
「よお、しばらくぶりだな」
「……お前は、ダグザを殺した……!なぜここまで!」
「お前に会いたかったから、追いかけてきたんだよ」
喚く男は背が低く、茶色の髪もありふれたもの。目を惹く印象はさしてなく、腕っぷしもそう強くはない。それでもヘーゼルの幹部にいたのは、ダグザの腰巾着のようにして取り入ったからだろうと、下っ端の間ではもっぱら噂されていた。
実際はヘーゼルの盗賊稼業を下支えするためエルダードから送り込まれた、それなりの実力者だ。
「ウルリヒ、お前、エルダードからもとうとう切られたのか?一人なんて寂しいな。ってかこんなに構わず燃やしちまって、出られんのか?」
「何を言っている。お前が全て殺しておいて!」
「おれが?」
ふと振り返ってみると、火に巻かれた死体がごろごろと転がっていた。首を傾げてウルリヒに向き直ると、ウルリヒは「狂人が」と嫌悪に顔を歪めて舌打ちをした。
「まさかここまで祟るとはな。だからダグザに始末しておけと言ったのだ!あいつの気まぐれはいつもろくなものにならないのだと、何度言っても通じなかった」
「……何のことだ?」
「エーラの悲劇だと、巷では言われているそうだな」
トーサの片方しかない黒目がぱちりと瞬いた。無感動な動作だった。がらんどうの闇が火に炙られている。
そこに何を見たのか、ウルリヒは嘲るように口角を持ち上げた。
「なぜあの家を焼かなかったと思う。あのとき、お前の片目を斬ったときに、ダグザはお前を遊び相手に決めたんだ。命をかけた殺し合いのな」
ヘーゼルの常套手段の火付けがあったら、トーサもナジカも生きていない。気絶したまま焼かれて炭になっていたはずだ。
そうならなかった。エーラだけが例外だった。
「お前の眼光はよく覚えている。お前の家族だったガキ共はちょっと手足を切り刻んだだけでびえびえとよく泣き喚いたが、お前は片目を潰されても悲鳴は上げなかったな。腸を裂かれた白髪の男もよく歯を食いしばっていたが、お前は憎悪の掻き立つ目でダグザを睨んでいた。――おれだけじゃない、全員が危険だと思ったよ。だが、ダグザは生き延びたなら絶対殺しに来るから、その時にはおれの獲物だと心底楽しそうに笑ったんだ」
炎の唸りに哄笑がこだまする。死人のそれが移ったような笑い声だった。
「案の定、あいつは浮かれきってとどめを忘れた。お前だけならともかく、お前が最後まで必死に守っていた、銀の髪のガキをな。お前の下から引きずり出して目玉くり抜いてやるべきだったんだよ。そうすりゃ、あいつだけじゃなく、おれらももっと愉しめたもんだったんだが。まあ、結局生き残ってるんだから、これからせいぜい楽しませてもらうか――」
一閃。燃えさかる火の舌をも切り裂く斬撃は躱され、ウルリヒはがら空きのトーサの懐へ飛び込んだ。その胸元には抜き身の剣身。切っ先はたやすくトーサの腹に突き刺さった。
「死ね!!」
「お前が死ね」
勝利に酔った叫びに返すトーサの声は、静かだった。
空虚なほど静かな死刑宣告だった。
ウルリヒの両肘が斬り飛ばされた。
足を切断され、腹を裂かれ、胸を突かれ、首が宙を舞った。
「……今さら知らないわけないだろ」
てんてんと転がっていく首に向かって、トーサは呟いた。
ダグザがエーラに火を付けなかった意図は、とっくに知っていた。「さっさと起きておれを殺しに来てみろ」というのが、あの日、トーサが最後に聞いた言葉。カイトたちにはわざわざ伝えなかった、どうでもいい真実。
それがなくてもトーサはダグザを殺しに行った。ヘーゼルを潰すために他の全部を置いてきた。
槍も、眼帯も、記憶も、希望も。手放したトーサが持っているのは、血に染まる剣のただ一つだけ。それも今、手からするりと滑り落ちて、トーサは本当になにもかもを失った。
「はあ……」
足から力が抜けて座り込んだ。尻が熱いが、まあどうせこれから丸焼きになるんだしいいかと、ボケっと煙塗れの天井を見上げる。
いつ死ぬかを考えたら、自刃するのがとても簡単なのだが、もう剣を触るのは嫌だった。もう一生振りたくない。いや一秒たりとも。見ることすら嫌だ。
疲れたのだ。殺すことにも、憎むことにも。一区切りついてなおまだ体の中に渦巻く憎悪は、腹の傷から漏れ出ていく。だが、尽きることなく身の内から溢れ出てくるものでもあった。
気だるく上向いたまま目を閉じたそのとき。
トーサの耳に、ありえない、聞こえるはずのない声が聞こえた気がした。
「トーサ!!」
ローナの声だった。
迂闊も迂闊。あれだけトーサは「自分に先はない」と言っていたのに。トーサが一人で、自力で逃げ出してくるわけがない――だからこそローナは今夜のパーティーに参加させられたのだ。やっと気づいて、屋敷にもう一度飛び込んで、煙に噎せた。熱くて煙っぽくて眼前すらまともに見られない。
「っ、くっそ、邪魔だな!」
セナトからもらった手のひらに収まるほどの小瓶を、栓を抜くのも面倒で、そのまま床に叩きつけた。確か火に撒けばいいとか言ってたし。中身の謎の白い粉が広がったかと思うと、冷たい風と共に火勢がふっと衰えた。ローナの身長にまで壁を這っていた火が腰元まで縮んだような変化。原理もなにもわからないというか、今はどうでもいい。ヤケクソ上等だ。
会場だった広間へ向かって走りながら全力で「力」を使ってトーサの気配を探った。目も耳も鼻もこの火事のせいで利きにくい。だがだからどうした。
「あいつ、絶対ぶん殴ってやる……!」
会場まで駆け抜け、トーサがあのとき立っていた階段の袂、襟元を引っ張って服の下の首飾りを外し、ポケットにしまい直した。ここからが本番だと、意識を集中する。くらりと目眩がしたのは力の使いすぎか、煙を吸い込みすぎたからか、あまりの怒りっぷりで頭が沸いたか。
だだっ広い街の中で何度もトーサを追いかけた。この狭い空間だ、絶対に見つけられる――。
「見つけた」
血と肉の焼け焦げる匂い、火の粉の舞う煙幕の遥か遠くに、見つけた。
階段を登らず、踵を返して会場を飛び出した。玄関とは反対側、奥へ奥へと突進する。途中で人影が見えたと思ったら斬りかかってきたので、駆け抜けざまに斬りつけてそのまま置いてきた。
後からも数人ちらほら見えたが、向かってこなければスルーした。知ったる家のごとく廊下を走り部屋を抜け階段を登り――トーサの気配とともに新鮮な血の匂いが強烈に香った。
「トーサ!!」
火と煙の向こうに人影が見える。ローナは蹴散らすように駆けつけた。床に座り込んで、ぽかんと間抜け顔で見上げてくるトーサを見て、その腹の傷に目を留めて、全力で叫んだ。
「ふざっけんなよこの馬鹿野郎!!」
「……は?」
ローナはこの段に至って剣を放り投げた。
「怪我してこんなとこで何してんだお前は!さっさと出るぞ!いやその前に血止めか、くそ!」
「いや、お前、目が……っていうか、なんでここに」
「黙って腹見せろ!傷!」
ここまで言っても呆気に取られたままの馬鹿面を晒しているので、ローナはその首を巻くスカーフを無理やりむしり取って、シャツを捲って傷口に押し当てた。息が整わない。無駄に声を荒げたせいで煙を吸い込んで咳き込んだ。ずれた手元にトーサの手が伸びたのでどかそうとすれば、その手を辿って腕を掴まれた。
「馬鹿はお前だろ。さっさとここを出ろ。焼け死ぬぞ」
「こほ、こっちの、台詞だ!」
「おれは、もういいんだよ。言っただろうが。消えるって。お前が巻き込まれたらナジカになんて謝ればいいんだよ」
このときローナは咳き込みまくって反論できなかったが、そのかわり、自分の首を巻くループタイで傷口に当てた布の上からぎっちりと胴体を絞め上げた。同じ男として羨ましいくらい鍛えられた体だ。私怨のみで縛り上げたがトーサは顔をちょっとしかめたくらい。ムカつきすぎて舌打ちにも全力になる。どこまでも腹立つなこいつ。
「いいから、早く行けよ」
「……何がいいんだ馬鹿クソ野郎。ここで死んで、ナジカはどうするつもりだ」
「どうもこうも、ないだろ。お前らがいるんだから……」
「だからふざけんなっつってんだろーが!!」
とうとうローナはトーサの胸ぐらを掴み上げた。
「勝手に決めて勝手に消えてくんじゃねぇよ!また遺されるナジカの気持ちになれ!」
トーサもまた、黒目を光らせてローナの手を振り払った。
「おれがいたって、あいつの生きてく邪魔にしかならないだろ!」
「それを勝手だっつってんだよ!!おれに言えってか!?お前はもうナジカと生きていく気力がないから、もう会いたくないから死んだって!?どんな顔してんなこと言えばいいんだよ!あいつはお前をずっと待ってるのに!!」
ナジカのまっさらな日記帳の黒いシミ。ローナと父の間で消えた手紙。
思い出は思い出でしかなく、絶たれた未来は死んだ者の抜け殻でしかない。くたびれたがらんどうの人形が、生者を無言で振り返るだけ。
ほしい愛の言葉も聞きたくない呪詛もなにもかも与えられず、何をどうしたらいいのか、なんにもわからない。
「――勝手に知らないところで死なれてハイそうですかって言えるなら、誰だって泣けないほど苦しんだりしねーんだよ!!」
その言葉は、誰に向けられたものなのか。トーサは意気を全て消し飛ばされたように唖然としてただ瞬いた。
「……お前……?」
ローナは袖で顔を拭って、またトーサの首元を引っ掴んで、鼻先にまで引き寄せた。
「……お前は、絶対に、ナジカの目の前まで連れていく。決めた。土下座させてやる。お前のこの醜態を包み隠さず教えてやる」
「おい」
「ナジカのために生き恥を晒せ。あいつのための奴隷になれ。生死も生きる理由もその体も全部、ここで捨てるくらいならナジカに捧げろ」
またも絶句したトーサの襟を手放し、トーサを傲然と睨み下ろした。
「立てるか」
「……先に、」
「そうか」
先に行け、と懲りずに言おうとしたトーサの言葉を遮り、そのだらりと垂れ下がった左腕を掴んで持ち上げた。そしてまた舌打ちする。我ながら柄が悪いが、クラウスやルア、ナジカがここにいるわけでもなし。
「重い。手を貸してやるからさっさと立て」
「お前、死ぬぞ」
「そしたらお前のせいだ。全力で祟ってやるから覚悟しろ」
数秒ぐいぐいと腕を引っ張られたトーサは、やがてふっと笑っていた。仕方がない、と言いたげの顔にまたローナはイラっとしたが、ぐっと腕に力がこもったのを感じてとっさに掴み直し、持ち上がっていくトーサの太い胴体にもう片方の腕を回して支えた。
「重い」
「お前の力がないだけだろ」
「うるさい筋肉ダルマ」
「ダルマ言うなやもやしっこ」
「標準だ!」
「どこがだよ貧弱野郎!ナジカと一緒にいた姉ちゃんもまともに抱っこできないだろどーせ!ざまぁ!」
「ルアはおれより足が速いからいいんだ!」
「それ男としてどうなんだ!?」
火と熱で崩れはじめた柱や壁などローナの冴え渡った力の前では何のその。あっちこっちと避けながら二人は着実に出口へ向かって歩を進めた。時間が限られているのに悠長に口喧嘩(合間にお互い盛大に咳き込みつつ)しながらの道中だったが、誰に聞こえるわけでもない。最後は酸欠になって、怒鳴り合うよりは無言で睨み合う方向に変わっていた。ローナもトーサも意識は半ば薄れかけていたが、意地と根性で互いを支えあるいは引きずるようにしながら、やっと出口へ足をかけた。
新鮮な空気が二人の顔を襲った。熱も煙臭さも血の匂いも、全てを洗い吹き飛ばす夏夜の風だ。
「ローナ!」
待ちわびたルアが上げた歓声は周囲のどよめきに掻き消された。「生きてるぞ!」「担架と医者を呼べ!」と叫ぶ彼らの声に、どれほどその生還が危ぶまれていたかわかろうと言うものだ。ルアは目尻の涙を雑に拭った。ナジカ、と懐へ泣き笑いの声をかけようとしたが、はっと目を見開いた。
ナジカはすでにルアの腕の囲いから脱して、まっすぐに駆け出していた。
「ナジカ!」
ルアの声に、煤だらけの顔でバチバチと睨み合っていたローナとトーサは我に返った。足がどちらともなく止まり、駆け寄ってくる大人たちをごぼう抜きに一心に突撃してくるナジカを前になにを言おうかと悩み……揃って「ぐふっ」という声でおじゃんになった。
走ってきた勢いそのままに、ナジカはローナとトーサに抱きついて、二人を地面に押し倒した。
トーサはその衝撃が諸々の傷に響いて苦悶の声を上げ、その下敷きになったローナは同じく傷だらけのところに加重された筋肉ダルマの重さに呻いた。 しかも上にナジカが乗っかったまま動く気配がない。
「……ナ、ナジカ?」
「……生きてる」
小さな手が、トーサの広い胸板をぺたぺたと触っていく。腹部の傷痕に一瞬止まったが、それでもあちこちを撫で触り、やがて喉や頬に触れ、その鼓動を手のひらに感じて、今度こそ完全に動きを止めた。
ナジカはひたりとトーサを見た。トーサもナジカを見ていた。
「……トーサだ」
「……ああ」
「トーサだ」
「うん。悪かった、ナジカ」
「いきてる……」
ナジカはしゃくり上げた。いつの間にかぼたぼたと涙がこぼれて止まらなかった。
泣いちゃいけないと思っても無理だった。何度拭っても拭っても、桶を引っくり返したようにおさまらない。でもそうだ。泣いて忘れろと言ったのはこの人だった。忘れても大丈夫。この人がいるから。ナジカ以外でも覚えててくれる人だから。
「……っぁ、とぉさ」
「ああ」
大きな手がナジカの頭を撫でた。片方しかない黒目が仕方ないなと笑って促すので、最後の堰が外れてしまった。
ナジカは夜空を仰いで、産声のように泣き叫んだ。
無意識に近い反射で目に付く男たちを片端から斬り伏せ、逃げる者を追いかけ、死体の転がる階段を登りつめて二階の扉の向こうへ顔を出したトーサは、とうとう本格的に自分の頭のおかしさを実感して嗤った。
火が燃えている。熱気が頬をなぶる。白黒の煙が景色を霞ませている。扉を開けるまで気づかないのが異常なほどの火の回り具合だ。今さらドアノブの熱さに手を離す。どれだけ自分は殺しに熱中していたのだろう。わずかに残った理性で独りごちながら、ためらいなく一歩を踏み出した。
どこまでも赤い世界。自分は今、どこを歩いているのか、進みながらもわからなくなった。断片しか残ってない古い記憶に一人で放り込まれた気がしている。炎の舌に腕や足を舐められても焼け付くような痛みを感じるのは一瞬で、そして火が燃え移ることもなく。煙臭くもなく、普通に呼吸しながら歩いていくと、一歩ごとにどんどん現実味が薄れていく。
(火付けに強盗襲撃、ヘーゼルの常套手段だ。今回は出来が悪かったけど。ダグザがいなけりゃこんなもんか)
これまでのやり方を踏襲するだけに精一杯だったのだろう、ダグザがヘーゼルの首魁だった頃の残虐さはろくに発揮する間もなく終わりだ。
手下のほとんどがケルシュで削ぎ落とされ、王都では玄が中心になってヘーゼルの残党の行方を探すのと並行して駒となりうるチンピラを浮き上がらせて、トーサがそれらを刈っていった。玄の堅実かつ効果的な対策は今夜明らかになった。しかも、どんなに無様な仕業になろうと、残党に簡単には逃げを取らせない罠付き。無防備にもノコノコやって来た国王を討ち取れる絶好の機会が目の前にあったら、そりゃあ引き際を見誤るだろう。
ここまで「場」を用意してくれたカイトたちには、頭が上がらない。せめて後顧の憂いを完璧に絶つことで報いとしたい。
トーサは無造作に剣を横に薙いだ。
ばちりと弾けるような音がして、ふっと廊下の明るさが一段下がる。火勢が明らかに弱まった。冷たい空気が正面から顔に吹きつけて、さすがに目を丸めた。
「……おれの頭がおかしいだけか、これ?」
呟いてから、また無意識で剣を振る。人体を斬った手応えがした。見下ろせば黒い物体が二箇所に転がっている。
「なんだこいつ」
首を斬り飛ばしてからそこに人がいたのだと気づいた。さて、おれが今見ているのは幻覚か、現実か。
「どっちでもいいな」
目の前が血に塗れようと、煙で行き先を見失おうと、トーサの足は、血の垂れる剣は、斬ると決めた者を逃さない。
悠然と火の海を歩いてゆくと、さすがに呼吸が詰まり、手足に痺れるような焼け付く痛みを感じはじめた。どこをどう歩ききったかすら覚えていないから正気はいつの間にか失っていたかもしれないが、トーサはやっと目当ての男を見つけて足を止めた。
「よお、しばらくぶりだな」
「……お前は、ダグザを殺した……!なぜここまで!」
「お前に会いたかったから、追いかけてきたんだよ」
喚く男は背が低く、茶色の髪もありふれたもの。目を惹く印象はさしてなく、腕っぷしもそう強くはない。それでもヘーゼルの幹部にいたのは、ダグザの腰巾着のようにして取り入ったからだろうと、下っ端の間ではもっぱら噂されていた。
実際はヘーゼルの盗賊稼業を下支えするためエルダードから送り込まれた、それなりの実力者だ。
「ウルリヒ、お前、エルダードからもとうとう切られたのか?一人なんて寂しいな。ってかこんなに構わず燃やしちまって、出られんのか?」
「何を言っている。お前が全て殺しておいて!」
「おれが?」
ふと振り返ってみると、火に巻かれた死体がごろごろと転がっていた。首を傾げてウルリヒに向き直ると、ウルリヒは「狂人が」と嫌悪に顔を歪めて舌打ちをした。
「まさかここまで祟るとはな。だからダグザに始末しておけと言ったのだ!あいつの気まぐれはいつもろくなものにならないのだと、何度言っても通じなかった」
「……何のことだ?」
「エーラの悲劇だと、巷では言われているそうだな」
トーサの片方しかない黒目がぱちりと瞬いた。無感動な動作だった。がらんどうの闇が火に炙られている。
そこに何を見たのか、ウルリヒは嘲るように口角を持ち上げた。
「なぜあの家を焼かなかったと思う。あのとき、お前の片目を斬ったときに、ダグザはお前を遊び相手に決めたんだ。命をかけた殺し合いのな」
ヘーゼルの常套手段の火付けがあったら、トーサもナジカも生きていない。気絶したまま焼かれて炭になっていたはずだ。
そうならなかった。エーラだけが例外だった。
「お前の眼光はよく覚えている。お前の家族だったガキ共はちょっと手足を切り刻んだだけでびえびえとよく泣き喚いたが、お前は片目を潰されても悲鳴は上げなかったな。腸を裂かれた白髪の男もよく歯を食いしばっていたが、お前は憎悪の掻き立つ目でダグザを睨んでいた。――おれだけじゃない、全員が危険だと思ったよ。だが、ダグザは生き延びたなら絶対殺しに来るから、その時にはおれの獲物だと心底楽しそうに笑ったんだ」
炎の唸りに哄笑がこだまする。死人のそれが移ったような笑い声だった。
「案の定、あいつは浮かれきってとどめを忘れた。お前だけならともかく、お前が最後まで必死に守っていた、銀の髪のガキをな。お前の下から引きずり出して目玉くり抜いてやるべきだったんだよ。そうすりゃ、あいつだけじゃなく、おれらももっと愉しめたもんだったんだが。まあ、結局生き残ってるんだから、これからせいぜい楽しませてもらうか――」
一閃。燃えさかる火の舌をも切り裂く斬撃は躱され、ウルリヒはがら空きのトーサの懐へ飛び込んだ。その胸元には抜き身の剣身。切っ先はたやすくトーサの腹に突き刺さった。
「死ね!!」
「お前が死ね」
勝利に酔った叫びに返すトーサの声は、静かだった。
空虚なほど静かな死刑宣告だった。
ウルリヒの両肘が斬り飛ばされた。
足を切断され、腹を裂かれ、胸を突かれ、首が宙を舞った。
「……今さら知らないわけないだろ」
てんてんと転がっていく首に向かって、トーサは呟いた。
ダグザがエーラに火を付けなかった意図は、とっくに知っていた。「さっさと起きておれを殺しに来てみろ」というのが、あの日、トーサが最後に聞いた言葉。カイトたちにはわざわざ伝えなかった、どうでもいい真実。
それがなくてもトーサはダグザを殺しに行った。ヘーゼルを潰すために他の全部を置いてきた。
槍も、眼帯も、記憶も、希望も。手放したトーサが持っているのは、血に染まる剣のただ一つだけ。それも今、手からするりと滑り落ちて、トーサは本当になにもかもを失った。
「はあ……」
足から力が抜けて座り込んだ。尻が熱いが、まあどうせこれから丸焼きになるんだしいいかと、ボケっと煙塗れの天井を見上げる。
いつ死ぬかを考えたら、自刃するのがとても簡単なのだが、もう剣を触るのは嫌だった。もう一生振りたくない。いや一秒たりとも。見ることすら嫌だ。
疲れたのだ。殺すことにも、憎むことにも。一区切りついてなおまだ体の中に渦巻く憎悪は、腹の傷から漏れ出ていく。だが、尽きることなく身の内から溢れ出てくるものでもあった。
気だるく上向いたまま目を閉じたそのとき。
トーサの耳に、ありえない、聞こえるはずのない声が聞こえた気がした。
「トーサ!!」
ローナの声だった。
迂闊も迂闊。あれだけトーサは「自分に先はない」と言っていたのに。トーサが一人で、自力で逃げ出してくるわけがない――だからこそローナは今夜のパーティーに参加させられたのだ。やっと気づいて、屋敷にもう一度飛び込んで、煙に噎せた。熱くて煙っぽくて眼前すらまともに見られない。
「っ、くっそ、邪魔だな!」
セナトからもらった手のひらに収まるほどの小瓶を、栓を抜くのも面倒で、そのまま床に叩きつけた。確か火に撒けばいいとか言ってたし。中身の謎の白い粉が広がったかと思うと、冷たい風と共に火勢がふっと衰えた。ローナの身長にまで壁を這っていた火が腰元まで縮んだような変化。原理もなにもわからないというか、今はどうでもいい。ヤケクソ上等だ。
会場だった広間へ向かって走りながら全力で「力」を使ってトーサの気配を探った。目も耳も鼻もこの火事のせいで利きにくい。だがだからどうした。
「あいつ、絶対ぶん殴ってやる……!」
会場まで駆け抜け、トーサがあのとき立っていた階段の袂、襟元を引っ張って服の下の首飾りを外し、ポケットにしまい直した。ここからが本番だと、意識を集中する。くらりと目眩がしたのは力の使いすぎか、煙を吸い込みすぎたからか、あまりの怒りっぷりで頭が沸いたか。
だだっ広い街の中で何度もトーサを追いかけた。この狭い空間だ、絶対に見つけられる――。
「見つけた」
血と肉の焼け焦げる匂い、火の粉の舞う煙幕の遥か遠くに、見つけた。
階段を登らず、踵を返して会場を飛び出した。玄関とは反対側、奥へ奥へと突進する。途中で人影が見えたと思ったら斬りかかってきたので、駆け抜けざまに斬りつけてそのまま置いてきた。
後からも数人ちらほら見えたが、向かってこなければスルーした。知ったる家のごとく廊下を走り部屋を抜け階段を登り――トーサの気配とともに新鮮な血の匂いが強烈に香った。
「トーサ!!」
火と煙の向こうに人影が見える。ローナは蹴散らすように駆けつけた。床に座り込んで、ぽかんと間抜け顔で見上げてくるトーサを見て、その腹の傷に目を留めて、全力で叫んだ。
「ふざっけんなよこの馬鹿野郎!!」
「……は?」
ローナはこの段に至って剣を放り投げた。
「怪我してこんなとこで何してんだお前は!さっさと出るぞ!いやその前に血止めか、くそ!」
「いや、お前、目が……っていうか、なんでここに」
「黙って腹見せろ!傷!」
ここまで言っても呆気に取られたままの馬鹿面を晒しているので、ローナはその首を巻くスカーフを無理やりむしり取って、シャツを捲って傷口に押し当てた。息が整わない。無駄に声を荒げたせいで煙を吸い込んで咳き込んだ。ずれた手元にトーサの手が伸びたのでどかそうとすれば、その手を辿って腕を掴まれた。
「馬鹿はお前だろ。さっさとここを出ろ。焼け死ぬぞ」
「こほ、こっちの、台詞だ!」
「おれは、もういいんだよ。言っただろうが。消えるって。お前が巻き込まれたらナジカになんて謝ればいいんだよ」
このときローナは咳き込みまくって反論できなかったが、そのかわり、自分の首を巻くループタイで傷口に当てた布の上からぎっちりと胴体を絞め上げた。同じ男として羨ましいくらい鍛えられた体だ。私怨のみで縛り上げたがトーサは顔をちょっとしかめたくらい。ムカつきすぎて舌打ちにも全力になる。どこまでも腹立つなこいつ。
「いいから、早く行けよ」
「……何がいいんだ馬鹿クソ野郎。ここで死んで、ナジカはどうするつもりだ」
「どうもこうも、ないだろ。お前らがいるんだから……」
「だからふざけんなっつってんだろーが!!」
とうとうローナはトーサの胸ぐらを掴み上げた。
「勝手に決めて勝手に消えてくんじゃねぇよ!また遺されるナジカの気持ちになれ!」
トーサもまた、黒目を光らせてローナの手を振り払った。
「おれがいたって、あいつの生きてく邪魔にしかならないだろ!」
「それを勝手だっつってんだよ!!おれに言えってか!?お前はもうナジカと生きていく気力がないから、もう会いたくないから死んだって!?どんな顔してんなこと言えばいいんだよ!あいつはお前をずっと待ってるのに!!」
ナジカのまっさらな日記帳の黒いシミ。ローナと父の間で消えた手紙。
思い出は思い出でしかなく、絶たれた未来は死んだ者の抜け殻でしかない。くたびれたがらんどうの人形が、生者を無言で振り返るだけ。
ほしい愛の言葉も聞きたくない呪詛もなにもかも与えられず、何をどうしたらいいのか、なんにもわからない。
「――勝手に知らないところで死なれてハイそうですかって言えるなら、誰だって泣けないほど苦しんだりしねーんだよ!!」
その言葉は、誰に向けられたものなのか。トーサは意気を全て消し飛ばされたように唖然としてただ瞬いた。
「……お前……?」
ローナは袖で顔を拭って、またトーサの首元を引っ掴んで、鼻先にまで引き寄せた。
「……お前は、絶対に、ナジカの目の前まで連れていく。決めた。土下座させてやる。お前のこの醜態を包み隠さず教えてやる」
「おい」
「ナジカのために生き恥を晒せ。あいつのための奴隷になれ。生死も生きる理由もその体も全部、ここで捨てるくらいならナジカに捧げろ」
またも絶句したトーサの襟を手放し、トーサを傲然と睨み下ろした。
「立てるか」
「……先に、」
「そうか」
先に行け、と懲りずに言おうとしたトーサの言葉を遮り、そのだらりと垂れ下がった左腕を掴んで持ち上げた。そしてまた舌打ちする。我ながら柄が悪いが、クラウスやルア、ナジカがここにいるわけでもなし。
「重い。手を貸してやるからさっさと立て」
「お前、死ぬぞ」
「そしたらお前のせいだ。全力で祟ってやるから覚悟しろ」
数秒ぐいぐいと腕を引っ張られたトーサは、やがてふっと笑っていた。仕方がない、と言いたげの顔にまたローナはイラっとしたが、ぐっと腕に力がこもったのを感じてとっさに掴み直し、持ち上がっていくトーサの太い胴体にもう片方の腕を回して支えた。
「重い」
「お前の力がないだけだろ」
「うるさい筋肉ダルマ」
「ダルマ言うなやもやしっこ」
「標準だ!」
「どこがだよ貧弱野郎!ナジカと一緒にいた姉ちゃんもまともに抱っこできないだろどーせ!ざまぁ!」
「ルアはおれより足が速いからいいんだ!」
「それ男としてどうなんだ!?」
火と熱で崩れはじめた柱や壁などローナの冴え渡った力の前では何のその。あっちこっちと避けながら二人は着実に出口へ向かって歩を進めた。時間が限られているのに悠長に口喧嘩(合間にお互い盛大に咳き込みつつ)しながらの道中だったが、誰に聞こえるわけでもない。最後は酸欠になって、怒鳴り合うよりは無言で睨み合う方向に変わっていた。ローナもトーサも意識は半ば薄れかけていたが、意地と根性で互いを支えあるいは引きずるようにしながら、やっと出口へ足をかけた。
新鮮な空気が二人の顔を襲った。熱も煙臭さも血の匂いも、全てを洗い吹き飛ばす夏夜の風だ。
「ローナ!」
待ちわびたルアが上げた歓声は周囲のどよめきに掻き消された。「生きてるぞ!」「担架と医者を呼べ!」と叫ぶ彼らの声に、どれほどその生還が危ぶまれていたかわかろうと言うものだ。ルアは目尻の涙を雑に拭った。ナジカ、と懐へ泣き笑いの声をかけようとしたが、はっと目を見開いた。
ナジカはすでにルアの腕の囲いから脱して、まっすぐに駆け出していた。
「ナジカ!」
ルアの声に、煤だらけの顔でバチバチと睨み合っていたローナとトーサは我に返った。足がどちらともなく止まり、駆け寄ってくる大人たちをごぼう抜きに一心に突撃してくるナジカを前になにを言おうかと悩み……揃って「ぐふっ」という声でおじゃんになった。
走ってきた勢いそのままに、ナジカはローナとトーサに抱きついて、二人を地面に押し倒した。
トーサはその衝撃が諸々の傷に響いて苦悶の声を上げ、その下敷きになったローナは同じく傷だらけのところに加重された筋肉ダルマの重さに呻いた。 しかも上にナジカが乗っかったまま動く気配がない。
「……ナ、ナジカ?」
「……生きてる」
小さな手が、トーサの広い胸板をぺたぺたと触っていく。腹部の傷痕に一瞬止まったが、それでもあちこちを撫で触り、やがて喉や頬に触れ、その鼓動を手のひらに感じて、今度こそ完全に動きを止めた。
ナジカはひたりとトーサを見た。トーサもナジカを見ていた。
「……トーサだ」
「……ああ」
「トーサだ」
「うん。悪かった、ナジカ」
「いきてる……」
ナジカはしゃくり上げた。いつの間にかぼたぼたと涙がこぼれて止まらなかった。
泣いちゃいけないと思っても無理だった。何度拭っても拭っても、桶を引っくり返したようにおさまらない。でもそうだ。泣いて忘れろと言ったのはこの人だった。忘れても大丈夫。この人がいるから。ナジカ以外でも覚えててくれる人だから。
「……っぁ、とぉさ」
「ああ」
大きな手がナジカの頭を撫でた。片方しかない黒目が仕方ないなと笑って促すので、最後の堰が外れてしまった。
ナジカは夜空を仰いで、産声のように泣き叫んだ。
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